ブラック・クランズマン

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ブラック・クランズマン

出典:IMDb

 

「ブラック・クランズマン」

原題:BlacKkKlansman

監督:スパイク・リー

2018年 アメリカ映画 135分

キャスト:ジョン・デヴィッド・ワシントン

     アダム・ドライバー

     トファー・グレイス

 

1970年代半ばのコロラドスプリングス。新人

警官で黒人のロンは、潜入捜査を希望し、やっと

任されたのがKKK(白人至上主義団体)への捜査で、

そのために白人警官フリップと相棒を組むことに
なるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ アメリカにおける差別の本質を

見事に突いていると思う映画です。


憎しみに居場所はない


カンヌ国際映画祭ではグランプリを獲得したものの、

アカデミー賞では脚色賞のみ受賞という作品です。

同年の作品賞は「グリーンブック」だっただけに素人の

私でさえもアカデミー賞選考委員の好みを実感してしまい

ました。
19世紀半ば南北戦争後のテネシー州で白人退役軍人が

結成したとされるKKKは、南部のプアホワイト層から

支持を集め、1869年に一旦解散を命じられたものの、

1915年白人伝道師ウィリアム・J・シモンズによって

ジョージア州アトランタで復活します。映画内でKKKの

メンバーがセリフを覚えるほど見尽くしている

「國民の創生」(1915)は同時期公開の作品であり、

それが復活のきっかけになったと話しているのです。また

「風と共に去りぬ」(1939)も会話に出てきます。

はるか昔に見たきりなので、南部の貴族のお嬢様の恋物語が

壮大なスケールで描かれていたとしか印象に残っていません。
今作は、白人プロテスタント至上主義団体KKKに潜入する

黒人警官という実話ベースで描かれています。もちろん本物の

黒人が潜入できるはずはなく、電話越しの会話は黒人ロン、

実際に潜入するのは白人のフリップという構成なのです。

 

ブラック・クランズマン
出典:IMDb

 

ロンは身分を偽り、黒人活動家に接近し、フリップは名前と

ユダヤ人であることを偽り、KKKに潜入する。後者は特に

反ユダヤ思想のフェリックスという男の存在でしばしば危険な

状況に陥るのですが、何とか切り抜けます。

 

ブラック・クランズマン

出典:IMDb

 

そこにはスリルだけでなく、笑いもあって、かなり重いテーマを

見ているのにそれほど胸にずしんと来るわけではありません。

「フルートベール駅で」(2013)や「デトロイト」(2017)
は直球で描かれていて見ていてとても辛かった。それに比べると

かなりライトな描かれ方で、KKKが少し間抜けに見えるシーンも

見られます。実際はこんなに生易しい団体ではないだろうな。

 

ブラック・クランズマン
出典:IMDb

 

また1970年代当時の虐げられる黒人の姿も入り込みます。それは

終盤に高齢の黒人活動家が語るかつて白人によって行われた黒人への

残酷な行為とはレベルが異なるものの、根底に横たわる「優性思想」
は少しも変わっていないことを示しているのです。
一方KKK内でも過激な人物がおり、ある計画を極秘に進めるのですが、

終盤その計画を実行しようとした白人女性ではなく、それを止めよう

としたロンが「潜入警官だ!」と訴えるにもかかわらず白人警官に

拘束されてしまいます。やっと現場に到着した白人フリップの

「警官だ」の一言に「黒人の潜入警官がいるのか」の答え。

ここは本当の意味でのクライマクッスのようで、あっちでもこっちでも
ハラハラドキドキの連続でした。

この時代から50年近く経って、どれだけ改善されたかと疑問に

思っているとラストに実際の映像が挿入されます。これが一番見て

いて苦しいものばかりです。何も改善されていないどころか、

「差別撤廃」の文言は独り歩きして、人々の心はかつての方向に

向いているのではないかと感じてしまいます。KKKの最高幹部

デュークが実際の映像で「アメリカファースト」としきりに訴えて

いました。それが今言われていることと同じで意味であるとしたら、

あまりに愚かなことの繰り返しだとしか思えません。

 

ブラック・クランズマン
出典:IMDb

 

KKKの白装束に身を固め、三角頭巾をかぶって十字架を燃やす

シーンで、その頭巾からのぞく瞳が幾度となく映されます。

そこには「憎しみ」しか宿っていないと感じました。

 

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ホテル・ムンバイ

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ホテル・ムンバイ

出典:IMDb

 

「ホテル・ムンバイ」

原題:Hotel Mumbai

監督:アンソニー・マラス

2018年 アメリカ=インド=オーストラリア映画 

123分 R15+

キャスト:デヴ・パテル

     アーミー・ハマー

     アヌパム・カー

     ジェイソン・アイザック

     ナザニン・ポニアディ

 

2008年11月26日、インドのムンバイでイスラム

過激派による同時多発テロが起き、タージマハル・ホテル

では侵入した犯人たちによって客や授業員が次々に射殺

され始める。給仕のアルジュンは料理長の指示で客たちを

安全な部屋に集めるのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆☆半 123分があっという間で、その

時間ずっと肩に力が入ったままでした。


それぞれの視点


テロを描いた映画では多くの場合、テロリスト=悪であり、

それに向かう人達を英雄視したり、被害者たちの悲痛な姿を

見せたりします。

一方「ダイ・ハード」(1980)のようにアクション映画と

して作られ、エンターテインメント化したものも多く

「ホワイトハウス・ダウン」(2013)

「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013)はどちらが

好きかと分かれる内容でしたが、どちらもテロリストからの視点が

欠けていました。アクション映画ですね。
この映画は、タージマハル・ホテルという五つ星ホテルに

たまたま居合わせた客とホテルの従業員、そしてテロ実行犯の

うちの特に1人について、それぞれの境遇や家族、宗教、人種に

目を向けさせる描き方をしています。

デヴ・パテル演じるホテルの給仕アルジュン一人をとっても

彼はシーク教徒で頭にターバンを巻いており、ひげを生やしている。

そして身重の妻と小さな娘を抱えた父親でもあるのです。

 

ホテル・ムンバイ
出典:IMDb

 

またVIP客の女性はアメリカ人の夫(アーミー・ハマー)と赤ちゃん、

そしてシッターとホテルを訪れ最高のおもてなしを受けるけれど、

彼女自身はイラン人であることが中盤にわかります。
それに対しての偏見もあり、パニックに陥った時にそれが露呈して

いく様が短い時間ながら描かれ、それをどうやってしのぐかを

見ていると、人間としての誇りや相手を思いやる気持ちが本当に

必要であると実感します。

 

ホテル・ムンバイ
出典:IMDb

 

一方で、オープニングから映り続けるテロ実行犯はその顔も幼さが

残る少年に近い人たちばかりで、おそらくは貧しくちゃんとした

教育を受けることができなかったのだと考えると、もしテロで身内を
奪われたら絶対に思わないけれど、元々持っているはずのもの

奪われたなら戦うことを選択し、それを家族に称えられたなら、

きっと満足するんだろうと考えてしまいます。

監督が語っているように家族を持ち、夢を見ることが許され、

安心して暮らせることができれば、テロなどなくなるはずなのです。
それぞれをさらりと紹介しつつ、今起きているテロの現場を映し

続けます。あまりに凄惨で目を覆いたくなりますが、これが

現実に今も起きていることなのです。綺麗ごとではすまされない。

 

ホテル・ムンバイ
出典:IMDb

 

ホテル・ムンバイ

出典:IMDb

 

美しかったタージマハル・ホテルと海から静かに小舟で近づく

犯人たちの姿から、「すぐに」それは始まり、そして

「いつ終わるのかわからない」という状況になります。

ニューデリーからのテロ対策部隊はすぐには到着しません。

「ボーダーライン」(2015)の製作陣が創り出した映画だけ

あって、激しい銃撃、爆発シーンはあまりに唐突かつ残酷です。

R指定がありますが、殺戮シーンの多さゆえのことでリアルな

血しぶきや傷跡を見せるわけではないので、もしも血が苦手で

あっても見ることができると思います。
テロが始まった時から映画内で終了するまでのおよそ120分、

息をのむシーンの連続で、息を殺さないといけないシーンでは、

思わずこちらも息を止めてしまうほどでした。
予告編で声高に語られていたホテルの従業員の勇気だけでなく、

宿泊客の中にも果敢な者もおり、テロに遭遇した時の人間の本性を

見た気がします。
実際の事件での人物像をいろいろ重ねて作り上げた人たちが多いと

読みましたが、見終わってしばらく放心状態が続くような、心に

ずしんと響く内容でした。

 

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THE GUILTY/ギルティ

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ギルティ

出典:IMDb

 

「THE GUILTY/ギルティ」

原題:Den skyldige/The Guilty

監督:グスタフ・モーラー

2018年 デンマーク映画 88分

キャスト:ヤコブ・セーターグレン

     イェシカ・ディナウェ

     ヨハン・オルセン

 

緊急通報室のオペレーター、アスガーは、

「今まさに誘拐されている」という女性の通報を

受ける。彼は女性を救うため、聞こえてくる声や

音に耳を澄ませるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆


緊急だからなのか

 

電話での会話がほとんどの映画で思い浮かべるのは

[リミット](2010)です。男が目を覚ますと、

そこは狭い狭い棺の中で、その棺は土中に埋まって

いるらしい。棺の中にはライター、ペンと携帯電話が

入っており、体の向きをあちこち変えながらそれを手に

取り、助けを求めるのです。まず、警察、女友達、FBI

など。携帯電話で通話し続けたらそりゃバッテリーが

なくなるし、そもそも土中に埋まっている棺の酸素だって

なくなってくるはずです。まさに「時間」との戦いなの

ですが、公共機関での手続きが当然のことながら

「マニュアル通り」であり、すごくイライラします。

社会保障番号なんて言っている暇ないんだよ!

あ、でも最近知ったのですが、マイナンバーカードの

顔写真付きは「印籠」のように公的機関で通用しますので、

自動車免許証を持っていない高齢者にはぜひとも作る

ことをお勧めします。
家の場合、高齢の母親が持っています。

「そんなもの使わないでしょう?」

と鼻で笑っていたのに、歩くのが不自由になり、

ゆうちょ銀行での口座解約をしようと考えた母は、現地に

行けません。行っても文字が書けないのでどうすれば

いいかと尋ねたら「顔写真付きマイナンバーカード」と

委任状で大丈夫でした。鼻で笑ってごめんなさい。
棺の中の男はライアン・レイノルズで、彼だけが90分間

映り続けます。「ここはどこなのか」「助けは来るのか」

絶望的な状況が少しずつ変わっていった時、少し違和感を

覚え始めるんですよ。その先は見てのお楽しみです。いや

期待ではなく、元気が有り余っている時にお勧めする映画です。

 

ギルティ
出典:IMDb

 

そしてこの「THE GUILTY/ギルティ」は緊急通報室の

オペレーター、アスガーが通報を受け、緊急性が高いものを

最も近い現場の指令室へ回し、あとは酔っ払いへのアドバイスや

悪戯への対応に追われている姿が映ります。なんかやる気なさそう

だし、周りの同僚からも反感を持たれている感じですね。

 

ギルティ

出典:IMDb

 

「明日が終わればもとに戻れるんだ」かつての上司らしき男

との電話での会話で、なんとなく彼の立場が分かってきます。
すると一人の女性からかかってきた電話があまりに不自然な

内容なことに気づくのです。アスガーはピンと来ます。もちろん

あらすじがわかっている私もピンと来ました。

遂にかかってきたか、これこそ問題の電話だと。しかしすぐに

切れてしまいます。彼の仕事はあくまでもオペレーターなので、

捜査など指揮できるはずもないのに、もういてもたっても

いられなくなり、あちこちへ電話をするのです。アスガー、

周りから完ぺきに浮きまくっているし、もう帰る時間だし、

私的な通話を上司に注意されているし、しかし彼の「挽回したい」

という気持ちがそう行動させたのかもしれません。
「挽回」というのはもちろん今の職場からの移動(なぜ閑職に

いるのかは説明アリ)だけでなく、彼の私生活面も指しているのだ

と気づきます。
一方、電話の女性には自宅の残してきた娘と赤ちゃんがいることが

わかると、アスガーはささっと調べて自宅に電話をかけるのです。

この娘の言葉でさらに彼の推理に確信を持ち、必ず救い出すからな!
と確約までしてしまいます。はい!わたしも同じ推理です。

ここで違うことを考える人はいるのだろうか。それこそ灰色の

脳細胞を持つポアロかミス・マープルかはたまた明智小五郎か

ホームズか。

 

ギルティ
出典:IMDb

 

この緊迫したやり取りが明るい方向に進みかけた時、さてなにが

わかるでしょうか。
一つの方向に向いた考えを逆のものに変えるのは本当に難しく、

一度目の考えより何倍も多くの事実が必要なのだと感じました。

だからこそ事実をたくさん集めるべきなのです。しかしそれに

時間が加わった時完ぺきな判断ができるのか疑問です。

 

 

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修道士は沈黙する

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修道士は沈黙する

出典:IMDb

 

「修道士は沈黙する」

原題:Le Confessioni

監督:ロベルト・アンドー

2016年 イタリア=フランス映画 108分

キャスト:トニ・セルビッロ

     コニー・ニールセン

     ピエルフランチェスコ・ファビアーノ

     マリ=ジョゼ・クローズ

     モーリッツ・ブライブトロイ

 

ドイツ、ハイリゲンダムでG8財務相会議が開かれる。

そこに招待された修道士はサルスは、会議前夜に

ロシェ理事から「告解したい」と呼び出されるが、翌日

彼が亡くなっていたことから、疑惑の目を向けられるの

だった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 沈黙を貫く神父の姿と彼が放つ

いくつかの言葉が心に残ります。


犬は主人を選ぶ


この映画が劇場公開スルーになったのは、もちろん内容が

地味であることも影響しているだろうけれど、もしかしたら

現在のG8財務相会議の核心をついているからじゃないかと

疑ってしまうような思いを抱いてしまいます。
本来富と無縁の人々を救うための会議であるはずが、国力の

強い国々が勝手にG8と言って集まり、世界市場の動向のみを

気に掛ける、つまりはなから貧しい国の発展など考えても

いないという姿が描かれています。

 

修道士は沈黙する
出典:IMDb

 

このG8財務相会議になぜか絵本作家セスやミュージシャンと

共にカトリック教会の修道士サルスが招かれるのです。空港に

降り立った時から場違い感を漂わせます。

 

修道士は沈黙する

出典:IMDb

 

彼を招待したのは、実はIMF専務理事のロシェで、彼は会議

前日の晩に「告解したい」とサルスを部屋に呼び出すのです。

告解は絶対に他言しないものだし、告解した人は神から赦しを

得ることができるというカトリック教会の儀礼の1つです。
教会の暗い狭い部屋で口元だけ見える神父に告解する市民の姿は

映画でしばしば映りますね。告解したらなんでも赦されるん

だろうか。

いやそもそも「洗礼」を受けていなければならず、家に仏壇と
神棚がある家に育った私にはまずそこから入らないといけない

ようです。仏壇がありお盆、お彼岸にはお寺や家で供養を行い、

毎朝神棚の水を入れ替え、クリスマスにはジングルベルを歌って

ケーキを食べるってどれだけ節操がないんだろう。最近では

ハロウィンまで加わったからな。ハロウィンで騒ぐなら、

お彼岸にもぼた餅を食べ合って騒げばいいのに。

思い出すと小学校低学年の頃までは元旦に登校し、校長先生の

お話を聞いていた気がします。あれは何の話をしたのか全然

覚えていないし、いつなくなったのかも覚えていません。

 

修道士は沈黙する
出典:IMDb

 

さてサルスが到着し、各国の大臣の集合写真を撮影すると、

夜はロシェの誕生日パーティーなんです。ところがロシェが

どうも不機嫌。それからロシェがサルスを呼び出し、

「告解をしたい」という話をするわけです。その辺りから

シーンは切れ切れとなり、ロシェの部屋から出てくるサルスを、

セスがたまたま見かけてから、彼を探るために部屋ののぞき穴を

作り、見始めるのです。そうそうサルスの行動ではなく部屋から

聞こえてくる鳥の声を奇妙に感じてのぞき始めたんだった。

セスの眼の大アップはサスペンス映画の定番のようなもので、

ここからどんなことが起きるのかわくわくしてきます。
案の定翌朝、ロシェはビニール袋をかぶった状態で亡くなって

います。

これは自殺なのか、他殺なのか。
8か国の財務大臣は誰がどの国の人かは辛うじてイタリアと

カナダがわかったくらいでしょうか。それでも彼らがロシェの

絶大な力に支配されていたことが手に取るようにわかります。

そのロシェが亡くなった途端、彼が最後に会った人物がサルスで

あり「告解をした」ということで、その内容がとても気になり、

疑心暗鬼になっていく姿は醜くもあり滑稽でもあります。
誰一人としてロシェの死を悼むわけではなく、その死が、市場に

及ぼす影響だけを気にする大臣たちの姿が、あまりにも露骨に

描かれ、彼らの頭の中は、世界経済を牛耳っているという自覚が

強すぎるのだと痛感します。そんな人たちに貧しい国のことなど

考えられるはずもないのです。
冒頭にロシェが書いていた数式が終盤に出されると、各国大臣が

どよめき、その周りをドイツの大臣が連れて来た犬がものすごい

勢いで回ります。これは混とんとした世界の中で、彼らは実は

取り残されているということを意味しているのではないかとも

思うのです。
ロシェがICレコーダーに録音していた変わった鳥の声やこの犬が

効果的に使われ、それらが何を意味しているのかもう一度見直して

考えてみたいと思える映画でした。

 

 

 

 



 

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バッド・ジーニアス 危険な天才たち

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バッド・ジーニアス

出典:IMDb

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」

原題:Bad Genius

監督:ナタウット・プーンピリヤ

2017年 タイ映画 130分 PG12

キャスト:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン

     チャーノ・サンティナトーンクン

     ティーラドン・スパパンピンヨー

     イッサヤー・ホースワン

 

頭脳明晰なリンは、父の勧めである進学校に奨学生として

転校する。彼女は友人になったグレースのためにテストで

答えを教えるが、それを知ったグレースのBFパットから、

報酬を引き換えにカンニングさせる計画を持ち掛けられる

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ いろいろな場面、出来事、人に置き

換えられる内容で、正義が必ずしも勝つのではないと改めて

感じます。


過去に犯した罪は自他への教訓

 

 

<ネタバレしているかも>


「カンニングしたことがあるか?」と尋ねられたら即座に

「ない」と答えることができます。カンニングについては、

自分の中で「一番やってはいけないことの一つ」になっていて

(もちろん悪いことに決まっているんだけれど)わからない

ものは仕方がないとすぐに諦めてしまう節もあります。一度

だけ見るつもりはないのに、前の席の子の答案用紙が目に

入ってしまい、その問題の答えが、学年一秀才のその子と

自分とが違っていたので、つい直してしまったことがあります。

え?これがカンニング?

結局珍しく自分の方が正解で、でも直してしまったから結局×に

なってしまい、ものすごく悔しかった覚えがあるのです。

あそこで自分を信じればよかった。
この映画のヒロイン、リン役はファッションモデル出身の

チュティモン・ジョンジャルーンスックジン。(これを一度で

読めたらすごい)切れ長の目と高身長、すらりと伸びた長い

手足が大変魅力的です。
リンはとても頭が良く、スポーツもできる少女なんですが、

家庭は教師をしている父親と二人暮らしの中流です。そんな

彼女を留学させたいために、有名校に転入させる父の気持ちも

よくわかります。しかしその有名校にいるのは、ほとんどが親が

裕福な家庭の子供ばかりで、学校に多額の寄付金を納めることで、

何とか進級できる程度のオツムの持ち主が多い。なんか

このような状況は既視感があるな。
リンと友人になったグレースも可愛いくて、まあ純粋なんだろう

けれど、自分が社会の上層部にいて、それが普通と思っている

から、勉強して成績を上げようと思う気持ちは起こらず、おねだり

すれば何とかなるくらいにしか世の中を考えていないのです。

だから好きな演劇を続けるために必要な成績が得られないと

わかると、頭のいいリンにカンニングをおねだりします。

 

バッド・ジーニアス

出典:IMDb

 

このカンニングシーンは何かを盗み出すくらいのスリルがあ

りますよ。額に浮かぶ汗を見るとこちらもドキドキしてきます。
グレースにはパットといるBFがいて、これはさらにお金持ちの

アホボン。アホだけれど、金儲けシステムを考える才能はある

らしい。貧しいリンのことを知って、そのカンニングで報酬を

得ようと考えるわけです。リンはあらゆる面で頭がいいので、

ピアノの音階を使って正解を教えることを思いつきます。

 

バッド・ジーニアス

出典:IMDb

 

このカンニングシーンも、リンの額の汗、リンの指の動き、

そして制限時間を示す時計の針が次々に映り、臨場感がたっぷり

なのです。が、しかーし、そこにもう一人頭はいいが家が貧しい

特待生バンクが登場します。顔はイケメンだけれど...いや体も

すごいらしい。これが見たかったなあ。

 

バッド・ジーニアス

出典:IMDb

 

洗濯屋をしている母親と二人暮らしで、母親を楽にさせて

あげるために必死で勉強しているバンクは、不正を許すはずが

ないのです。ここで正義が勝つかと思うと、いや持つものと

持たざるものの差がただ現れるだけで不条理さに怒りを

覚えるほど。しかしこれが世の中の縮図なんだろうな。

 

バッド・ジーニアス
出典:IMDb

 

一方のリンは公明正大すぎる父が、実は校長にお茶代を渡して

いたことを知っており、自分のしていることと五十歩百歩であり、

自分の目標のためにさらにスケールの大きいSTIC(米国大学

受験のための全世界共通テスト)で不正行為を実行することに

加担することになります。家柄はいいが頭が悪いアホボンの

悪知恵は尽きることはなく、そのコマとしてリンやバンクを使う

ことなど気にもかけないのでしょう。金や権力があれば何回逮捕

されても学生でいられる例もあるしね。いや、起訴すらされない

かもしれないわね。頭が良くて国立大学に入ったら税金で学んだ

人間と言われるのかしら。やだやだ。
リンとバンクのプレッシャーとタイで待機しているパットや

グレースのプレッシャーなど、比較になるはずもないと思う。

それでもやはりリンの額ににじみ出る玉のような汗、監督官の

追跡、バーコード印刷の様子、エンジンをふかせるバイクの音

などが短い時間に何度も映ると、まさにリンの気持ちが自分の

心に入り込んだようになります。頑張れよ!とは思わないけれど

無事に帰国してね!とは思う。
エンドロールの最後に流れる、この高校の校歌の文字があまりに

皮肉めいていて、現実社会の表と裏を描いているかのように

感じました。

 

 

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search サーチ

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サーチ

出典:IMDb

 

「search サーチ」

原題:Searchig

監督:アニーシュ・チャガンディ

2018年 アメリカ映画 102分

キャスト:ジョン・チョウ

     デブラ・メンシング

     ジョセフ・リー

     ミシュル・ラー

 

妻を病で亡くし、娘マーゴットと二人暮らしのデビッドは、

ある朝娘が帰宅していないことに気づく。携帯にも応答

しない娘の行方を捜し始めた時、彼は娘について何も

知らなかったことを知る。そして遂に警察に失踪届を

出すが..。


<お勧め星>☆☆☆☆ PC画面を通して登場人物の気持ちが

リアルに伝わってきます。終始スリル満点です。


リアルとSNS


全編がPC上の画面で描かれているという映画は

「アンフレンデッド」(2014)

を思い出します。あの映画は新感覚のホラーという感じながら、

現実に起こっている「悪ふざけ」を通り越した「いじめ」
の存在に改めて気づかされました。ネット上での会話で

友情が成り立つと思ったら大間違い..。

しかし現実に友人であったとしても、本心は口から出る

言葉やその態度だけではわからない、というのは
朝井リョウ著「何者」で書かれていました。

自分が「何か」を知る?いや「何にもなれていない」と

いうことを認めることが、人生のスタート地点なのだと

今さながらに実感したものです。

 

サーチ
出典:IMDb

 

さて今作では、オープニングから数分間、PCに保存された

動画でのデビッド、パム夫妻と一人娘マーゴットの幸せの

軌跡が流され、それがパムの死によって断たれたことを

知ります。そしてろくに会話がなくなったマーゴットが

ある晩を境に姿を消します。最初は、ごみ捨てをしていない

ことを責めたから拗ねているのだと思っていたデビッドも、

次第に連絡のつかないことに焦り始めます。しかし娘の

行方を捜そうにも実は娘についてほとんど知らなかった

ことに気づくわけです。

 

サーチ

出典:IMDb

 

PCのスキルがあるデビッドだからこそ、娘のinstagramや

twitter、facebookをチェックしようと考えますが、もちろん
非公開です。今の若者なら当たり前なんだろうな。これが、

PCすら触ったことがなく、ガラケーの通話機能が辛うじて

使えるパパだったらどうなったことだろう。いや、それは

それでは亡き妻の思い出を動画としてPC内に保存することも

できなかったわけだからあり得ないな。

 

サーチ
出典:IMDb

 

娘の失踪を疑ったデビッドが911通報すると、かなり

早くに担当のヴィック刑事から連絡が来るのです。そして

彼女の指示通りに娘のSNS関連情報をすべて確認し、シェア

する作業を開始します。
もうね、何回もPCが故障したり、買い替えたり、はたまた、

SNSで不正なアクセスがあったりしたことを経験するとわかる

けれど、サイトへのログイン情報を変更する時の手間は半端

なものではありません。まず、ユーザー名、これを忘れると

大変。そして大事なパスワード入力、何回か打ち込み間違い

すると「時間が経ってから再度お試しください」となるし、

「忘れた場合」にすると、違う機器やメールアドレスへ
認証コードが届くのです。これが二段階認証にしてあると

ものすごく煩雑な作業をしないといけなくて、でもそうしないと

セキュリティーが不安になるからやっぱり二段階認証!

前に自宅以外で何かのログイン情報を忘れ、パスワードを

再設定しようと思ったら、二段階認証が自宅の電話番号だった

ことがあって、本当に往生しました。

「もうこんなPCぶち捨ててやる!」
デビッドは手際よく再設定をして、娘のSNS情報をゲットし、

次々につながっている人物に電話をしてくのです。これも

メッセージアプリ、Face Timeを使うからすごいよね。だから

ずーっとPCの画面を開いていればいいわけです。

すると気づくんですね。

マーゴットには学校では友人がいなかったことに。

つまりリアルな友人を持っていなかったんです。これは親と

したらかなりショックですよね。
じゃあマーゴットは他に何を使っていたかというと、You Castと

いうライブ配信をしていたらしい。視聴者がこれまた少なくて

多分3人ほどだけれど、彼らとは(彼女かな)PC上の文字の

やり取りで悩みを打ち明け合ったりしていたのです。
ここまで知らべあげていくデビッドの執念もすごいけれど、

一方で彼の行動がネット上に流され、拡散されると、無責任な

コメントや批判する声が溢れかえります。また状況が変化すると、

あんなに他人のようにふるまっていた同級生たちが、友人面、

善人面を見せるのは本当に見苦しいですね。これを見ると、

事件などでコメントする知人、友人と称する人々の映像がいかに

無価値で信用できないかがわかります。あの情報いる?
真相に近づきそうで離れてしまい、そして二転三転し、怪しい

人物が次々にクリアになっていくとき、まさかの展開が!

そんな時に限ってデビッドは弟ピーターと取っ組み合いの喧嘩を

しているんです。
そのまさかの展開の後に、さらにまさかの展開が起こります。

ここは気づかなかったなあ。
子供を愛し、大事にする気持ちは正しいことを見誤る大きな

原因になるかもしれませんね。それはとても悲しいことだけれど。
1つ1つのセリフや行動をしっかり頭の中に留めておくと、

ラストは全てが集約されたもので、撮影13日、編集2年と

いうのは大へん納得できる期間だと感じました。

 

 

 

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レッド・スパロー

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レッドスパロー

出典:IMDb

 

「レッド・スパロー」

原題:Red Sparrow

監督:フランシス・ローレンス

2018年 アメリカ映画 141分 R15+

キャスト:ジェニファー・ローレンス

     ジョエル・エドガートン

     マティアス・スーナールツ

     シャーロット・ランプリング

 

舞台中の事故でバレリーナの道を断たれたドミニカは、

叔父の指示でロシア情報庁のスパイ「スパロー」の

訓練を受ける。そして彼女はCIA捜査官ネイトに接近し、

ロシア内の内通者探しの任務を与えられるのだが...。


<お勧め星>☆☆☆半 ひねりにひねったスパイ映画で

ラストはやっぱりあっと驚く為五郎


そんなところにピーラー使ったらあかん!


見終わったときは、ほうほうと感心したものの、あと

からよく考えると、ちょっと納得のいかないシーンも

いくつかあったことに気づきます。それでも

ジェニファー・ローレンス演じるドミニカが果たして、

アメリカとロシアのどちら側についているのか見極めるのと、

彼女の大胆なエロティックシーン、そしてものすごく

痛そうな拷問具に惑わされ、本筋を見失ってしまいました。

トホホ。
まず、冒頭にボリショイバレエ団員のプリマ役でドミニカが

出てきます。しかし「ブラック・スワン」(2010)の

ナタリー・ポートマンと全く異なり、やけにぽっちゃりして

いるんですね。あの体を高々と持ち上げられる

男性バレエダンサーがいるのかしら。

念のため確認するとボリショイバレエ学校の規定には、

158cmなら体重は37.7〜39.7kg、

160cmなら38.5〜40.5kg、

164cmなら42.1〜44.1kgということで、
ローザンヌ出場ダンサー平均の163.8cm・47.8kgと

比べても明らかに細いです。

ここは最初から違和感ありまくりですね。でもあり得ない方向に

足が曲がってしまうという事故で、彼女はバレエの道を

閉ざされるのです。事故のシーンが「痛い、その1」と

したら、治療具がつけられたシーンは「痛い、その2」。

痛いです。
難病の母親を抱え、住居さえ追い出されそうになっている

ドミニカのもとに、叔父ワーニャがやって来ます。この役は

「フランス組曲」(2014)で魅力的なドイツ軍将校を演じた

マティアス・スーナールツ。

 

レッドスパロー
出典:IMDb

 

彼はロシア保安局の幹部であることから、ドミニカを第4学校に

入れるんです。スパイ養成学校であるとはいえ第4学校は

「娼婦養成所」という別名があるほどで、訓練がこれまた

ある意味凄まじいものばかりです。今時こんなハニートラップで

国家機密を聞き出すことがあるんだろうか、と思うと、

2018年に実際にアメリカでロシア人女性が拘束されている

らしい。

 

レッドスパロー

出典:IMDb

 

この訓練所の監督役のシャーロット・ランプリングがこれまた

怖すぎます。皴の1つ1つに厳しさが刷り込まれているよう。

そしてやけに才能を発揮するドミニカには、ロシア高官と

つながりのあるCIA捜査官ネイトに接近し、その高官が誰で

あるか聞き出す任務が与えられるんです。

ネイト役は「ザ・ギフト」(2014)でキモい男を演じた

ジョエル・エドガートン。

 

レッドスパロー

出典:IMDb

 

映画内で何度も「あんなイケメンだから」という会話がされる

けれど、決してイケメンに思えないし、

「CIAはスパイや情報提供者を見捨てない」なんて、にわかに

信じがたいセリフもあって、アメリカで作った映画だから、

ロシア人も英語で話すし、ヤレヤレだぜと少しだけ思ってしまい

ます。英語で統一しているのは、これは仕方ない。
題名は忘れたけれど、ナチスドイツを扱った映画で、フランスから

オランダ、ベルギーまでまたがる話なのに、みんなが英語を話し、

なぜかナイツドイツだけがドイツ語を話していたのは、もっと
おかしく感じたもんな。「チャイルド44」(2015)は

すべて英語だったから、ここはやっぱりストーリーに集中しよう。
しかしドミニカがロシア側なのかCIAに寝返ったのか、幾度も

混乱する内容は本当に見ものです。

ただアクションに関しては「アトミック・ブロンド」(2017)

のシャーリーズ・セロンの方が格段に上だし、冷酷なスパイの

雰囲気が漂うのもセロン姉さんの方に決まっています。そして

やたら出てくるジェニファー・ローレンスのお尻も飽き飽きして

きた頃に、ちょっとだけロシアの拷問にかけられるドミニカは

やはり全裸にさせられるけれど、それほど痛くない。

それより「痛い、その3」はやけど治療器具で皮をむかれる

ネイトの姿ですよ。「これは何か知っているか?」とネイトに

尋ねるマトーリンの顔こそがニヤけているのが怖い。
でもCIAなら知っているはず。だってもっとすごい拷問やって

いるっていうじゃない。有名な「水責め」「睡眠のはく奪」

「小さな箱への監禁」と名前を見ただけでもおぞましい。

「拷問」で「真実」を語るという説はどこから生まれたんだろう。

そんなことを考えながら迎えたラスト付近の空港のシーンは、

あっと驚いたし、あれはいつから始まっていたんだろうと

考えこんでしまいました。プールで本名を書いた時からかなあ。

 

 

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LUCK-KEY/ラッキー

4

JUGEMテーマ:韓国映画全般

 

ラッキー

出典:IMDb

 

「LUCK-KEY/ラッキー」

原題:Luck-Key

監督:イ・ゲビョク

2017年 韓国映画 112分

キャスト:ユ・ヘジン

     イ・ジュン

     チョ・ユニ

 

凄腕の殺し屋ヒョヌクは立ち寄った銭湯で

石鹸に足を滑らせ頭を強打してしまう。その場

にいた売れない俳優ジェソンは、落ちた鍵を

すり替えるが、その後彼が記憶喪失になって

いると知り、そのままヒョヌクと入れ替わって

生活し始めるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ オリジナル作品とはまた

違った楽しさがあり、ユ・ヘジンの演技も

素晴らしいです。


なぜ包丁さばきがいいのか!


オリジナルは「運命じゃない人」(2005)

「アフタースクール」(2008)の内田けんじ

監督原作映画「鍵泥棒のメソッド」(2012)

です。かなり前に見たのでほぼストーリーは忘れており、
ただ「楽しい映画だった」というチープな感想しか

覚えていません。逆にオチを覚えていなかったから

よかったかも。

 

ラッキー
出典:IMDb

 

土砂降り、ゴム手袋、高級車(マセラッティ?)が

映り、車から降りてきた殺し屋が、ある人物をブスブス

刺します。トランクに遺体を乗せ、車で走り去った後

には、ある人物が持っていたキャリーバッグと傘が

残されるのです。この凄腕の殺し屋ヒョヌク役は有名な

韓国映画で必ず顔を見るユ・ヘジン。最近では

2017年映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」で、

ソン・ガンホの運転するタクシーをソウルまで戻らせる

ためにからだを張るタクシー運転手を演じていました。

決してイケメンではないのに存在感があります。

そして憎めない顔つき。

 

ラッキー
出典:IMDb

 

一方貧しくて家賃すら払えず自殺しようとして失敗する

売れない俳優ジェソン役はイ・ジュン。この人は初めて

見るなあ。ちょっと可愛い。
銭湯でたまたま居合わせ、滑って転んだ男が記憶喪失に

なったのをいいことに、その男と入れ替わったジェソンは、

ヒョヌクの金で家賃を払い、ツケを返し、高級車を乗り回し、

豪華なマンション暮らしを開始します。

一方自分を2000ウォンしか所持金がないボンビーと

思い込んだヒョヌクは、ジェソンのボロアパートに戻り、

治療費を立て替えてもらった救急隊員リナの実家の店で

働き始めるのです。

 

ラッキー
出典:IMDb

 

偽ジェソンは、なぜか刃物さばきがものすごく上手く、

高級中華料理の食材の細工のように美しい料理を作りだすので、

店は大繁盛。一応ジェソンの年齢32歳と称しているけれど、

そこはかなり苦しいところ。でもそう書いてあるから

そうなんだし、老け顔の人っていくらでもいるものね。

そういう人は年をとった時、かえって若く見えるのよね。

(リナの説)
それから偽ジェソンは売れない俳優として、ドラマの

エキストラ役をするのです。ところがアクションシーンでは

主役顔負けのキレキレアクションを見せてしまう。

体が反応するから仕方ない。

 

ラッキー
出典:IMDb

 

その頃偽ヒョヌクは、上の階の女性ウンジュを監視している

映像を見ながら、彼女に心を惹かれ、ほぼストーカ状態に

なって彼女の行く先々に現れています。考えてみると

偽ヒョヌクはどこも悪くないのだから、彼自身が持って

生まれた性格なんだろうね。だから元カノに振られたんだわ。

(勝手に思う)
偽ジェソンが前とはうって変わって明るい性格になり、

リナの家族と楽しく暮らし、俳優としての仕事も認められつつ

あるとき、偽ヒョヌクは、本来の目的を知り始めます。

なぜウンジュを監視するカメラ映像がヒョヌクの部屋にあった

のか。なぜ隠し部屋に武器や身分証明書がたくさんあったのか。
「目が合うと殺される」ほどの伝説の凄腕殺し屋の設定が、

サングラスにマスク姿の偽ヒョヌクの登場で大爆笑に変わる

とは思わなかったです。周りの人たちが必死で目を合わそうと
しない姿が本当におかしい。

土砂降り、車、カーステレオから流れる歌謡曲で、はっと

記憶を取り戻した偽ジェソンが一気に本来のヒョヌクの目に

変わるのは、さすがユ・ヘジンの演技力です。細い目は同じ

だけれど、目力が全く変わるんです!
そしてこんなにとっ散らかってしまった状況をどう回収するのか。

そしてまさかのリナの登場。あ〜、あ〜、黙ってちょーだい。
偽ジェソンとして俳優をしている時、キスシーンが上手くできず、

リナで実戦練習するシーンは、笑いながらも少し胸がキュンと

なります。それは俳優としての最後のセリフを自分の言葉で話し、
視線が相手役ではなくリナに向いていた時に集約されて、

かなり胸が熱くなるんです。
惚れたはれたが入るとコメディもアクションもダレることが

多いのに、この映画はまったくそういうことがなく、最後まで

テンポよく楽しませてくれました。

 

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ウィンド・リバー

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ウィンド・リバー

 

「ウィンド・リバー」

原題:Wind River

監督:テイラー・シェリダン

2017年 アメリカ映画 110分

キャスト:ジェレミー・レナー

     エリザベス・オルセン

     ジョン・バーンサル

     ジル・バーミンガム

     ケルシー・アスビル

 

ワイオミング州のネイティヴアメリカン保留地で、

1人の少女の凍死体が発見される。捜査を担当する

FBI捜査官ジェーンは、地元のベテランハンター、

コリーの協力を得て行動を開始するが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 過酷な自然の中で過酷な生活を

送るネイティヴアメリカンの姿がある犯罪を通して

映し出されていきます。


10km雪原を走った


青白い闇の中、必死で走る少女。その周りに広がるのは

どこまでも続く雪原のみです。

 

ウィンド・リバー

 

このオープニングを見ただけで、なんとも言えない不安な

気持ちを抱え始めます。この少女はおそらく何かの被害者

なんだろう。しかし追手はいないし、どこから来てどこへ

逃げるつもりなんだろう。と思っていると突然倒れます。
そしてシーンは一変し、山羊を狙うコヨーテに狙いを定める

ハンターの姿になるのです。このハンターはジェレミー・レナー

演じるコリー。
ワイオミング州はアメリカ西部にあり、広大な平原と

ロッキー山脈が有名な場所で、もともとはネイティヴアメリカン

の土地だったのです。しかし1790年から1834年の

強制移住政策により、彼らは土地を奪われ、保留地に移住

させられ、不毛な土地で農業で生計をたてるほかなくなりました。

したがって映画内に登場する保留地の人々が貧しく、また

土地が連邦政府の所有であることから、ひとたび事件が起きても、

州警察、市警察が介入できず、あのような新米捜査官をFBIが

派遣するまでは何も捜査ができないという予備知識を頭に

入れて映画を読み取っていくと、彼らの絶望的でそして怒りを

心の奥に秘めた表情が少しだけ理解できたような気がします。
雪原で遺体で見つかった少女の移動をするために、まずは

現場保存して証拠を残しておこうにも、FBIが来ないと触ることが

できないし、その間にも雪は降る積もっていきます。

 

ウィンド・リバー

 

そしてそこにやって来たのはフロリダ出身でラスベガスから

直行した新米捜査官ジェーンです。どう考えてもこの場所の

気候を知っているとは思えません。寒いどころじゃないんだよ!
極めて排他的な地(排他的にならざるを得なかった)で、

「殺人」ではあるけれど、死因は「凍死」であるため、FBIの

援護捜査員は来ないという。つまり頭部を殴られ、何人もに

レイプされてしるものの、死因は氷点下30度の外気温の中を

走り続けたため肺が破裂したことなのです。少女はなんと

裸足で10kmも走り続け、足は4度の凍傷を負っていました。
部族警察署長やコリーは、地元に精通しているので大体の

犯人像は掴めているらしい。ジェーンは一人この地で捜査を

開始するわけです。もちろんコリーたちの力を借りるのですが。

時折聞こえるのは部族の歌でしょうか。

 

ウィンド・リバー
 

広大な土地を移動するには、雪深い道のりをトラックか

スノーモービルを使う、はたまた「かんじき」のようなものを

履いて歩きまわるしかありません。その過酷な捜査の様子を

映しつつ、コリーの身の上も描かれていきます。彼がなぜ

ネイティヴアメリカンの妻と別れ、それでもここに暮らし

続けているのか。

それを知ると彼のブルーの瞳に浮かぶ「怒り」と「悲嘆」を

強く感じます。そしてアメリカ社会から隔離され、忘れられて

いる人たちの住む場所がここなのだと気づくのです。

 

ウィンド・リバー
 

終盤、部族警察とジェーンとで向かった掘削所で起こる銃撃戦は、

あまりに突然であり、しかし西部劇なみに激しく、彼らは常に

銃を携帯して我が身を守るという状況にいることにも気づきます。
そして遠くから銃弾を放つコリー。
全てを奪われた人々が住む保留地には、怒りと絶望が蔓延し、

それに耐えるには、強さと意志が必要であり、弱さゆえに薬物に

走る人々が存在するのも、また犯罪の温床になるのも、未来への

明るい希望が持てる場所ではないからで、だからこそ消えそうな

希望にすがるしかないのだとしたら、あまりにも不公平なじゃない

だろうか。
「痛みから逃げてはいけない。逃げなければ思い出として心の中に

生き続ける」こんな言葉で慰めるほかないのが辛いです。

 

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ラブレス

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ラブレス

 

「ラブレス」

原題:Nelyubov

監督:アンドレイ・ズビャギンツェク

2017年 ロシア=フランス=ドイツーベルギー映画 

127分 R15+

キャスト:マルヤーナ・スピバク

     アレクセイ・ロズィン

     マトベイ・ノビコフ

     マリーナ・バシリエバ

     アンドリス・ケイシス

 

離婚が決まっているボリスとジェーニャ夫妻の

息子アレクセイが突然姿を消す。彼を施設に

入れようとする妻を責めていた夫だったが、互いの

新生活のために、息子の行方を捜し始めるものの

警察は一向にあてにならない。そこでボランティアに

捜索を依頼するのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 見終わってやはり心が暗く

なる映画でしたが、圧倒的な自然の美しさはここ

でも描かれています。


「不安」より「尊敬」


アンドレイ・ズビャギンツェク監督製作の

「父、帰る」(2003)は突然姿を現した父親を

ソ連崩壊になぞらえたというレビューもあったものの、

個人的にはよく分からない内容だったというのが本音

です。
そして「裁かれるのは善人のみ」(2014)では、

ロシア北部の小さな町で起こる不条理な出来事を圧倒的な

映像美と音楽で描いていました。主人公は日曜礼拝にも

行かず、それほど信心深くないのに、「悪」の象徴とも

いうべき市長が信仰心が厚いという設定で、ストーリーも

最後の砦である「神」が不在になった時、人間は大自然に

支配されるのだ..てなことを思ったような記憶があります。
この映画も冒頭から水面に倒れた大木、そしてしんしんと

降る雪、流れていく川の水が映り、何のBGMもなくただ

それが映り続けた後に、突然3羽の鳥が現れるという

極めて象徴的なものになっています。

そして一人の少年が下校途中にその森の木の枝に赤白模様の

リボンをひっかけます。それを下から見上げると、風に

ひらひらとはためくのです。このシーンはラストにも

映りますが、時の流れかそれともほかの意味でかモノクロに

なっています。またそれがとても遠くから映るのです。
世界滅亡のニュースがテレビで流される中、離婚のため

マンションを売却しようとしている夫妻のうち妻ジェーニャは、

実の母親でありながら、息子アレクセイにとことん冷たく

接します。これ、ネグレクトじゃないの?虐待じゃないの?

と思うほど。これは実は彼女と実母との関係にも起因している

ようですが、父親である夫ボリスはというと、これまた無関心、

無責任極まりないのです。

 

ラブレス
 

2人の喧嘩をドアに隠れて聞きながら、声を殺して泣く

アレクセイの姿は胸が痛くなります。夫妻はそれぞれ新しい

恋人がいて、ボリスはすでに子どもが生まれようとしているの

です。ジェーニャもまたに別の相手とアツアツで楽しんでいる

のに、2人ともその間アレクセイはどうしているのかと

一切思うことはありません。

 

ラブレス
 

そして突然アレクセイがいなくなるのですが、それを知るのは

担任から2日ほど登校していないという電話が入ったからで、

そこまで気づかなかった自分たちを責めるのは互いに相手のみ

であり、自分を責めることはありません。どこまでも自分中心

なのです。

 

ラブレス
 

愛が消えた夫妻には出会った時まで遡って憎しみが生まれ、

その一方で恋人との新しい生活に夢を抱くというあまりに

身勝手な姿を見せられると、この夫妻のどちらにも感情移入が

できないのです。

「うっかり妊娠した。失敗した。幸せになりたいの。」
逆にボランティアでアレクセイを捜す人々は、何も要求せず、

ただ「アレクセイを見つける」という目的のためだけに動くの

です。この無償の行為があまりに夫妻と対照的に映ります。
他人を思いやる、尊敬する、行動する、それらがボランティアに

全て反映されており、すっぽり抜け落ちていたのがこの夫妻

なのかもしれません。
映画終盤にウクライナ内戦のニュース映像が流れます。しかし

それに対し全く無関心で、さっとバルコニーに出てランニング

マシンに乗るジェーニャや赤ん坊を無造作にベビーサークルに

放り込むボリスを見るにつけ、彼らの心の中に抜け落ちたものは

補充されることはなく、そのまま穴として存在し続けているのだ

と実感するのです。
アレクセイ探しのポスターの赤い縁取り、ライトに照らされて

青く浮かび上がる建物の柱、黄色の街灯、そしてやはりしんしん

と降り続く白い雪が、冷え切った心を象徴しているかのようでした。

 

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