さよならテレビ

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JUGEMテーマ:邦画

 

さよならテレビ

出典:youtube

 

「さよならテレビ」

監督:土方宏史

2018年 日本映画 109分

 

東海テレビのディレクター土方は、自社の報道局内に

カメラを向け、3人のテレビマンを中心に報道の現場を

映していく。


<お勧め星>☆☆☆☆ テレビを通して見ている報道が

どのように作られ、どのように編集されているのか、素人が

初めて知ることばかりでした。


絶対的な客観性は存在しない


「報道の使命」
1、事件、事故、政治、災害を知らせる
2、困っている人(弱者)を助ける
3、権力を監視する
この映画内で幾度となく映し出される文字です。そして

職場見学に訪れた小学生に報道局長が、この3つを中心に

丁寧に講義をしています。この3つをしっかり頭に入れて

おこう。

 

さよならテレビ
出典:youtube

 

映画は冒頭から「カメラを回すな!」という現場の人物からの

怒号が飛び、製作自体にかなり苦労したのだと感じられます。

 

さよならテレビ
出典:youtube

 

主要人物は3人で、1人は、夕方の報道番組のメインキャスターを

務める福島アナウンサー。実家が東海地方ということもあり、

なんとなく見たことがあるような記憶のある人物です。彼は常に

メモを読み上げており、アドリブのない、そして間違い1つ

犯さないような几帳面さがあるものの、反面、彼自身の個性が

出し切れていないという難点があるのです。

「あの子、いちいちメモを読んでいるのよね」
という現場スタッフの辛辣な言葉も耳に入ってきます。そんな

福島の顔をなぜ記憶していたのかというと、ある問題テロップを

流してしまった番組のキャスターを務めていて、その動画を何度も
見たからだと知ったのは、この映画でそのシーンが流れた時です。

彼に責任はないけれど、その番組のキャスターであれば、視聴者は、

彼への攻撃をするし、ネット上には半永久的にその動画が残り続けます。
この身内の恥を、その局が再び映し、年に一度

「放送倫理を考える全社集会」を行っているということは、たった

1つのテロップが、番組打ち切り、ひいては局への信頼失墜に

つながったことを物語るのです。

 

さよならテレビ
出典:youtube

 

2人目はジャーナリズムを深く学び、常に問題意識を持って

仕事に取り組んでいるものの、契約社員という不安定な立場に

いる澤村です。Zネタと呼ばれる、スポンサー絡みの話題にも、

仕事と割り切って抵抗なく取り組みつつ、報道の現場において

問題意識が希薄であることに怒りを覚えていることが、彼の

1つ1つの表情や言葉から伝わってくるのです。視聴率に

一喜一憂し、スポンサーの顔色を伺い、時間外労働を減らそうと

指示を出しながら、人員は増えない。また同じネタを繰り返し

報道するより、他局を出し抜いた新ネタの方が視聴者が飛びつく、

という現実もカメラは映します。
澤村を通じて、ジャーナリズムの本質は何かを語っているものの、

理想と現実は必ずしも一致しないということが伝わってくるのです。

 

さよならテレビ
出典:youtube

 

3人目は新人の派遣社員、渡邊です。一目でドン臭いとわかって

しまう風貌は、そのまま仕事にも表れ、次々とヘマをしでかして

いきます。彼がアイドルオタクであり、住んでいる家が「若者の貧困」
を絵に描いたような状況なのもできすぎ感がある気がしました。

アイドルの握手会に行って

「いつかキミを番組に使ってあげられるように頑張るよ」

という彼の言葉に悲壮感を覚えるのは見ている方だけでしょう。
しかし映画がなんとなくうまいことまとまって終わろうとした時、

様々な映像が繰り出されていきます。それを見ると思わず息をのむの

です。ドキュメンタリーとして事実をただ並べたのではなく、監督が

意図した通りに真実を構成していったことに気づかされるからです。

あれもこれも...。
見終わって本当に驚きました。そして自分たちが知ろうとしないと、

そして問題意識を持たないと、あらゆることが知らないうちに自分の

頭に取り込まれ、それが正しくない方向に向かっていることに
気づかなくなっていることを実感します。

 

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ラッカは静かに虐殺されている

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JUGEMテーマ:洋画

 

ラッカは静かに虐殺されている

 

「ラッカは静かに虐殺されている」

原題:City of Ghosts

監督:マシュー・ハイネマン

2017年 アメリカ映画 92分

 

ISによって占領され一方的に首都と宣言されたラッカか

ら、市内の状況をスマホで撮影し、全世界に向けて発信

するRBSSのメンバーは、その活動によって自分の命だけ

でなく、家族の命をも狙われれている。彼らが発信する

ラッカの状況は言葉を失うほどのものであった。


<お勧め星>☆☆☆☆ この事実をできるだけ多くの人が

知ってほしい。関心を持ってほしい。


ユーフラテスの花嫁と言われた街並み


RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)という市民

ジャーナリスト集団は、元は普通の能天気な大学生や数学

教師など特に政治に関心もなく、美しく穏やかな都市

ラッカで暮らしていた人々ばかりなのです。それがまず

「アラブの春」から始まったシリアの内戦により、
アサド政権率いる政府軍と複数の反体制武装勢力がラッカを

巡り戦闘を繰り広げたことで街の様子は一変します。

反政府勢力=シリアの民主化を望む人々、以外にシリア政府

がこのラッカを重要視していなかったことに乗じて、ISが

街を襲撃し、遂に首都と宣言するのです。

 

ラッカは静かに虐殺されている

 

そこからRBSSがISによって厳しく情報統制された中で、

ラッカの状況を発信する活動が始まったのです。ISといえば、

日本人も誘拐され、公開斬首される動画も流されました。

今なお拘束されていると言われるジャーナリストも存在します。

他にも世界各地で起きる無差別テロは、ISの指示もしくは

その思想に感化された者によると言われています。
ISはラッカを首都と宣言した後、この街が美しく、平和で

物が豊富にあるかのような動画を作成したり、戦闘員勧誘の

ためにアクション映画さながらの宣伝動画を流していました。

その出来栄えから、メンバーの中に映像技術に秀でたものが

多く存在し、また情報発信、統制のためにインターネットを

活用する能力にも優れた者が多くいると言われていました。

それは映画内で、RBSSの国内メンバーがラップトップに保存

した映像を捜し出されてISにより拷問、殺害されたことからも

伺えます。

 

ラッカは静かに虐殺されている
 

国内で身を潜めてラッカの状況を伝え映像を送る者、ドイツや

トルコの隠れ家でそれを受信し、世界に発信する者と分かれる

わけですが、トルコにいるメンバーが射殺されたり、国内に

残っていたRBSSのメンバーの家族がISによって拘束、殺害

されるなど、メンバーが死と恐怖と隣り合わせであることが

わかります。新聞などで読んではいたけれど、ここまで脅迫が

続いていたということは映画を観て初めて知りました。隠れ家

を転々とし、父や兄が射殺される動画がネット上にアップされ

てもそれでも活動を続ける彼らの使命感はどこから沸き上がるの

でしょうか。
ドイツ国内でも移民に対し排斥運動が高まり、自国だけでなく、

どこに行っても安全な場所がないのです。冒頭に語られていた、

何も考えず遊びまわっていた大学生が、いかにしてこのように

変貌していったのか、手に取るようにわかります。
彼らには、ラッカでの出来事が世界から忘れられないために、

そしてそれが過去のことではなく、現在進行形であるという

ことを伝え続けていくという使命感に燃えていると思うのです。
ISの首都ラッカが陥落したとはいえ、アサド政権による東グータへ

の凄まじい攻撃と多数の民間人の犠牲者について、日本では

ほとんど報道されないということは驚くばかりです。数名の

戦闘員を倒すために数百人の市民を犠牲にするケースや医療

従事者への攻撃も行われています。
ISの支配下にあった時期、幼い子供がぬいぐるみの人形の首を

斧のようなもので切り落とし、親から褒められて得意げになって

いる姿は目に焼き付いて離れません。たくさん思いを抱きましたが、
まずこの事実について知ってほしい、映画を観終わってからは

そればかり考えて過ごしています。

 

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チリの闘い

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JUGEMテーマ:映画

 

 

チリの闘い

 

「チリの闘い」

原題:La batalla de Chile

監督」パトリシオ・グスマン

1975年 チリ=フランス=キュバー映画 263分

 

東西冷戦下の70年代、チリでは社会主義のアジェンダ政権が

民主的選挙で誕生する。しかしアメリカの支援を受けて

数々の妨害工作が行われ、遂には軍事クーデターによって

その政権は崩壊するのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 三部作に分かれており長さも気に

ならない面白さ。

 

歴史はわれわれのもの

 

チリはどこにあるんだろう?名前を聞くことはあっても漠然と

「南米のどこかの国」程度にしか思えません。地図では

この辺りになります。

 

チリの闘い

 

日本から遠いですね。
この映画は全編263分あり、第一部「ブルジョワジーの叛乱」、

第二部「クーデター」、第三部「民衆の力」と分けて描かれた

ドキュメンタリーフィルムの編集なのです。

 

チリの闘い


第一部は大統領宮殿が空爆されるシーンから始まります。

これは1970年に民主的な選挙で選ばれたアジェンデ大統領の

最期であることは一目瞭然です。ここからは人民連合政権

(1970〜73)の末期の困難に満ちた様を映し出していくのです。
1959年のキューバ革命後、南米各地で起こった混乱は、米国への

脅威にほかならないわけで、特にベトナム戦争で敗北しつつあった

時期に誕生したチリのアジェンデ政権は、なんとしても潰したい

存在になっていたのです。
チリ国内の野党にあたるキリスト教民主党など右派は、アメリカの

援助を受け、ありとあらゆる方法で政権への打撃を試みるのです。

労働者の権利でもあるストライキまでも利用する。そして第一部の

終了間際に軍部によるクーデター未遂が起こり、その時の銃弾に

倒れたカメラマンの映像が第二部の冒頭にも使われます。

 

チリの闘い

 

「知らなかったかもしれない」ことが、この映像によって

「実在したことと知ることができた」瞬間です。

そして第二部は冒頭の大統領宮殿破壊の映像で終わります。

その後始まる第三部は、ほとばしるほどのエネルギーを

見せつける民衆の姿が工場で、農場で、街頭で見られるのです。

それはアジェンデ政権がもたらした社会主義国家への道のりを

国民自らの手で作り上げていく姿であり、与えられたものに

従うにではなく、各々が考え行動する姿になっています。

そこにはこの政権下での社会への希望に満ちたものばか

りではなく、激しく討論する姿も見受けられます。
三部作がそれぞれ終了するたびに

「撮影者 ホルヘ・ミューラー・シルバの思い出に」

とクレジットが出ます。購入したパンフレットを読むと、

彼はグスマン監督とともに活動した「三年目」のメンバーの

一人で「左翼革命運動(MIR)」に属していた人で、恋人と

共に軍事政権ピノチェトの秘密警察DINAに捕らえられ

行方不明になったと知ります。
歴史を正しく伝えることの難しさを体感する映画でした。

ぜひともこのフィルムを国外に持ち出すことにどれだけ

困難を極めたか、そしてこのフィルムが存在したことで

「事実」を知ることができたことの意味を考えてほしいと

思います。

 

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