クーリンチェ少年殺人事件

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

クーリンチェ少年殺人事件

 

「クーリンチェ少年殺人事件」

英題:A Brighter Summer Day

監督:エドワード・ヤン

1991年 台湾映画 236分

キャスト:チャン・チェン

     リサヤン

 

1961年、台湾。中学受験に失敗した小四は、

夜間中学に入ることになる。そして不良グループの

縄張り争いに巻き込まれるうちに、一人の少女、

小明と出会うのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 久しぶりに長い映画をゆっくり

見ました。様々なシーンの意味を考えてしまう内容です。


手離した懐中電灯


映画の邦題にある殺人事件は、少年が殺害されたかの

ように思えますが、少年が殺人を犯したという意味なの

です。なんかややこしい。英題のA Brighter Summer Day

の方がポイントを上手くとらえていると感じます。
話の大筋は、1人の少年が1人の少女と出会い、周りや

自身の不幸な状況が重なり続けて遂には少女を殺害して

しまうということなのです。ただその背景に1961年

当時の台湾が世界において不安定な国情であり、中国本土

から移住した外省人と元々台湾に住んでいる本省人との
対立もあり、さらにはアメリカの影響を強く受けていた

時代であったことなどが、様々なシーンで映し出されていく

のです。
主人公の小四の家庭は、1949年に中国から台湾に移住した

ものの、昇進しないまま公務員として働く父と元教師で採用を

待っている母、英語が堪能な姉、不良グループに入っているけ

れど実は真面目で弟思いの兄、家族思いの姉、幼い妹が狭い家

にひしめき合って暮らしているのです。小四役のチャン・チェン

は「ブエノスアイレス」(1997)でトニー・レオンの2人目

の恋人役を演じたチャン・チェン。きれいな男性に成長したん

ですねえ。
食事のシーンは昔の日本映画を思い出させ、1つのテーブルに

全員が座って食べるという感じ。食べ終わった小四が入って

いくのは押し入れの下の段です。あれ?このシーン、最近観た

映画であったような...。
押し入れの中で、後に手に入れる懐中電灯を使って何かを

見たり、その明かりをつけたり消したりします。

社会の不安定さは大人の焦りにつながり、それは子供社会にも

波及していて、小四も不良グループ小公園に属しているのです。

対立するのは217というグループ。暗闇の中から突然飛んで

くるボールは目に見えない相手が敵であり、それが何かの脅威

を及ぼしているかのように感じます。

 

クーリンチェ少年殺人事件
 

冒頭の明るい日差しの下に描かれた小四と父の姿は、それが

建国中学入試失敗という結果から夜間部入学に変わると、ほぼ

夜の闇で活動するものに変わります。父はかなりプライドが高く、

多分本土ではインテリだったのでしょう。どこか相手を見下す

雰囲気があり、それは相手の敵対心を買ってしまうのです。

また小四の通う中学の教師たちの理不尽な言動は

「間違っていないのに謝るのはおかしい」

とい父の教え通りに振舞うと、さらに悪い方向に行ってしまう

ことに気づかない小四。全てが中途半端に大人で物事を理解

するのも不十分な少年の心は小明という少女に恋をすると、

これまた自分の中での理想像を彼女に当てはめてしまうのです。

 

クーリンチェ少年殺人事件
 

小明とデートをする時は晴れた昼間の空の下であり、それは

彼の胸の内を表しているかのよう。映画が小四の視点で描かれる

ので、彼が思っていることは理解できるけれど、他の人間の

心の中はストレートには伝わりません。逆に何気なく描く小明の

家庭環境や彼女が発する言葉は、小四が思い描いている小明とは

かけ離れた本質を持っているといつ頃から気づいたでしょうか。
もしかしたら終盤までわからなかったのかもしれません。映画の

オーディションで「泣き」の演技を求められると自然に涙が出せる。

恋人がいてそれはハニーというやけにかっこいい不良。母と

二人で居候生活を送る家庭環境..。
小四はたぶん賢い子供だったけれど、不運にも中学受験に失敗し、

不運にもカンニングを疑われ減点される。ここに弁明の機会は

ないのです。そしてまるでやくざの抗争のように台風の晩に起こる

不良グループへの襲撃事件。ここで使われるのが日本刀であり、

日本統治の歴史も感じます。
同時期に父も中国共産党との関係を疑われ、拷問に近い尋問を

受けることになります。この不遇な身の上はすべて台湾という

国の不安定な情勢に影響されたものにほかならないと思うのです。
小四が恋愛について純粋過ぎて、小明の本質に気づけなかったのか

とも思いましたが、ラスト付近に交わされる2人会話で
「君のことを全部知っているよ。でもいいんだ、僕だけが君を

救うことができる。君には僕だけだ」
「あなたも他の人と同じ。優しくするのは私の愛が欲しいからね。

でも、私はこの世界と同じ。変わることはないわ」
というものがあり、小四の傲慢さは父のみならず外省人の心を

描いていて、逆に小明の言葉は本省人が持つプライドと外省人や

大国への憎しみを描いているのだと感じます。

 

クーリンチェ少年殺人事件
 

この映画では男の友情が熱く描かれており、小猫王がずっと小四を

思い続けていることや、ボンボン小馬も小四だけが友人だと涙を

流すシーンを見ると、小四の一途な思いは一方的だけれど、それは

彼がまだ大人になりきれていなかったということで説明がつくし、

エンドロールに映し出される彼が死刑判決から懲役15年に

変わったことも心の救いになりました。

 

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リトル・ダンサー

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リトル・ダンサー

 

「リトル・ダンサー」

原題:Billy Elliot

監督:スティーヴン・ダルドリー

2000年 イギリス映画 111分

キャスト:ジェイミー・ベル

     ジュリー・ウォルターズ

     ゲイリー・ルイス

 

1984年イングランド北部の炭鉱町はストライキ

決行中である。父と兄は炭鉱労働者であり、ビリー

もボクシング教室に通っているが、たまたま隣で

行われたバレエ教室に心を惹かれてしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆☆ ずっと見たかった映画。

そしてやっぱり見てよかったです。


未来を託すもの


炭鉱労働者は本当に男臭く、極めて古い考え、つまり

男はボクシング、レスリング、女はバレエ、ダンスを

習うものと信じ切っている人々が多いというのは、

私が子供の頃の町の人々の考えと全く同じです。
田舎町でしたのでバレエもダンスもなかったのですが、

男は野球、めんこ遊び、女はなわとび、あやとりと

決まっていて、ピアノ教室に行くのは町でも教育熱心な

家庭の女子だったものです。(かなり古い気がするが

それほどでもない)
炭鉱労働者のストライキを描いた映画は

「バレードへようこそ」(2014)

があり、その中ではその男臭い古臭い炭鉱労働者の組合

支援のために、同性愛者団体が立ち上がるものの、寄付

すら受け付けてもらえず、途方もない苦労をする姿が

明るく描かれてしました。「リトル・ダンサー」でも

主人公ビリーの親友マイケルがゲイであることを映画の

中盤でカミングアウトしています。女子が習うものと

決まっていたバレエに挑戦するビリーと性的マイノリティー

であるマイケルとの絆が一層深まったシーンも見られる

のです。

ビリー役は「崖っぷちの男」(2012)で

サム・ワーシントン演じる主人公の弟でトロいけれど、

それなりに頑張るジョーイを演じたジェイミー・ベル。

 

リトル・ダンサー
 

「スノーピアサー」(2013)でも最下層にいながら先頭を

目指す集団のリーダーを演じていました。あの列車はしかし

不思議な代物だった。
ストライキに明け暮れ、貧しい暮らしにあえぐ炭鉱労働者の

家庭やその活動を描けば、どうしても暗い内容を想像して

しまいます。しかし冒頭から映画にはポップな音楽が流れ、

ビリーがくるくる回転しながら朝食を準備する姿が
とても楽し気に映るのです。ビリーの家の内装も色遣いが

とてもカラフル。おばあちゃんの寝ている部屋の引き戸は

黄色で壁はペパーミントグリーンという感じです。

 

リトル・ダンサー

 

ボクシングのグローブよりバレエに魅力を感じ、ウィルキンソン

先生の指導を受けると、ビリーの持って生まれた才能がどんどん

あふれ出てきます。亡き母やおばあちゃんは「ダンサー」になる

のが夢だった。その血筋をひいているのがビリーなのです。

とはいえ男として生まれたビリーがこの町では炭鉱夫になる

選択肢しかありえません。
一方ウィルキンソン先生は中流家庭でありながら、夫が不況で

自宅待機中かつアル中という不遇な身の上です。それでなのか

持って生まれたものなのか、ものすごく偏屈で怒りっぽいのです。

 

リトル・ダンサー

 

それはビリーの父も同じであり、妻亡きあと、ただの頑固

おやじとなり、口より先に手が出るありさま。父ジャッキー、

兄トニー、ウィルキンソン先生の三つ巴の言い争いは凄まじく、

ビリーは思わず耳をふさぎ家から飛び出していくのです。

その怒りか悲しみかわからない感情もなぜかステップ、ダンス

へと変わっていく姿を見ると、この子は、踊ることで自らの

心情を表現していくことができるのだと実感します。
頑固な父が息子トニーを裏切り、ストを辞めて職場に復帰した

のは、炭鉱夫で一生を終える自分たちとは違う未来をビリーに

託したのだと思うと、目頭が熱くなりました。怒号の中バスで

炭鉱に向かうジャッキーの顔が何とも言えないんです。
どちらの息子も可愛いのにどちらかを裏切らないといけないと

したら、夢を託す存在を生かしたい、それは妻が生きていたら

きっとそう助言したはずだと確信したのですね。ううう...。
一番好きなシーンは、ビリーとウィルキンソン先生が

「ブギを踊ろう」に合わせてダンスを踊る姿です。踊る前に

亡き母が18歳のビリーへ宛てた手紙を、ビリーがすでに開封

し、それを暗記するほど読んでいたことを知ると、このシーンも
泣けるはずなのですが、それがとても楽しい音楽なので涙が

吹き飛びます。すごく好きな映画の1つになりました。

 

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15時17分、パリ行き

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15時17分、パリ行き

 

「15時17分、パリ行き」

原題:The  15:17 to Paris

監督:クリント・イーストウッド

2018年 アメリカ映画 94分

キャスト:アンソニー・サドラー

     アレク・スカラトス

     スペンサー・ストーン

 

幼なじみで親友のアンソニー、アレク、スペンサーは

ヨーロッパ旅行でパリに向かう高速列車の中で、武装

したテロリストに遭遇する。彼らはけがをした乗客を

救護しつつテロリストと対峙することになってしまう

のだった。


<お勧め星>☆☆半 予告編でハイライトは流れていますが、

それ以外の部分が大半を占めているので、かなり予想と

違う展開でした。


神に導かれた道


当事者たちが映画内で同じ役を演じているということで

話題になった作品です。監督はクリント・イーストウッド。

俳優としてはもちろんのこと監督としても素晴らしいことは、

どの映画を観ても感じます。最近のものでも
「ジャージー・ボーイズ」(2014)

「アメリカン・スナイパー」(2014)

「ハドソン川の奇跡」(2016)

はどれをとっても絶対に観る価値のある映画ばかりです。
また2008年映画「チェンジリング」「グラントリノ」は

私の中で心に強く残る映画に含まれています。共和党支持の

イメージが強く、わたしもメル・ギブソンのような熱心な

支持者かと思っていたら、実は政治的に穏健中庸と自称して

いるそうです。製作映画を観てもドンパチ、アメリカ万歳!

という単純なものではないことからも伺えます。特に

「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」(2006)は

日米双方からの視点での硫黄島での戦いを描き、日本からの

視点である「硫黄島からの手紙」では日本人俳優を起用し、

日本について限りなく正しく描写されていて、全く不快に

感じませんでした。

 

15時17分、パリ行き
 

さてこの映画は1人のテロリストを列車内で取り押さえ、

ものすごい数の武器や弾薬を奪ってその行為を阻止する緊迫

した映像が予告編で流れていました。しかし実際は、映画の

終盤に事件が起こるのみで、大半は彼らの少年時代の様子、

学校を卒業後の姿、能天気に遊びまわる久しぶりの再会の

ヨーロッパの旅の様子が映り続けます。そこに時折入り込む

のが、事件当日の映像。この3人の少年時代の様子が終盤を

引き立てているかというと、個人的にはそう感じず、
先の展開が分かっているだけに、学校では問題児だった3人は

サバイバルゲームが大好きだった。年を経てもその友情は

変わらず、一緒に旅行をし、たまたまその列車に乗り込むまでを

延々と見せられるのです。

 

15時17分、パリ行き

 

学校に何度も呼び出される母親やら、転校や父親の元に引き取ら

れることでバラバラになる3人の姿も映り、それでも友情は

続いたということを言いたいのかなと少しダレます。

 

15時17分、パリ行き
 

終盤の事件での対応が上手かったという理由を示すために、

軍隊での訓練風景も映しますが、そこもなんだか中途半端です。

落ちこぼれ→一発逆転 地元の英雄のみならずフランスや

アメリカでの英雄へ という構図が最初からわかってしまいます。

まあ、実在の人物で現存している人たちを描くのだから仕方ない

かもしれない。
列車内で遂に事件が起きた時、3人以外にも手助けをする大柄な

男性がいるけれど、そこはスルー。なんだろう、せっかく終盤

ギリギリまでとっておいたシーンなんだから、もっと緊迫感を

覚えるはずなのに、それが全然起こらないんです。
テロの阻止のためには「危機に瀕した時行動すべき」という言葉は

正しいように思えるけれど、それをしたがために命を落とす人も

たくさんいるわけで、その「行動」の意味もあまりに大雑把な説明

にしか理解できず、なんとも納得のいかない映画でした。
少年時代から軍人を目指していたスペンサーの部屋にはってあった

「フルメタル・ジャケット」(1987)のポスターや

クローゼット内の大量のモデル銃を見た時は、少しゾクリとして

しまったのは確かです。戦争で傷ついた人を助ける前に戦争を

しないという考えを持つことの方が大事なんじゃないだろうか。

 

 

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オオカミの皮をまとう男

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オオカミの皮をまとう男

 

「オオカミの皮をまとう男」

原題:Bajo la Piel de Lobo

監督:サム・フェンテス

2018年 スペイン映画 110分

キャスト:マリオ・カサス

     イレータ・エスコラー

     ルス・ディアス

 

スペイン北部の山奥で狩りをして暮らす男が一人。

彼はオオカミの毛皮を町で売って生計をたてていたが、

町民の一人の勧めで嫁をもらうことにするのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 孤独な男の心の動きが単調な

生活の中に描かれています。


男が欲しかったもの

 

<ネタバレしてます>


いつの時代の話なのか、現代なのか、少し前なのか、

それが全くわからないようなスペイン北部の山奥で

一人の男が暮らしているのです。山奥といっても山道を

登るだけではなく、岩場をロープで上らないと到達でき

ないようなものすごい場所なのです。多分ここには

アマゾンは配送されないと思う。いやそもそも注文する

手段がないじゃないか。

男は誰かと話をすることもなく、鹿狩りをし、自分で

さばいたその肉や飼っている山羊の乳を食事として摂って

いるわけです。どうしてこんな場所に暮らしているのか、

家族はいないのか、それはまったく語られません。
ただ男の家の裏山に幾つかの墓があることから、かつては

男の親たちもいたと思われるのです。

さて、この男がおそらく数日かけて山を下りていくのは、背中に

何枚も巻き付けたオオカミの皮を町へ売りさばきに行く時で、

この姿は「レヴェナント:蘇えりし者」(2015)の

レオナルド・ディカプリオを彷彿とさせます。よく見ると

顔立ちもレオ様の面影があります。

 

レオ様
 

ookami

 

但し、レオ様が身にまとっていたのは死闘で勝ち取ったグ

リズリーの毛皮だったのに対し、この男はオオカミの毛皮

なので厚みが違う。レオ様のいた場所が酷寒の地だったこと

とも比べてもだいぶ違う。
雨が降る中ガラス越しに外から家の中を映す時、そこで何が

話し合われていたのか全く会話はわかりません。しかしその後

男が女を連れ帰ることで、男が嫁をもらったと理解するのです。

 

オオカミの皮をまとう男

 

嫁をもらって男は何か変わったか?孤独な男が快活になったか?

二人で会話をするのか?そこが全然変わらないのですよ。ただ

今まで一人でしていた畑仕事を二人で行い、獣のように関係を

求める姿が加わったのみでしょうか。そしてどうやら妊娠した

らしい女と雪の日に何かを話し合う二人が、これまたガラス

越しに映ります。ここも内容はわかりません。しかしやはり

その前後の映像ですべてがわかるのです。さらにその妻の

遺体を葬った墓から掘り出し、村まで持っていく男。男の

嘆きは彼が黙々とこさえていた木の揺りかごを思いきり破壊

することでこちらに強く伝わるのです。男は感情を表現するこ

とが限りなく下手なのでしょう。
季節は雪で埋め尽くされた外の景色や裏山に咲く花の光景から

伺えます。病気持ちで妊娠していた未亡人を、村人への体裁を

保つために売りつけた妻の父は、怒る男に差し出すのは下の娘。

こんなことあるのかと思うけれど、男はそれに納得するのです。

じゃあなぜ埋葬した妻を掘り返し、この村人の元へ運んだの

でしょうか。一旦埋葬したのは男が妻に対しての愛情を示した

のであり、それを掘り返し、親の元に運んだのは、だました

村人への怒りの表れだったと理解しています。
そしてまた同じように新しい妻と変わらない生活を開始する

わけです。男の食べ方、行動、単調な生活に新しい妻は嫌悪感を

抱き、そして憎しみへと変わっていくけれど、男はまったく

気づかない。鹿肉にかぶりつく姿が本当に汚いんです。それが

後半はいっそう強調されているように思います。

 

オオカミの皮をまとう男
 

同じように畑仕事をする姿、同じように食事をする姿、妻が

妊娠するとそれなりに優しさを見せる男。この姿は前妻の時と

ほとんど変わらないのですが、変わっているのは、今回の妻

には何も引け目を感じる要素がなく、親の命令に従っただけ

ということ。雪の中逃げ出した妻が罠にかかり、凍死寸前の

ところを救い出した男が彼女を温める姿には、人間としての

優しさを強く感じます。しかし、彼が欲しかった孤独を埋める

「家族」は、金のために我が子を売るような親であっても血縁

には勝てず、結局妻に去られてしまう。朝目覚めた時、もしか

したら隣にいるかも?と思って隣を見る男の姿が悲しかったなあ。

そしてまたしても使われることがなかった木の揺りかごを、

今回は手で撫でるのです。今回は手にすることができたはずの

自分の家族を失った原因は全て男にあると考えたからでしょうか。

それとも妻に毒草を飲まされていたことに気づいたからで

しょうか。そこまで憎まれる理由はなかったはずなのに。

最後に映る男の家が要塞のようで、それがそのまま男の胸の内

を表しているようでした。

 

 

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ラッカは静かに虐殺されている

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ラッカは静かに虐殺されている

 

「ラッカは静かに虐殺されている」

原題:City of Ghosts

監督:マシュー・ハイネマン

2017年 アメリカ映画 92分

 

ISによって占領され一方的に首都と宣言されたラッカか

ら、市内の状況をスマホで撮影し、全世界に向けて発信

するRBSSのメンバーは、その活動によって自分の命だけ

でなく、家族の命をも狙われれている。彼らが発信する

ラッカの状況は言葉を失うほどのものであった。


<お勧め星>☆☆☆☆ この事実をできるだけ多くの人が

知ってほしい。関心を持ってほしい。


ユーフラテスの花嫁と言われた街並み


RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)という市民

ジャーナリスト集団は、元は普通の能天気な大学生や数学

教師など特に政治に関心もなく、美しく穏やかな都市

ラッカで暮らしていた人々ばかりなのです。それがまず

「アラブの春」から始まったシリアの内戦により、
アサド政権率いる政府軍と複数の反体制武装勢力がラッカを

巡り戦闘を繰り広げたことで街の様子は一変します。

反政府勢力=シリアの民主化を望む人々、以外にシリア政府

がこのラッカを重要視していなかったことに乗じて、ISが

街を襲撃し、遂に首都と宣言するのです。

 

ラッカは静かに虐殺されている

 

そこからRBSSがISによって厳しく情報統制された中で、

ラッカの状況を発信する活動が始まったのです。ISといえば、

日本人も誘拐され、公開斬首される動画も流されました。

今なお拘束されていると言われるジャーナリストも存在します。

他にも世界各地で起きる無差別テロは、ISの指示もしくは

その思想に感化された者によると言われています。
ISはラッカを首都と宣言した後、この街が美しく、平和で

物が豊富にあるかのような動画を作成したり、戦闘員勧誘の

ためにアクション映画さながらの宣伝動画を流していました。

その出来栄えから、メンバーの中に映像技術に秀でたものが

多く存在し、また情報発信、統制のためにインターネットを

活用する能力にも優れた者が多くいると言われていました。

それは映画内で、RBSSの国内メンバーがラップトップに保存

した映像を捜し出されてISにより拷問、殺害されたことからも

伺えます。

 

ラッカは静かに虐殺されている
 

国内で身を潜めてラッカの状況を伝え映像を送る者、ドイツや

トルコの隠れ家でそれを受信し、世界に発信する者と分かれる

わけですが、トルコにいるメンバーが射殺されたり、国内に

残っていたRBSSのメンバーの家族がISによって拘束、殺害

されるなど、メンバーが死と恐怖と隣り合わせであることが

わかります。新聞などで読んではいたけれど、ここまで脅迫が

続いていたということは映画を観て初めて知りました。隠れ家

を転々とし、父や兄が射殺される動画がネット上にアップされ

てもそれでも活動を続ける彼らの使命感はどこから沸き上がるの

でしょうか。
ドイツ国内でも移民に対し排斥運動が高まり、自国だけでなく、

どこに行っても安全な場所がないのです。冒頭に語られていた、

何も考えず遊びまわっていた大学生が、いかにしてこのように

変貌していったのか、手に取るようにわかります。
彼らには、ラッカでの出来事が世界から忘れられないために、

そしてそれが過去のことではなく、現在進行形であるという

ことを伝え続けていくという使命感に燃えていると思うのです。
ISの首都ラッカが陥落したとはいえ、アサド政権による東グータへ

の凄まじい攻撃と多数の民間人の犠牲者について、日本では

ほとんど報道されないということは驚くばかりです。数名の

戦闘員を倒すために数百人の市民を犠牲にするケースや医療

従事者への攻撃も行われています。
ISの支配下にあった時期、幼い子供がぬいぐるみの人形の首を

斧のようなもので切り落とし、親から褒められて得意げになって

いる姿は目に焼き付いて離れません。たくさん思いを抱きましたが、
まずこの事実について知ってほしい、映画を観終わってからは

そればかり考えて過ごしています。

 

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マウスー終わらない戦禍ー

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マウス

 

「マウスー終わらない戦禍ー」

原題:The Maus

監督:ヤヨ・エレーロ

2017年 スペイン映画 98分

キャスト:アルマ・テルジック

     アウグスト・ヴィトゲンシュタイン

     アレクサンダル・セクサン

 

ドイツ人のアレックスとボスニア人のセルマは

サッカー観戦のため空港に向かう途中、ボスニアの

森で車が故障してしまう。その森にいた2人の

セルビア人男性に助けを求めるが、過去の戦禍を

思い出すセルマと2人の男は反目し合い...。


<お勧め星>☆☆ 現実と回想が混じり合い、とても

わかりづらくなっています。


憎しみは当事者にしか理解できない


「俺を信じろ」「俺が守る」「約束する」「君を

理解したい」ヒロイン、セルマの恋人アレックスが

映画内で再三口にする言葉ですが、これはホラー映画

の定番中の定番のセリフ。でもホラー映画じゃない

んです。どうやらレンタル化された時のジャケットは

森に何か怪物がいるかのようなもので、ジャンルも

ホラーになっていたらしい。

 

マウス

 

そのつもりでこの映画を観たら、そりゃ怒るだろう

星1つののレビューにも納得します。

 

マウス
 

アレックスはドイツ人。かつてのナチスドイツの支配という

闇の時代を経て、東西ドイツに分断、そして統一されてから

28年経ち、おそらくアレックスは統一後のドイツで生まれ

育ち、平和な時を過ごしてきたはず。したがってボスニア人

であるセルマが決して口にしないボスニア・ヘルツェゴビナ

紛争は、歴史の授業で知る程度であり、彼女が2回ほど口に

したスレプニツァの虐殺について詳しいことなど知る機会も

なかったと思われるのです。民族に加え、宗教面でも対立

した時、相手への排除は恐るべき手法を選び、その結果

今なお消えることのない傷跡を心だけでなく、存在そのもの

として残しているのです。少し調べただけでもいくつもの

情報が出てきて、その1つ1つが悲惨という言葉で済ま

されないことばかりです。
ところでそもそも疑問に思うのですが、アレックスとセルマは、

サッカー観戦の目的で空港に向かうために、わざわざボスニア

の森を通り抜けることを選ぶのでしょうか。ほかに道はないの

かしら。

さらに何やら事故を起こし、到底修理できるとは思えない
アレックスが「これは動かないな」と言う。その場所は地雷原

だらけの森で、さあどうやって助けを求めるのかと思ってしまう。

「俺を信じろ」はい、このような言葉を軽々しく言う男性を

信じるとろくなことがありません。

 

マウス
 

そしてその森で出会うのが2人のセルビア人なのです。過去の

記憶がフラッシュバックするセルマとどこまでも相手を信じる

アレックス。この辺りは本当にもどかしい限りです。平和な

時代に生まれ、平和に暮らし続けていると、こうも能天気に

なってしまうのかと鼻で笑ってしまうけれど、実体験がなく、

身内に被害者がいない場合、根拠の乏しい情報だけで自らの

考えを持っていると、きっと体験者からすると本当にあきれ

返るような言葉を発し、行動をしてしまうのだろうなと痛感

します。

 

マウス
 

セルマは紛争の深い傷跡、記憶に悩まされ続けてきた人々

そのものを象徴しているように思え、映画内で登場する

奇妙な妖怪のようなものは、その憎しみ、悲しみの塊なの

かもしれません。憎しみの連鎖を断ち切るのは部外者の力が

必要なのかと思ったら、ラストの1カットで振出しに戻って

しまう。そんな映画でした。

 

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最悪の選択

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最悪の選択

 

「最悪の選択」

原題:Calibre

監督:マット・パーマー

2018年 イギリス映画 101分

キャスト:ジャック・ロウデン

     マーティン・マッチャン

     トニー・カラン

 

寄宿学校の同級生だったマーカスに誘われ、身重の恋人

を残しヴォーンは鹿狩りに出かける。しかしヴォーンが

放った銃弾は鹿ではなく一人の子供に当たってしまうの

だった。


<お勧め星>☆☆☆半 見終わると気持ちが暗くなります。


命の代償


原題のcalibreはアメリカ英語ではcaliberと書く「口径」

という意味の単語。この映画で男たちが手にしている

狩猟用の銃の口径を指しているのでしょうか。主人公

2人のうちマーカス役は「ゾンビ・サファリパーク」

(2015)でヒロインの恋人を演じた

マーティン・マッチャン。確かヒロインは生き残った

けれど、彼はズルしたあげくゾンビに噛まれてそれから...

だったような。もう1人のヴォーン役は「ダンケルク」

(2017)で英国空軍のスピットファイアのパイロット

を演じたジャック・ロウデン。

 

最悪の選択

 

そう言われてもラストのトム・ハーディのパイロット姿

しか思い出せないなあ。さてこの2人はヴォーンが授かり婚

(今はこう言うのよね)をすることになったので、その前に

遊んじゃおうということで、イギリス北部の田舎へ鹿狩り

に出かけるのです。大体、山に向かってよかった映画はないと

思う。「処刑山ーデッド・スノウ」(2009)「フローズン」

(2010)で登場人物が「山でなくて海に行けばよかった」

と言っていたじゃない。でも海に行っても「オープンウォーター」

(2003)や「海底47m」(2017)のようにサメに

襲われることもあるからなあ。旅行はちゃんと下調べをして

計画的に行わないといけません。

この映画の舞台のイギリスってロンドンの街を外れるとすぐに

田舎になって森林地帯や田園風景が広がると聞いたことがあるし、

そもそもお国柄が閉鎖的であり、階級意識が強く残っていると

思っているのですが、今回はそのうちに2つがズバリ当て

はまるのです。
映画の中で田舎町の娘アイオナが、自然あふれてのどかな町を

ほめるヴォーンに対し「この町は全然よくないのよ」という

セリフがあって、その理由を単純にわかったつもりでいると、

終盤、次々に繰り出される衝撃的なシーンによって、よくない

どころか、よそ者に冷酷であり、独自のルールを持っていると

知るのです。ここはものすごく怖い。

 

最悪の選択
 

鹿と間違えて子供を撃ってしまったヴォーン。その子供の

父親がヴォーンに銃を向けるとマーカスは彼を撃ってしまう。

ヴォーンが持っている銃はマーカスのものだし、おまけに飲酒

している。さあどうするか。ここでの決断はマーカスがとても

速いんです。彼の仕事が開発と投資と言っていたけれど、

そこに漂ううさん臭さは最後まで解明されなかったな。逆に

ヴォーンはものすごくヘタレであり、「子どもができたから

結婚してよ」と迫られたようにも思えるほど、意志が弱いの

です。(ここは関係ない)どこかで引き返すべきだったと誰でも

思いますが、人生は「あとのまつり」ということが本当に多い。
個人的にはマーカスには同情の余地はないと考えてしまいます。

といってヴォーンがあれで正しかったのかと考えると、やはり

ラストにヴォーンが浮かべている表情に尽きると思うのです。
少しずつボロが出て、そこから追い詰められていく2人の姿には

ハラハラし通しでした。最後の決断こそ最悪の選択だけれど

他の選択はあったのでしょうか。

 

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万引き家族

4

JUGEMテーマ:邦画

 

万引き家族

 

「万引き家族」

監督:是枝裕和

2018年 日本映画 120分 PG12

キャスト:リリー・フランキー

     安藤サクラ

     松岡茉優

     樹木希林

     城桧吏

     佐々木みゆ

 

東京の高層ビルの谷間にある古い家屋に治、信代夫妻

と息子の祥太、信代の妹亜紀が祖母初枝の年金を頼り

に暮らしている。治は祥太に教えるのは、万引きで

あったが、ある寒い晩、一人の少女が団地の外で座って

いるのを発見し、治は家に連れ帰ってしまう...。


<お勧め星>☆☆☆☆半 見るたびに解釈が変わるような

映画です。中身が濃く奥が深いです。


捨てたのではなく拾った


是枝監督の映画はどれも好きで、

「誰も知らない」(2004)

「歩いても歩いても」(2007)

「空気人形」(2009)

「海街diary」(2015)

「海よりもまだ深く」(2016)

「三度目の殺人」(2017)などを鑑賞して

います。一番好きなのは「海街diary」ですが、美人4姉妹が

みんな好きな女優さんだからという極めて単純すぎる理由で

あり、どの映画も淡々とした中にいくつも考えさせられる内容

が盛り込まれていると思っています。
「万引き家族」を劇場で観たのは公開の翌週であり、

パルムドール受賞作品かつレディースデイもあって、ほぼ満席の

状態でした。観終わってエンドロールになっても誰一人席を

立たず、わたしも今目の前に映し出されたことを頭の中で

まとめきれず、ただ座り続けました。ただ今になって思い返すと、

あの時の感想が一番この映画について自分の心を表している

のではないかと思ってしまいます。それは

「しっかり考えるべき深い映画だ」

ということ。
その後いろいろなメディアやsnsなどで情報を知るたびに

「その通り」「いやそれは違う」と怒りにも満ちた感情すら

湧くのを覚え、つい「映画は観たままの映像を理解すれば

いいものと、その時のセリフ、視線、状況を自分なりに解釈

して想像するべきものがある」などと傲慢なことを発信して

しまい、とても反省しました。
さて、この一家は、一応日雇いで働いている治とパートの信代

の稼ぎで生活していると思いきや、実は祖母初枝の年金が

主な生活費であるとわかってきます。そして治は祥太が日常的

に行っている万引き。「棚に並んでいる物は誰の物でもない」

と治に教わり、祥太も何の罪の意識もなく、そのスキルを

身につけていくわけです。
そしてある凍えるように寒い晩、団地の外に一人で座っている

少女を見つけてしまう。連れ帰った治の後先を考えない行動は、

これまでの人生もそうだったんだろうし、これからもそうなん

だろうと思うけれど、「悪い奴」ではないのです。「あの人、

人はいいと思うんだけど」と「あの人、悪い人じゃないのよ」

とは微妙に違う意味合いを持っている、そんな感じがする男の

ように思えます。
「あんた痩せてるわねえ」「この傷はどうしたの?」

「ほら食べな」ゆり、と名乗る少女に家族がかける言葉から、

今社会問題になっている出来事が目の前に提示されていくことに

気づきます。それがとてもさり気ないし、映画内で特に重く

取り上げられるわけでもありません。ただ信代と風呂に入った

その少女ゆりが、信代が仕事で負った火傷の跡に手を当てた時、

信代はものすごく幸せそうな顔をするのです。安藤サクラを

初めて映画で観たのは「愛のむきだし」(2009)で

カルト教団の信者役であり、ものすごく不気味な女性と

感じたのですが、「百円の恋」(2014)では凄まじい

女優魂を見せつけ、今作では誰も真似ができないような笑顔、

泣き顔、怒りを秘めた顔を見せています。特に終盤の演技は

信代の気持ちが全て自分の体に乗り移ってしまうように感じて

しまうのです。それから忘れていけないのは信代の妹亜紀役

の松岡茉優の演技であり、可愛いだけじゃなく、どんな

汚れた役にも適応できる素晴らしい女優さんになっていくの

だろうと確信しました。
家族の中で隠されていた事実や嘘が明らかになっていくと、

彼らが結びついていたのは単に「生活」のためではないと

わかってきます。

人並みの幸せがほしかったのか?

人並みって何を定義として語るのか。

手に入れられるはずもないものを手にしたかったのか?

それを安易に捨てる人がいるから拾ったんじゃないか。
怒りと嘆きに満ちた気持ちに包まれますが、自分たちの知らない

世界の存在を知ることができた子どもたち、短い期間でも

どうしても欲しかったものを手にすることができた人たちは、

その瞬間は幸せだったんだろうと思うのです。

 

万引き家族

 

刹那的な幸せを求めるのではなく将来を見据えて行動しよう

などと語る人々に、将来の展望以前に明日を無事に迎えることが

できるかを考える人たちのことを理解できるのでしょうか。
細野晴臣さんの音楽がとても耳障りがよく、それも心を穏やかに

してくれる要因の一つになりました。
是枝監督の書き下ろし本も読みましたが、映画を観てから

読んでもいいし、読んでから観てもいい、どちらにしても両方

ともお勧めの作品です。

 

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記憶の夜

3

JUGEMテーマ:韓国映画全般

 

記憶の夜

 

「記憶の夜」

原題:Night of Memory

監督:チャン・ハンジュン

2017年 韓国映画 108分

キャスト:カン・ハヌル

     キム・ムヨル

     ムン・ソングン

     ナ・ヨンヒ

 

二浪中のジンソクは、文武両道の自慢の兄ユソクを

持っている。しかしその兄が雨の晩に何者かに拉致

され、19日後戻って来たものの、その間の記憶が

ない。その日からユソクの様子に変化が見られ、

ジンソクはその秘密を探り始めるが...。


<お勧め星>☆☆ 韓国映画のハズレはあまりない

けれど、個人的にはこの映画は大ハズレでした。


トンネルを抜けるとやはり闇の中


前半は何かがおかしいけれど、それが何なのか、誰なのか

わからず、先の展開を期待してしまいます。
主役のジンソクを演じるのは、カン・ハヌル。少し前に

見たなと思ったら「善悪の刃」(2017)で冤罪で

服役したヒョヌ役を演じていて、端正なルックスなのに、

ふとした瞬間に影がある雰囲気を見せてくれます。

 

記憶の夜

 

そしてその兄ユソク役は「ノーザン・リミット・ライン

南北海戦」(2015)で男前の艇長役を演じたキム・ムヨル。

 

記憶の夜
 

この映画では実際と同じ30分間の海上戦闘シーンが繰り

広げられ、そのリアリティーある映像に手に汗を握りました。
さて、映画は、ある一家の引っ越し風景から始まるのです。

父、母、兄と共に新居に引っ越してきた浪人生ジンソク。

開けてはいけない部屋、そこから聞こえる音、彼が時折見る、
自身が暴行を受ける悪夢。この家に問題があるのか、家族に

問題があるのか、ジンソクに問題があるのか、一切わからない

ままユソクが誘拐されるのです。
そして19日後に突然ユソクが戻って来るものの、誘拐されて

いた期間の記憶が一切ない。が、しかーし、その日から

ジンソクはユソクの行動の違和感を感じ始めるわけです。

あれ?ユソクが引きずる脚が逆。

あれ?こんな夜更けにどこへ行くんだろう。

ところがかなりハラハラする展開の後に「それは夢でした」と

いうシーンがしばしば見られ、これも夢かいな、と思って

いると、おっとどっこい後半はまったく違う展開になります。

いえ、その辺りまで見ると、大体のストーリーが読めてきますが、

いかんせん、大事なところはあまりに短すぎ、どうでもいい

ところは無駄に長いという構成にイライラが増すばかりです。
1つあげると、必死で逃げているのなら後ろを何度も振り返るな、

狭い路地にわざわざ入り込むな、相手が事故を起こしたら、

そろそろとその姿をのぞきに戻るな、ですね。B級ホラー映画

じゃないんだからさー。

 

記憶の夜
 

さらに真相が明らかになってからの展開は、あまりに暗く、

サスペンスというより不幸な者同士の不条理な争いとしか

思えなくなります。涙なんか1滴も出ないんだから。

エンディングの1カットに至ってはさすがにこれはやり過ぎ

だろうと思うばかりでした。

 

 

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クローズド・バル

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

クローズド・バル

 

「クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的」

原題:El bar

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア

2017年 スペイン映画 102分

キャスト:ブランカ・スアレス

     マリオ・カサス

     ジェイミー・オルドネス

     カルメン・マチ

 

マドリードの一軒のバルで、客が外に出た途端一発の

銃弾に倒れる。さらに様子を見に行った客も同じ

ように狙撃されてしまう。店内の客たちは人気の

なくなった街で何が起きているのか恐怖に襲われて

いくのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 先が全く読めす、さらに

見終わってからも考え込む内容です。


バルの中と外は何が違う?


監督は「気狂いピエロの決闘」(2010)

「刺さった男」(2011)などの

アレックス・デ・ラ・イグレシアです。前者はスペイン

内戦やそれ以降の国内の混乱状態をピエロを使って

見事に皮肉っていました。ピエロは、道化師とは

思えないですよね。最近ではホラーの定番になりつつ

あります。最近でもないけれど「IT/イット」(1990)

に始まり「道化してるぜ」(2012)「クラウン」

(2014)「IT/イット ”それが見えたら終わり”」

(2017)などあの顔を見て笑う子供がいるのだろうか、

誕生日パーティーにわざわざ呼んで、一向にやって来ない

から父親自らピエロに扮したらそれが脱げなくなるん

じゃないか、(「クラウン」ね)そんなことしか思い

浮かばなくなりました。しかし「気狂いピエロの決闘」

はホラーではなく、1人の女性を取り合うはずが、多く

の物を失い、破壊し、自らも傷つけ、結局取り返しの

つかないラストを迎えるというまことに悲劇的な内容です。
後者の「刺さった男」は、文字通り鉄の棒が刺さった男

を巡る周囲の人々とその男自身の思惑を極めて滑稽に

描きつつ、ラストは、人の不幸を売り物にすることは

人間の尊厳を踏みにじる行為であると痛感させられる

のです。どちらの映画もメッセージ性が強い。
さてこの映画はどうでしょう。マドリードの交差点に

ある1軒のバルに取り残された?いや、たまたま

居合わせた人々の悲劇を、やはりコミカルな要素を入れ

つつ描いています。オープニングクレジットの背景に

何かの菌が増殖していく姿が映し出され、ものすごく
気持ち悪いのと同様に何の意味があるのだろうと思って

いると、その意味に気づくのは映画が始まってかなり

後です。とにかくなぜ外に出た客が突然射殺されたのか?

そしてその男を確かめに行ったもう一人の客もなぜ狙撃

されたのか?さらに遺体が無くなっているのはなぜか?
「なぜ」の連続で、菌のことなど微塵も思い出しません。

 

クローズド・バル

 

店の中では、バッグに爆弾が入っているだの、銃を持って

いるのはなぜかだの、見知らぬ人々同士が互いを疑い合う

醜い姿が見られ、さらに極限状態が進むと、それが

エスカレートしていく一方なのです。

 

クローズド・バル
 

外には装甲車が出現し、防毒マスク姿の人間が何やら燃やし

始める。ここに来てピンとくるわけですよ。あ、客も同じ

だった。ピンと来るポイントが同じなんて!そういえば冒頭に

トイレに駆け込んできた客がいたし、その男は、トイレ内

でものすごく膨らんで死んでいます。ここからは、日頃

親しくしていた人間同士でも、自分の安全のために仲間

割れし、助け合っているように見せておいて、実は欺こうと

する人も出現して、これでもかと人間のエゴ丸出しの姿を

見せつけていきます。

 

クローズド・バル
 

さらに「銃」という武器を持つことによって、立場がくるくる

変化していくのも、端から見ていると本当に虚しい限り。

登場する中でただ一人若くて美人のエレナが、下着姿に

なり体にオリーブオイルを塗って、下水溝に降りていく姿は

かなりエロティックですが、その姿に鼻の下を伸ばす男たち

を見ると、こんな状況でもスケベ心が消えないのかと、

ハリセンで頭をはたきたくなります。
結局何も知らないまま命を落とした人たちの不憫さと、

その出来事が一切伝えられず、見せかけのニュース映像や

報道を信じることへの恐怖を痛感するのみでした。

 

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