西部戦線 1953

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JUGEMテーマ:韓国映画全般

 

西部戦線1953

出典:IMDb

 

「西部戦線 1953」

原題:The Long Way Home

監督:チョン・ソンイル

2015年 韓国映画 112分

キャスト:ソル・ギョング

     ヨ・ジング

 

朝鮮戦争が始まって3年経った1953年、

極秘文書運搬任務を託された韓国軍兵士ナムボクは、

その部隊が北朝鮮軍に急襲され、全滅したあげく、

唯一生き残った彼はその文書を落としてしまう。
一方北朝鮮軍の戦車に乗っている若い兵士ヨングァンは、

爆撃機の攻撃によって上官など全員を失ってしまう。

戦車を祖国に持ち帰ることを託されたヨングァンは、

その途中で韓国軍の極秘文書を拾い、それを見つけた

ナムボクから追われる身となるのだが...。


<お勧め星>☆☆☆半 シリアスなテーマなのにしばしば

大爆笑シーンがあります。それによってラストがとても

つらく感じるのです。


欲望が戦争を生む


朝鮮戦争は北側の人民軍の一方的な侵攻により1950年に

始まりました。北側からすると、アメリカ帝国主義から搾取

されている南の同胞を救いたいという大義があり、南側から

すると、「アカ」思想に染まった北側の同胞の一方的な攻撃

への対抗という大義があったわけですが、実際には米ソの

代理戦争そのものでした。
朝鮮戦争開始から3年も経つと戦争は泥沼化しており、ろくに

訓練も受けていない兵士が南北共に集められていたのです。

まず韓国軍(国連軍)のオクプンの所属部隊は、前線にいる

部隊へ極秘文書を運ぶ任務を命じられます。その文書を届け

なければ銃殺という厳しい言葉が飛んできます。

 

西部戦線1953

出典:IMDb

 

ナムボク役は「オアシス」(2002)←大お勧め!

「冬の小鳥」(2009)「1987、ある闘いの真実」

(2017)など数多くの作品に出演しているソル・ギャング

です。大事な文書を入れたカバンをしっかり腰につけ、草原を

進軍すると、そこで待ち伏せしていた北朝鮮軍(人民志願軍)

の猛攻でほぼ壊滅状態になってしまいます。
一方、とてものん気にポンコツな戦車を勧めている北朝鮮軍の

兵士たちの中で「坊や」と呼ばれる新兵がいます。彼はまだ学生

の身の上で、故郷には母親と彼女を残しているのです。

あとでわかりますが、彼は7人兄弟の末っ子であり、6人の兄

はすべて戦死しているとのこと。ここは胸が痛い。ただ、この

「坊や」は全く訓練を受けていないので、戦車の操縦方法どころか

手りゅう弾の使い方もわからないのです。
そして「坊や」が食糧を調達に行った間に国連軍の空爆を受け、

部隊は全滅し、「戦車を必ず持ち帰れ」という死んでいく上官の

最後の命令を受けます。

 

西部戦線1953

出典:IMDb

 

そんな「坊や」は
「あ、こんなところに変な文書が!運がいいわ!」
とは言わなかったと思いますが、例の機密文書を拾ってしまう

のです。それを見ていたのが、ナムボクで、二人は背中合わせに

なり、一触即発状態です。ここからはもうコメディそのもので、

「坊や」が持っている手りゅう弾を全部ナムボクに投げつけ、

それにビビるナムボクも、手りゅう弾のピンが抜かれていない

ことに気づき、一気に後を追い始めます。「坊や」が戦車に

入り込むと、戦車の入り口の蓋を開閉しながら2人は争いを

続けるのです。なんせ「坊や」は戦車の操縦法を知らないので、

取説を読みながら動かすわけですよ。したがって前後左右回転

などあらゆる動きをし、砲台がぐるぐる回ります。
さすがのナムボクも「あれ?」と思います。とりあえず戦車を

進めた「坊や」は空腹なので、仕入れてきた食糧を食べ始めますが、

ハーシーのチョコレートを見て、ちょっとかじり、その美味しさの

あまりぺロペロ舐めるんです。そうしながら、極秘文書を読むん

ですが、これが新兵にはさっぱりわからない内容です。その前に

「坊や」の砲撃とそれに対抗するナムボクの戦車砲の発射もあり、

戦車が行ったり来たり、その後をナムボクが必死で追いかけると

いうどこまでものどかな戦争風景が繰り広げられます。この時点で

こんなんじゃ終わらないよな、という大きな不安感に襲われます。
そして人民志願軍の扮装をした兵士を見かけ、「坊や」は戦車から

飛び出すと、実はそれがナムボクで、一気に形勢逆転です。

 

西部戦線1953

出典:IMDb

 

戦車内に入り込み、たばこを吸い、ハーシーのチョコを食べるのは、

今度はナムボクです。「たばこは体に悪い」という「坊や」に

対し「戦争の方が体に悪い」とナムボクが答えます。ナムボクは

金も土地もなく、貧しい農民だったのに、ようやく好いてくれる

人ができて結婚、そして出産を終えた日に召集されているのです。

何も持っておらず、何も求めていない貧しい人々から、奪える唯一の

もの、命を戦争は奪っていくのでしょうか。

 

西部戦線1953
出典:IMDb

 

ポンコツ戦車がある村に行き着くとそこでは、二つの旗を

持っていて、まずは戦車を見て北朝鮮の旗を振り、ナムボクが

韓国軍兵士と知ると、韓国の歌を歌い始めます。ここはおそらくは

南北境界線近くであり、そこに住んでいる人々にとっては、

どちらが勝とうが関係なく、平和に暮らすことが優先事項という

わけです。つまり「生きること」が大事なのです。
この後2人は蜂の大群に襲われ、急いで戦車に逃げ込みますが、

ものすごい顔に変わります。これ大爆笑シーンなのでぜひ見てほしい。

特にイケメンの「坊や」の顔が...。戦車内では銃を持った方が
上の立場に変わります。これはとても不毛なことだと気づき、

お互いにけがをした後に休戦協定を結びます。
一方韓国軍前線部隊のトップは、実は北朝鮮からの出稼ぎに来て

いた男で、戦争勃発により北に帰れなくなった上、故郷に残した

妻子は銃殺されたと語るのです。だから何が何でもこの地を北側に

進んで、妻子を墓に葬ってやりたいと考えています。誰もが抱える

事情がどれも同情できるものなのに、戦争という舞台では一切

考慮されません。それほど非情なものが戦争です。
さて、休戦協定を結んだ二人の乗った戦車は、なんと人民志願軍の

中国兵の部隊と出会ってしまいます。これは「坊や」にとっては

ラッキーだけれど、ナムボクにとっては危険。とりあえず、

そいつらを振り落とし逃走すると、今度は空から韓国軍機が攻撃を

しかけます。ちょっと戦車の操縦に慣れた「坊や」の砲撃で、

韓国軍機を少しだけ破壊し、韓国軍機−戦車ーナムボクー牛

(牛がしばしば登場)という順に道路を進んでいくと、なんと

その先は橋が破壊されています。半分落ちかけた戦車をどうしても

引き上げたい「坊や」と「2人じゃ無理だ」と語るナムボク。

戦車を持ち帰らないことは、即銃殺に値します。そこでナムボクが

連れてきたのが、先ほどの村人たちなのです。北も南も関係なく力を

合わせ戦車を引き上げた時に、全員が抱き合って大喜びするんです。

この人たちに戦争をする意味が理解できるはずもありません。
そして板門店で休戦協定が結ばれ、朝鮮戦争は休戦となりますが、

それが前線に伝えられるまでに起こる出来事は、予想通りであり、

戦争はこういうものだと実感します。兵士一人一人が敵を倒す行為は
戦争に勝利するための手段であるけれど、その一人一人にそれぞれの

人生があり、家族があったことを絶対に忘れてはいけないと思います。

そもそも何のために戦争などという最も愚かな行為をし続ける
のでしょう。ちなみに「坊や」の名前はヨングァンでした。

 

 

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激動の昭和史 沖縄決戦

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JUGEMテーマ:邦画

 

沖縄決戦

出典:youtube

 

「激動の昭和史 沖縄決戦」

監督:岡本喜八

脚本:新藤兼人

1971年 日本映画 149分

キャスト:小林桂樹

     丹波哲郎

     仲代達矢

 

昭和17年ガダルカナル陥落、昭和19年サイパン玉砕

と敗戦色が濃くなった太平洋戦争末期、大本営は沖縄を

航空母艦化し、アメリカとの戦いに備えようと

沖縄第32司令官に牛島中将を任命する。しかし大本営

からの最精鋭師団を台湾に送る命令が出され、さらに援軍が

送られないまま、沖縄はアメリカ軍の激しい攻撃に

さらされていく...。


<お勧め星>☆☆☆☆ この映画が1971年製作。

今こそ見てほしい内容です。


自分のため沖縄のために生きる


結果はわかっている内容なんです。けれど軍部の作戦と

沖縄の人々の姿を偏りなくリアルに映画いている点が

印象的です。時折当時の映像を挟み込み、急激に悪化して

いく沖縄の状況が手に取るようにわかるのです。
昭和19年、サンパン玉砕後、大本営は、アメリカ軍が、

台湾、沖縄、フィリピンのいずれかから日本本土へ攻撃を

仕掛けてくると考えました。なんとしても本土決戦を

避けたい大本営は、沖縄に10万の兵士を送り、第32軍

司令官として牛島中将を任命するのです。沖縄の人々は

まだ戦争を肌で感じておらず、日の丸の旗を振ってその兵を

出迎えます。これだけの兵隊さんが沖縄のために戦って

くれるのだから、日本が負けるはずなどないと信じていた

のです。
しかし、迫りくるアメリカ軍にそなえて、民間人や児童たちを

疎開させるために出港した対馬丸が、アメリカ軍の魚雷を受け、

大爆発の上沈没する事故が起きると、にわかに沖縄は危険地帯

へと変わっていきます。
大本営からは飛行場作りを命じられたものの、突然、台湾への

上陸阻止のため、第32軍の最精鋭部隊が引き抜かれ、また

爆撃機は届かないという状況になるのです。

つまり「沖縄は本土のためにある」という考えの元、援軍は

取り消され、第32軍は乏しい兵士と軍需品で戦うしか

なくなりました。しかし一応大本営でも

「玉砕だけは、玉砕だけは避けてくれ」という話をしており、

一方的に捨て石にされたという描かれ方はしていません。
そんな時に沖縄県知事として大阪内務部長島田氏が赴任します。

前知事の泉氏は、軍部と不仲で更迭されたとか、本人が軍部を

嫌いあちこちに手を回したとか、いろいろ語られていますが、

その後香川県知事となり、終戦後も寿命を全うしているのです。

島田氏は本当に文民そのものとして描かれ、沖縄の人民のために

尽力します。しかし戦争は軍人の手にあるのです。
戦況が悪化し、兵員が不足となると、中学を卒業した者は、

通信兵か鉄血勤皇隊となり、女学校生徒も軍に駆り出されます。

誰もがそれが日本国民として当たり前のことだと信じて

疑わなかったし、この日本が負けるなどという考えは頭の中に

存在しなかったのです。
さらに師範学校の男子は鉄血勤皇隊、女子はひめゆり隊として、

軍属となります。それらを描きつつ、牛島中将以下軍の上層部の

作戦会議が連日続くのです。

 

沖縄決戦

出典:youtube

 

寡黙で穏やかな牛島中将役は小林桂樹。血気盛んで総攻撃を

訴え続ける長参謀総長役は丹波哲郎、留学経験もあり欧米型の

論理的な戦法を唱える八原大佐役は仲代達矢です。

 

沖縄決戦
出典:IMDb

 

そして遂にアメリカ軍が沖縄諸島に上陸し始めた時、その戦地からの

電話の内容がすごいんです。圧倒的な兵力の差はこれだけでも理解

できるはずです。民間人は全員自決を迫られ、手りゅう弾を軍人

から手渡されますが、死に損なった者たちをその家族が殺していく

という、もはや地獄絵図そのもの状況があちこちに繰り広げられて

いくのです。
その一方で、菊水1号という特攻機の発射命令が出されます。その

特攻兵の書き残した文がまことに美しく、その人が慶応義塾大何某

などと出てくると、この時代は国のために自らの命を捨てることが
最高のご奉公だと信じられていたことを強く感じるのです。それが

第4号になると、もはや美しい文を書けるような学徒はおらず、

にわか兵士が作った川柳と変わっていきます。それでも彼らは自らの
運命を疑うことがなかったのです。

帝国海軍が誇った戦艦大和すらアメリカ軍の猛攻によって撃沈され、

もはや沖縄は大本営から見切りをつけられてしまします。しかし

それは沖縄にいる軍には知らされなかったのです。
野戦病院でうめく重傷者の手当てをするのは、わずかな医師と、

にわか看護経験を受けた女子のみです。
この時期になると「スパイ」の存在がうわさされ始めますが、

それは「沖縄スパイ戦史」(2018)で描かれたものではなく、

アメリカ軍のスパイとして沖縄の人が使われているのではないかと
疑うことなのです。また、北部に市民を疎開させていたはずが、

輸送手段がないため30万人の市民は南部に疎開していたと

島田知事は軍の上層部に訴えます。しかしそれは何も考慮されず、

長参謀総長の総攻撃作戦が採用され、圧倒的に劣る兵力の日本軍は

次々に命を落としていきます。
病院移転の際は、重傷者は自決用の薬を渡されます。ここで

2000名が自決したのです。さらに陸軍と海軍とで意見は

対立し、もはや沖縄での戦争は、戦争ではなく、統率のない

ひたすら負け戦の連続となっていきます。

 

沖縄決戦
出典:IMDb

 

さらに突然の学徒員解散命令が出されると、ひめゆり隊の女生徒は

「どこに行けばいいのか?」と引率の教師に尋ねるのです。教師は

「自分のために沖縄のために生きろ」

とだけ言います。突然戦地に送られ、にわか看護を学ばされ、立った

まま睡眠をとりつつ、負傷兵の治療に専念した彼女たちが、この

アメリカ軍に囲まれた南部からどうやって家路につくことができる

のでしょう。当時の状況はひめゆり平和祈念資料館で、ぜひとも

見ていただきたい。
兵士に壕を守らせ、割腹自殺を遂げた牛島中将、島参謀総長が見事な

死に際だったと言えますか。その間に猛攻を受けて多くの兵士が退却

しては、叱責されまた攻撃に向かって無残な死を遂げているのですよ。
沖縄戦では軍の死者が10万人、県民の死者が15万人で、それは

県民の3分の1にあたるのです。この事実をしっかり受け止めて、

沖縄についてしっかり考えてほしい。今こそ見てほしい映画です。

 

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1917 命をかけた伝令

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1917

出典:IMDb

 

「1917 命をかけた伝令」

原題:1917

監督:サム・メンデス

2019年 アメリカ=イギリス映画 119分

キャスト:ジョージ・マッケイ

     ディーン・チャールズ・チャップリン

     マーク・ストロング

     アンドリュー・スコット

     コリン・ファース

 

1917年、4月、膠着状態が続く西部戦線で、

イギリス軍上等兵ブレイクとスコフィールドは、将軍

から「第2大隊の明朝攻撃中止」という伝令を届ける

任務を受ける。通信手段はドイツ軍によって破壊されて

おり、彼らが伝令を届けないと大体1600名が壊滅

してしまうという重要な任務だが、そのためには

ドイツ軍占領地帯を移動しなければならなかった。


<お勧め星>☆☆☆☆半 臨場感あふれる映像に込められた

反戦への強いメッセージを感じます。


悲しみを引きずるな


全編ワンカットで描かれた戦争映画ということで、どんな

感じだろうと思って見始めると、冒頭から兵士の視線で

始まります。狭い塹壕の中を軍曹に呼ばれ、人をかき分けて

将軍のいる場所に向かう二人の若い兵士。

 

1917
出典:IMDb

 

1917

出典:IMDb

 

彼らが指示を仰ぐ先に立っているのは、コリン・ファース

演じるエリンモア将軍です。イギリス軍の猛攻によって、

いったん退いたかに見えたドイツ軍は、最新の情報では、

最前線に派遣されている第2大隊を陥れるための罠を張って

おり、明朝の攻撃開始を利用して、大隊1600名を壊滅して

しまうというのです。したがって何がなんでもその攻撃開始を

阻止しなければならない。ところがあらゆる通信手段や道路

などはドイツ軍によって破壊されているため、伝令を持った

兵士が直接その情報を大隊に渡すしか手段がないわけです。

指名されたブレイクの兄はその第2大隊に中尉として派遣

されています。ブレイクとスコフィールドは、ドイツ軍

占領地帯でありつつ、無人地帯である場所を白昼堂々と進む、

という無謀な任務を与えられたわけです。
まず出発する前に軍曹から受けた説明が限りなく絶望的

なんですよ。鉄条網を抜け、遺体の転がる地帯を通り、敵の

前線まで行ったら信号弾を撃てと言います。それでも絶対的な

任務を遂行するため2人は出発します。

彼らの最前線に位置する場所から、馬の死体が転がる土地、

それに群がる大量のハエを横目に前進します。鉄条網に

引っかかったままの兵士の遺体や散発的に起こる銃撃から身を

かわすために入り込むくぼ地にも遺体が転がっているのです。

泥と水たまりとぬかるみに足元を取られながら、ハエ、ネズミ、

カラスという死を連想させる生き物が次々に登場します。

そしてようやく敵の最前線に到着すると、そこがあまりに整然

としていて彼らは驚きます。出口を捜して地下に行くと立派な

ベッドさえ残されているのです。あの泥まみれの自分たちの

いた場所とは大違いなのです。しかしそこで仕掛け線にネズミが

引っ掛かり爆発が起きてしまいます。がれきに埋まった

スコフィールドを助け出したのはブレイクであり、土ぼこりで

目が見えない彼を誘導してかろうじて外に出ることができます。
この時にドイツ軍が自ら破壊していった大量の火砲が映りますが、

そこには戦力の差が歴然と現れているのです。
そして次は草原をひたすら走ります。上空を飛んでいく戦闘機は

味方のもので、少しだけ安心していると、次には切り倒された

桜の木の向こうに廃屋らしき家が見えてきます。この辺りまで

来ると、言い方は悪いのですが、クリアすべきポイントが明確に

示されており、そこで何かを手に入れると、それが後で活用

できるような展開だと気づいてきます。

それでも何がその先にあるのか全く想像できないという恐怖と

隣り合わせであることも確かです。廃屋には牛がおり、そこで

絞って間もない乳を手に入れることができます。ところが味方と

空中戦を繰り広げてていたドイツ軍機が、この納屋に突っ込んで

きます。墜落する瞬間に急いでその場を逃げる二人の必死の

形相によって、見ている方にも破片が飛んできそうなくらいに

思えるのです。そして傷つきつつ生きていたドイツ兵を救おうと

したブレイクは、その兵士に刺されてしまいます。

「楽に逝かせてやろう」と言うスコフィールドに

「いや水を持ってきてくれ」とブレイクが温情をかけたことが

仇となったのです。直前の二人の会話でスコフィールドは、

ソンムの戦いにも従軍していたことが分かります。戦地に

おいて敵、味方となった時点で人間同士のつながりなど求めては

いけないことをとうに知っていたのです。
スコフィールドが一人で第2大隊のいる地点まで明朝までに

歩いていけるのか、と思っていると、そこに別の隊の車列が

到着します。彼はその隊のトラックに乗せてもらい、移動を

再開しますが、その時に別の隊の兵士たちが交わす何気ない

会話に涙を流しそうになるんですね。自分だって少し前まで

こんな状況だったじゃないか。周りが笑いに包まれていくほど、

彼の胸は痛むのです。
しかしそんな感傷に浸る間もなく、ドイツ軍によって橋が破壊

されていると知ると、彼は車を降り、その破壊された橋の

手すりを恐る恐る渡っていきます。するとどこからともなく

飛んでくる銃弾が耳元を足元をかすめます。いったい何人いるのか、

それはどこにいるのか、全くわからないのです。ここでもまるで

スコフィールドになったような気分になります。

そしてそっと開けたドアの向こうに見えたドイツ兵との突然の

相撃ちにより、彼は階段を転がり落ちます。どのくらい経ったの

でしょうか。外が暗くなった頃、彼は目を覚まし、死んでいる

ドイツ兵を横目に前進します。

 

1917
出典:IMDb

 

1917

出典:IMDb

 

次は破壊つくされたフランスの町が煌々と燃え盛っている風景に

変わります。そこで彼はフランス人女性と出会うのです。

「何も取るものはない」とフランス語で訴える女性に、

スコフィールドは英語で「味方である」と伝えます。全く言葉

が異なるのに、「味方」というだけでしばし心が通い合う瞬間

です。そこには親が誰かわからない赤ん坊もいます。

スコフィールドは持っている限りの食糧を渡しますが

「ミルクがいる」と女性は訴えます。ぴかーん!ここで牛の乳

登場です。絞っただけの牛の乳を赤ん坊に与えていいものかなど

と思ったりもしますが、すべてを奪い去られている女性に

とっては貴重な食糧となるのです。

ただ、彼女たちが安全であるはずもなく「一緒にいて」と言う

言葉を遮り、彼は任務を優先させるのです。何度も書きますが、

戦場においては上官の指示が最優先項目なのです。
燃え盛る町で泥酔のドイツ兵を見つけ、ここにはドイツ兵が

幾人か存在することを確信します。と思った途端、若い兵士に

襲われてしまう。彼を倒すと、今度は泥酔兵が、そしてそれを

ぶっ飛ばすと、闇からいくらでも銃弾が撃ち込まれてくるのです。

そして追い詰められて遂に川の中に飛び込みます。川の中を漂う

などという姿ではなく、激流を流され、遂には滝つぼのような

場所に落ちてしまうのです。
しかしスコフィールドはまだ任務を遂行できるのです。川の中に

序盤に見かけた桜の花びらが大量に浮かんでいます。そういえば

桜の木にもいろいろな種類があるとブレイクは語っていたなあ。
いや、そんなことを考える間もなく、彼は川岸にたどりつき、

流れついている多くの兵士の遺体を乗り越えて地面を踏みしめます。

さらに進むと森の中から歌声が聞こえてきます。これがもしかして
D連隊だろうか。しかしまだ目標までは走らなければなりません。

すでに夜も明け、攻撃が開始されているかもしれないという彼の

焦りも伝わります。
ラスト付近、侵攻する連隊と90度違う角度の方向に全速力で走る

スコフィールドは、何を考えていたのでしょうか。ただ任務を

果たさなければならないという使命感だけでしょうか。
「悲しみをひきずるな」と他の隊の軍曹が彼に言いました。戦争は

人間が本来持ち合わせているはずの感情すらも奪ってしまうもの

かもしれません。

 

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アンノウンソルジャー 英雄なき戦場

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アンノウンソルジャー

出典:IMDb

 

「アンノウンソルジャー 英雄なき戦場」

原題:Unknown Sodier/Tuntematon Sotilas

監督:アク・ロウヒネス

2017年 フィンランド映画 132分

キャスト:エーロ・アホ

     ヨハネス・ホロパイネン

     アク・ヒルヴィニスミ

     ハンネス・スオミ

 

1940年ソ連との戦いで領土の一部を失った

フィンランドは、ドイツと組んでソ連への侵攻を

開始する。様々な境遇の男たちが召集され前線へと

向かうのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 戦争という異常な行為を過酷な

戦闘シーンの連続で描いています。


「すぐ戻る」を信じた者はいたか


原作はヴァイノ・リンナ「無名戦士」。この作家の名前

どころか、フィンランドが第二次世界大戦中、どういう

立場にいたのかすらわからず。まず冒頭の字幕に見入り

ます。

1939年からソ連との間に繰り広げられた「冬戦争」は

1940年3月に終結し、フィンランドはカレリア地方の

大部分を含む領土を失いました。映画では、この領土図が

絵として現れます。それは兵士の進軍、退却ととともに

広がったり狭まったりするのです。そしてフィンランドは、

1941年ドイツと組み、領土回復のための「継続戦争」を

開始するのです。

 

アンノウンソルジャー
出典:IMDb

 

先の戦争で二人の息子を亡くし、今回また3人目の息子を

戦地に送り出さねばならない母親や、同じく先の戦争で無事

帰還し、家族と農業を営む中年のロッカのもとに届く召集

令状、また結婚を控えた士官などが映ります。
それぞれが全く違う境遇ながら、一つの舞台に配属され、

ソ連との旧国境を目指し、次はカレリア地区を目指し、連日

激戦と繰り広げていきます。

 

アンノウンソルジャー

出典:IMDb

 

アンノウンソルジャー

出典:IMDb

 

1テイクに使用した爆薬の量はギネスに登録されたという

ことで、歩兵中心のフィンランド軍の侵攻のために投げる

爆弾は、数えきれないほどで、まさに臨場感あふれるものに

なっています。

また、飛び交う銃弾の音は、「シュッ」と空を切り、誰かが
倒れる。それは敵も味方も同じで、「死」が日常的に起きて

いるのだと実感するのです。
「死にたくないから敵を倒す」というロッカの言葉がまさに

真を突いています。「敵は人間じゃない」そう思わなかったら

人間としての心を保てない状況なのです。
前線においての勇敢な行為の褒美に、ロッカは2回休暇を

もらいます。そこには「日常」があり、娘や生まれたばかりの

赤ん坊と遊び、麦を刈り、家族で食卓を囲みます。

 

アンノウンソルジャー

出典:IMDb

 

一方、つかの間の休暇に大尉は婚約者と結婚式を挙げるのです。

そしてどちらも「すぐに戻る」という言葉を残して戦地に向かい

ます。
しかし戦況は悪化し、例の絵の領土が再び減っていくと、前線の

兵士たちの姿に疲労だけがにじみ出てくるのです。
「退却する者はフィンランド国民と言えない」
そんな言葉が耳に入らないほど疲弊した兵士の隊列を見ると、

戦争の本当の姿を実感します。歩兵部隊に対し、空から爆撃機、

地上では戦車が向かってくるのです。
生き残ることができた多くの命を捨てるほどの価値がどこにある

というのでしょうか。そしてそれを指示した者たちの多くは、

戦地から最も離れた安全な場所にいるのです。

 

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バハールの涙

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JUGEMテーマ:洋画

 

バハールの涙

出典:IMDb

 

「バハールの涙」

原題:Les files du soleil

監督:エバ・ユッソン

2018年 フランス=ベルギー=ジョージア

=スイス映画 111分

キャスト:ゴルシフテ・ファラハニ

     エマニュエル・ベルコ

     ズュベイデ・グルト

     マイア・シャモエビ

     エビン・アーマドグリ

 

クルド郡自治区の町で夫と息子と幸せに暮らしていた

バハールは、ISの襲撃を受け、夫を殺され、息子を

連れ去られたあげく、性奴隷として連れ去られてしまう。

ようやく逃走に成功したバハールは、クルド人女性武装

部隊のリーダーとなって息子奪還を目指すのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 戦場における女性兵士の姿を

リアルに描いています。複雑な民族宗教の対立を知らなく

とも十分理解できる内容です。


真実の持つ影響力への無関心


この映画には二人の女性が登場します。一人は、イラクの

クルド人自治区に暮らしていたヤズディ教徒で弁護士の

バハール。彼女はフランスへの留学経験もあり、クルド語に

加えフランス語も堪能、かつ頭の切れる人間です。もう

一人はフランス人の戦場カメラマン、マチルド。

 

バハールの涙
出典:IMDb

 

バハールは2014年8月の深夜、突如村を襲撃したISの

戦闘員によって父、夫を殺害され、他の女性や子供と共に

彼らに連れ去られてしまうのです。その当時の回想が小出しに

映され、息子と離れ離れになり、性奴隷として何度も売買されて

いき、そしてある時逃走に成功して行くまでが映画の中盤辺り

まで現実の戦闘風景と共に描かれます。

バハールがなぜ「クルド人女性部隊」(太陽の女性たち)
のリーダーになったのかもそこからわかってくるのです。

 

バハールの涙
出典:IMDb

 

一方マチルドはアイパッチをしており、これについては彼女の

口からリビアのホムスで取材中、シリアのアサド政権軍による記者

の拠点砲撃で片目を失ったことが説明されます。彼女の夫はどこか

の戦場で殉職したらしい。そしてフランスにいる一人娘だけが

心の支えなのです。

それはバハールも同じで、ISに連れ去られ戦闘学校にいる息子を

救いたいためだけに闘っているのです。
戦争における女性への屈辱的な行為は「最愛の大地」(2011)

でアンジョリーナ・ジョリーがボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争

でのそれを描いていました。ただ過激な映像がただただヒステリックな
訴えのように感じられてしまい、恋愛模様も絡めたことで、かなり

ピンボケ映画になっていたと思います。
今映画では、ISの目的や戦闘員の姿、バハールたちが受けた暴力行為

などはほとんど映りません。映らなくても何があったかは容易に想像

できるのです。
かつて人々がにぎやかに行きかい、穏やかな生活が存在した町が、

がれきの山になった中で、自ら立ち上がった女性たちの姿が力強く

描かれます。何度見てもがれきの山は悲しすぎる。でも悲しんでいる
暇などないのです。
連合軍の空爆を待つ男性兵士の指示に異を唱え、仲間が倒れても

前進するバハールに対し、マチルダが掛ける言葉は
「真実が持つ影響力には世界は無関心。将来の夢や希望を欲し、

悲劇には目を背ける。しかしわたしは出会った人々が自分の力」
遠く離れた地域での紛争事に一切関心を持たず、また報道もされず、

何も知らないまま近隣諸国のことばかりに目を向け続けることは

あまりに愚かだと思う。それがいつ自分たちに降りかかるかも
わからないという現実を常に感じとって敏感に生きていきたいものです。
バハール率いる「太陽の女性たち」の歌が胸に突き刺さったままラストを

迎えました。バハール役のゴルシフテ・ファラハニが砂まみれに

なっても崇高なほど美しく、それも印象的です。

 

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最初に父が殺された

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

最初に父が殺された

 

「最初に父が殺された」

原題:First They Killed My Father

監督:アンジョリーナ・ジョリー

2017年 アメリカ映画 136分

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 

 

ルオンは何も知らない

 

 

監督はアンジョリーナ・ジョリー。「最愛の大地」

(2011)ではボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争中

の性暴力への国連の無策ぶりを訴えたかったので

しょうが、的が絞り切れておらず不要と思われる恋愛も

絡めてあって、全く感情移入ができませんでした。
「不屈の男 アンブロークン」(2014)は公開前から

反日映画とネットで叩かれていたのでどんなものかと

思いとりあえず見始めたものの、10分ほどで脱落。

日本人の描かれ方があまりに雑すぎて、問題のシーンまで

辿りつくことができませんでした。というわけで、わたし

の心の中ではアンジョリーナ・ジョリーは、女優としては

才能があるけれど、製作する側には向いていないのではと
思い続けていたのです。彼女が人道支援の崇高な志を持ち、

実際に活動していることはとても尊敬に値するのですが、

それが映像になったときにはグロテスクなシーンが誇張

されてストーリーが追い付いていない気がしていました。
今作はルオン・ウンという人物の

「最初に父が殺された 飢餓と虐殺の恐怖を超えて」

という実話を基にした映画です。
カンボジアといわれて頭に思い浮かんだのは、

アンコールワット

シハヌーク国王

ロン・ノル将軍

ポル・ポト政権

大虐殺

という単語でそれらがどのようにつながっているのか全く

理解できていません。しかしこの程度の知識で映画を見ると

まるで、映画の主人公で8歳のルオン同様に何が起きている

のかわからず、言われるがままに田舎へ追い立てられ、

強制的に働かされ、身内の死に涙を流し、突然の爆撃や銃撃に

怯える気持ちになれたような気がします。

 

最初に父が殺された
 

最初に父が殺された

 

冒頭、かなり裕福そうな一家が映ります。父は政府の職員で

あったのに、突然現れた武装集団、クメール・ルージュに

よって家を追い出され、街から農村へと強制移住させられるの

です。それは1975年クメール共和国崩壊により、反米かつ

極端な共産主義をとるクメール・ルージュと総称される

政治勢力によるもので、半植民地主義と原始共産制をめざすと

いうもの。だから映画内で欧米のものは捨てさせられ、財産は

すべて没収、労働キャンプで働き、すべて国のものとして納めて

いくことになるのです。
しかしこの極端な思想が広がった元をたどると、アメリカが

引き起こしたベトナム戦争が存在し、さらに南ベトナムへの空

爆はカンボジア全域にも達していたことから、今の世界情勢と

少しも変わらない構図が見え隠れします。
ただルオンにしてみると、なぜ急に自分の家を追い出されたのか、

父が農民と身分を隠すのか、「オンカー」と呼ばれる少年兵も

含む戦闘服の人たちが、なぜに自分たちを憎み、労働を強制する

のか全く分からないのです。それは飢えと暴力、監視され、

密告されることへの恐怖、やがては拷問され死んでいく恐怖を、

目のまえに広がる光景から察して行くのが手に取るようにわかります。

同じ国の人民なのに、同じ言葉を話すのに、なぜにこんな行動を

とるのだろうか。
「灼熱の魂」(2010)ではレバノン内戦での少年兵の姿が映り

ましたが、ここでも洗脳しやすい少年少女を戦闘員として扱います。

これは現在も中東やアフリカなどで数多く見られている状況で、

いったいいつになったらこのような悲惨な光景を見なくなるのだろう

と考えるだけで心が暗くなります。

 

最初に父が殺された
 

ベトナム側の難民キャンプに逃れて仲間ができたと思ったとたん、

そこをクメール・ルージュが襲う。なぜに自国民を銃撃するのか。

この不条理さを体験したルオンはそれでも兄妹たちと再会する

ことができました。しかしそれ以上に失われた命の多さを考えると、

戦争ということの不毛さを感じざるを得ないのです。
映画全体がルオン視点で描かれており、ラストも希望が見えるもの

だったことで、今までのアンジョリーナ・ジョリーの映画の中では

最も好きなものになりました。

 

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ある戦争

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ある戦争

 

「ある戦争」

原題:Krigen

監督:トビアス・リンホルム

2015年 デンマーク映画 115分

キャスト:ビルウ・アスベック

     ツバ・ノボトニー

     ソーレン・マリン

     ダール・サリム

 

アフガニスタンの平和維持のため巡視任務に

あたるデンマーク軍のクラウス率いる部隊は突然

敵襲を受ける。瀕死の重傷を負った部下を救うため、

彼は敵を確認しないまま空爆を指示するが、そこで

民間人が犠牲になり、軍事裁判を受けることになって

しまう。


<お勧め星>☆☆☆☆  全てを見終えたとき虚無感と

いう何とも言えない思いが残ります。


世界が望まない方向へ行かないために


デンマークは幸福度ランキングではトップに挙げられる

国であり、日本から見ると高福祉高負担国家と、まさに

恵まれた国であるかのように思えます。しかしながら

18歳〜32歳の男子に徴兵制があり、4か月の兵役が

あることは全然知らなかったです。また平和維持活動に

積極的に参加しており、対テロ戦争にも多くの人員、物資を

供給しているのです。だから遠く離れたアフガニスタンに

主人公が「巡視」として派兵されるのも当然なのですね。

また成文憲法を長期間改正していない国としては1946年

以来の日本に次いで、1953年以来という2番目という

事実もあります。
さて、この映画では、前半がアフガニスタンにおける

平和維持活動を行うクラウスの部隊の日常が映し出され、

冒頭若い兵士がIED(即席爆発装置)で両足を吹き飛ばされ

命を落とします。彼らは「巡視活動」しているはずなのに、

ですよ。現場は常に緊張感に包まれており、それは本国で

夫のいない生活を送るクラウスの妻子の日常生活において

ギリギリ保てる平静さと同じレベルで感じられるのです。

夫婦は電話を通しては互いに「何もなく平和だ」と語ります。

胸の内など語れるはずもないのです。
後半は、突然攻撃を受けた部隊は、隊員の1人が瀕死の重傷を

負い、敵の位置確認をしないまま空爆を要請したことで、

クラウスは軍事法廷で裁かれることなる風景と変わります。

そう、隊員は空爆の後のヘリの到着で命は助かったものの

空爆により、アフガニスタンの民間人が11名亡くなったこと

への起訴なのです。軍事法廷に立つクラウスに問われる質問は

ただ一つ「敵が空爆地区、つまり第6地区にいたのを確認したのか」

その場の混乱する姿を見ている側としては、真実を語りたい

クラウスの気持ちも手に取るようにわかります。しかしそうする

ことで、クラウスは犯罪者となり懲役刑をうけることになるし、

クラウスの家族をさらに追いつめることになるのです。また部隊

の名誉も損なわれてしまう。
検察側の尋問は厳しく、犠牲者の中に子供がおり、その遺体写真

まで見せます。

「あなたの指示でこんなことが起きた。たとえ事情があろうとも

国際人道法に例外はない」
実際のところ、裁判自体は形式的に行われ、仲間の証言が決定的な

証拠となって、クラウスは無罪となります。民間人への誤爆に

対する責任を追及したという姿勢を見せることが必要であり、

それが国や軍隊の立場を守ることにつながるのだなあと思って

しまう。それは法廷にいたすべての人々が知っていることなのでしょう。
しかし無罪を獲得し、晴れて帰宅したクラウスは、息子ユリウスを

寝かしつけるのですが、その時、小さな2本の足に目が留まる

のです。それは、タリバンに襲われるからかくまってほしいと

訴えたアフガニスタンの一家に対し、「翌日向かう」と伝えた後、

その翌日銃殺された姿で見つかった一家の息子の足。そして

クラウスが空爆を指示したことで犠牲になった少女の傷ついた足

と何も変わらない、同じ子供の足なのです。
戦争に善悪などない。戦地、いや緊張はあるけれど戦闘状態に

ないかもしれない地域に派兵された兵士たちは、敵と遭遇すれば

戦うことが「使命」であり、そうしなければ自らの命を失うことに

なるのです。日本では1993年、カンボジアへPKO部隊として

赴任していた文民警察官が現地の身元不明武装勢力に殺害される

事件が起きました。最近になってNHKスペシャルでその真相が

報道されましたが、文民でいられなくなる緊迫した状況下であり、

現地で秘かに武器を購入していたことを知りました。「平和維持」

などときれいな文字で語られようが、正当化する理論を

ふりかざそうが、現実はそんなものではないことを実感します。

こんなこと皆知っているのに。
興味深いのは、最終法廷で、検察側、弁護側の主張の最後が全く

同じこと「世界が望まぬ方向に向かってしまう」を訴えたことです。

結局は何かの犠牲を伴って幸福を得ている国が世界に数多く存在

することを知らされ、無力感に包まれてしまいました。

 

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1944 独ソ・エストニア戦線

4

JUGEMテーマ:洋画

 

1944

 

「1944 独ソ・エストニア戦線」

原題:1944

監督:エルモ・ヌガネン

2015年 エストニア=フィンランド映画 99分

キャスト:クリスティアン・ウクスクラ

     カスパール・フェルベルク

     マイケン・シュミット

     ヘンリク・カルメット

 

第二次大戦末期、ドイツ親衛隊エストニア隊は、ソ連赤軍

の猛攻に遭っていた。そしてカールはソ連軍のエストニア人

ユーリによって射殺されてしまう。ユーリは、カールが持って

いた手紙を宛先の人物に届けるのだが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 地味な映画ですが、戦争の不条理さを

丁寧に描いています。

 

1939年独ソ不可侵条約が締結されていたのに、ナチスドイツは

1940年、ソ連に併合されていたエストニアを軍事占領します。

そして敗戦色の濃い1944年、ソ連赤軍がエストニアのドイツ軍に

攻撃をする。このエストニアはこの辺り。

 

1944

 

いわゆるバルト三国と呼ばれ、1991年にソ連から独立後、

EU、NATOにも加盟し、極めてIT関係に強い国になっています。

しかし第一次大戦時にはドイツ軍側として戦い、勲章をもらった

人々が、ソ連による併合後処刑されたり、第二次大戦では、

ナチス親衛隊軍、ソ連赤軍と、同じエストニア人でも分かれて戦った

経緯があったのです。

この映画の戦争シーンはCGは一切なく、本物の火薬を使って爆発

させたそうで、ドンパチ、ドッカーンに派手さはないものの、

リアルな恐怖を感じます。

 

1944

 

〇見どころ

ドイツ親衛隊エストニア隊と呼ばれながら、誰一人

「ハイル、ヒトラー」

と言いません。そこにはヒトラーのために戦う人間は誰も

いないのです。そして侵攻してくるソ連赤軍にとっては、彼らは

「敵」そのもので、互いを容赦なく攻撃するのです。何かいつも

手紙を書いているカールが主役かと思ったら、彼は赤軍のユーリに

よって射殺されます。このどちらもエストニア人なのです。

 

1944

 

1944

 

ユーリはカールの胸ポケットに入っていた例の手紙を宛先に

届けるとそこにいたのは美しいカールの姉。

 

1944

 

ユーリは彼女に心を惹かれるけれど、彼女から、カール以外の

家族はソ連赤軍’ヨギ’の指示で全員検挙されたことを聞くのです。

ユーリの名前は、ユーリ・ヨギ。彼は自らの罪の深さ実感し、

平時であったら彼女と普通に出会い、デートをしただろうと、

手紙を書くわけです。この姉をめぐる人々の決して重ならない

人生が、極めて短い時間に描かれていきます。エストニア人と

して生きたくても赤軍を裏切ることは、即強制収容所送りを意味し、

それは自分以外の家族の運命も左右するのは、「チャイルド44」

でも書かれていました。それが「ソ連の力」と口にする赤軍の大佐。

「戦争が人を殺した」というのは容易いけれど、罪なき人が罪を感じ、

罪深い人はそれを感じない、という姉の言葉は胸に刺さります。

映画内で前日にはドイツ親衛隊エストニア隊兵士に手料理をふるまった

農民夫婦が、翌日はソ連赤軍のエストニア人兵士に、何も気づかず

料理をふるまいます。そして、すべてを悟った時の表情が頭から

離れません。

 

●惜しいところ

特にありません。ここでの戦いを知らない人には是非見てほしいです。

 

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ブラックホーク・ダウン

5

JUGEMテーマ:洋画

 

ブラックホークダウン

 

「ブラックホーク・ダウン」

原題:Black Hawk Down

監督:リドリー・スコット

2001年 アメリカ映画 145分 PG12

キャスト:ジョシュ・ハートネット

     ユアン・マクレガー

     トム・サイズモア

     サム・シェパード

     エリック・バナ

 

内戦下のソマリアへ介入した米軍は、1993年

10月3日、急襲作戦を決行する。30分で終わる

計画だったが、敵の思わぬ逆襲で、ブラックホークは

墜落、兵士は敵陣に取り残されてしまう。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 極めて臨場感の溢れる映像で

あり、これぞ「戦争」という姿を描いています。

 

映画のメインシーンは、1993年10月3日の急襲計画と

その作戦の展開を描いていくのですが、時間にすると

それほど長いものではないのに、数か月も続いたかのような

戦闘の連続です。そこに詰め込まれたストーリーは祖国で

無事を祈る家族へのセンチメンタルな感情とか、ソマリア人

への同情などは、ほとんど入っていません。戦地に行ったら、

そして1発でも銃弾が飛んで来たら、政治などどうでもよくなる、

と語った兵士が出てきたように、その場での兵士の生き残りへ

の戦いに次ぐ戦いが映されていくのです。

 

〇見どころ

序盤に説明らしきシーンで米軍内での指揮系統、デルタフォース

とレンジャー部隊のメンバーが映され、計画実行の時1人の隊員が

ヘリから落下してしまう。そこから始まる泥沼のような戦闘は、

瞬きをする暇もないほどのシーンの連続です。

 

ギャリソン少佐役のサム・シェパード。

 

ブラックホークダウン

 

エヴァーズマン二等軍曹役のジョシュ・ハートネット。

 

ブラックホークダウン

 

サンダートン一等軍曹役のウィリアム・フィクトナー。

 

ブラックホークダウン

 

銃を構える兵士の目、発射音、空の薬莢の転がる音が次々と

映り、まるで自分が戦場にいるかのように思えるほどです。

敵陣営の真ん中に取り残されたヘリから仲間を救うため、

もう一機ヘリが向かいますが、これも墜落。陸路は民兵によって

激しい攻撃を受け続け米軍兵士は負傷、死亡するものも続出。

その姿は目をそむけたくなるようなものも多いですが、これが

戦争なのです。

 

ブラックホークダウン

 

●惜しいところ

約24時間の戦闘で米兵は19人死亡。ソマリア人は1000人

以上死亡。この数を最後に字幕で流すけれど、その前にこの戦闘に

加わった兵士が祖国で賞賛されたことが知らされます。1人の

兵士の傷の手当シーンに、あれほどまでに時間を取った割に、

ソマリア人はバンバン殺されていきました。命の重さの描き方が

偏りすぎている気がします。

 

緊急事態の代替案がなかった米軍と戦闘に慣れている民兵間

では力の差は歴然であり、基地からのテンポのズレた指揮に

イラ立つ兵士の姿も、幾度なく描かれ、現場と机上での計画

との落差を感じることがしばしばでした。

「自ら英雄になろうとする兵士はいない」映画のラストに

1人の兵士が語ります。ここでの「英雄」アメリカ国内から

判断されたものであり、ソマリアでは存在しないはずです。

またアメリカがソマリアから撤退し、国連軍も去った後、

この国はどうなったか。暫定国家ができるまでに10年の歳月が

かかり、その前後も貧困と飢饉、周辺国家からの介入などで

海賊行為やテロ行為を繰り返す人々が続出しているのです。

その問題は別として、戦争映画としてはよくできた内容で、

甘っちょろいきれいごとだらけの作品とは一線を画していることは

確かです。

 

 

 

 

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野火 1959年版

3

JUGEMテーマ:邦画

 

野火

 

「野火」

監督:市川 崑

原作:大岡昇平

音楽:芥川也寸志

1959年 日本映画 104分

キャスト:船越英二

     ミッキー・カーチス

     滝沢 修

     山茶花究

     佐野浅夫

 

太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島。田村一等兵は、

肺を患い、中隊からも病院からも追い出される。行き場を

失った田村は、ジャングルの中をひたすらさまよい始める

のだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 白黒映画ならではの迫力と、音楽

の効果で、戦争の悲惨さを伝えています。

 

2015年版塚本晋也監督「野火」を先に見ているので、

大体のストーリーはわかっているのですが、市川崑監督の

オリジナル版は、まだグアムやフィリピンの島に残留日本兵が

いる頃に製作されており、あのままサヴァイヴァル生活を送る

兵士がいたのだと知ると、戦争の残酷さを痛感します。

1945年2月、太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島で

田村一等兵は、肺を患い、村山隊を追い出され、向かった病院も

追い出され、病院に入れてもらえない兵士達の仲間として病院前

に陣取っているのです。

「入院を断られたら自決せよ」という上官の命令に棒読みの

返事をしたものの、田村はそれでも何とか生きて日本に戻りたい

と願っているわけで、それはここにいる捨て駒にされた兵士たち

皆が思っていたはずなのです。既に部隊の食料はなくなり、島の

住民が住む村を襲っては食料を確保する状況であり、戦闘など

するわけでもなく、ひたすら防空壕を掘る兵士の手にはヘルメット。

さらに彼らの表情のない姿が、強い絶望感を伝えるのです。

病院が空爆されたとき、田村はまだ生きている仲間を見殺しに

してしまう。さらに日本兵の遺体の山が転がる村で、現地の男女

を見つけ、騒ぐ女性を射殺してしまうのです。そこで入手できた

塩は、彼にとっての大きな食料となるわけですが、命と塩。

平和な時なら秤にかけられることもないようなものが、ここでは

同じように扱われてしまうことの恐ろしさを感じます。

 

野火

 

なぜか水筒に水を入れ、食料探しをする自分に驚く田村の心の

声も人間の本能を上手く描いています。そして病院前で一緒

だった安田と永松に再会します。なぜに安田が永松をこき使うか

と思っていたら、安田がかつて女中に子供を産ませ、その女中の

子供が永松というつながりがあると知って納得。父は安田では

ないだろうけれど、過去の上下関係を戦地でも活用しているのです。

永松役のミッキー・カーチスぐらいしか、現在生きていないんじゃ

ないかな。すごく個性のある演技をしています。

田村の伸びたヒゲ、伸びすぎて曲がってしまった爪、そして森の中

を容赦なく照り付ける太陽光、額や背中の汗が、この島の不衛生で

地獄のような暑さを物語ります。

 

野火

 

亡霊のように歩き続け、時折受ける銃撃で仲間が倒れようとも、

ただ前に進む姿は人間の心を無くしている人々を描くのには十分

すぎるほど。さらに落ちている靴を、自分のボロ靴と替え、次の兵士

はもっとボロい靴を、それと替え...。田村が来た時にはその靴は

底がなく、田村の靴と同じだったから、結局裸足で歩いていくという

シーンは滑稽ながら、悲惨さも物語るのです。

戦闘シーンはほとんど描かれなくても、銃撃の光や音、そして

その後に無数に転がる遺体を見れば、何が起きたか一目瞭然です。

終盤、また安田と永松と出会った田村は、永松が「猿」を獲っている

という話を聞かされます。田村は歯が悪く、硬くて食べられないと

答えますが、それが何であるかは、もちろん知っているし、それが

ラスト付近の口や軍服を、血で染めた永松の姿で、確信でき、

人間の狂気をこれ以上の映像はないだろうというもので映します。

白黒映画だからこそ、それを想像し恐怖を覚えるのです。

「普通の生活をしたい」と野火をたく島の農家の方へ向かっていく

田村を、容赦なく銃弾が襲いますが、それは、その島で彼らが犯した

罪への報復でもあり、胎児の様に丸まって横たわる田村を見ると、

ようやく彼に平穏な時が訪れたのだろうと実感するのです。

 

 

 

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