The Witch/魔女

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JUGEMテーマ:韓国映画全般

 

魔女

出典:IMDb

 

「The Witch/悪女」

原題:The Witch:Part1,The Subversion

監督:パク・フンジョン

2018年 韓国映画 125分

キャスト:キム・ダミ

     パク・スヒン

     チェ・ウシク

     チョ・ミンス

     キム・ジョンフン

 

牧場経営しているクは、ある日、敷地内に倒れている

血まみれの少女を発見する。ク夫妻はその少女を

ジャユンと名付け我が子同様に育てることにする。彼女が

高3になった時、母が認知症となり、さらに牛の価格が

急落したことでお金が必要になったジャユンは、親友

ミョンヒの勧めでオーディション番組に応募し、賞金を

手に入れようと考えるが、その番組の放映後、彼女の周りに

不審な人物が現れるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ SF、アクション、サスペンスと

多くの要素が入り込んだ内容ですが、まさかの展開に絶対

に驚くはず


「あの日」のできごと


オープニングはすごい映像なんです。まあ暗くてよく判別

できないけれど、おそらくは死体の山にシーツがかけられて

いて、一方で森の中を走って行く血まみれの子供が映るの

です。それは実は2人いて少年は大人に連れ戻されます。

もう一人少女は、のどかに牛が草を食べている場所に倒れこむ

のです。そしてそこのク夫妻によってその少女は病院で治療を

受けさせてもらい、その家の子供として育てられていくのです。

この過程は一切カットされ、次はあっという間に高校生に

なっている少女ジャユンが登場します。

 

魔女
出典:IMDb

 

ジャユンには前髪にカーラーをつけて薄化粧をしている親友

ミョンヒがいて、彼女の父親は警察官です。またジャユンの

母はどうやら認知症を患い始めているみたい。その上、牛の

価格が暴落し、この家の家計はひっ迫しています。それを

知ってミーハーのミョンヒは「スター誕生」というオーディション

番組に応募することを提案するのです。ジョンヒ役の

キム・ダミが韓国女優さんにしては地味目の顔立ちで、だから

こそ個性があふれているし、後半のバイオレンスシーンで

にっこり笑うときの表情が何とも言えません。
しかしその番組の予選で、彼女は「特技」として「手品」を

披露するのです。これはテレビ映像ではその姿を見る両親の

表情のみで、何をしているのかわかりません。ただこれが会場の

誰もが驚くような「手品」らしい。これも後半にならないと

わかりません。
そして予選を勝ち抜いたジャユンは、ソウルで収録される番組に

出るために、ミョンヒと列車に乗るのですが、その席の前に

座っているのが謎の男です。

 

魔女

出典:IMDb

 

この男ゴンジャ役は「パラサイト 半地下の家族」(2019)

のチェ・ウシク。あの映画の時よりシュっとしたイケメンに

見えるのは役作りでしょうか。
しかしジャユンは時々ひどい頭痛に襲われるし、鼻血も出して

しまいます。やはり冒頭のあの施設で何かされていたに違い

ありません。(そんなことは誰でもわかるって。)

 

魔女
出典:IMDb

 

このテレビ放送を見てにんまり笑う女性は冒頭に登場した施設の

リーダー的存在の人で、「やっと見つけたわ」とか何とか言うの

です。

 

魔女

出典:IMDb

 

彼女のそばにいるのはミスター・チェという顔に傷のある男性。
ここからジャユンはめっちゃ怪しげな車(アメリカならギャングが

使うタイプ)に追われるんですが、その間に遺伝子研究者の家で

一家殺害、放火事件を起こしているゴンジャ組がその車に乗って

いるのでジャユンはク夫妻は無事かどうか大そう焦ります。先回りを

頼んだ相手はミョンヒのパパの能天気な警察官だし...。空っぽの

パトカーだけが自宅の前に止まっているのを見たら、絶対に何か

あったと思いますよ。

 

魔女
出典:IMDb

 

大丈夫です、なにもありません。こんな風に中盤くらいまでは過去の

記憶が一切ないジャユンの身に少しずつ危険が迫ってくるのを

感じるだけの映像が流れます。
そして中盤、深夜ジャユンの家に男たちが侵入し、ミョンヒの首に

刃物を突き立てようとした時から一気にストーリーが動き出すのです。

ジャユン、ウルトラ強い!!!あのおとなしい顔立ちの少女が
ここまで立ち回れるとは、韓国版「アトミックブロンド」と言える

かもしれません。いやブロンドじゃないか。
そしてジャユンはそこでその集団にある場所に連れていかれるのです。

だいたい死体の山があって、銃にも刃物にも彼女の指紋がベタベタ

ついているのだから、ここにいられるはずもありません。
その集団というのはゴンジャが率いていて、これがどいつも何か

ありそうな奴ばかり。そういうジャユンも何かあるはずです。いや

それはもうわかっているんですが、問題は、もう一集団ジャユンを
追う者がいて、それは冒頭にドクターペクの叱られていた

ミスター・チェ。なぜにドクターがチェ外しをしたのかちょっと

わからなかったけれど、たぶんあまり使えないやつだからなんでしょう。
ここからまさかの展開になります。思い描いていたものと全く

変わってくるのでぜひ見てのお楽しみにしてください。
遺伝子操作された脳を持つ集団の中でも最高傑作であるジャユンと

ゴンジャのタイマンも見ものです。
題名を見るとPart1とあり、ラストシーンは続編につながる内容です。

緻密なストーリーと華麗なアクション、バイオレンスシーン、そして

謎解きもあり、久しぶりにぞくぞくとする映画を見ました。

 

 

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アップグレード

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

アップグレード

出典:IMDb

 

「アップグレード」

原題:Upgrade

監督:リー・ワネル

2018年 アメリカ映画 95分 PG12

キャスト:ローガン・マーシャル=グリーン

     ロスコ・キャンベル

     リチャード・カウソーン

     マイケル・M・フォスター

 

近未来、自動運転の車が開発されている中で、グレイは

自らの手で動かす車にこだわり、その車をIT企業の社長

エロンのもとに届ける。そのまま妻アシャの最新の車で

帰途に着くが、車は突然エラーを起こし、暴走したのちに

事故を起こして停止する。そこに謎の男たちが現れ、

アシャはグレイの前で射殺され、彼も脊髄損傷の大けがを

負ってしまうのだった。事件後四肢が麻痺したグレイの

もとにエロンが現れ、「ステム」埋め込み手術を提案するが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 低予算といわれていますが、なかなか

見ごたえのある映画でした。


仮想世界は現実世界より苦しみが少ない


冒頭、ガレージ内で車をあれこれ触る男性が映ります。これは

その直前に見た近未来映像とは異なり、今と全く同じ作業風景で、

これがこの時代には「レトロ」でありつつ、需要があると気づく

のです。

 

アップグレード
出典:IMDb

 

そこに現れるのは、完ぺき自動運転の車の乗った女性で、彼女は

男性グレイの妻アシャなのです。声に反応して車が全て動いて

くれるってすごいよね。これなら運転スキルは問われないし、

いくつになっても運転できるじゃないですか。

 

アップグレード
出典:IMDb

 

そして彼は顧客であるヴェッセル社社長、エロン・カートのもとに

その車を届けるのです。帰りの足がないからと後ろからアシャの

車がついていきます。

エロンの家もものすごく近代的で、そこで「ステム」
という機械昆虫を紹介されるのです。「ふーん」程度に二人は

見過ごし、帰途に着くと、なんと自動運転の車がエラーを起こし、

違う目的地に向かい始めます。さらには声に一切反応しなくなり、
見知らぬ場所で衝突事故を起こすのです。

この時代ではドローンが飛んでおり、あらゆる事象を監視している

らしいのですが、そのドローンが到着する前に、何やら悪そうな

やつらが出現し、アシャは射殺され、グレイも首の当たりを

「バキ」っと切られて倒れます。この違いをよく覚えておきましょう。

わたしはすっかり忘れていました。

 

アップグレード
出典:IMDb

 

3か月後グレイは四肢が麻痺し、機会に頼る生活を送っているのです。

すべて機械ができるとはいえ、細かな介護は母親が担っています。

捜査状況を伝えに来たコルテス刑事の歯切れの悪さから、犯人へと

つながる情報が全くないことに気づいたグレイは薬を過剰に飲み、

自殺未遂を起こすのです。すごいですね。手が使えないので機械が

薬を口まで持ってきますが、致死量に近づくと「これ以上は
投与できません」と反応します。

この映画はかなり低予算で作られたそうですが、さすが「ソウ」

「インシディアス 序章」を手掛けたリー・ワネル監督です。

アイデアが豊富で全く飽きることがありません。

 

アップグレード
出典:IMDb

 

そして入院したグレイのもとにエロンが現れ

「ステムを埋め込めば元のように動くことができる」と言って

帰るのです。ちょっとここで気になることがあって、それが実は

終盤につながるとは全く気づきません。
なんでも「ステム」は脳に反応し、体を動かす指令を出すらしい。

グレイはとりあえず手術を受けるんです。これがまた結構リアル。

リアルすぎる。ところが脳に埋め込まれた「ステム」によって体を

自由に動かせるようになったグレイは、その「ステム」の声を聞いて

しまうんです。つまり自分の中の「ステム」が彼に話しかけてくる

わけで、全く気づかない周りの人から見ると「ちょっとあの人大丈夫

かしら」的状況です。さらに「ステム」は映像解読能力に優れており、

事件の時のドローン映像を細部まで見極めることができます。そして
犯人の一人が分かり、グレイは復讐に向かうわけです。

このあたりでわかりますよね。「ステム」入りの人間がどんなにすごい

パワーを持っているか。ここからはそのものすごいパワーを見せつける

映像の続出です。ピンチになっても爆発的なパワーで敵を倒し、そして

案の定リアルなとどめを刺してくれます。「もうこのくらいでいいよ」

ではないんです。
一方犯人は実は銃を持っておらず、腕から銃弾が出ていたことが

わかると、さらにあれれ?この人たちも何か改造されているのかしらと

思ってしまいます。いえ、改造されているんですけどね。
問題は
For What?
By Whom?
そしてグレイの行動に気づいたエロンによって「ステム」が強制終了

されそうになると、彼はハッカーのもとへ向かい、システムのアップ

ロードを求めるのです。強制終了が進むとだんだん動けなくなるグレイ、
そしてたどり着いたハッカーのもとに、事件の黒幕とエロンが送った

自社の社員がほぼ同時に向かいます。間に合うのか、どちらが勝つのか。

勝つ?もし勝負だとしたら、グレイがアップグレードされればいいの

でしょうか。
終盤は本当のことが次々に露呈し、そしてあちこちでちらりと見かけた

ものが結構重要なポイントだったと気づかされます。そこまで頭を

働かすことがないほど映像が早く、興味深く進むので、おそらく
全部理解できている人はそれほどいないと思います。ここは本当に上手。
結論は多くのこの手の映画とよく似ているものなのですが、このラストは

ある意味ではそれなりに幸せだなと思っています。

 

 

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コリーニ事件

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

「コリーニ事件」

原題:Der Fall Collini/The Collini Case

監督:マルコ・クロイツパイントナー

原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ

2019年 ドイツ映画 123分

キャスト:エリアス・ムバラク

     アレクサンドラ・マリア・ララ

     ハイナー・ラウター

     フランク・ネロ

 

2001年、ベルリン、マイヤー機械工業社長

ハンス・マイヤーが殺害される。犯人は

ファブリツィオ・コリーニというイタリア生まれの男で、

3か月前に弁護士になったばかりのライネンが国選弁護人を

引き受ける。しかしコリーニは犯行の動機など一切黙秘する

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 犯行の動機にはすぐに気が付きますが、

実行しなければならなかった理由を知ると衝撃を受けます。


ワルサーP38


coco-映画レビューサイトのオンライン試写会に当選し、

劇場公開前に鑑賞しました。
原作はフェルディナント・フォン・シーラッハで、デビュー作の

短編小説「犯罪」がベストセラーとなり、この「コリーニ事件」

はドイツのクライスト賞を受賞しています。全く知らない作家

でしたので翻訳された原作小説を読みたくなりました。
舞台は2001年、ドイツのベルリン。高級ホテルのスイート

ルームに滞在する裕福そうな老人が、誰かを笑顔で招き入れる

シーンから始まります。そしてカメラは彼の足だけを映し、

その血で染まった足跡をたどりながら、彼がフロントのソファに

座ると、ようやく顔が映るのです。

「奴は死んだ」

声をかけてきたホテルの女性に彼はそう告げます。
一方新米弁護士のカスパー・ライネンは、この容疑者

ファブリツィオ・コリーニの国選弁護人となるのです。判事も

検察官もベテランであり、証拠はバッチリで、ライネンは文字通り

の国選弁護人としての仕事だけすればいいはずだったのです。
早速コリーニに面会するも彼は一言も発しません。罪の認否すら

できないのです。
ところが被害者の名前を聞いて、ライネンはピンと来ます。また

テレビニュースでこのマイヤーの孫娘ヨハナが後継者になったと

報道されると、それは確信に変わるのです。映像は過去のものに

遡り、少年時代のライネンと母親がいるところへ同じ年頃の少年が

差別言葉を投げかけるとそれを優しく制する祖父が登場します。

これらとヨハナの話を総合すると、ライネンは、コリーニの

孫息子フィリップと仲良しであり、祖父のコリーニにはフィリップ

と同じように可愛がられ、また姉のヨハナとはなかなかいい関係

だったようです。その関係が終わったのは、フィリップが両親と

共に交通事故死したためで、この辺りはやや簡略に描かれています。
思い出が流される一方でマイヤーの検死解剖が行われ、その遺体の

状況だけでも、犯人は彼に強い憎しみを抱いていたことが分かります。

かなりリアルな映像なので要注意です。

同席した検察官は「遺体は人ではなく物と思え」と言いますが、

かつて可愛がってくれた人物であるがゆえにさらに「物」と割り切る

ことはできません。そしてライネンは犯行の「動機」を知るために

コリーニと面会しますが、彼は完全黙秘状態で何も語らないのです。
ところでライネンには一応両親が生きているのですが、父はまだ

彼が小さい頃に家を出たらしく、どういう経緯で知ったのかマイヤー

の葬儀に父が現れてしまい、彼は冷たくあしらいます。原作では
この弁護士役はエリートととして描かれているそうで、敢えて差別を

受けるトルコ人の設定にしたのは、やはり時を経ても残る「差別」

を映像として見せたかったのでしょうか。映画内で

「トルコ人の弁護士は似合わない」とか

「今頃ケバブの店員だったかも」などと言うセリフを吐かれている

ことに象徴されます。
さてイタリア生まれでドイツ育ちのコリーニ役はなんと

「続荒野の用心棒」(1960)

「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012)

のフランコ・ネロです。なんとも味わい深い風貌になりました。
そしてマイヤー側の弁護士は、かつてライネンが刑法を教わった高名な

マッティンガー教授で、彼を信奉するライネンは、コリーニのために

自白をさせ、謀殺(計画殺人)ではなく故殺であることで減刑を

求める裁判にしようと考えるのです。しかしまず「動機」が分かり

ません。生粋のドイツ人のマイヤーとイタリア生まれで仕事上の

トラブルもなかったコリーニを結びつけるものは何か、ライネンは、
ひたすら探し求めるのです。そして事件に使われた銃に注目します。

ワルサーP38。

カール・ワルサー社製の9mm軍用自動式拳銃。1937年に

Heeres-Pistole(HP)の名で開発され、翌1938年にP38として
ドイツ国防軍の制式拳銃に採用された。第二次世界大戦中は

ルガーP08と共にドイツ軍によって広く使用され、終戦までに

約120万挺が製造された。(Wikipediaより)
ライネンは、ここであることに気づきます。しかしそれは自分が

信じていたものを全て壊していく内容を露呈するもので、個人の

愛情か真実かで苦悩するものになります。愛情だけでなく信頼すらも
破壊していく内容です。
これ以降の法廷劇は見ごたえがあり、また「法律」というもので

裁かれるべきことが逆に守られているという不条理さを知ると、

自国の闇を自国民の手で小説にでき、また映画にできるということが

いかに重要であるかを強く感じます。過去に犯したことをなかった

ことになどできないのです。

 

 

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ボーダー 二つの世界

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JUGEMテーマ:コメディ映画全般

 

ボーダー

出典:IMDb

 

「ボーダー 二つの世界」

原題:Grans/BORDER

監督:アリ・アッパシ

原作 脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト

2018年 スウェーデン=デンマーク映画 110分 

R15+

キャスト:エヴァ・メランデル

     エーロ・ミロノフ

 

スウェーデンの空港警備員であるティーナは生まれつき

嗅覚が鋭く、旅行客の持ち込み荷物に不法な物が入って

いることを素早く嗅ぎつけることができる。しかし彼女の

生まれ持った容姿が普通と異なっていたため、山奥に恋人

のローランドとひっそり暮らしているのだった。しかし

ある時旅行者の一人で不審な臭いを漂わせるヴォーレを

呼び止めるが、なぜか彼女は彼に心を惹かれてしまう...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 北欧映画特有の静かでそして残酷な

雰囲気を漂わせる内容です。


復讐か同化か


原作と脚本は「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008)

(この邦題はほぼネタバレするという酷いもの)の

ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストです。2010年に

「モールス」という題名でハリウッドでリメイクされました。

しかしオリジナルの北欧の寒々しい雰囲気かつその中で自然の

美しさを体感するというものには到底及ばず、クロエちゃんが

頑張って演じてくれた主役も、やはりイメージが異なるなあと

いう感じでした。

もちろん「モールス」単体で見ればそれなりに印象に残る

内容です。だってまさかのまさかですから...。

 

ボーダー
出典:IMDb

 

さて今作はまず主人このティーナの容貌や体型が目を引きます。

それはすぐに登場するヴォーレも同じですが、どちらも毎日

4時間かけて特撮メイクを施したとのこと。ちなみに本人のものは

目の玉と唇だけだそうです。ということはあの薄汚れた歯も

メイクでできたわけか。またティーナ役のエヴァ・メランデルは

この役のために18kg体重を増やしたそうです。

 

ボーダー

出典:IMDb

 

実際はこのような美人さんなので役者根性はシャーリーズ・セロン

やクリスチャン・ベイル並みということかしら。
スウェーデンの空港警備員として働くティーナは、通り過ぎる

乗客の臭いで、違法なものの持ち込みをかぎ取る特殊な能力が

あるのです。何かがあると、鼻をぴくぴく動かす様は犬や猫の

ような動物の動きに似ており、この特殊な能力はなぜに備わって

いるのかまず不思議に感じます。
そして森の奥深くの自宅に戻ると、恋人らしき男ローランドがおり、

彼と二人で静かに生活しています。いやローランドがドッグショー

に出すために飼っている犬がティーナに吠える、吠える。さらに
彼はティーナの家に居候しているわけですが、恋人といえる存在では

ないみたい。
ティーナが裸足になって一人森の中に入って行くと、まるで森の

住人のように自由に動き回ることができるし、小動物とも話すことが

できるのです。空港ではその容姿ゆえに人に侮辱的な言葉を投げつけ

られる彼女も森の中では対等に扱ってもらえていることを実感します。

逆にここに普通の人間が来たら、道に迷うし、動物がどこから

飛び出してくるかもわからず、ただ怯えるだけかもしれません。
そしてティーナは空港で上等な身なりの男性がスマホのケースの中に

児童ポルノ映像のSDカードを隠し持っていることを突き止めます。

警察アグネータの「どうしてわかったの?」という問いに対し、
「羞恥、罪悪、怒りなどの感情がすべて臭いとして感じ取れる」と

ティーナは語ります。
ティーナには父親がいて、彼は軽い認知症を患い、今は施設に入所

していますが、その父親はローランドのことを好んでいない様子。

ああ、どう見てもあれはティーナを利用しているだけだものね。

 

ボーダー
出典:IMDb

 

一方、フェリー内のブッフェでサーモンを一人占めし、それを

手で食べる男ヴォーレは、空港でティーナに呼び止められます。

いかにも怪しいけれど、彼の所持品に怪しいものはなく、さらに

彼が不思議なからだの持ち主であることもわかってしまうのです。
それは置いといて、ティーナはこのヴォーレになぜか親近感を

抱くのですよ。はっきり言って見た目がくりそつです。

薄汚れた歯や、垢が入っている爪まで同じなんです。ぴぴぴーん。
あちこちを旅しているというヴォーレにティーナは自宅の離れを

貸すことにするんです。「聞いてないよ」と驚くローランドを

ど無視し、なぜか二人はなんとなくいいムードになります。

幼虫を食べるヴォーレに「そんなものを食べてはいけない」と

ティーナが言うと、「誰が決めた?」との答え。確かに今私たちが

食べている物は誰が「食べることができる物」と決めたのでしょう。

だいたいピーマンなんてちっとも美味しくないものを初めて食した

人は誰だったのかしら。(個人の好みです)
ローランドがドッグショーで家を長く空けた時、突然雷が鳴り稲光が

走り、大雨が降ります。ティーナとヴォーレは異常に怖がるのです。

その前にヴォーレは深夜森の中で大そう苦しんで何かを出して

いたような...。
この雷の後二人で森に出かけると、それはもう自然と一体化した

動物のようであり、そこで起きた出来事は驚くべきことなのです。

しかしボヤボヤで全く分かりません。きっとああで、こうなんだろう。
児童ポルノ事件との関係は、虐げられた者たちが虐げた者たちへの

復讐であるとわかると、ティーナの苦悩は深まるばかりです。

「人間は自分のために他を利用する寄生動物」
どの心が良心なんだろうかと最後まで悩みますが、他者を苦しめたり

悲しませてまでも復讐し続けることに意味があるとは思えません。

しかしそれは立場が逆の場合そう言い切れるかどうか自信がないなあ。

 

 

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カット/オフ

4

JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

カット/オフ

出典:IMDb

 

「カット/オフ」

原題:Abgeschnitten

監督:クリスティアン・アルヴァルト

2018年 ドイツ映画 132分 R15+

キャスト:モーリッツ・ブライブトロイ

     ヤスナ・フリッツィー・バウアー

     ラース・アイディンガー

     ファーリ・オーゲン・ヤルディム

 

検視官ポールのもとに一人の女性の遺体が運び

込まれる。そしてその遺体の頭蓋骨内にあった

カプセルの中の紙切れに、ポールの娘の名前と

電話番号が書いてあるのがわかる。急いで娘に

電話をすると、助けを求める彼女の声が聞こえて

くるのだった...。


<お勧め星>☆☆☆☆半 北欧サスペンス同様に

見ごたえのある内容でした。そして最後まで先が

読めません。


メルセデスの過剰機能は有効


オープニングから大そう不気味です。嵐が吹き荒れる

孤島、ヘルゴランド島のパブに1人の女性リンダがおり、

彼女はどうやらダニーというストーカーから逃れるために

この島にいるらしい。そしてそのダニーからメッセージが

届くのです。おまけに急いで店から逃げ出す彼女を

追いかけてくる男の姿も映ります。大丈夫なのか。

このリンダは結構身軽で、あちこちの塀を乗り越えて走って

逃げるのですが、突然崖をころころ転がり落ち、砂浜に

倒れてしまうのです。薄暗い砂浜には、なんと男の遺体が

あります。なんでやねん!
舞台は変わり、何やら暴行事件の示談交渉をしているらしい

ポールが映ります。ポール役は「エス」(2001)

「ミケランジェロの暗号」(2011)などの

モーリッツ・ブライブトロイ。彼は大学教授で検視官をして

いるのですが、家庭に問題を抱えており、一人娘ハンナとも

うまく行っていない模様。これが暴行事件のきっかけでも

あるのです。

 

カット/オフ
出典:youtube

 

そして1体目の遺体が登場します。「顔から空気が抜けた」

「両手首先が切り取られている」という女性の遺体がリアルに

映ります。遺体なので検死解剖を進めていっても血しぶきは

出ません。しかしかなりリアルなので要注意です。

そして何度も映ります。
なぜ顔から空気が抜けていたのか?それは頭蓋骨内に何かの

カプセルを入れ込むためで、そのカプセルを取り出して、中に

あった紙切れに書いてある文字を見ると、なんとびっくり!

ハンナという名前と彼女の携帯電話の番号ではありませんか。

急いでその番号に電話すると、

「パパ、助けて。警察には知らせないで。エリックを待って」

と娘の悲痛な声が聞こえてきます。さっき喧嘩をしたけれど、
最愛の娘ハンナの大ピンチにパパは居ても立っても居られなく

なります。

 

カット/オフ
出典:youtube

 

そこで突然入り込むのは、若い女性を監禁し、レイプして、その

姿を録画している、ウルトラクズ男の姿です。

まさかこの若い女性がハンナ?
一方リンダが見つけた男の遺体のシャツには「エリック」と

書かれており、その遺体の脇にあったスマホから着信音が流れます。

そこでポールとリンダが繋がるのです。ところがリンダのいる場所は
例の孤島であり、嵐のため数時間外部への出入りができない状況です。

ここでポールは友人で、病院の用務員をしているエンダーを教えるん

ですね。

 

カット/オフ

出典:youtube

 

ポール、リンダ、エンダーが揃いました。
遺体にさらなるメッセージがあると推理したポールは、リンダに

遠隔指示で「検死解剖」をさせるのです。

「あたしベジタリアンだから、肉は切れない」

冗談にもならない言葉を発するものの、リンダは遺体に近寄る

ことすらできないエンダーと違って、果敢に行動します。ここが

またリアルなんです。

遺体に舌がない→のどの奥深くに黄色のカプセルが入っている

→それを取るために喉を切る。
検死官は、どんな遺体でも平気で解剖できるのでしょうか。外科の

看護師の知り合いがいて、彼女が言うには

「手術はきれいに切っていくから平気。事故のけがは少し気になる」

程度だそうです。

 

カット/オフ
出典:youtube

 

また、ポールを助ける、空気が読めないが人のいいインゴルフと

いうインターンになりそこなった男も登場します。つまり4人で

事件の謎を探っていくわけです。
ポールはなぜ娘を誘拐されなければならなかったのか。そこに

気づいた時には、行く先々で遺体が転がり始め、一つの結論に

達するかと思うと、おおう、見事なフェイントです。

とにかく先が読めません。
島で解剖室にいるリンダとエンダーも、停電や点滅する電気、さらに

リンダの耳に残るダニーの声に悩まされ、いつになったらここを

出られるのかと、見ている方がハラハラドキドキしっぱなしです。
何が彼らを救ったのかと思うと、さすがドイツ映画だなと思って

しまい、少しだけ笑えます。いや、ラストまで笑えなかったですよ。

笑えたのは見終わってからです。

 

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8番目の男

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

8番目の男

出典:IMDb

 

「8番目の男」

原題:Juror 8

監督:ホン・スンワン

2018年 韓国映画 114分

キャスト:パク・ヒョンシク

     ムン・ソリ

     ペク・スジャン

     キム・ミジョン

     イ・ジョンヨン

     イ・ヨンジン

 

2008年、ソウルで韓国初の国民参与裁判が開廷

する。様々な境遇の8人の人々は、既に自白をして

いる被告への量刑だけを決定するという内容だったが、

被告が容疑を否認し、また証拠に対する疑問の声が

上がったことで裁判は一変してしまう...。


<お勧め星>☆☆☆☆ コメディなんだけれど、法廷映画

としても見ごたえがあり、無駄のないストーリー運びです。


法は人を罰しないためにある


日本では2009年に裁判員制度が導入されましたが、

その制度によって決定した判決が、2審で覆ったり、

量刑の大幅な変更があることが多く、その制度そのものへの

不満も高まっています。一般人の意見を取り込むはずの

裁判員制度が、結局は司法の側の人間の意見のみが反映

されていると思われるからです。市井の人間と法の番人たち

との感情や常識の乖離も感じることがあります。
さて韓国ではその1年前に国民参与裁判が始まっていました。

この映画はその制度が開始された時の初めての裁判風景を

描いています。韓国の司法はとかく世論の影響を受けやすい、

世論に迎合しやすいと言われています。

映画内でも「コネ」のないキム裁判長が、その上司から

「ここで手柄を上げればお互いに出世できる」

「世論の注目を浴びでこの制度が認識される」などと

言われるシーンがあり、司法の独立というものがかなり

危うく感じられます。しかし映画を見ていくと

「法は国民の常識」

「冤罪を防ぐための基準が法」

という強い意志をもって職務に臨むキム裁判長の姿が感じ

取れます。

 

8番目の男
出典:IMDb

 

このキム裁判長役のムン・ソリがヒロインだった

「オアシス」(2002)は必見映画!!脳性麻痺の女性を

ムン・ソリが熱演しており、社会不適応者である前科者の男

との純愛は、必ず涙がこぼれるはずです。何が正しくて何が

正しくないか、それを訴えることができない者たちの姿には

胸が締め付けられるようになります。
事件は、無職のカン・ドゥシクが自分の母親の頭を金づちで殴り、

住んでいた団地のベランダから投げ落としたというもので、

ドゥシクは当時階段から落下して気絶しており、3日後の病院で

母親殺しを自白したため、その間に証拠や目撃者集めは十分

行えていました。したがって陪審員は、ドゥシクへの量刑を

話し合えばよかったのです。

 

8番目の男
出典:youtube

 

ドゥシクは幼い頃、母親のせいで大火事に遭い、全身に大やけどを

負っていたこと、一家の収入を支えていた母親が腰を痛め、

生活が困窮し、生活受給を求めるも拒否されていたこと、少年院

入所歴があること、前科5犯であることも「彼が犯人説」を

ゆるぎないものにしていた理由でもあります。
しかし1人の陪審員が「質問」をしたことで法廷の空気が

変わってきます。
「金づちで殴るともっと血が飛散する」
彼が遺体清拭の仕事を30年務めており、その経験からの発言

だったのです。もちろん不規則発言により彼は退廷となりますが、

「ドゥシクは指がないんじゃないか」

「指がないのに金づちを振り下ろせるのか」
陪審員の中で、被告の罪への疑問が高まっていきます。ここで

すぐに実験へとつながるところがすごいです。裁判員になった

経験どころか候補の手紙が来たことすらないし、実際の裁判の

風景を見たことさえないので、全く分かりませんが、日本だったら

意見を求められたときのみ発言できるだろうし、もし実験が

必要となったら、後日に変わるんだろうな。

 

8番目の男
出典:youtube

 

危険な目に遭っても表情一つ変えないキム裁判長とは対照的に、

陪審員たちは、控室で素の姿を見せます。

「団地住まいだから貧しい」

「あんな髪の毛を染めた娘の証言などあてにならない」

「上の言うことはすべて正しい」
ところが8番目に決まった陪審員のクォン・ナムは、とにかく

疑問を持ち、徹底的に調べることを主張します。それに同調する

のが、法学生の男性と団地暮らしを経験していた女性です。

 

8番目の男
出典:youtube

 

すぐに終わるはずの裁判が、深夜まで及び、日ごろは役所に頭を

下げたり、上司の顔色を窺っていた人々が、つかの間ではある

ものの、権力の側を動かすことができた時に快感は、その時の

陪審員の嬉々とした表情に浮かんでいます。
「頑張れば奇跡は起きる」カン・ドゥシクの家の冷蔵庫に貼って

あったメモの言葉です。物事のきれいな面だけを見せ続けることが、

人々を幸せにするということは大きな間違いであるし、頑張った

分だけ報いがあるなどと思うのは、薄っぺらい希望的観測に

すぎません。しかし、頑張っても這い上がれない人々の姿を垣間

見ることができたこの映画はやはり素晴らしいと思います。

 

 

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工作 黒金星と呼ばれた男

3

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工作

出典:IMDb

 

「工作 黒金星と呼ばれた男」

原題:The Spy Gone North

監督:ユン・ジョンビン

2018年 韓国映画 137分

キャスト:ファン・ジョンミン

     イ・ソンミン

     チョ・ジヌン

     チュ・ジフン

 

1990年、IAEAから北朝鮮が脱退し、朝鮮半島の

緊張が高まる中、将校だったソギョンは、安全企画部

の工作員にスカウトされる。彼は貿易商として北朝鮮

に潜入し、政権の幹部と接触することを試みるの

だったが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ まさにリアルなスパイ映画の

真骨頂です。テンポもよくスリルにあふれています。


権力の保持には敵が必要


最初からこんなことを書くには気が引けるけれど、とにかく

「すごいなあ」。ここまで緻密なストーリーとテンポの

良い映画を作れるとは本当にすごいんですよ。

「パラサイト」(2019)がカンヌ映画祭でもアカデミー賞

でも認められたのも頷けます。いくつかの映画でしばしば

見かけるわき役も含め、俳優陣の演技力も素晴らしいし、

スパイ映画に不要な「恋愛」がゼロというのも素晴らしい。
(実話ベースだから当たり前か)

今回の主役パク・ソギョン役は、どんな役でもこなせる

ファン・ジョンミン。「国際市場で逢いましょう」(2014)

では、常に笑顔を絶やさず、必死で願いをかなえようと奮闘する

男性を演じ、「哭声」(2016)では、怪しげな祈祷師を

演じていました。笑うととても優しい表情になるのに、瞳の

奥に怒りや憎しみをたたえることもできるし、やさぐれた男も

ぴったりなんです。
「俺、主役」的な雰囲気はみじんもありません。

朝鮮戦争が休戦となり、南北に分かれた朝鮮半島で、北朝鮮は

1990年にIAEA(国際原子力機関)から脱退を表明します。

そこで一気に米韓との緊張が高まるのです。そして韓国側は、

北の核開発の状況を知るために、あらゆる手段、資金を駆使し、

水面下で動きますが、安全企画部のチェ室長は、将校ソギョンを

スカウトして、彼を工作員として北に潜入させようと考えます。

 

工作

出典:IMDb

 

工作員になるために準備は入念で、偽りの過去を築いていく

過程がササっと描かれます。
そして彼のコードネームは「黒金星」。得意な笑顔と人の

よさそうな雰囲気で、北朝鮮の幹部と親しくなるために、

奮闘していきます。そこには、尾行、盗聴、裏切りは存在

して当然であり、そこをいかに切り抜けていくかが、序盤から

スリル満点に描かれていくのです。ダレるシーンはゼロ。

個人的に最も嫌いな、逃げる場面で、わざわざ振り返るとか、

大事なものを落としてしまうとか、見つめ合ってしまうとか、

そういう類の無駄は一切ありません。

 

工作
出典:IMDb

 

遂にソギョンは、リ・ミョンウンという北朝鮮の幹部と接触

できるのです。そこでは、逆に「北の工作員」になることを

求められてしまうのですが、それももちろん計算済みです。

同席した対外経済課長チョン・ムテク役はチュ・ジフンという

高身長でイケメンな俳優さん。モデル出身で

「アシュラ」(2016)にも出演していました。まさに

クールビューティです。(男性にもあてはまるのかしら)
ところが、実際の話は南北のイデオロギーの対立という単純な

ものではなかったことが分かってくると、あれ?これはどこかで

見たことが、聞いたことがあるような情報だと感じてきます。
北の核施設の状況を知る以上に大事なのは、韓国国内の大統領選挙

の行方であり、そのためにはイデオロギーなど捨て、北の力を

借りるのです。おそらくずっとこうしてきたのでしょう。

まさに裏の裏の裏を見せられた気分になってしまいます。自国を

売るのが、まさか自国の政府の要人だとは、多くの誰もが気づいて

いないと思います。
映画内で、金正日に扮する俳優さんが、本当にそっくりで、その

立ち居振る舞いや話し方を、かなり研究したことがうかがえます。

人前で話すことがほとんどなかったと言われているのに、よく

真似できたものですね。

 

工作

出典:IMDb

 

彼の飼い犬がマルチーズで、それはそれは可愛いのが素敵♡
平壌の街はあれほどまでに整備されていたのに、核施設付近の

ヨンビョンでは、そこらあたりに遺体が転がり、薄汚れた人々が

表情もなく路上に座っているのを見ると、この国の状況を改め

て思い知らされます。
とはいえ、韓国国内も「パラサイト」に描かれていたように、

高級住宅地で優雅に暮らす人々から、半地下で携帯の電波すら

入りづらい家に住む人々がいることを知ると、どちらも

変わらないのではないかとも思えるのです。
そしてその状況を北の幹部も憂えているけれど、それを口に

できない監視下にあります。
終盤のソギョンとリ所長が金正日と面会するという大きな冒険は、

まさに息をのむシーんであり、ピンと張り詰めた緊張感が見ている側

にも伝わってきました。絶対的な権力者に対する恐怖はこういう

ものなのでしょう。
南北境界線での武力衝突の真実を知った時、そういう自国の闇の

部分をしっかり映像化できる国は、未来に希望があると実感します。

 

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パラサイト 半地下の家族

4

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パラサイト

出典:IMDb

 

「パラサイト 半地下の家族」

原題:Parasite

監督:ポン・ジュノ

2019年 韓国映画 132分 PG12

キャスト:ソン・ガンホ

     イ・ソンギュン

     チョ・ヨジョン

     チェ・ウシク

 

キム一家4人は、半地下の住宅で貧しく暮らしている。

ある時長男ギウが留学する友人の代わりに富豪の家の

娘の家庭教師をすることになると、彼は次に妹ギジョン

を息子の絵の教師として紹介し、一家は次第にその家に

入り込んでいくのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ ソン・ガンホの存在感はかなり

大きいけれど、それ以上に丁寧なストーリーと美しい

ピアノメロディが心を揺さぶります。


純粋と無関心と雨


黒澤明監督「天国と地獄」(1963)では自宅のアパート

の窓から見上げると、視界に入る白い豪邸に住む裕福な

人物に憎しみを抱く青年の姿から始まる映画でした。

アパート内の暑さで額や腕に吹き出す汗が玉のように光る

のが強く印象に残っています。その時代から存在する

格差社会は、現在さらに広がっているのは周知の事実です。
ポン・ジュノ監督映画「スノーピアサー」(2013)では

走り続ける列車の車両ごとに人々の階級が分かれていたし、

「オクジャ/okja」(2017)では山奥に暮らす純朴な

少女とスーパーピッグを巡る都会の欲にまみれた大人たち

とのある意味での戦いを描き、そこでも田舎と都会の格差を

感じさせられました。「スノーピアサー」に関しては

真面目なストーリーなのに突っ込みどころが満載で、
やや残念な思いを抱いたのを覚えています。

さて、この「パラサイト」は韓国映画でしばしば登場する

貧しい一家が主人公です。切れ切れの会話からわかるように、

元運転手のキテク、元ハンマー投げの選手の妻チョンソク、

大学入試に数回失敗している息子ギウ、美術の才能?がある

らしい娘ギジョンは、すべて定職がなく、ピザの箱組み立ての

内職で、わずかなお金を得ているにすぎません。したがって

窓から見えるのが人々が歩く地面であるという半ば地下の

ような場所に住んでいるのです。

 

パラサイト

出典:IMDb

 

トイレはなぜか地上と同じ位置にあるという作りなので、中盤の

豪雨の時に家中が水であふれかえってもそこだけは水が到達せず、

逆流するトイレのふたを閉めてギジョンが煙草に火をつけ、

フーっとくゆらすシーンは、彼女がとても物憂げでかっこよく

見えてしまいます。その間もトイレのふたから黒い汚水が逆流

しているんですけどね。

 

パラサイト
出典:IMDb

 

題名から推察できる通り、彼らはIT企業の社長の家に、家庭教師、

美術教師、運転手、家政婦として巧みに入り込んでいきます。

この方法は4人が力を合わせ、知恵を絞って行うもので、そこには
「家族」のある意味理想的な姿

(助け合い、互いを認め合うということ)

が感じられるのです。

とはいえ前半はその行動がところどころクスリと笑えるもの

ばかりで、1言だけギテクが

「クビになった運転手、どうしたかな?」
と心配するシーンがありますが、それも

「若いし体も大きいからほかで働いてるわよ」という家族の言葉で

打ち消されます。他者への思いやり、つまり社会的に底辺に

暮していても人間としての心は決して忘れていないことに

気づかされるのです。

 

パラサイト
出典:IMDb

 

とはいえIT会社の社長一家が極悪人かというとそうでもない。

夫は会社ではバリバリ働いているし、妻は美しく着飾り、

それなりに家族を思いやっています。娘、息子は個性あふれて

いますが、彼らも1つの家族として社会に存在しているのです。
彼らの状況が一転するのは「豪雨の日」からです。

大雨が降り、雨水が濁流のように流れ出して、それはどんどん

下へと向かうと、当然半地下にあるキテクの家はどうなるか。

それはそこに住む者は絶対に想像ができるけれど、そういう家が

存在することを知らない人たちには、大雨の後はpm2.5が飛んで

ないとてもいい天気ということになるのです。
序盤からフツフツと泡を立てては消え、また立ち始める泡は、

いつしか沸騰に近くなり、それがいつあふれるのか。
ピアノの美しい音色のBGMの中で一枚ガラスから見える緑の

芝生の景色はまるで絵画のようで、そこに誰がいようとも

その姿を変えることはありません。
純粋が罪ではなく、純粋でいることを求められるのが罪なのかも

しれないなあ。
ほぼ満席の劇場で誰も途中席を立つことがなく最後まで静かに

鑑賞していました。そんな素晴らしい映画です。

 

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ザ・レポート

4

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ザ・レポート

出典:IMDb

 

「ザ・レポート」

原題:The Report

監督:スコット・Z・バーンズ

2019年 アメリカ映画 119分

キャスト:アダム・ドライバー

     コリー・ストール

     イベンダー・ダック

     ジョン・ハム

     リンダ・パウウェル

 

CIAがテロ容疑者として拘束した人物に拷問を行って

いたという記事がNYタイムズ紙に掲載される。ダンは

民主党の議員から、上院調査委員会でその事案について

調査を開始するが、そこで見つかるのは驚くべき事柄

ばかりであった。


<お勧め星>☆☆☆☆半 今年の配信映画の中では群を

抜いて素晴らしい出来です。丁寧でスリリングな描き方は

一気見できるものです。


公正な法治国家であるために

 

 

<ほぼネタバレです>

 

 


映画を見始めてまず戸惑うのはアメリカの議会における

委員会の存在で、主人公のダンがいったいどういう立場

なのか分かりづらいとも思えます。
二院制であるアメリカでは上院、下院が存在し、定数の

少ない上院に「委員会」が設けられているのです。そこには

常設の「常任委員会」と案件ごとに必要に応じて設置される

「特別委員会」があり、ダンが活動したのは「情報委員会」

です。

 

ザ・レポート

出典:IMDb

 

これはアメリカの諜報に関わる事案やCIAなどの組織の

監視も行うの目的を持っています。これも映画になった

元CIA職員スノーデンによる内部告発事件やトランプ大統領

によるロシア疑惑を調査しているのもこの委員会です。

構成は共和党、民主党から15名人員を出す超党派の会で、

公平に調査をすることが目的なのですが、映画内でも出て

くるように身内の議員や当時の大統領の責任が及びそうに

なってくると、共和党の委員は抜けれしまうのです。だんだん

メンバーが減っていくのが、映像で克明に映されます。
さてこのCIAによる拷問というものがなぜ始まったのかというと、

それはもちろん「9.11テロ」が発端なのです。この時のテ

ロ犯の情報を事前につかんでいたにも関わらず、テロが起き、

多くの犠牲者を出したことはアメリカの威信傷つけ、多くの

国民の心を傷つけ、ひいてはCIAの威信も傷つけてしまいました。

そしてテロを恐れるあまり、あまりに無謀な手法で容疑者への

尋問が開始されたわけです。

 

ザ・レポート
出典:IMDb

 

それはEITプログラム(強化尋問テクニック)と呼ばれ、

ミッチェル、ジェセンというこれまで尋問経験のない畑違いの

分野の博士が考案した、極めて残酷で非道な手法です。

 

ザ・レポート
出典:IMDb

 

彼ら、空軍のSERE(Survaival,Evasion,Resistance,Escape)

の教えを逆用して、収容者を従順にさせるために手段で、これに

よって「テロを防ぎ国民の生命を守る」「特別な情報を得る」

ことができると発表します。

内容は3D(Debility,Dependency,Dread)。これはパワーポイントで

説明している博士が自信満々で、見ているCIA幹部も納得して

いるように見えますが、はっきりいって「拷問」それも
ジュネーブ条約など一つも考慮していない「目的のために

手段を選ばず」の究極の姿にように感じられるのです。これで

有益な情報が得られたのかどうかは、既に検証済みですね。

おまけにこの2人には多額の報酬が支払われていたのです。
ダンが調査を進めて行くにつれ、大きな闇が深まる一方であり、

それによってCIA、司法総省から妨害工作が幾度となくなされます。

シュレッダーかけて書類を破棄し、元データを完ぺきに消去して

しまえば「ありません」との報告で済むわけがないのです。

さらにこの調査が7年にも渡ったことで、大統領選があったり、

アメリカ国民が最も恐怖を感じる「テロ計画の存在」の報告が

CIAから出されます。常に敵を作りそれと戦うことで結束を

固めて来た国では、この「テロ」には極めて過敏にならざるを

得ません。
しかしこのCIAの手法は、過去には南米で、ベトナムで実行され、

1978年に効果なしと結論付けられていたものなのです。そこも

削除されてしまうという行為は、失敗から学ばない姿勢そのもの
かもしれませんね。また自らの行為を正当化するために、つまり

EITプログラムの効果を示すために、CIAの自作自演ともいうべき

爆破事件が起きている事実もわかるのです。

 

ザ・レポート
出典:IMDb

 

ダンは自らの生活を引き換えに7年を費やして国の正義を守ろうと

しましたが、その結果、報告書は発表されたものの、ダンは職を

去り、EITに関わったCIA職員は昇進し、中には長官まで上り詰めた
者もいると字幕で流れます。
「捕虜を痛めつける兵士は卑劣で恥ずべき人間だ。そのような者は

重罪人と同様に厳罰に処すこととする。なぜならばこのような行為は

自分自身だけでなく祖国をも堕落させるからだ」という

ジョージ・ワシントン大統領の建国の言葉はいつ何時も忘れずに

いたいものです。アメリカ国民じゃないけど。
そしてダンの言葉「僕らの世界では紙は法を守るために使うんだ」。

絶対に忘れてはいけません。
この映画はAmazonの配信のみなので、ぜひとも劇場公開してほしい

と思っています。

 

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ジュリアン

4

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ジュリアン

出典:IMDb

 

「ジュリアン」

原題:Jusqula la garde/Custody

監督:グザヴィエ・ルグラン

2017年 フランス映画 93分

キャスト:レア・ドリュッケール

     ドゥニ・メノーシェ

     トーマス・ジオリア

     マティルド・オネヴ

 

離婚調停中の両親を持つジュリアンは、裁判所の

決定で父と面会を重ねている。しかし父は執拗に

ジュリアンに母の居場所を問い続け、遂にそれが

バレてしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ この問題は全世界共通だし、

それを真っ向から描くとこのように恐ろしいものに

なるのだと実感します。


人間ドラマじゃないよ、ホラーだよ!


コンコンコンと響き渡る靴音は裁判所で離婚調停の

裁定に向かう女性判事のものであり、それが今から

始まるこの人間の愛憎ドラマの幕開けを告げます。

この調停はある一組の夫婦の離婚の件であり、離婚は

納得済みで、11歳の下の息子ジュリアンの共同親権

と面会権を求める夫とそれを拒否する(生活費の話

よりここが重要)妻との争いなのです。パッと見て

明らかに妻は夫を恐れており、やつれているのが
分かります。一方の夫は、極めて温厚で子煩悩のように

見えるのです。妻側が出したジュリアンの手紙には、

この父を「あいつ」「二度と会いたくない」と書かれて

います。これが真実かどうか。

 

ジュリアン
出典:IMDb

 

夫側の弁護士が持っている職場の同僚や狩猟仲間の証言は、

明確な証拠であり、逆に妻側の証拠は第三者の裏付けが

乏しいものなのです。
「息子が自分を憎むように妻が唆している」と話す夫の

言葉もにわかに信ぴょう性を帯びて来るではありませんか。

DVはその時々に写真に撮り、診断書を添えなければ何の

証拠にもなりません。例え腕が折れようが顔を殴られようが、

「証拠」がなければその事実が認められることはほとんど

ないのです。

 

ジュリアン
出典:IMDb

 

今回は、たまたま娘ジョゼフィーヌへの暴力の証拠が存在

しましたが、それも学校の保健の先生のもので、作成された

のが、怪我をしてから3年後というのも問題です。

さらに今回はジュリアンの件を話し合っているので、これは

考慮されません。

 

ジュリアン

出典:youtube

 

「息子には父親が必要だ」と100万回くらい聞かされた

戯言を信じるのも当然なのです。
これ以降、父と面会するジュリアンの憂鬱そうな顔が幾度と

なく映ります。ジュリアンが家から出るのが遅いと、何度も

クラクションを鳴らす父を見ると、それが彼のすべてを

物語っているように感じます。
ここに来るまでにどれだけの苦労、苦痛を受けて来たのか、

妻や子供の気持ちに思いを馳せてしまうのです。
しかし父の希望が、ジュリアンとの面会でなく、妻ミリアム

との復縁だとわかってきた途端、もうホラー映画のように

感じられてきます。妻のいる場所にいつも止まっている

白いルノー、カングー。
最初、父の車に乗った時、しっかりシートベルトを締めている

父と、なかなかシートベルトを締めないジュリアンが、

「チンチンチン」

というアラーム音と共に映ります。
「シートベルトを締めなさい」と父に言われ、いやいや締める

ジュリアン。しかしその父が怒りに任せて運転を始めると、

父の方がシートベルトを締めず、ジュリアンがさッとベルトを

締めます。この時もアラーム音が鳴っているのです。後半は

ほぼこれが鳴ってばかりで、それが父の怒りのバロメーターでも

あると気づきます。
1万歩譲って、父の気持ちになると、彼の父親が同じように

暴力的で短気であり、母親はデリカシーに欠ける人間で、そんな

彼らに育てられたら、「愛情」に飢えてしまうのかもしれません。

そんなことは妻や娘、息子には一切関係ないことなのです。

そっちはそっちでやってほしい。
不快なほど何度も鳴らすクラクション、深夜の玄関ブザーの連呼、

そして...。
終盤は、もう完ぺきなホラー映画です。「シャイニング」かよ!

最後まで緊張の糸が切れることのない映画でした。

 

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