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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:海外ドラマ
出典:IMDb
「チェルノブイリ」
原題:CHERNOBYL
監督:ヨハン・レンク
2019年 アメリカ 330分
キャスト:ジャレッド・レンク
エミリー・ワトソン
ステラン・スカルスガルド
1986年4月26日、ソ連チェルノブイリ
原子力発電所で大火災が発生する。周辺の住民は
明け方の空を染める火災を見物し、消防隊員らは
通常の消火活動に向かうが、現地ではとんでもない
事態が起きていたのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆☆ まさに見るべき映画だし、
これを見て考えるべき映画です。
線量計の音が鳴り響く
2019年5月6日〜6月3日までアメリカHBOで
制作、放送されたテレビドラマです。第一話から五話
までの構成で、事故発生前後から、その事故責任を問う
裁判の様子まで、まことにリアルに描かれています。
撮影はチェルノブイリ原発と同型のリトアニアの閉鎖原発で
行われたそうですが、現場の様子だけでなく、負傷した
人々の姿まで見事に再現されており、これが実際の姿なのだ
と初めて知るものが多くあったと思います。
第一話「1時23分45秒」
事故の2年ほど先の映像は、全てが終わったあとの
エンドクレジットにつながるもので、監視の目をくぐり
真相を録音したテープを持ち出す男が映ります。
これが誰であるか。
出典:IMDb
そしてウクライナ、プリチャピでのどかに暮らす消防士
イグナテンコと妻リュドミラが、窓の外を眺めると、そこには
遠くに位置するチェルノブイリ原発から立ち上る見たことも
ないような明るい炎が目に入ってくるのです。
出典:IMDb
一方この当時現場で何が起きていたのか、それは混乱を極め、
手を触れただけで大やけどを負うような蒸気が立ち込め、暗闇の
中、何とか制御しようとする所員の姿が映り続けます。さらに
事故の過少報告や責任の押し付け合いが始まっており、この
醜い人間の姿と対照的に、静かに空から降ってくる灰が極めて
美しく映ります。それは人々の髪に肩に降り注ぎ、はしゃぎ
まわる子供たちの口にも入っていくのです。この途方もなく
恐ろしいものが、これほどまでに美しく描かれるとはあまりに
皮肉ではないでしょうか。
出典:IMDb
第二話「現場検証」第三話「KGB」では、クルチェトフ原子力
研究所第一副所長レガソフ博士と閣僚会議副議長兼エネルギー
部門担当の(急遽決まった)シチェルビナによる、RBMK原子炉
事故の調査が流されていきますが、同時に放射性やけどを負った
消防士たちの悲惨な姿を映していきます。
「生きているうちに当時の状況を聞く」
この姿は本当に目をそむけたくなるほどのもので、これが現実
だったとは信じたくないけれど、実際に起きたことで、そして
これが事実なのだと受け入れなければなりません。
「党員の無知や気まぐれで避難区域が決まる」と怒るレガソフの
言葉は「あり得ないことが起きたこと」への驚きと、それに
対応する者たちの隠蔽体質への警鐘であるとも思われます。
第四話「掃討作戦」強制避難させる住民や、そこを除染する人々
への説明が十分どころか、ほぼ何の知識もないまま行動をさせら
れます。
この地域がかつては、ユダヤ人やポーランド人が居住していたのに、
戦争でユダヤ人は収容所送りとなり、ポーランド人は追放され、
残された者も多くが虐殺された歴史を持ち、それでも生き延びた
老婆を強制的にバスに乗せる兵士の苦悩も映ります。
出典:IMDb
特に建屋屋上の黒鉛を除去する作業では「バイオロボット」つまり
3828名の人間が活用されたことは、言葉が出ませんでした。
それが唯一の方法だったということにも。
第五話「真実」
ウィーンのIAEA国際会議で「職員のミス」と報告したレガソフに
ホミュック博士が「裁判では真実を述べて」と求めます。1人の
科学者の声で、誤りが正せるのか、さらにはそれは彼の命と
引き換えになるのではないかと思うのは当然なのです。
「ソビエト連邦は至高である」と言うKGB相手に1名で戦えるのか
と考えましたが、エンドクレジットでは、ホミュック博士は
レガソフを援助した多くの科学者の象徴として登場させていたと知り、
科学者の「正義感」に感動します。科学に偽りはないのです。
真実を解明することが次の事故を防ぐ最重要課題であるのは、
誰もが理解できることなのに、保身や体面のため「うそ」をつく。
その「うそ」をつくたびに「真実」へのツケが回るというレガソフの
言葉には頷くしかありませんでした。
ここまで1つの事故について丁寧に描いたテレビ映画は見たことが
なかった気がしています。