1922

4

JUGEMテーマ:Horror

 

1922

出典:IMDb

 

「1922」

原題:1922

監督:ザック・ヒルディッチ

原作:スティーヴン・キング

2017年 アメリカ映画 102分

キャスト:トーマス・ジェーン

     モリー・パーカー

     ディラン・シュミット

 

1930年、ホテルの一室でウィルフレッドは

かつて自分が犯した罪を告白する手紙を書いていた。

彼は1922年、妻が親から相続した土地で農業を

営んでいたが、その土地を売却しようとする妻と
対立してしまい..。


<お勧め星>☆☆☆ あ〜不気味だ。気色悪いわ。

見終わって気分もよくならないわ。


ネズミ駆除には何が効果的?

 

 

 

<ネタバレしているかも>


2010年に出版された「Full Dark,No Stars」と

いう小説に収められた短編の内の1つです。

スティーヴン・キングの小説は数多く映画化されていて、

その中で最も好きなのはもちろん

「スタンド・バイ・ミー」(1980)
です。音楽もよかった。そして何より今は亡き

リバー・フェニックスの美少年ぶりに目を奪われました。

シシー・スペイク主演の1976年映画「キャリー」は

ヒロインの線の細い少女役にシシーがぴったりで70年代

特有のホラーの雰囲気もあって怖いけれど切なかったです。

ほかにも「シャイニング」(1980)

「デッド・ゾーン」(1983)

「ミザリー」(1990)

「ショーシャンクの空に」(1994)
などなど何度でも見たい映画が(いや「ミザリー」の

キャシー・ベイツは1回見ればいい。)数多く作られて

います。「It」(1990)は2017年にリメイクされ

ましたが、なんと珍しくリメイク版の方が怖いのです。

そして続編というかオリジナルでは成長後まで描いていたのに、

2017年版では少年少女時代のみだったので、その後の

映画がまた公開されるということで、期待が高まります。
こんなにピエロを怖い存在にしてそれでも誕生日会に

呼ぶのかしら。ピエロに扮した人が来て子供たちを

楽しませたら、そのメイクが取れなくなってしまわないか

心配だわ。それは「クラウン」(2014)。
さてこの映画の主役ウィルフレッド役は「ミスト」(2007)

でも主人公を演じていたトーマス・ジェーンです。

「ミスト」(2007)に関しては、原作「霧」の方が

100倍怖くて、映画になったらなんだか違う雰囲気の話に

変わっていた気がします。これは個人の好みなので気に

しないでね。
時は1922年、世界恐慌が始まる1929年から遡ること

7年。農業分野でも不況であった時代、ネブラスカ州の田舎で、

ウィルフレッドは妻アルレット、息子ヘンリーと農業をして

暮らしているのです。

 

1922
出典:IMDb

 

1922

出典:IMDb

 

見渡す限り広がる農場は妻が親から受け継いだもので、妻は、

農業を嫌い、土地を売却して街で暮らしたいと願っています。

結構手際がよく売却先も決めて来たし、弁護士も雇っている。

しかしウィルフレッドにとっては、大事なのは「この土地」と

「息子」で、アルレットの話に耳を傾けるはずもないのです。

冒頭に農作業の合間に、アルレットの作ったレモネードを

ウィルフレッドとヘンリーが飲み、アルレットはその姿を
穏やかな表情で見つめています。彼らが本当に幸せそうで、

背景の農場も夕日に輝いて美しく見えるのを目に焼き付けて

おくといいと思います。なぜならここからどんどん暗い話に

なっていくからです。

 

1922
出典:IMDb

 

息子ヘンリーは隣家(と言っても視界に入らないくらい遠い)の

娘シャノンと恋仲になり、ウィルフレッドはそれを利用しようと

考えるんですね。醜いですね。
「お前、母さんはこの土地を売って街へ引っ越すぞ。そしたら

シャノンとは終わりだな」
ウィルフレッドの悪魔のささやきを聞かされ、さらにアルレットに

シャノンを侮辱されたヘンリーは、ウィルフレッドの妻殺し計画に

加担するのですよ。これがまあ、枕で押さえつけるとか綺麗に

済ませるのではなく、包丁でグサグサ指していくという残虐極まり

ない方法です。小説ではどんな風に描写されていたのか読みたく

ないけれど、ちょっと読んでみたい。

そして遺体を庭の井戸に放り込むんです。ところが翌日血で汚れた

シーツなどを放り込もうとすると、山ほどネズミがたかっていて、

アップになったアルレットの口からはゆっくり尻尾から大きな

ネズミが出てきます。ぎょえ〜。
この時からチューチュー声を出すネズミの存在がウィルフレッドの

頭から離れなくなるんです。殺鼠剤ってまだ存在しなかったのかな。

いやそんなもので退治できるはずもない。
ストーリーは予想通り、どんどん悪い方向に展開していきます。

だいたいスティーヴン・キングの映画で全員がハッピーなラストを

迎えるものってあったかしら。
 

1922
出典:IMDb

 

「死んだ妻だけ知る秘密」を地下室で耳元で囁かれるづける

ウィルフレッドの姿はもう不気味極まりないし、囁くアルレット

の顔はネズミにかじられているし、これはどこまでが夢でどこまでが

現実かわかりません。
ラストシーンも「結局は誰も逃げられないのだ」という絶望しか

残らず、あの時の違う選択をしていたら、家族3人仲良く

暮らせたのに..などという後悔の念ばかりが漂っていました。最も

大事にしていた「農場」も「息子」ももう戻らないし、それは全て

彼の蒔いた種なのです。

 

 

 

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ロスト・マネー 偽りの報酬

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ロスト・マネー

出典:IMDb

 

「ロスト・マネー 偽りの報酬」

原題:Widows

監督:スティーブ・マックイーン

2018年 アメリカ映画 129分

キャスト:ビオラ・デイビス

     ミシェル・ロドリゲス

     エリザベス・デビッキ

     シンシア・エルホ

     コリン・ファレル

     リーアム・ニーソン

 

シカゴで4人の強盗犯が逃げ込んだ倉庫の爆発で

死亡する。そしてその金が市議会議員候補ジャマール

のものであったため、強盗の主犯格ハリーの妻ヴェロニカ

は金の返済を迫られるのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 豪華な俳優陣に目を見張りますが、

内容は普通。


神父様、あなたはどちらの味方ですか?


1983年放映のイギリスBBC製同名ミニシリーズを

「それでも夜が明ける」(2013)の

スティーブ・マックイーン監督が映画化したものです。

「妻たちの落とし前」という邦題で劇場公開予定でしたが、

中止になりました。「ロスト・マネー 恐怖の報酬」

「妻たちの落とし前」どちらも題名がいまいち。
「それでも夜が明ける」では自由黒人ソロモンの12年間の

奴隷生活を描いていました。ソロモンが騙されて

売り飛ばされ、働かされる農場の監督官役のポール・ダノが

本当に陰湿で、そればかり印象に残っています。
アカデミー賞作品賞を受賞したものの、個人的には

「自由黒人」というものの存在を初めて知った程度の感動しか

覚えませんでした。
さてこの「ロスト・マネー」では、とにかく登場する俳優が

豪華です。シカゴ市議会18ブロック候補ジャック・マリガン役

はコリン・ファレル、その対抗馬ジャマール・マニングの弟役が

「ゲット・アウト」(2017)のダニエル・カルーヤです。

 

ロスト・マネー

出典:IMDb

 

ロスト・マネー

出典:IMDb

 

「ゲット・アウト」は劇場で鑑賞しましたが、(毎度おなじみ

ボッチ鑑賞)「何かがおかしい」というポスターの通り、

最初から違和感を覚え、それがまさかあのような展開に
なっていようとは...。「わたしは全然差別していないのよ」

という温和な顔と裏腹の心の内があのような恐怖になって

現れるなんて...。これぜひとも見てほしい映画です。
そして序盤に派手な強盗シーンを繰り広げる4人の男性の内

リーダー格のハリー役はなんとリーアム・ニーソン。

 

ロスト・マネー

出典:IMDb

 

隠れこんだ倉庫で車ごと大爆発してしまうんです。その前に

映った妻ヴェロニカとのネチネチチューシーンは、

「電車の中のべたべたカップルのキモさ」並みに気色が悪い

けれど、お二人ともきれいだから許す。

 

ロスト・マネー

出典:IMDb

 

そのヴェロニカ役は「ヘルプ〜心がつなぐストーリー」(2011)

のビオラ・デイビス、同じように夫を亡くしたリンダ役は

ミシェル・ロドリゲス、アリス役はエリザベス・デビッキという

素晴らしい顔ぶれです。特にエリザベス・デビッキの190cmと

いう高身長とツイギー人形のように手足が細く長くスタイル抜群の

美人ぶりには目が釘付けになります。彼女の映画内の母親役が

「アニマル・キングダム」(2010)の肝っ玉ばあさん、

ジャッキー・ウィーバーでこの映画では娘にエスコートサービスで

稼ぐように促す腹黒い自己中女性を演じています。怖いんですよ。
彼女たちの夫が強奪した金が、市議会議員候補ジャマールのもので、

それを30日以内に返却するように迫られたヴェロニカが、

ひょんなことで手に入れた夫の犯罪計画ノートを活用して、一攫千金を
狙うというのがこの映画の主要なストーリーです。

 

ロスト・マネー

出典:IMDb

 

中盤以降までそれぞれの境遇や夫との関係、市議会議員候補ジャックと

ジャマールの状況が細かく描かれ、とにかくジャマールの弟の残虐性

にはどきりとさせられてばかりです。ヴェロニカの愛犬をあんな風に

掴むなんて許せないわ!
ところで、ハリーがどんな人物だったのかということについては、

あまり丁寧に説明されず、それほどのワルだったのかとか、なぜ

この地域で勢力を持っていたのかよくわかりません。それと中盤付近に
発覚する事実で、先が読めてしまうのがとても残念です。あれは

最後にわかった方がよかったんじゃないかなあ。
またジャックと父親の対立と彼が何を目的に行動していたのかも

十分理解できませんでした。
それでもアフリカ系住民の貧しくすさんだ生活がリアルに描かれ、

彼らを支配する白人たちの偽善的な行動にも目が向けられた気が

します。しないよりした方がいいに決まっているけれど、それは
現代の奴隷のようなものになってしまうとも思うんですよね。

 

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ブラジルー消えゆく民主主義

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ブラジル

出典:IMDb

 

「ブラジルー消えゆく民主主義」

原題:Democracia em Vertigem

         The Edge of Democracy

2019年 ブラジル映画 121分

監督:ペドロ・コスタ

 

2002年、労働者党のルーラ・ダ・シルヴァが

大統領に当選し、ブラジルは21年続いた軍事独裁政権

に終止符を打つ。彼とその後継者であった

ジウマ・ルセフ大統領の盛衰を、監督自身の家族の

歴史も踏まえて描いていく..。


<お勧め星>☆☆☆☆☆ これは絶対に見てほしい映画

です。ブラジルの民主主義が崩壊していくのを見ている

のに、違うものを見ているかのように思います。


民主主義が機能している時、資本家は怯えている


ブラジルについて持っている知識といえば、日系移民が

多いんだろうな、とか、サッカーワールドカップや

リオデジャネイロ五輪が開催されたな、程度で、以前に

観た「チリの闘い」同様に全く知らなかったことばかりが

映像として目の前に現れます。
2000年代以降「BRICs」と呼ばれ、インド、ロシア、

中国と共に著しい経済成長を遂げた来たこのブラジルの

国内で何が起きていたのか。本当に最初から最後まで一気に

見られます。そして弱った民主制がどこに向かうのか、

この目ではっきり見て取れるのです。
映画はペドロ・コスタ監督のナレーションやインタビューで

構成されており、その時々の社会や政治家の姿を映しつつ、

彼女の家族も映されます。コスタ自身、祖父がブラジル有数の

大会社の経営者でありつつ、彼女の両親は、軍事独裁政権への

反体制活動家で、投獄された体験の持ち主です。コスタの

考えも両親に近いけれど、どちらにも存在する「闇」を覆

い隠すことなく語っているのが特徴です。
2018年4月7日、元大統領ルーラ・ダ・シルヴァが逮捕

されます。この逮捕までの経緯の前に、ブランコ将軍から

始まった軍事独裁政権下で、貧困にあえぎ、逮捕、拷問、

虐殺におびえる民衆の姿が描かれます。そしてその中で

労働者の星として政界入りを表明したのがルーラです。
「階級も人種も性別も信教も関係なく、人という粘土で結びつこう」
当時のブラジル議会443名のうち労働者階級が2名という

数字を知らされると驚愕します。後に登場しますが、ブラジルの

司法制度は、検察官=裁判官という歪なもので、これが近代国家の

姿なのだろうかと思ってしまう。長らく続いた軍事独裁政権は

「司法」の存在など必要としなかったのでしょう。
ルーラが大統領に当選し、歓喜の雄たけびを上げ、街中を行進

する民衆の笑顔をよそに、ルーラ自身は、議会を動かすために

「ブラジル民主労働党」と手を組むわけです。これが労働党とは

思想が大きく異なる反共、極右政党だったとしても、多くの

政党が乱立するブラジル議会の中で持論を通すためには、

「ある程度の数」が必要だったわけです。これが「失敗」の

始まりだったとしてもそれ以外の方法を選ぶ時間はなかった

とも思われます。
そしてルーラは「ボルサ・ファミリア」という政策で極貧家庭を

救済し、アフリカ系住民の進学率を上げ、失業率を最小にすることに

成功します。さらに経済力も世界で7位という驚異的な伸び率を
示すのです。民衆にとって生活水準が上がることは、目の前の

喜びであるけれど、国家単位で見ると、その国の経済力の上昇

こそが重要で、そこに世界最大の海底油田が発見されるということが

起きます。

 

ブラジル
出典:IMDb

 

一方ルーラの後継者として指名されたジウマ・ルセフはブラジル初

の女性大統領であり(すごいね、アメリカだってできていないのに)

かつての軍事政権時代ゲリラとして戦った人物でもあったのです。
ここまでが成功して行く状況で、ここからその転落が始まります。
まずはエジプトで起こった「アラブの春」に触発された民衆のデモで、

彼らは「再び民主主義を!」と求めるのです。これは当時、圧政下

でもなかった国民が、自分たちの生活水準のさらなる向上を願って
大きな意味を唱えたわけではないのだと思っています。しかしそれを

利用する政敵が現れるのです。ただ、ルーラ、ジウマ路線が全く

クリーンであったというわけではありません。今までずっと続いていた

企業と政治家の繋がりを、違法な盗聴行為をしてまで告発するのが、

メディアを活用するモロ判事で、この告発を逃れるために、裏で

様々な人々が駆け引きを繰り広げるのです。この件で

「ブラジル民主労働党」から追放されたクナ議員は、労働党入りを

求め、それを拒否されたことから、後のジウマ大統領弾劾の時に、

根拠のない弾劾裁判を承認するんです。思想信条など関係ない、

自らの地位に恋々としがみつくというのはこのようなことを言うん

だろうな。
ジウマ大統領の最大の失敗(といえるのでしょうか)は、金利を下げ、

連立を組んでいた「ブラジル民主労働党」を政権から排除したことに

尽きると思います。富裕層、銀行を敵に回すことは、弱った民主制を
さらに弱体化させ、機能しなくさせてしまう威力を持っています。
終盤に議会前の広場で、ジウマ弾劾賛成派と反対派が赤と青に分かれて

勢ぞろいします。どう見ても弾劾反対の赤色の方が多いのに誰でも

気づくでしょう。「国民の分断」が何を招くか、それは「民主制の死」
しかありえないと感じます。
結局ジウマは弾劾され、ルーラは確固たる証拠もないまま逮捕され、

テメル(ジウマ時代の副大統領)が大統領に就任した後に就任したのは、

かつての軍政を称賛した軍人ボルソナーロです。彼の発言は
ミニトランプと言われるほど過激であり、

「無能な者には暴力で対抗する」

という人物なのです。これが民衆の望んだ未来だったのでしょうか。

国民のためでなく、政治家のため、外国企業のため、市場を維持し、

それは国家機関が都合よく操作できるということを本当に望んでいた

のでしょうか。「ボルサ・ファミリア」の功罪も考えてしまいます。
少しだけ頭をよぎったのは、東西ドイツ統一後、旧東ドイツ出身者が

「オスタルギー」という思いに浸っている老人が存在するという話

でした。あまり関係ないけれど。

 

 

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ビリー・リンの永遠の一日

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ビリー・リーン

出典:IMDb

 

「ビリー・リンの永遠の一日」

原題:Bily Lynn's Long Halftime Walk

監督:アン・リー

2016年 アメリカ映画 113分

キャスト:ジョー・アルウィン

     クリステン・スチュワート

     クリス・タッカー

     ギャレット・ヘドランド

     ビン・ディーゼル

 

イラク戦争で負傷した上官を援護し、敵を倒した

リン特技兵は、一躍英雄となり、彼の部隊は全米で

熱狂的な歓迎を受ける。しかしリンは戦争で負った

心の傷が癒えず次の出征を姉に止められているのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ リンの頬に伝わる涙の意味は、

悲しみなのか絶望なのか恐怖なのかと深く考えてしまい

ます。


故郷ではクズ、戦地では英雄


監督は「ブロークバック・マウンテン」(2005)

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流」(2012)の

アン・リー。
「ブロークバック・マウンテン」はアメリカ中西部を舞台に

したカウ・ボーイ同士のラブ・ストーリーで、とにかく印象

に残っているのが、季節労働者として過酷な作業にあたる

2人の男の姿でした。そこでまさかのラブストーリーが

繰り広げられるとは思わなかったのですが、切なくて、

どうすることもできない胸の内を、大自然と共に描いています。
一方の「ライ・オブ・パイ」はアカデミー賞監督賞を獲得した

大作です。でも今でもやっぱり監督賞も「アルゴ」だったよ、

とずっと心の中で思っている映画です。

題名通り、トラとずっと大海原を漂流する話が描かれ、へえ、

すごい冒険だったんだ、と思うと、ラスト2,3分で

「こんな風にも考えられるよ」

と語られる。さてどちらが真実でしょうか。いや真実なんて

最初から分かっていたのにと思ってしまいます。どこまでも

続く大海と夜に広がる満天の星の美しさ、そして嵐のシーンの

迫力、さらに86%がCGであるトラが全て本物に見えてしまう

ほどの見事な映像でした。
そしてこの映画はイラク戦争中、負傷した上官をただ一人で

助けようとした19歳のビリー・リンを描いています。

イラク戦争はそもそも存在しなかった大量破壊兵器を大義にし、

アルカイダともつながっていると判断したアメリカが始めた

戦争であり、その戦後処理から大きな混乱を招いています。

その戦争には大きな利権が渦巻いていると映画内で語るテキサス

の業者が映りました。
さらにフセインを倒し、民衆を独裁政権から救い、かつ学校を

作り道路を整備した有志連合に対し、イラク国民が感謝しているか

というと全く逆であり、平穏な生活を破壊され、家族を亡くした

憎しみが増すばかりなのです。有志連合側も、民間人の中に

かつての政府軍が隠れていることを疑い、疑惑を持つとすぐに

連行していく。連行されたら戻ってこないと泣いているイラク人母

の姿やその子供の憎しみに満ちた目も映ります。

まさに憎しみの連鎖を招いているのです。
それに気づいているのでしょうか、気づいていないふりをしている

のでしょうか。

 

ビリー・リン
出典:IMDb

 

そしてイラクでのリンの行動が、戦争への関心が薄れている国内に

向けての格好の材料として使われるのです。たった一人で銃撃

された上官を助けに向かい、そして向かってきた敵を倒したリンの

いた第2部隊は、「ブラボー隊」と呼ばれ、全米を回ることになる

のです。今回は次の出征前の日、アメフトのハーフタイムショーに

出演します。リンをはじめとして兵士はいずれも若く、生活のために
入隊した者がほとんどであり、「入隊ボーナス」「保険付き」が

いかに魅力的なのかを知ると、前日に集まった金持ちたちとの格差の

大きさに驚いてしまう。かたやへっぽこチームのスタジアムの年間

シートを買う権利を購入したり、彼らをハマーのリムジンで迎えに

来ることさえおちゃのこさいさいなのです。

そんなこと今頃知ったのかって感じか。
そしてリンにとって「英雄になった日」は彼個人としては

「人生最悪の一日」であり、それを何度もインタビューされるたびに、

その光景がフラッシュバックします。終盤、その時に起きたことが

全て映りますが、「人を殺す」ことが「戦争」であったとしても、

彼の行為は特別に胸に刻まれたもので、それを何度も思い出させる

のは拷問に近いと思う。

 

ビリー・リン
出典:IMDb

 

「戦争は地球の裏側のこと」と語るチアガールのフェイゾンの

言葉はそのままスタジアムで熱狂する人々と同じなのでしょう。

彼らにとって「戦争」はまさに「ハーフタイムショー」の1つに

すぎないのだと感じると愕然とします。そしてアメリカ国歌斉唱

の時にリンが流した涙は、何に対してのものだったのかを考える

とこの映画の深さを実感するのです。

 

ビリー・リン
出典:IMDb

 

リンの上官ブリーム軍曹役が「ワイルドスピード」シリーズの

ヴィン・ディーゼルでした。一目でわかる風貌と特徴のある声です。

 

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ステラー真昼の誘拐ー

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ステラ

出典:IMDb

 

「ステラー真昼の誘拐ー」

原題:Kidnapping Stella

監督:トーマス・ジーベン

2019年 ドイツ映画 89分

キャスト:イェク・ハーゼ

     マックス・ボン・デル・グレーベン

     クレーメンス・シック

 

トムは刑務所で一緒に服役したヴィックの計画通り

ステラという女性を誘拐する。裕福な父親から金を奪い、

悠々自適な生活を手に入れるはずだったが、実はステラ

はトムの元カノだった..。


<お勧め星>☆☆半 なんとも説明不足で冒頭のスリル

だけが楽しかったという映画です。


アリスじゃなくてステラだよ。


2009年イギリス映画「アリス・クリードの失踪」の

リメイクということですが、設定は同じでも、展開や

人物像を変えると全く別物になってしまうという典型例

だと思います。
「アリス・クリードの失踪」はシリーズとして結構好きな

「ディセント」の2の監督J・ブレイクソンが手掛けて

います。

何といってもテンポがいい。チャチャと誘拐準備をし、

チャチャと女を捕まえ、あら、全裸にして着替えをして

しまいます。リアルな排泄シーンもあり、ちょっとそこは..

と思うけれど、しっかり映像化されています。さらに

あっと驚くような人間関係が広がり「ええ〜」と思いつつ、
ラストには余韻が漂っていました。

 

ステラ
出典:IMDb

 

一方今作は、同じくチャチャと準備し、チャチャと女を誘拐

するシーンまでは同じなのに、下着姿でお着換えです。誘拐

されるステラがアリス同様にぽっちゃり女子なのは、なかなか

いい感じ。
また犯人のヴィックとトム(アリス版ではダニー)のうち、

トムがまことにトロくて気弱なのはオリジナルと同じです。

気弱というより、少し思慮が浅いというか、前頭葉が発達して

いないというか、つまり
アホ。

 

ステラ
出典:IMDb

 

あまりにトロいので「おい、こら!!」と何度も画面の中の

トムに向かって怒鳴ってしまいました。
ヴィックとトム、そしてステラの攻防のみが映り、要するに

登場人物3人の映画です。BGMもドキドキするようなものが

流れますが、なんか間が抜けているんです。

刑務所で準備万端にしていた割にはいったいどういう計画だった

のか、一向に見えてきません。見えてこないから思いがけない

展開があるのかと感じますが、そんなわけあるはずないのです。

がっかり。
ステラの家庭環境がどうだったのかは、ただセリフで語られる

のみだし、ヴィックとトムのつながりも弱くて、どうも不完全燃焼

で終わってしまいました。だからラストに納得できないんだよ。

 

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死霊館のシスター

4

JUGEMテーマ:Horror

 

死霊館のシスター

出典:IMDb

 

「死霊館のシスター」

原題:The Nun

監督:コリン・ハーディ

2018年 アメリカ映画 96分

キャスト:タイッサ・ファーミガ

     デミアン・ビチル

     シャーロット・ホープ

     リリー・ボーダン

     ボニー・アーロンズ

 

1952年、ルーマニアの修道院で一人のシスターが

首つり自殺をする。バチカン教皇庁の指示で現地の

調査に向かったバーク神父と尼僧志願生アイリーンは、

その修道院で恐怖の夜を過ごすことになるのだった..。


<お勧め星>☆☆半 怖いけれど途中あくびが出ました。

でもラストはなるほど!


フレンチ=農夫モーリス


それはそれは恐ろしい「死霊館」(2013)は今も

なお1人で見るのに勇気がいる...わけでもないけれど、

ちょっと覚悟がいります。古い屋敷に響くドアの開閉音や

ロッキングチェアーのゆれる音、床板がキシキシと鳴り、

どこからともなくひそひそ声や笑い声が聞こえてきます。

それと暗闇がとても効果的に使われ、悪霊研究家の

ウォーレン夫妻が実際に手掛けた事件が元ネタと知ると、

さらに背筋が寒くなるのです。

その後「アナベル 死霊館の人形」(2014)

「死霊館 エンフィールド事件」(2016)

「アナベル 死霊人形の誕生」(2017)

とアナベルシリーズと死霊館シリーズが続き、
今回のスピンオフ版「死霊館のシスター」となるわけです。

時系列で見ると
1952年 死霊館のシスター
1958年 アナベル 死霊人形の誕生
1970年 アナベル 死霊館の人形
1971年 死霊館
1977年 死霊館 エンフィールド事件
そして、アナベルシリーズはすでに次回作が製作されている

ようです。これらのどの作品も大そううまく作られており、

「はずれ」はないのですが、唯一「アナベル 死霊館の人形」が

「死霊館」を見た直後の作品だったため、少し拍子抜けしたのを

覚えています。想定内の恐怖という感じでしょうか。

(想定外ってどんなものを指すのかちょっと言われへん)
1952年ルーマニアの聖カルタ修道院。高い山の上に

そびえたつ古い建物は、それだけでおどろどろしく感じます。

家の近所に修道院が2つありますが、1つは同じように高い丘の

上にあり、一つは人家が密集する地区にあるのに、高い塀に

覆われていて中が見えません。あれはなぜに塀が高いのでしょうね。

シスターたちは高齢者ばかりで、駅のそばの整形外科で膝や腰の

治療を受けているのをしばしば目にします。
さてこの聖カルタ修道院の「Gods Ends Here」と書かれた

ドアの前に立つ2人のシスターのうち、年配のシスターが若い

シスターに「鍵」を託しその部屋に入っていくと、再び戻る

ことはありません。さらには若いシスターも自ら首をつって

しまうのです。遠くから近づいてくるものはなんでしょうか。

そしてこの修道院に食糧を配達している若者が、カラスに顔を

つつかれたシスターの遺体を発見するのです。
どきり!この映画ではどきり!シーンがしばしば現れるので、

この時点で耐性をつけておくといいと思います。
そしてバチカンの教皇庁から、聖職者の自殺の調査を託される

のがバーク神父です。説明不足のようにも感じましたが、彼は

悪魔祓いの免許を持っているし、実績もあるらしい。さらに

ルーマニアに土地勘があるということで、一緒に連れていく

のが尼僧志願生アイリーンです。これが、ウォーレン妻を

演じたヴェラ・ファーミガの妹タリッサ・ファーミガ。

 

死霊館のシスター
出典:IMDb

 

バーク神父、アイリーン、フレンチで向かう教会は、十字架に

囲まれ、人気のない岩山の上で、周りは不気味な森に囲まれて

いるのです。こんな修道院いやだ。

そして日数が経っているのに、全く乾いていない、いや逆に

広がっている死んだシスターの血痕をまたいで教会内に入ります。

そこからびっくり、どっきり、ギョギョギョの連続。

 

死霊館のシスター

出典:IMDb

 

死霊館のシスター

出典:IMDb

 

さらにそれほど使えないバーク神父とやたらにヒーハー息遣いが

荒く、すぐに悲鳴を上げるアイリーンにイラついて、途中あくびが

出てしまいました。確かに怖がらせ要素はふんだんに盛り込まれて

いるのですが、それがあまりに頻繁に起きると飽きるというものです。
但し、油断大敵なんですよ。ラスト付近は

「おおう、このアイデアというものは想像しなかったわ」

と思い、フレンチが後にウォーレン夫妻と関りがあったと知ると、

やはりよくできた映画だと思うのです。

次も絶対に見よう。

 

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ゆれる人魚

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JUGEMテーマ:Horror

 

ゆれる人魚

出典:IMDb

 

「ゆれる人魚」

原題:The Lure

監督:アグニェシュカ・スモチンスカ

2015年 ポーランド映画 92分 R15+

キャスト:キンガ・プレイス

     マルタ・マズレク

     ミハリナ・オルシャンスカ

     ヤーコブ・ジェルシャル

     シグナムント・マラウッソ

 

1980年代のポーランド。人魚の姉妹がナイトクラブ

のステージにあがり人気を博すようになる。しかし姉の

シルバーがバンドマンのミーテクに恋をしたことから、

妹ゴールデンとの関係に変化が起きてしまう...。


<お勧め星>☆☆☆ ホラーというかファンタジーというか

ミュージカルというかどのジャンルに入るかわからない

けれど、切ない映画です。


どこにも穴がない


アンデルセン童話「人魚姫」にツイストを加えた

ホラー・ファンタジーと紹介しているものが多いけれど、

ミュージカル要素が全編にわたって散りばめてあるし、突然

歌いだすのが苦手な人には受け入れにくい映画なことは確か

です。

アンデルセン童話の「人魚姫」の内容も何やらうろ覚えだし、

ディズニー映画「リトル・マーメイド」も未見です。そもそも

ディズニー映画になった時点で。オリジナルストーリーから

離れてしまうことは簡単にわかってしまう。ダークな部分は

消し去られて「夢」と「希望」と「愛」に満ちた映画に

なったんだろうなあ。(2018年に実写化もされている

けれど、全然見る気なし)
本当のアンデルセン童話を読んでみると、これは私が幼い頃

絵本で読んだものとは異なり、かなり残酷で悲しい話になって

います。尾ひれを足に変えたら、歩くたびにすごく痛いって、

そんな話は書いてなかったはず。さてそれをどんな風に

ツイストしたのでしょう。
冒頭、水の中から岸で歌を歌う男女3人を見つける2人の

女の子?が映ります。彼らの歌に返し歌として送るのが

「決してあなたを食べたりはしない...」。

ここで「ん?」と感じてしまう。この子たちもしかして人間を

食べるのかしら。そしてこの時点でどちらかが、イケメンの

方のバンドマンに恋すると確信します。いやこのバンドマン、

ミーテクがまことにイケメンです。昨年観た「ボヘミアンラプソディー」
のロジャー役を演じた俳優さんに似た感じ。

 

ゆれる人魚

出典:IMDb

 

つまり目鼻立ちがはっきりした金髪の白人男性です。髪の毛や

肌の色は異なれど、岡田将生くんとか高良健吾くんとか

三浦春馬くんとか、城田優くんとか、私の大好きなタイプに

似ている...と思う。
そしてこの二人の姉妹、シルバーとゴールデンは、彼らの

バンドが演奏しているナイトクラブに引き取られるのです。

ストリップすらあるクラブなのでこんな若い女の子が働いて

大丈夫かしら?
といらない心配をすると、おお、最初から二人が全裸で登場します。

でも

「どこにも穴がない」。

バービー人形のような体なのです。そして水をかけると、なんと

いうことでしょう。下半身が尾ひれに変わります。

 

ゆれる人魚
出典:IMDb

 

ところがこの姉妹がそれほど可愛いわけではないのと、尾ひれが

美しくないのです。ファンタジー要素は少ししぼむかな。まあ、

上半身はほとんど露出しているのでこのクラブでは大人気になります。
歌声もきれいだし、ステージ上の水槽に入ると、あっという間に

人魚に変わるのです。人魚が美しくない代わりに、映画内で

しばしば見られるミュージカルタッチのシーンの歌は、美しいもの

ばかりで、後半に登場するパンクロッカー、トリトンの歌以外は、

どれも心にしっとりと染み込んでいくのです。
シルバーとゴールデンのうち、シルバーは初日からミーテクに心を

奪われてしまいます。よく考えるとこの姉妹の年齢はいくつ

なんでしょう。タバコもお酒も初めて嗜むし、体つきもどことなく

幼い感じです。でも彼女たちが隠している秘密は、オリジナル童話の

「人魚姫」とは全く異なるもので、ここはどちらかというと

オカルトっぽいかしら。
映像は夢か現実かわからないシーンが突然入り込んだり、ストーリーが

飛んだりして、かなり戸惑うけれど、最終的には童話に近づいて

いきます。

 

ゆれる人魚
出典:IMDb

 

最初にバンドと一緒に登場する姉妹とボーカルの女性の姿はどう

見ても「ミニスカポリス」ですよね。

 

 

 

 

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迫り来る嵐

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

迫り来る嵐

出典:IMDb

 

「迫り来る嵐」

原題:The Looming Storm

監督:ドン・ユエ

2017年 中国映画 120分

キャスト:ドアン・イーホン

     ジャン・イーイェン

     トゥ・ユアン

     チェン・ウェイ

     チェン・チュウイー

 

1997年、中国南部のある町で連続女性殺人事件が

起きる。現場近くの工場の保安員ユイは、その事件に

強く関心を持ち、同僚リウと共に犯人捜しを始めるが...。


<お勧め星>☆☆☆半 単なるサスペンス映画ではなく

この時代の中国の社会問題も描いています。


醒まさないのはあなたの方


監督は「薄氷の殺人」(2014)のドン・ユエ

(ディアオ・イーナン)。見るからに幸薄そうな女性と、

私生活と刑事としてのキャリアでも失敗をし、酒におぼれた

男が登場する寒くて暗いサスペンス映画です。
でも結構好き。

「白昼の花火」がラストに打ち上げられ、刑事ジャンの

深い胸の内がそれにすべて反映されていたように思います。
そして今回は、廃工場の爆破風景と空から降り注ぐ雪が

主人公ユイの心を描いています。
冒頭、刑務所を保釈されるユイは、遡ること1997年、

国営鉄工場の保安課で働き、同僚たちの信望も厚く、さらに

このところ立て続けに起きる女性殺人事件の現場で捜査に

当たるジャン刑事とも(ここでも刑事がジャン)顔なじみ

なのです。

 

迫り来る嵐

出典:IMDb

 

しかし「立場をわきまえろ」と言われてしまう。とはいえ職場

でのユイ探偵などと言われているので本人はなんとかこの事件

の犯人を見つけたいと思うわけです。

 

迫り来る嵐

出典:IMDb

 

そんなことをしている間に社会が変貌していることに

これっぽっちも気づきません。
1997年という年は、香港がイギリスから中国に返還された年で

あり、今まさに抗議活動で揺れる香港が、中国という国家に

戻されたことが意味するものは、経済面だけでなく人々の心にも

大きな変化を与えていたと考えられます。この映画は中国本土側

から見た香港返還による影響で、その変化に気づかない、もしくは

ついていけない人々を描いており、絶対に混乱していたはずの

社会を直接的には描いていません。

ひたすら降り続く雨、ぬかるんだ道路、流れていく雨水に血が

混じっていく様で、あらゆる面において多くの犠牲を伴って変貌を

遂げて行ったことを意味しているように思えます。
余談ですが、ユイ役のドアン・イーホンがとてもイケメンなんです。

 

迫り来る嵐
出典:IMDb

 

保安員であるユイが模範工員として表彰されるとき、壇上で

スピーチを任されるのですが、その時になぜか上から白いものが

降ってきます。それがラスト2008年にこの地を襲った

大寒波によって降る注ぐ雪と重なり、偽りが現実となっていく

ことを象徴しているかのようです。
また殺人事件に関心を持ち過ぎたことで、1つまた1つと、

大きなものを失っていきます。それが自分のせいだと気づけない

ユイには歯がゆさしか感じません。

 

迫り来る嵐
出典:IMDb

 

そして幾度となく映る陸橋の上に立ち、手すりにもたれるユイの

姿は、時を経て少しずつ変貌します。

「あなたの望みはなに?」と尋ねてくれたイェンズに何も

答えなかったユイ。その「望み」はなんだったのでしょう。
次に待ち合わせる時、そしてラストに映る陸橋の風景は、下を走る

列車を見ただけでも大きく変化したことを感じるのです。
ユイの名前は余と書き、「余分の余だ」と2008年に語るユイの

年齢を重ねた風貌が、全てを悟った彼の姿そのものでした。

 

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ファースト・マン

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JUGEMテーマ:洋画

 

ファースト・マン

出典:IMDb

 

「ファースト・マン」

原題:First Man

監督:ディミアン・チャゼル

2018年 アメリカ映画 144分

キャスト:ライアン・ゴズリング

     クレア・フォイ

     ジェイソン・クラーク

     カイル・チャンドラー

     コリー・ストール

 

1961年から1969年にかけてNASAでは

アポロ計画が進められており、

ニール・アームストロングは、アポロ11号の船長と

して月面着陸をめざすことになる。


<お勧め星>☆☆☆☆ シーンごとの音楽が見事に

マッチしていて、迫力のある映像と人物の心の動きを

同時に見ることができます。

 

月をどこから見るか


1970年の大阪万博の際、アメリカ館に展示してあった

「月の石」は、それが日本に来たというだけでワクワクし、

ほとんど記憶に残っていないけれど、ずいぶん並んで

入館し、その石(確かガラスケースに入っていて遠巻きに

しか見られなかった)を目にしたとき、「黒い小さな塊」

としか思えなかった。それでも「月の石」を見た、という

事実だけで、同級生に自慢できると思って、その後動く

歩道に乗り、チューリップ帽子を買って帰った覚えが

あります。あれ?記憶がよみがえったみたい。
この映画には序盤に大気圏付近でニールが見る月、ふだん

生活をしている時に昼間に見える月、夜に見える月、そして

後半、月面着陸をめざしてアポロ11号に乗船した時に、

宇宙空間で見える月、目前に迫った月、さらには、一歩を

踏み出した時に見える月の表面と様々な月の姿が見られます。

月面付近に到達したときには、逆に地球が目に入ってくるのです。

その美しさやシーンごとの音楽はさすがチャゼル監督と思って

しまいます。

 

ファースト・マン
出典:IMDb

 

一方月面着陸をめざすことは冷戦時代において宇宙開発でことごとく
遅れをとってきたソ連を一気に追い越すための最大のミッション

でもあったのです。幾度となく繰り返される実験は失敗に終わり、
国内では政府だけでなく国民からも反対の声が上がってきます。

さあ、月に行こう!はい月に行きました!アメリカが世界で

初めて偉業を成し遂げたんだぜ、すごいだろう。などという

単純な内容ではないのです。こんなにも多くの人々が犠牲に

なったのかと映画を見て改めて思います。記憶に新しいのは

1986年のスペースシャトル、チャレンジャー号爆発事故で、

発射成功を喜ぶ声が悲鳴に変わった映像を幾度となく見てきました。

 

ファースト・マン
出典:IMDb

 

また宇宙飛行士の家庭、ニールの家族について、娘の病気から

始まり、妻ジャネットの気丈な姿と、家族との時間を犠牲にして

プロジェクトに参加するニールの姿も映り、国と家という全く

違うレベルでのストーリーが同時に展開されていきます。
安定を求められない、普通の暮らしも求められない、華やかに

見える宇宙飛行士の妻たちの姿を描いているのも見逃せません。


ファースト・マン
出典:IMDb

宇宙へ向かう時、窓から見える外の景色、宇宙飛行士のヘルメット

の前面に映る外の姿、宇宙船内の計器のアラーム音や船体が揺れる音

(これがかなり激しい)点滅する明かりなど次々に映像が繰り出されて

いきます。スリルといったら失礼になりますがドキドキするのです。

これこそ現実なんだろうな。
確かに物議をかもした、月面に星条旗を立てるシーンが存在しない

ことに「あれ?」と思いましたが、映画の本筋を考えると、そのことが

大きな意味を持つとは到底思えず、そんなことで騒ぐことがいかに

低レベルのことであるかと実感します。

宇宙は美しい。それに尽きます。

 

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新聞記者

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JUGEMテーマ:邦画

 

新聞記者

出典:youtube

 

「新聞記者」

監督:藤井道人

2019年 日本映画 113分

キャスト:本田 翼

     松坂桃李

     田中哲司

     シム・ウンギョン

     高橋和也

 

東都新聞記者、吉岡エリカのもとに医療系大学新設計画

の極秘情報が記載されたFAXが送信され、彼女は上司の

反対を押し切って取材を進めていく。一方内閣特別調査室

の官僚杉原は、政権に不都合な情報をコントロールする

仕事に追われていた。


<お勧め星>☆☆☆☆ しっかりこの目で見てよく考えよう。


自らを信じ、そして疑え


原案は東京新聞記者、望月衣塑子の同名ベストセラー小説です。

それを聞いただけで、この映画を観るのをやめる人がいると

思いますが、それはとてももったいない事なのです。どんな

考えを持っていてもぜひこの映画を観てほしいと思える

久しぶりの邦画の秀作です。
ただ一点、杉原の妻役の本田翼が、大変残念な演技をしており、

周りが芸達者な俳優の中でとても目立っています。

これはもったいなかったなあ。学芸会かと思ったわ。
そして肝心のストーリーは、ここ数年、世間をにぎわせた

いくつもの事件を同じような形で組み入れ、その取材を中止

せざるを得ない新聞記者の苦悩と、政権にとって不都合な情報を、

逆のものに変えていく内閣特別調査室の内部が描かれるのです。

一日中コンピューターの画面に張り付き、同じようなtweetを

連投していく。この姿には人間性のかけらはなく、与えられた

仕事をただこなしているロボットのようにも思えます。

 

新聞記者
出典:youtube

 

外務省から出向している官僚、杉原は「仕事」として上司の

指示に従うだけの日々を送っており、臨月の妻のそばにもろくに

いられないのです。公務員とはいえ組織の一部であるならば、

与えられた仕事を確実にこなすことが基本であり、そこに自分の

意志は無関係かもしれません。

そしてある時外務省時代に大そう世話になった当時の上司だった

神崎に再会します。実はこの神崎は外務省の不祥事の責任を一手に
引き受け、今は療養中らしい。この神崎役が高橋和也で、疲れた

中年男というイメージにピッタリなのです。神崎は娘の大学進学を

楽しみにし、杉原は第一子の誕生を楽しみにしている、誰もが

普通の幸せを求める一人の人間にすぎません。

 

新聞記者
出典:youtube

 

一方、日本人で記者だった父親と韓国人の母親を持ち、アメリカで

育ったエリカは、強い信念をもって仕事にのぞんでいます。しかし

しばしば新聞社の方針で中断させられ、また小さな記事にしか

できず歯がゆい思いを抱いているのです。
この映画には実在の人物が実名で登場しますが、それはテレビ内の

討論番組としてであり、何かの方向に観客を誘導しようとするもの

ではありません。

 

新聞記者

出典:youtube

 

さらに映画内の「悪」を演じるのが内閣特別調査室長役の田中哲司

のみなのです。彼が誰の指示で動き、その事案に誰がどのように

関わっているのか、一切説明がないのです。そこは観ている側が

想像するのです。あくびしている暇があったら想像しよう。
2時間ドラマのように、取材を進めていくうえで、脅迫状を受け取る

とか、階段から突き落とされるとか、電車のホームで後ろから押される

とか、そんなありきたりの恐怖は存在しません。

逆に言うと、極めて好都合な情報の存在とかヒーローが現れるわけでも

ないのです。
画面が暗転しエンドロールの歌が流れた時、何を感じたか、そして

これから何をすればいいのか、観ている側の自由だと思います。

だからこそより多くの人たちにこの映画を観てほしいと考えます。

 

 

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