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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
出典:IMDb
「特捜部Q カルテ番号64」
原題:Journal 64
監督:クリストファー・ボー
原作:ユッシ・エーズラ・オールスン
2018年 デンマーク=ドイツ映画 100分
キャスト:ニコライ・リー・カース
ファレス・ファレス
ヨハン・ルイズ・シュミット
ソーレン・ビルマーク
アンダース・ホブ
コペンハーゲンのあるアパートの隠し部屋から、
ミイラ化した3つの遺体が発見される。カールとア
サドは彼らの身元を調べるうちに、1960年代に
存在したスプロー島女子収容所での残酷な行為を知る
のだった。
<お勧め星>☆☆☆☆☆ 今年見た中でダントツ1位の
サスペンスです。様々な社会問題にも言及しています。
「寒い冬の説」
特捜部Qシリーズでは4作目の映画です。
「檻の中の女」(2013)「キジ殺し」(2014)
「Pからのメッセージ」(2016)そして今作
「カルテ番号64」のうち原作を読んでいるのは
最初の2つのみ。「檻の中の女」は映画化するにあたって
削り取られる部分が最小限で、ストーリーの本筋は原作と
ほぼ同じであり、大層楽しめましたが、「キジ殺し」は
人物像がかなり変わっており、大きな違和感を覚えました。
映画単体で見るとやはりどれもよくできていると思います。
ストーリーにモタつきがなく、主役のカールとアサドの
イメージが原作とピッタリなのは素晴らしい。
特にカール役のニコライ・リー・カースがいつも苦虫を
つぶしたような顔をしているのは小説そのままです。
出典:IMDb
まず、1961年、従弟テーイと逢瀬を楽しむニーデが映り、
その後父に見つかり、そのままスプロー島へ収容されていく
シーンへと変わります。この状況は「マグダレンの祈り」
(2002)で描かれた、婚外交渉などカトリックの戒律に
違反した女性たちを洗濯所に収容し、修道女や神父からの
虐待行為を受け、ひたすら洗濯をする日々を送る(罪を洗い
流す意味らしい)女性たちの姿と重なります。
スプロー島収容所は「不適切な女性」と男性からみなされた者
たちが収容された施設であり、精神障がいや淫行などを理由に
強制的に隔離されていたのです。
出典:IMDb
時は現在へと変わり、昇進異動を控えたアサドと相変わらず
他人に心を開かないカールが、コペンハーゲンのアパートの隠
し部屋から見つかったミイラ化した3人の殺人事件を捜査する
状況になります。
出典:IMDb
この遺体は本ではどのように描写されていたのでしょうか。
女性2人と男性1人がテーブルの前に座り、お茶を飲んでいる
姿のまま紐で拘束されています。女性1人は生殖器が全て取り
除かれているという無残な状況なのです。
捜査開始早々に、この部屋の借主がわかり、持ち物から次々に
遺体の身元が分かっていきますが、その過程でスプロー島の
女子収容所が彼らすべての接点であることも明らかになります。
時折当時の映像に変わり、ニーデがどんな状況にあったのかが
少しずつ紐解かれていきます。
しかし借主は収容所の看護師ギデであり、3人を殺害する理由と
この遺体の姿の意味がなかなか分かりません。ここは何となく
予想できるけれど、「どうしてそんなことを?」にたどり着く時
には、それが今全く同じ状況になりつつある恐怖を感じるはずです。
一方アサドの知り合いの店の娘ヌールが中絶手術を受ける姿が映り、
あのような立派な病院で手術を受ける割にはコソコソ出かける
のはなぜか?ということも頭に置いておかないといけません。
さてスプロー島収容所に勤務していた何人もの医師が、収容者たち
から裁判を起こされているものの、何度起こしても却下されて
います。そのことから、「闇」を表に出したくない人々が病院、
司法、政府関係者にまで多く存在していることが理解できるのです。
その「闇」が違う形で進行していたとしたら...。
今回も派手なアクションや爆発シーンなどはほとんどありませんが、
途切れない緊張とスリルで、本当に瞬きするのも惜しいほどです。
銃を使うシーンも多くはないのに、どれも印象に残るものばかり。
ただバンバン、ドッカーンと行けばいいってもんじゃないんですよ。
今ヨーロッパに存在する移民排斥の大きなうねりへの警鐘を鳴らす
ような映画でした。いや鳴らしているんだと思う。
ラストの1カットはカールの人間性回復の証でしょうか。
とにかくすごく楽しめました。