ハーフネルソン

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JUGEMテーマ:洋画

 

ハーフネルソン

 

「ハーフネルソン」

原題:Half Nelson

監督:ライアン・フレック

2006年 アメリカ映画 106分

キャスト:ライアン・ゴズリング

     シャリーカ・エップス

     ステファニー・バスト

     セバスチャン・ソッツィ

     アンソニー・マッキー

 

ブルックリンで公立中学の歴史教師をしているダンは、

夜はバスケットのコーチもしている。しかしある日、

トイレでコカインを吸っているところを、教え子

ドレイに見つかってしまう..。


<お勧め星>☆☆☆ 何はともあれライアン・ゴズリング。


1人では非力、1人では孤独


ライアン・ゴズリングが大好きなので出演している映画は

ほとんど見ていると言っても過言ではありません。
「完全犯罪クラブ」(2002)で初めてライアン・ゴズリング

を見たと思うのですが、内容を全く覚えていません。
「きみに読む物語」(2004)はライアン・ゴズリングと

レイチェル・マクアダムスの共演のラブストーリーの王道です。

「君はいつも戻ってきた」の一言に、ラブストーリーなんて

ちゃんちゃらおかしいわ!と思っていても号泣してしまいました。
「ラースと、その彼女」(2007)「ブルーバレンタイン」

(2010)と続き、「ドライヴ」(2011)では逃がし屋を

している寡黙な男を演じ、わたしのハートをわしづかみにして

スクリーンの向こうへ、いや、レンタルDVDとして返却され

ました。一時期PCの壁紙や携帯の待ち受けはこのライアン一色

だったものです。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」

(2012)「オンリー・ゴッド」(2013)等を経て遂に

壁紙を一新する作品「ラ・ラ・ランド」(2016)登場です。

劇場で複数回鑑賞することはほとんどないのに、それでも飽き

足らずBlu-ray購入し、サントラも購入しました。友人によると

「あのネズミ顔の男の人のどこがいいの?」だそうで、心の中で、

「あなたのダンナはゲーハータヌキだろう!」と言い返したいのを

ぐっとこらえました。

そのライアン・ゴズリングがアカデミー賞主演男優賞にノミネート

された作品がこの映画です。この映画でも悲しい顔、寂しい顔、

はにかむような笑顔と女心をくすぐる表情を随所で見せています。

 

ハーフネルソン
 

ブルックリンで公立中学の歴史教師をしているダンは、指導

すべきこと内容ではないことを教え、生徒には人気があるの

です。また彼自身、自分が教えている「対立理論」というのが、

学校から教えるように言われている「公民権運動について」

よりも、ずっと生徒のためになると考えているらしい。

ブルックリンの貧困層が多い黒人が通う公立中学で「公民権」

について教え込むのは、彼らが苦難を経て手に入れたこの

権利を脅かす犯罪行為に走る少年少女がいかに多いかという

ことでしょうか。授業では生き生きしているダンも私生活では

コカイン中毒者であり、GFはすでに更生し、他の男性と婚約

している。しかし自分は更生に失敗し、今この状態にいると

いう泥沼から抜け出せない境遇に深い孤独と焦燥感を覚えて

いるようです。
映画の後半で、彼が行くのを避けていた自分の実家が映るの

ですが、父は極端な白人至上主義者であり、母親と弟も特に反発

していないのです。つまり彼が学校で教えようと考えていた理論は、

自分の家庭環境への反発であり、社会への反発であり、

ささやかな抵抗でもあった気がするのです。

 

ハーフネルソン
 

その彼がトイレでラリっているところを生徒のドレイに

見つかってしまいます。ドレイはシングルマザーの家庭で、

母は働きづめだし、兄はドラッグ関係で収監されているのです。

おそらくは彼女はとても賢く、この境遇でなければもっと

高等な教育を受けるチャンスがあるはずなのに、そんなことは

夢のまた夢。この2人の奇妙な友情は互いの孤独を埋める目的

だというほど深いものではなく、寂しい時間に側にいるという

だけで自然と落ち着くような感じになるものではないのかなあ。

何かを禁止したり押し付け合うことのない少しだけ和らいだ

空気感を漂わせることができる相手。

 

ハーフネルソン
 

しかし遂にドラッグ販売を手伝ってしまったドレイが、その

ドラッグを届けた先にいたのがダンなのです。互いの最後の砦、

つまりダンはドラッグを吸っているけれど、それを買う姿を

見られたくなかったし、ドレイは兄の友人で売人のフランクの

手先として動いている姿を特にダンに見られたくなかったの

でしょうね。

 

ハーフネルソン
 

ラストはダンの自宅のソファの両脇にちょこんと座る2人が

映ります。全く違う立場であり、境遇であるけれど、最低でも

「孤独」ではなくなった証であり、これからどう転ぶか予想も

できないけれど、少しだけ希望が持てるものでした。

ちなみに「ハーフネルソン」はプロレスの技の1つで「羽交い締め」

を表すそうです。ダンの状況を物語っているのかな。

 

 

 

 

 

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はじまりの街

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JUGEMテーマ:洋画

 

はじまりの街

 

「はじまりの街」

原題:La vita possible

監督:イバーノ・デ・マッテオ

2016年 イタリア=フランス映画 107分 

PG12

キャスト:マルゲリータ・ブイ

     バレリア・ゴリノ

     アンドレア・ピットリーノ

     カテリーナ・シェルム

 

ローマに暮らすアンナは夫のDVから逃れるため、

息子のヴァレリオと友人カルラが住むトリノへやって

来る。初めての場所になじめないヴァレリオは、夜の

サイクリング中に街娼を見かけ、心を惹かれていくが...。


<お勧め星>☆☆☆ 人生を切り替えるチャンスはいつ

でもあるのだと実感します。


何があっても人生は素晴らしい


冒頭、サッカーの試合の話をしながら帰る2人の少年うち、

ヴァレリオが自宅へ戻ると父が母に暴力をふるっており、

彼は思わず失禁してしまうのです。

 

はじまりの街

 

女性に暴力を振るう男性は個人的には最低だと思っている

けれど、ある時男性に

「僕は妻に言葉の暴力を受けているんだ」

と聞かされたことがあって、暴力は肉体的なものだけを指す

のではなく、精神的なもの、特に「言葉」の暴力は肉体的な

ものと寸分の変りもないダメージを与えるのだと実感しました。

いや男性の怒鳴り声も思わずビクリとなってしまうな。けれど

ニコニコ笑っているだけの毎日って本当に難しい。
この母親アンナは、幾度となく夫にDVを受けているらしく、

二人は彼女の友人カルラがいるトリノへ逃げていくわけです。

 

はじまりの街

 

この映画の登場人物は、DV夫でも息子のために許すべきか

(これ何度めだろう)悩むアンナと13歳の多感な少年ヴァレリオ、

普通の感覚とはかなりズレていて、少し幼稚に思えるカルラ、

家の前のビストロの主人マチュー。

 

はじまりの街

 

マシューはフランス人であることと、かつて起こした交通死亡

事故の件で嫌がらせを受けている元サッカー選手です。さらに

暇つぶしに夜のサイクリングに出かけたヴァレリオが心を惹か

れる街娼ラリッサ。

 

はじまりの街

 

これね、一目でその仕事がわかるし、ヴァレリオだって知らない

はずもない年齢なんですが、なぜか心を惹かれるんです。ここは

かなり謎。後半彼女と遊園地デートした後に、彼女の仕事の現場を

目撃すると、ヴァレリオは大泣きするんですよ。13歳ってそう

いう年頃なんだろうか。
ヴァレリオが孤独に耐えているのと同時に、母アンナは、慣れない

仕事と息子の反抗と、空気の読めないカルラとの生活に疲弊して

いくのです。そうそうセクハラ演出家?もいました。幾つもの出来事

が起きるけれど、その中で一番好きなものは、傷心のヴァレリオが

放置していた自転車に、しっかり鍵をかけておいてくれたマチューの

優しさです。人間は優しさの積み重ねで生きていくのだなと思って

しまいます。時にはそれが「おせっかい」だったり「鬱陶しい」と

感じるけれど、それでも優しい心を受け取ると、それが他人への優しさ

につながっていくと思うのです。そんなことを考えていても、やはり

終盤の急展開はちょっと説明不足感が否めません。急にサッカーに

誘いに来る近所の少年たちは、何を見て誘おうと思ったんだろう。

まあそこはいいか。
気球が上がっていくシーンとそこで流れる明るい歌で、人生はいつも上昇

することができるのだと実感する映画です。

 

 

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灼熱

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JUGEMテーマ:邦画

 

灼熱

 

「灼熱」

原題:Zvizdan

監督:ダリボル・マタニッチ

2015年 クロアチア=スロベニア=セルビア映画 

123分 R15+

キャスト:ティノナ・ラゾビッチ

     ゴーラン・マルコビッチ

     ニベス・イバンコビッチ

     ダド・チョーシッチ

 

1991年クロアチア人とセルビア人の対立が深まる中、

アドリア海に近い村でクロアチア人のイヴァンとセルビア人

のイェレナは、2人で街へ逃げようと計画していた。

しかしイェレナの兄によって彼女は連れ戻されてしまう...。


<お勧め星>☆☆☆☆


愛は普遍的なもの


私個人から見ると、クロアチアとセルビアという国はイタリア

の東辺りにあって..くらいにしか印象がないのですが、

クロアチア人とセルビア人がたびたび対立してきたことは、

歴史や近年のニュースなどで知ることができています。
それでも遠い国、というイメージしか持てないのです。
映画のストーリーは三部作で、それぞれ民族紛争を背景に

して、ある若い男女のカップルの姿を描いていきます。

 

灼熱
 

まず1991年、イェレナ(セルビア人)とイヴァン

(クロアチア人)。恋人同士だった2人は、激しさを増す

民族対立を避けて街へ向かおうとするものの、イェレナの

兄サーシャによって阻止されてしまう。完全に非暴力で

トランペットを吹き続けるイヴァンの姿は強く心に残ります。

太陽が真上にあり、日差しがさんさんと降り注ぐ中での悲劇。

 

灼熱
 

次は2001年、クロアチア紛争後、復興に取り組む政府も

セルビア人に対しては消極的であり、ゾルカとナタシャ母娘は、

すっかり破壊された自宅へ戻って来るのです。荒廃した街並みや

銃撃、爆発の跡がその凄まじい戦禍を物語ります。そして家の

修理に訪れるのがアンテ。セルビア人である母娘は兄を

クロアチア人に、クロアチア人であるアンテは、父をセルビア人に

それぞれ殺害されており、紛争は終結したとはいえ、互いの胸の

中にくすぶり続ける憎しみは決して消えることがないのは、

ナタシャの態度で一目瞭然なのです。しかしどちらが悪いと

一方的に責めることで何かが解決するのだろうか。修理が終わる日、

アンテとナタシャは関係を持つのですが、ナタシャは

「これで終わりよ」と冷たく言い放ちます。紛争がなければ、恋を

したかもしれない、いや紛争がなければ出会うこともなかったのか。

沈んでいく夕陽が草原を赤く染めていきます。

 

灼熱
 

時を経て2011年。平和を取り戻したクロアチア国内で、

久しぶりに故郷に戻ってきたルカは、民族の違いで母親に

引き離されたかつての恋人マリヤの家を訪れるのです。平和を

取り戻したとはいえ、人々の心の中に差別が残っていることは、
2人が引き離された現実から知ることができます。さらに彼ら

には子供がおり、一度は拒絶したルカをマリヤは受け入れるかの

ごとく玄関扉を開けたまま、家の中に去っていくのです。
つまり小さなレベルでの和解が進んでいくことを意味し、それが

民族の対立を和らげていくのだと意味しているような気がしました。
三部作の男女はいずれも同じ俳優、女優が演じており、時代や

環境が異なっても、変わらずに存在するのは「愛」だと、とても

単純なことですが、大切なことを訴えます。但し2人がかなり

印象的なルックスなので、一目で同一人物だとわかり、敢えて

そういう設定にした監督の思いをどうとらえたらいいのか悩んで

しまいました。また必ず登場する黒い犬と海。

 

灼熱

 

すべてを見ているのが犬であり、海は誰もを同じように包み込み、

浮かばせ、潜らせる。第三部では、朝陽が昇るシーンが見られる

ことで、この長い対立にも夜明けが来ていることを意味していた

ような気がします。
「政治も過激な国家主義もけっして勝者はいないが、人間の

本質に備わる愛の力はすべてに勝る」監督自身の言葉です。

心に深く刻みたいと思います。

 

 

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静寂の森の凍えた姉妹

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

静寂の森の凍えた姉妹

 

「静寂の森の凍えた姉妹」

原題:Grimmd

監督:アントン・シグルズソン

2016年 アイスランド映画 105分

キャスト:マルグレート・ビルヒャムズドッテイル

     スベイン・オラフルグンナルソン

     ピエトゥル・オスカル・シグルドソン

 

アイスランドの森で幼い姉妹が遺体で見つかる事件が

発生する。警察は殺人事件として捜査を開始するが、

容疑者の一人は担当刑事エッダの弟であった。


<お勧め星>☆☆半 全編にわたって寒々しい映像が流れ、

霧の中に迷い込んだような感じを受けます。


容疑者が多すぎる


アイスランド映画というと3作品しか見たことがなくて、

1つは「湿地」(2006)です。これはアイスランド、

デンマーク、ドイツ合作なので、純粋にアイスランド製作

映画では「レイキャビク・ホエール・ウォッチング・マサカー」

(2009)と「ひつじ村の兄弟」(2015)のみかも

しれません。「湿地」は原作が大変面白く、アイスランドと

いう島国が持つ特徴にストーリーを上手く重ね合わせたもので

あり、予想できない展開でまさに一気読みしました。映画

ではかなりはしょった部分が見られ、原作の複雑な人物像や

その背後関係などはかなり薄味になっています。

「レイキャビク・ホエール・ウォッチング・マサカー」は、

なんと懐かしい裕木奈江さんが出演しているものの、内容

はB級映画という感じ。特に怖くないし、こだわったという

BGMもそれほどのことはありません。はっきり言って
なんでこんな映画を作ったのかしら?と思う内容です。

「ひつじ村の兄弟」はさすがカンヌ映画祭「ある視点部門

グランプリ受賞だけあります。アイスランドにおける羊の

重要さと兄弟の姿をシリアスさとコミカルさを上手く混在

させて描き、予想外のラストになっていました。
どの映画もとにかく「寒そう」というのが共通項です。
さて、この「静寂の森の凍えた姉妹」は、やはりどんよりした

曇り空の下、雪が残る寒々しい景色がどこまでも広がって

います。そしてヘルズモルクという町で見つかった幼い

姉妹の遺体、警察の捜査線上に浮かぶ数名の小児性愛者、

その中に担当刑事エッダの実弟アンドリがいる、という展開が

中盤まで描かれていきます。しかし他の容疑者がどれも

これも怪しすぎるし、エッダが犯人と主張する人物もいたり

して、どうも事件のポイントがずれていくのです。警察の

捜査も極めて適当で、まるで韓国映画内の警察の姿を見て

いるように感じます。怪しい人物を幾人かピックアップして、

見る側をミスリードしていくのではなく、たくさんのピースを

まき散らかしたあげく、それを回収するどころか、さらに

バラバラにしていくみたい。

 

静寂の森の凍えた姉妹

 

たとえば、エッダにしてもロフトルという男に固執するけれど、

それはかつで2度逮捕されたのに、裁判で無罪になってしまった

悔しさからとしか思えないのです。特別な関連性があるわけ

でもない。また被害者の母ファンティに何か隠し事があるかの

ように映るけれど、それも重大な意味を持つわけではないのです。

 

静寂の森の凍えた姉妹
 

そしてこれまたあちこちにフェイントを掛けすぎで、その連続は、

ストーリーへの集中力を途絶えさせる大きな原因になっていると

思います。エッダともう一人の刑事ヨイとの確執の原因もわから

ないし、それにとどまらず、他の人物の説明がほとんどないので、

顔すらも覚えきれません。あ、覚える必要ないか。
ラストには「はっ」となりますが、どう見ても逮捕された人物が

真犯人でないことはわかっているので、やっぱりね〜と思うくらいです。
惜しい。もうちょっとですごく面白くなったのに、本当に惜しいです。

 

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妻よ薔薇のように 家族はつらいよ 3

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JUGEMテーマ:邦画

 

家族はつらいよ3

 

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ 3」

監督:山田洋二

2018年 日本映画 123分

キャスト:橋爪功

     吉行和子

     西村まさ彦

     夏川結衣

     中嶋朋子

     妻夫木聡

     蒼井 優

 

平田家の長男の嫁史枝がうたた寝をしている間に、

家に空き巣が侵入する。そして盗まれたものの中に

冷蔵庫に隠した彼女のへそくりがあったことから、

夫幸之助に叱られ、彼女は遂に家出をしてしまう。
日頃家事を一切史枝任せだった平田家は大騒ぎに

なってしまうのだった。

 

笑いの中に隠されたもの


「家族はつらいよ」シリーズ第3弾を一般公開に

先駆けて行われた試写会で鑑賞してきました。当日は

山田洋二監督ご本人のトークショーもあるということで、

最前列中央かぶりつき席にて、首を45度に傾けること

2時間超。
実は1,2をどちらも見ていて、登場人物をしっかり

把握しており、かつ自分の好みの映画ではないと散々

文句を書いてきたシリーズです。
1では、結婚50周年を迎える平田夫妻(周造、富子)

に巻き起こる熟年離婚騒動、2では、その周造が免許返納を

巡り、家族を巻き込んでの大騒動を取り上げ、いずれも

一家全員が集まり知恵を絞って問題を解決して大団円と

なります。もちろんすったもんだの連続でドタバタコメディ

要素もたっぷり。それがなんとも歯がゆいというか、現実

離れしているというか、こんな家族は昭和でも珍しいもの

だったと感じたものでした。
さて、3も同じように事件が起きるのです。そして今回の

主役は、長男幸之助と史枝夫婦。幸之助は周造と同じく、

仕事人間で家庭のことは一切顧みないにもかかわらず、

家計は自分が握っています。給料から毎月の生活費を史枝に

渡すというまあ、今ではめったに見ない光景を見せられます。

大体現金で渡すというのはいつの時代のことなんだろう。

さらに彼女は完ぺきな専業主婦で、習い事の一つもせず、
友人とランチを楽しむわけでもなく、日々食事を作り、弁当を

作り、家族を送り出すと、さあ家中の掃除開始となるわけです。
あ〜あ、あり得ないことだらけ。それでも周囲の観客の多く

からは「うん、うん」「そうよね〜」などという頷く声が

聞こえ、時折大爆笑も沸き起こるのです。多分、自分たちの

世代では、どれもこれも経験してきたシーンばかりなのでしょう。
終盤のお決まりのしんみりシーンでは、鼻水をすする音も

聞こえます。ここは泣きどころか、と思い、瞬きをしない

ままいると、なぜか涙がポロリ。これは本物の涙じゃないのか!
そんなこんなで予定調和の世界を見せられ終了。ところが監督が

登場してトークが始めると、今までの考えが一変します。
「みなさん、こんな家族は幸せだよ、と思うし、今どきこんな

家族はいないと思うでしょう?」
と観客に語り掛けたのです。そうなんです。平田家に起きて

きたこと、そしてこれから起こるであろう、いや、必ず起きる

はずの出来事は、厳しいものばかりなのです。それを敢えて

笑いに変えて描いていることに気がつくのです。考えてみれば、

辛いシーンもとことん辛くは感じられないのは、亭主関白の

周造も幸之助も、心の底には優しさを持ち合わせていることを

最初から知っているからなのです。
物事をそのまま描くだけが映画じゃない。明るく楽しく笑って

過ごせる時間を持つのも映画の醍醐味だと思います。そこから

少しでも活力を得られたなら、この映画を観た価値があるという

ものですよね。
お土産は、なぜか、丸美屋ののりたまと釜飯の素、麻婆豆腐中辛

でした。どこかにこれらが使われていたかな?
とにかくこの世界観を楽しんでほしいと思います。お勧めです。

 

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エクストーション 家族の値段

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

エクストーション

 

「エクストーション 家族の値段」

原題:Extortion

監督:フィル・ボルケン

2017年 アメリカ映画 103分

キャスト:アイオン・ベイリー

     バーカッド・アブディ

     ダニー・グローバー

     ベサニー・ジョイ・レンシ

 

医師のケビンは妻ジュールズ、息子アンディと休暇を

過ごすためカリブ海を訪れる。彼らはボートを借り

クルーズへ出発するが、無人島に立ち寄った後、

エンジンの故障でボートが動かなくなってしまうの

だった..。


<お勧め星>☆☆☆半 スリルはあるけれど、なんだか

主人公に同情できない映画です。


海洋アクティヴィティには要注意

 

 

ネタバレしています。

 


extortion=ゆすり、強要
この原題といい、邦題の副題といい、どうもいまいちです。

そうじゃないんです。主人公一家があまりにアホだったん

です。あ、それでも映画のテンポは速く、ハラハラしつつ

同時にイライラもします。
カリブ海へバカンスに出かけて大変な目に遭うのは

「オープン・ウォーター」(2004)。ちゃんとツアーに

参加したのに、現地の船長の適当な人数チェックでサメが

泳ぎ回る海に取り残されてしまう夫婦の姿は何が怖いって

大海原では、誰も気づいてくれないということ。遠くに

大きな船が通りかかっても見えないということ。

「Help!」という声がただただ虚しく響くのみでした。
また「海底47m」(2016)はメキシコを訪れた

イギリス人姉妹がろくでもない「シャークダイビング」に

誘われて、止めとけばいいのに参加しちゃう。当然そこで

起きる出来事は、サメがアターックする連続..いやそうでも

ないか。酸素が不足するんだったな。とにもかくにも中南米

での海洋ツアーは正規に申し込んでも危険だし、甘言に

のって怪しい業者に申し込んだらえらいことになると肝に

銘じてしまいました。多分行くこともないけれど。
しかしこのケビンは妻ジュールズ、息子アンディとの

水入らずの休暇で大失敗を冒すわけです。「金がものをいう」

なんて近所のじいさんに言われたもんだから、最初から

現金をバラまいて、ホテルの部屋をアップグレードしたり、
息子の願いの水上バイクを借りるため「余分に払う」と言う。

 

エクストーション

 

この態度は見ていてとっても不愉快極まりない。観光で

国の経済が成り立っているとしても、観光客と現地の人との

格差が大きすぎるのです。その辺りはスルーして見ていると、

ケビンは怪しい業者にボートを借りてしまう。どう考えても

危険ですよ。現金払い、船は返さなくても保険に入っている

からいい、免許の確認もなし。うまい話には気をつけないとっ!
そして当然のごとく立ち寄った無人島から戻ろうと思っても

エンジンがかからないのです。映画はそこでのサヴァイヴァルか

と思ったら、それはトム・ハンクスの「キャスト・アウェイ」

(2000)で、彼らはそんなことは考えず、なんとか戻ろうと

試みるのです。2晩そこで過ごし、遂に海へ出るけれど、結局

違う無人島に流れ着いてしまう。ここで親切にも地元の漁師が

見つけてくれて...。ここからが本題なんですよ。この漁師の一人は

「キャプテン・フィリップス」(2013)でソマリア人海賊を

演じたバーカッド・アブディ。

 

エクストーション
 

この人は一度見たら絶対に印象に残る俳優さんです。そもそも

金をバラなくのが米国人という考えが根底にあるのに、アホな

ケビンは「僕は医者でお礼はいくらでも払う」なんてペラペラ

話すんです。その後は想像通り、妻子を人質に取られ、大金を

奪われ、さらには海に沈められてしまう。こんな不条理なことは

あっていのかとも思うけれど、その後のケビンの行動はもっと

過激すぎます。

 

エクストーション

 

妻子の命のためには、現地警察もアメリカ大使館員も無視する

というのは、気持ちはわかるけれど全然納得できませーん。

ストーリーもアメリカ映画ではほとんど死ぬことのない子どもが、

現地の子供は死んでしまう。それもこれもケビンのせいなんですよ。

だいたいだね、前もってボートを予約しておかないから
いけないんです。「命の価値は同じ」という言葉が本当に軽く

感じられる映画でした。それにしてもケビンは、殺人(正当防衛?)

やら警官の銃を奪うやら、他人の最新鋭ボートを盗むやらで、

どれだけの罪になったんだろうか。それを知りたかったけれど、

映画は終わっちゃったなあ。なんだかとっても中途半端です。

 

 

 

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未来を花束にして

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JUGEMテーマ:洋画

 

未来を花束にして

 

「未来を花束にして」

原題:Suffragette

監督:サラ・ガブロン

2015年 イギリス映画 106分

キャスト:キャリー・マリガン

     ヘレナ・ボナム=カーター

     ブレンダン・グリーソン

     アンヌ=マリー・ダフ

     メリル・ストリープ

 

1912年、ロンドンで洗濯女として働くモードは、

街で女性参政権要求の抗議行動をする婦人たちを目に

する。そして彼女は友人の代わりに公聴会で証言する

ことになるのだが、それをきっかけに彼女自身も活動に

賛同していくのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ とても多くの思いを抱きながら

見続けました。とにかく多くの人に見てほしい映画です。


他の生き方の存在


「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての

息子たちは胸に刻むべきだ」というメリル・ストリープの

言葉がこの映画の予告編の最後に流れていました。映画の

あらすじは女性の参政権がなかった20世紀初頭のイギリス

で巻き起こっていた女性たちによるその権利獲得運動のある

部分を見せているのです。

 

未来を花束にして
 

女性解放運動といえば1972年に日本で結成された中ピ連を

思い出す人はもうそれほどいないかもしれません。しかも

その活動期間は短く、マスコミの取り上げ方やまた団体の活動

自体も女性たちから多くの賛同を得ることはなかったと記憶

しています。
それではなく、根本的な女性の権利の主張、参政権、投票権、

親権などを男性と同様に求める活動をしていたのが

エメリン・パンクハーストという活動家で、彼女の思想に同調

した女性たちがイギリスの各地でデモやビラ配りなどを行って

いたのです。

 

未来を花束にして
 

ヒロインのモード役はキャリー・マリガン。実に多彩な演技の

できる女優さんで、この映画でも序盤は、現実を受け入れ、

それに何の疑問も持たず、流されるように日々の生活を送って

いく無口な女性から、後半には、権利獲得のために闘い、

自分たちの主義を主張する強い女性へと変わっているのは

まるで別人のようです。活動をリードする薬剤師イーディス役は

ヘレナ・ボナム・カーター。彼女の演技も見逃せません。
洗濯女として働くモードは、母親もその仕事についていて、父親

はいない。そして夫もその洗濯工場で働いているのです。どうやら

工場長が彼女の幼い頃、性的虐待をしていたことをほのめかす

シーンがあり、それで彼女を優遇するという極めて不条理な環境

にも耐えている?いや不条理と思っていないのかもしれません。
男性より長く働き、賃金は安く、けがや病気が多い劣悪な環境で

あっても、彼女にはそこで働く人生以外、外の世界を知るきっかけ

もなかったのです。そこに一筋の光を差し込むのが、街でたまたま

見かけた女性参政権獲得運動の活動家の姿です。そしてこれも

たまたま公聴会で証言することになり、それが参加者の賛同を得ると
彼女は自分が認められたことで少しの自信と、今の生活への少しの

疑問を持ち始めます。

 

未来を花束にして

 

とはいえ、その後参加したデモで、警官に暴行され、拘束される

ことが重なると、遂には家を追い出され、一人息子のジョージは

養子に出されてしまう。
ここは泣けます。

「あなたのママはモード・ワッツよ。いつか会いに来てね」

「レ・ミゼラブル」でコゼットを思い泣くフォンテーヌを見ても

泣けなかったのに、ここは泣けます。なぜだろう。どちらも

同じくらい不条理なのに。
彼女たちが非合法な手段で活動することを余儀なくされたのは、

あらゆる門戸が閉ざされてしまったことと、聞く耳を持たない

社会に対しての大きな反発だったと考えます。活動に目を向け

させようと爆破事件を起こしても新聞すら取り上げず、彼女たちの

訴えを知るものは増えず、さらに逮捕投獄者が増えるばかり。

そして命を懸けて行動するメアリーによって、ようやく世界の

目が彼女たちの活動に向けられるのです。
命が幾つ奪われれば、重要な権利を獲得できるのでしょうか。

その権利を決して粗末に扱ってはいけないのです。
イギリスでは1918年に30歳以上の女性に参政権が認められ、

1925年に母親の親権が、そして1928年に男女平等の

参政権が認められました。日本では、1925年に25歳以上の

男性の参政権、そして男女平等の参政権は1945年ポツダム宣言

によって認められたのだということを心に深く留めておきたいと

思います。本当にたくさんのことを考える映画でしたが、

100年以上たった今、根本的な考え方が変わったのか、そこも

考えてしまいました。

 

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ブリザード 凍える秘密

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ブリザード

 

「ブリザード 凍える秘密」

原題:White Bird in a Blizzard

監督:グレッグ・アラキ

2014年 フランス=アメリカ映画 92分

キャスト:シェイリーン・ウッドリー

     エヴァ・グリーン

     クリストファー・メローニ

     シャイロ・フェルナンデス

 

カトリーナの母イブは彼女が17歳の時突然失踪する。

父は妻を捜し奔走するが一向に行方が分からず、母と

折り合いが悪かったカトリーナは日々の生活を楽しんで

いくが...。


<お勧め星>☆☆半 早々に母の行方が分かってしまう

のがとても残念です。


シェイリーン・ウドリーはナイスバディ


ヒロインのカトリーナ(通称キャット)役は

「きっと星のせいじゃない」(2014)の

シェイリーン・ウドリー。少し猫っぽい顔立ちでとても

キュートな女優さんです。そしてきっと体に自信があるの

でしょう。

 

ブリザード

 

美しい肢体を惜しげもなく見せてくれます。足もきれいです。
一方彼女の母親イブ役は「ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち」

(2016)のエヴァ・グリーン。ちょっと年齢を調べて

驚いたんですが、まだ37歳です。

 

ブリザード

 

メイクなのか表情なのかスタイルはいいのに
どうも老けて見えてしまう。老けてというよりホラー女優っぽいな。

「カジノ・ロワイヤル」(2006)にはボンドガールを演じて

いてスタイルは抜群なので、そこがちょっと残念。
始まり方はサスペンスタッチなのに、なぜかサスペンス要素は

手ですくった砂がこぼれていくように消えていき、ただ

カトリーナの奔放な私生活が映ります。ちょっとあきれちゃう

のよね。でも今の17歳ってこんなものなのかしら。
そーよ、そーよ、きっとそうなんだわ。

そしてさらに残念なのは登場人物に誰一人感情移入ができない

のです。穏やかで会社では人気者の父なのに家では母に軽蔑され、

なぜか卑屈なほどおとなしい。カトリーナは隣家のフィルと

イチャコラベタベタしたいのに、フィルはすげないそぶり。すると

母の失踪を担当した刑事を誘惑しちゃうんです。え〜、唖然茫然。

 

ブリザード
 

母が失踪してからカウンセリングに通っているカトリーナは、

自分が見る不思議な夢の話をするんだけど、カウンセラーの話も

大して役に立ちません。雪の中に倒れているイブはなぜに全裸

なんだろう。その夢に意味があるに決まっているのに、なぜ

誰も相手にしないんだろう。イブのペットのように扱われて

きたカトリーナがある年を過ぎると嫉妬のまなざしで見られ

始めるって、イブのおつむがおかしいとしか思えないんですよ。

 

ブリザード
 

そんなこんなでカトリーナはへんてこな親友2人を残し大学へ

行き、初めての帰郷。このへんてこ親友もへんてこすぎるの。

彼らの存在の意味もよくわかりません。そしてやっとこさ、

「ある疑惑」に気づくわけです。それ、もうとっくに気づいて

ましたから。それとあなたの夢とあれとの関係もとっくに

わかっていましたから。まあ、予想を大きく外してくれたのが、

父の「秘密」ですね。あれは誰にも想像できません。そして

それが母の失踪の引き金になっていたとはねえ..。
そしてカトリーナは涙を流します。その涙の意味はなんだろう?

優しくて穏やかで家以外では人気者だった父の秘密の驚いた

からでしょうか。それとも母の失踪の真相を知ったからでしょうか。
いずれにしてもなんだか中途半端なサスペンスで、スリルを

一つも感じなかったなあ。

 

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グッバイ、サマー

3

JUGEMテーマ:洋画

 

グッバイ、サマー

 

「グッバイ、サマー」

原題:Microbe et Gasoil

監督:ミシェル・ゴンドリー

2015年 フランス映画 104分 PG12

キャスト:アンジュ・ダルジャン

     テオフィル・バケ

     ディアーヌ・ベニエ

     オドレイ・トトゥ

 

クラスメイトから馬鹿にされ、家では母親の過干渉に

悩まされているダニエルは、変わり者の転校生テオと

親しくなる。2人は自立に憧れ、廃品で車を作りあげて

夏休みに旅に出るのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆半 楽しいけれどなんだか切なさも

感じる不思議な映画です。


個性って何だ


監督は「僕らのミライへ逆回転」(2018)の

ミシェル・ゴンドリー。あの映画ではレンタルビデオ店の

テープの中身が全て消えてしまうという事態を打開するため、

店員と親友が自作で映画をリメイクしていくというもの

でした。このリメイク映画が奇抜すぎるほどのアイデアであり、

当然予算なんてないに等しいのだけれど、そのアイデアで

一躍人気になってしまうのです。元ネタ映画を探すという

醍醐味も味わえます。
そして今作では監督自身の自伝的青春ロードムービーという

触れ込みです。主人公の2人の少年はまったく境遇が異なり、

ダニエルは過干渉過ぎる母親を持ち、パンクロッカーの兄と

几帳面すぎる弟に嫌気を覚えているらしい。

 

グッバイ、サマー

 

母親がオドレイ・トトゥなんですよね。
今でもとっても可愛いけれど、この映画ではヒステリックな母親と

いう雰囲気を醸し出しています。

 

グッバイ、サマー

 

一方のテオは彼を労働力としか考えない父親に毎日こき

使われているわけです。ちなみに母親は太りすぎで心臓を

病んでいて、兄はドラッグとアルコール中毒に後に軍隊に

入ったという、比べると絶対にダニエルの方が恵まれた家庭

なんですよ。でもそれを本人はまったく感じていないし、

テオも自分が不遇だとは思っていないのです。そこにはやはり

自分たちの将来への「夢」があるんじゃないかなあ。今まで

生きてきたよりも何倍も長くこれから先生きていくのだから。

 

グッバイ、サマー
 

で、ダニエルは小柄だし、髪の毛も長くて「ミクロ」と呼ばれて

クラスでは馬鹿にされているんです。心を寄せるローラにも

どうも思いが通じないというか思いを伝えることすら考えつかない

のです。そしてテオが廃品から改造バイクを作ったのを見て、

2人で、今置かれている境遇を脱するために「2人の車」を

作り、フランス国内を旅しようと計画するんです。この車の

アイデアがとにかく奇想天外で、車両認可が下りないなら、

家に車輪をつけて走らせよう。警官に見つかりそうになったら、

家に変えよう。というもの。これがね、とても可愛いくできていて、

車を止めると、ぱたんと車輪が隠れる木が下りるんです。

すると何ということでしょう。

 

グッバイ、サマー
 

まるで小さな別荘が出来上がるではありませんか。いやいや

次に動かすときには、外に出てその木を止めないといけないん

ですけどね。2人の秘密の旅行には楽しいことばかりのはずがなく、

危険もあれば、喧嘩もあるし、そもそも行き先を決定した

ダニエルの下心までわかっちゃうんです。この辺りを見ていると、

14歳というのは大人の階段を2,3段上り始めたばかりで、

想像力に限界があり、それでいて叶えられないはずの夢が頭の中で

現実化しているのだろうなと思ってしまいます。親切に食事と

ベッドを用意してくれた歯医者は「シリアルキラー」と考えるし、

女子に間違われても「個性」を主張していたダニエルが突然髪を

切ることを決意するもののなぜか風俗店でカットしてもらう羽目に..。

周りと同じなのは嫌だけれど、プライドも捨てられないという

微妙な心が見え隠れします。さあこの2人がどうやって自宅に

戻っていくのかと思ったら見事なミラクル登場。でも、戻った家で

2人が同じように暖かい家族に迎えられるわけではないのです。

そしてこの夏を経て、2人が再び旅行をすることはないんだろうなと
なぜか確信に近いものを覚えると、少しだけ鼻の奥がツンとなりました。
きっと数年後にはどちらも成長して全く違う道を歩んでいるの想像

できてしまうのは、年齢のせいだろうか。もしかして...という

ことが頭に浮かばないのは、将来への夢を大きく持てなくなった

からでしょうか。

 

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ダークレイン

4

JUGEMテーマ:Horror

 

ダークレイン

 

「ダークレイン」

原題:Los Parecidos

監督:イサーク・エスバン

2015年 メキシコ映画 90分

キャスト:グスターボ・サンチェス・パッラ

     カサンドラ・シアンゲロッティ

     フェルナンド・ベセリル

     ウンベルト・ブスト

 

1968年、メキシコシティから遠く離れた

バスステーションは大雨でバスの到着が遅れている。

妻の出産を控えたウリセスはいら立ちを隠せないが、

券売係マルティンはのんきに構えている。しかし

彼にある変化が起き...。


<お勧め星>☆☆☆半 思っていた内容とかなり異なる

のですが、違う意味での恐怖を感じます。


個性の存在


「未体験ゾーンの映画たち 2017」上映作品。この中

には「FOUND ファウンド」「特捜部Q Pからのメッセージ」

「ライク・ア・キラー 妻を殺したかった男」が含まれていて、

一番ストレートに理解できたのは「特捜部Q」かな。
どの作品も異色の個性を光らせています。
監督は「パラドクス」(2014)のイサーク・エスバン。

「パラドクス」は未見だけれど、評価が分かれていること

からカルト的な人気があることが伺えます。「ダークレイン」

は予告編やジャケット雰囲気では、降り続ける雨に何かが

含まれていて、バステーションにいる人や来る人たちが何かに

感染していくという感じ。感染=ゾンビorヴァンパイアと

思ってしまうのは、チッチッチッ、単純すぎるのです。
映像は1960年代風にモノクロに近く、すごい嵐で音声が

途絶えがちなラジオと同様にブチブチと途切れかけたりします。

さらに効果音が「サイコ」(1960)の例の冒頭の

シャワーシーンに流れたようなもので、何かが起きることを

予想させつつ、前半が進むのです。

 

ダークレイン
 

登場人物は、券売係マルティネス、職員?ローザ、隅っこで

呪術みたいなものを唱える言葉が分からないおばあ、

 

ダークレイン

 

妻の出産のため時間を気にするウリセス、夫から逃げてきた

身重のイレーヌ、

 

ダークレイン

 

そして医学生アルバロ、ゲルトルディスとその息子イグナシオ。

 

ダークレイン

 

彼らがこのバスステーションの中で繰り広げる人間模様は、
あと少しですべてが分かりそう、という時に中断し、ラジオ

から流れるニュース、何かを見て驚いた人が何を見たのか、

など結構もったいつけているのでイライラします。今地上波

で流れているテレビ番組を見ているようです。そして突然

マルティンが包帯グルグル巻きで現れるのです。これはなぜか?

ここもなかなかわからない。イレーヌが事務所をのぞいて

驚くけれど何に驚いたのか、それもわからない。ところが

突然ぱっと映るんです。マルティンもトイレで倒れたローザも

おばあも泡を吹いた後...。
ここからは見て判断するといいと思います。これが何を意味

するのか。最初は悪魔憑きかと考えましたが、世界情勢の

不安定化や学生運動の激化、イグナシオが発する

「無実の人が逮捕される」
などとイグナシオが幼い頃から読んでいた変な漫画

(「個性」を奪うというストーリー)も頭に入れると、この

バスステーションでの状況は小さなたとえ話に過ぎないと

感じます。何が原因か、いや原因などないのです。没個性が

普通のことと受け入れられるようになるきっかけは、ほんの

些細な出来事もしくはたった一人の人物の存在であり、それが

起き始める時は、人々は大騒ぎするものの、皆に浸透すると、

前と変わっていない、個性が無くなったことに気づかず、元に

戻ったのだと信じてしまうというものすごく大きな恐怖を

描いているのではないでしょうか。「嵐のあとの静けさ」は

決して嵐の前のそれとは同じではないということだと思います。

イグナシオの笑顔とラストのバスのシーンがめちゃめちゃ

怖かったです。

 

 

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