弁護人

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弁護人

 

「弁護人」

原題:The Attorney

監督:ヤン・ウソク

2013年 韓国映画 127分

キャスト:ソン・ガンホ

     イム・シワン

     キム・ヨンエ

     クァク・ドウォン

     ソン・ヨンチャン

     オ・ダルス

 

1978年高卒で裁判官になったウソクは、

不動産登記専門弁護士に転身する。彼は、次々と

仕事を拡大し、釜山で最も稼ぐ弁護士の1人となるが、

その彼がかつて世話になった食堂の息子が不当な

裁判を受ける話を知ってしまう。


<お勧め星>☆☆☆☆ やはり丁寧に作られており、

俳優陣の演技力も素晴らしいです。


愛国と正義は共存しないのか


ソン・ガンホが主演なので安定の演技力なのは当たり前

のこと。そういえばこの人、朴槿恵大統領時代

「ブラックリスト」に載っていた俳優の1人だとか。

つまり国家を批判したり扇動する恐れがある人たちの

リストがまだ存在したということなのですね。
映画の前半では高卒で異例の裁判官となり、ひたすらお金を

稼ぐことに明け暮れる弁護士に転身するウソクと、後半には

国家保安法違反で逮捕された知人の息子の弁護をする

人権派のウソクはまるで別人のようです。ソウル大での

デモについて「勉強が嫌いだからデモなんかするんだ」と

言い切るのは、彼が大学に行っていないことへの劣等感の

裏返しであり、それはかつての学戦運動の際、それを阻止

する機動隊員が「あんな学生たちは親からの金でのほほんと

暮らしているとんでもない奴らだ」と刷り込まれた構図と

似ているかのように感じます。自分の知らないことを知る

努力をしないと、誰かの言いなりになってしまう。それは

とても恐ろしいことです。
映画内で出てくる釜林(プリム)事件は、全斗換政権が

釜山地域の民主勢力を抹殺するために、学生や社会人を

不当に逮捕、監禁、拷問した事件で、この拷問から自白調書を

書かせるシーンまでがまことに生々しく描かれています。

クァク・ドウォン警監演じるチャ・ドウォンが、また怖い

のなんのって。そしてその拷問を受けた1人ジヌ役はZE:Aの

イム・シワンで、韓国ってアイドルでもこんなリアルな役を

演じるんだと感動すら覚えるのです。
昔の恩人の息子のために税法専門の金儲け弁護士から一転して

人権派弁護士と変わり、それによって大企業の顧問弁護士の

座も捨ててしまう。そこまでしてウソクが求めたものは

何だろう。当時(今も多分そう)韓国司法界は、出来レースで

あり、いかに「量刑」を軽くするかを裁判官、検事、弁護士で

前もって打ち合わせているという、およそ真理の追求とは程遠い

もの。したがってウソクの求める「無罪」というものを勝ち取る

ことは限りなく困難であり、次々に証拠を出しても、それを覆す

不条理な手段を使われるのです。たまたまウソクがジヌと接見

でき、彼の体に残る拷問の跡や彼の話を聞けたから、裁判でも

主張はできたけれど、もし会うことすらないまま裁判に入って

いたら、不当な逮捕、さらに国家転覆計画の疑いなど晴らす

こともできなかったのです。いや、結局晴らせないけれど。
ウソクの孤軍奮闘ぶりは一般庶民からすると極めてまっとうな

ことなのに、全てを拒絶され、法をふりかざして「愛国」を

声高に叫ぶ権力には、立ち向かうことができないのです。
韓国にすると、北朝鮮というのは自国の領土を共産主義の金氏が

率いる労働党が占領しているという考えがあるわけで、2国の

存在を主張する人々は、そもそもの建国精神を揺るがすことに

ほかならないのです。このソン・ウソクが後の廬武鉉大統領が

モデルとなっており、彼の最期は韓国歴代大統領の

それと同じ道筋をたどったものの、1つ異なるのは、彼の死後、

彼への評価が見直され、極めて高い人気を保っているということ。

彼は最後まで庶民に寄り添う人間だったのでしょう。

 

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ミモザの島に消えた母

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ミモザの島に消えた母

 

「ミモザの島に消えた母」

原題:Boomerang

監督:フランソワ・ファブラ

2015年 フランス映画 105分

キャスト:ローラン・ラフィット

     メラニー・ロラン

     オドレイ・ダナ

     ウラディミール・ヨルダノフ

 

アントワーヌは30年前溺死した母クラリスの死について

疑念を抱く。しかし妹アガットだけでなく、父、祖母など

周りの人間すべてが、その話を語らない。彼は自力で真相を

探り始めるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 美しい自然美とその中で

繰り広げられる謎めいた人間模様が上手く対比して

います。

 

誰もが苦しみを隠していた

 

干潮の間だけ渡ることができる「ゴア通路」。

 

ミモザの島に消えた母

 

フランス西部の島ノアールムーティエ島の本土への通路で、

1971年に有料道路ができたものの、800mほどの距離を

結ぶこの通路は今なお利用されているとのこと。島がミモザの

名所で知られていることから、このような邦題になったの

でしょう。美しい海岸、青々とした木々が風に揺らめき、

明るい太陽光が降り注ぐ、そんな景色を見ていると画面に

吸い込まれそうになります。
原作は「サラの鍵」のタチアナード・ロネ。原作は読んで

いませんが、映画はとてもよくできたものでした。

 

ミモザの島に消えた母
 

冒頭アントワーヌ、アガット兄妹が島からの帰り道の車内で

口げんかをし、そのまま交通事故を起こします。アントワーヌ役は

「エル ELLE」(2016)のローラン・ラフィット。

アガット役は「イングロアス・バスターズ」(2009)、

「オーケストラ」(2009)などで美しいだけでなく芯の

強い女性を演じたメラニー・ロラン。
アントワーヌは30年前、ノアールムーティエ島の沖で溺死した

母クラリスが、彼に「ゴア通路の驚くべき歴史」という本を

遺していたことで、彼女の死に急に関心を持ち始めるのです。

しかしきっかけはそれだけではなく、彼自身が離婚の傷から

立ち直れす、セラピーに通っていることも理由の一つかも。

彼は「自分がなぜ元妻に愛されなくなったのか」その理由が

理解できなかったのかもしれません。それをたどっていくと、

自分が母の死に何かを知っていて、その記憶が封印されて

しまったことに、30年たった今気づいたのでしょう。
妹アガットは母を「クラリス」と呼び決して「ママ」とは

言いません。さらに父、祖母、かつての使用人さえ、母に

ついて多くを語らないのです。「蒸し返すな」と。

 

ミモザの島に消えた母
 

映画の序盤から感じるのですが、この兄妹は決して父と面と

向かって話しません。父は絶対的権威として彼らを守って

きたのです。しかしアントワーヌは、その姿がまるで実の娘

マルゴに対する自分の態度と全く同じであることに気づく

わけです。
これはもしかしたら裕福な家系である自分の家の「しきたり」

のようになっていたのではないか。

 

ミモザの島に消えた母
 

事故後収容された病院で、アントワーヌは遺体安置所で働く

アンジェルと知り合います。先に自分の生い立ちを話したのは

アンジェルで、アントワーヌはやはり話せないのです。

その心の葛藤と、真実を知りたいという強い願望にかられた時、

彼はどう行動するか。
この映画の中には悪い人間は誰も登場しません。誰もが大切な

ものを守るために「真実」を隠し続けてきたのです。ひとり

ひとりの心理状態を丁寧に描き、最後は各々が再生していくで

あろう姿を映すことで未来につながる内容になっています。
最近見た中では最も心に残る映画です。

 

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アシュラ

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アシュラ

 

「アシュラ」

原題:Asura:The City of Madness

監督:キム・ソンス

2016年 韓国映画 133分 R15+

キャスト:ファン・ジョンミン

     チョン・ウソン

     チュ・ジフン

     クァク・ドウォン

     チョン・マンシク

 

警官のドギュンは、職を辞し、市長ソンベの下で

働こうと考えていたが、思わぬアクシデントから

上司を殺害してしまう。彼はチンピラを犯人に仕立て

上げるが、検察から執拗な追及を受け始めるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ すごいですねえ。悪と暴力が

渦巻く世界を色気を一切排除して描いています。

 

一番悪い奴は誰だ

 

「国際市場で逢いましょう」(2015)のファン・ジョンミンは

架空都市アンナムの悪徳市長を、「私を忘れないで」(2016)

でイケメン弁護士を演じたチョン・ウソンは、市長の手先となって

動く飼い犬同然のクズ警官ドギョンを演じています。

 

アシュラ

 

アシュラ

 

そしてドギョンの部下で使命感に燃える警官ソンモ役は

「コンフェッション 友の告白」(2014)のチュ・ジフン。

 

アシュラ

 

オープニングシーンでは純朴だった青年が、市長の下で働き始める

うちに、どんどん凶悪化していく姿は見ものです。韓国警察の

腐敗ぶりは、多くの映画で描かれており、特段驚くことはないの

ですが、この映画では誰も彼もが腐っています。ズブズブのワルの

市長を何とか立件しようとするキム検事とて、目的のためには手段を

選ばず、暴力を伴う脅迫同然の方法で、ドギュンを利用しようとする。

このキム検事の部下に、おなじみのチョン・マンシクが登場。

ドギュンに拷問に近い暴行を加えるときの表情が嬉々としていてそこが

また怖いです。

 

アシュラ

 

実はドギュンには重い病を患う妻がおり、その治療費用を工面

するために、市長の犬になっていたのに、その場しのぎの行動の

連続でどんどん窮地に陥ってしまいます。市長側、検察側の両方から

責めたてられ、彼の美しい顔には傷が増えるばかり。

クライマックスの葬儀場シーンでは、一発の銃声がゴングのように

鳴り響くと、銃で、斧で、なたで、あの人もこの人もそんな人まで

血みどろになって倒れていきます。そのカメラワークは素晴らしく

臨場感あふれる映像でした。

 

 

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グランド・イリュージョン 見破られたトリック

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グランドイリュージョン2

 

「グランド・イリュージョン2 見破られたトリック」

原題:Now You See Me 2

監督:ジョン・M・チュウ

2016年 アメリカ映画 130分

キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ

     マーク・ラファロ

     ウッディ・ハレルソン

     デイブ・フランコ

     ダニエル・ラドクリフ

 

フォー・ホースメンは新たな任務の成功間際で

すべてが暴かれ、国際手配される。彼らは知らぬ間に

マカオに到着しており、ウォルターという大富豪から

大きな仕事を強制されるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 結構辛口な評価が多いですが、

個人的には前作と同じくらい面白かったです。

 

原題の「Now You See Me」マジシャンの常套句であり、

まあゼンジー北京の

「タネモシカケモチョットアルヨ。ヨークミテチョウダイ」

と思えばいいのでしょう。

そして「Now You Don't」とマジックを展開させて驚きを

与えるというもの。

「ハイ!ワタシ中国ハ広島ノウマレアルヨ!」というわけ

ではありません。とにかく終盤のロンドンの街頭でのマジックは

まさにそのものでした。

 

○見どころ

一言で言うと世界最高のイリュージョン集団VS魔法を信じない

ハリーポッターという構図。金に物を言わせ、フォー・ホースメン

を操るウォルター役はダニエル・ラドクリフ。

 

グランドイリュージョン2

 

「ハリーポッター」シリーズ以降はかなりクセの強い役どころが

多く、「ホーンズ」(2013)「キル・ユア・ダーリン」

(2013)など心の奥に暗い闇を抱える人間を演じています。

今回もそんな感じ。イヤな奴なんです。

 

グランドイリュージョン2

 

一方フォー・ホースメンは、アトラス(ジェシー)、メリット

(ウディ・ハレルソン)→なんと双子の弟も登場。ジャック

(デイヴ・フランコ)に加え、ルーラ(リジー・キャプラン)

が仲間入りします。前作を見ていないと、冒頭のディランの

子供時代の話やサディアスとの確執、さらにウォルターの父親の

存在もピンと来ないかもしれません。なので1→2の順に見る

ことをお勧めします。見ていたけれど中身を忘れた、というのは

特に見直す必要はないでしょう。(チョー適当)

 

グランドイリュージョン2

 

無理やりにウォルターに強制された仕事は見事なカードマジックの

連係プレイ&ルーラの下着提出というサービスカットもあり、

ここでたまげますが、ストーリーはここからが本筋です。1つの

イリュージョンをすると、そのネタ明かしをすぐにしてくれると

いうサービス精神旺盛な映画なので、それだけでも楽しいです。

 

グランドイリュージョン2

 

結構「?」と思いこともありましたが、映画のスピード感が、

それを思い返す時間を与えてくれまん。マカオの怪しげな

中国人老女と孫。ここもキーポイントです。

「誘導」によって人々はある方向しか見なくなる。そんなことを

言っている輩を嵌めるフォー・ホースメンの姿は爽快そのもの。

ラストはまさかのちょっぴり感動でした。

 

●惜しいところ

いくらなんでもマカオとニューヨークが近すぎる。それとやはり

ラブは不要だな。

 

 

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インフェルノ

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インフェルノ

 

「インフェルノ」

原題:Inferno

監督:ロン・ハワード

2016年 アメリカ映画 121分

キャスト:トム・ハンクス

     フェリシティ・ジョーンズ

     イルファン・カーン

     オマール・シー

     ベン・フォスター

 

頭部に怪我をして病院で目覚めたラングドンは、全ての

記憶を失っていた。さらに病院で女に襲われ、彼は医師

シエナと逃亡し、自らの素性を知ろうとするが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ スリル満点で最後まで楽しめます。

 

「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)「天使と悪魔」

(2009)に続くダン・ブラウンの同名小説の映画化で、

原作の時系列では「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」

「ロスト・シンボル」「インフェルノ」と繋がっているらしい。

しかしながらロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で

映画化されたのは3作のみ。「ロスト・シンボル」はなぜに

抜かされたのだろう。それとも「天使と悪魔」のように内容を

大きく変えて映画化する算段なのだろうか。

 

○見どころ

トム・ハンクス演じる宗教象徴学者ロバート・ラングドンが、

漠然と「大学で宗教画とか研究していたな」程度の記憶しか

残っていないのに、ストーリーにすんなり入っていけるので、

前作、前々作を見ていなくても大丈夫です。

 

インフェルノ

 

インフェルノ=地獄の光景がなぜ彼の脳裏に蘇るのか、

そもそもなぜ記憶がなくて病院のベッドに横たわっていたのか、

突然警官姿の女に襲われたのはなぜなのか。

 

インフェルノ

 

その上、WHOからも追手が来ている。

 

インフェルノ

 

そんな彼の逃亡を手助けするのは「ローグ・ワン」(2016)や

「博士と彼女のセオリー」(2014)などのフェリシティ・ジョーンズ

演じるシムズ医師。可愛いのよね。トム・ハンクスと並ぶと

父娘のような雰囲気になってしまう。そもそもトム・ハンクスが

おっさんになったからかもしれないけれど。2人の逃亡は

フィレンツェの歴史的な建造物や街並みと共に、スリル満点に

描かれます。

 

インフェルノ

 

冒頭に登場しあっという間に退場する大富豪で偏向思想家

ゾブリスト役はベン・フォスター。彼が狂気に満ちた思想家を

とても上手く演じています。映画内で幾度となく回想シーンに

登場するのは、彼の存在がこの映画のストーリーに大きく関わって

くるからで、もちろん胡散臭いけれど、部分的には納得できる話

でもあるのです。誰が味方か誰が敵か、そもそもラングドンは何を

しようとしていたのか、ラストまで気の抜けない内容でした。

 

インフェルノ

 

この顔に見覚えあり。民間の危機管理機構のシムズ総監役は

「ライフ・オブ・パイ」(2012)のイルファン・カーンです。

 

●惜しいところ

特にないのですが、終盤のイスタンブールのシーンは、あまりに

展開が早くて、見直して確認するところもありました。劇場で見て

いたら、どう思ったかな。

 

 

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モカ色の車

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モカ色の車

 

「モカ色の車」

原題:Moka

監督:フレデリック・メルムード

2016年 スイス映画 89分 PG12

キャスト:ナタリー・バイ

     エマニュエル・ドゥヴォス

 

息子をひき逃げ事故で失ったディアンヌは、

家庭も崩壊し、ただ事故を起こした運転手捜しに

執念を燃やしている。そして彼女が雇った探偵が、

運転手は金髪の女性でモカ色の車を運転していたと

いう目撃情報をもたらす...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 美しいピアノの調べに乗って

終始緊張感のある映像が続きます。

 

 

ネタバレしています。

 

 

主人公ディアンヌの運転する車はマツダC-X3、彼女が

追うことになるモカ色の車は

1972年製のメルセデスベンツ450SLです。

この落差はすごい。もちろん年式ね。

とても謎めいた始まり方で、彼女の名前がディアンヌと

わかるのは映画が結構進んでから。さらに息子をひき逃げ

したと彼女が確信し、自ら接近する女性の名前は最後まで

わかりません。

 

〇見どころ 

ディアンヌ役は「風にそよぐ草」(2009)の

エマニュエル・ドゥヴォス。そして彼女がひき逃げした車の

運転手と確信する女性役は「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

(2002)のナタリー・バイと味わい深い女優の競演です。

 

モカ色の車

 

モカ色の車

 

ディアンヌが何を捜しているのか、そして何をしようとして

いるのか、少しずつ描かれていくと、そこにはローザンヌの

音楽学校に通っていた一人息子リュックをひき逃げ事故で

亡くしたことがわかってきます。おそらくは悲しみで夫婦関係も

悪化し、離婚。犯人も捕まらず、彼女は探偵を雇って独自の

捜査をするほど追い詰められた精神状況だったのでしょう。

平静を装いつつ、元夫からの電話には出ず、息子のスマホを

愛おしそうに触り続ける姿がそれを克明に表すのです。

 

モカ色の車

 

そして対象の車の持ち主夫婦に、別々に接触していくディアンヌの

様子が交互に描かれ、そこには車の持ち主夫妻の夫婦の状況、

一人娘がいること、それが妻の連れ子であり、親子関係も複雑な

ことなどが次々にわかって来ます。さらにフェリーで知り合った

ヴァンサンなんてチンピラからすごいものを入手すると、彼女の

怒りがいつ爆発するのか、もうドキドキしてしまう。

静かな映像が続くだけに、このスリルはパンチが効いています。

 

●惜しいところ

6か月以上もひき逃げ犯が見つからないなんてフランスの警察は

職務怠慢だなと思ってしまう。それとディアンヌが、犯人と

決めつけた女性もその娘も金髪なのに、なぜにそれに気づけない

んだろう。

 

サスペンス映画と思っていましたが、見終わると

「自分の気持ちを整理し、相手への赦しを受け入れる過程」を

描いた内容だと感じます。ラストに、息子のGFだった少女の

スマホに保存してあった息子の奏でるバイオリンの音色が、

美しくそして悲しいもので、それを少女と一緒に聴くディアンヌ

の姿には胸が痛くなりました。

 

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トゥルー・ストーリー

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トゥルー・ストーリー

 

「トゥルー・ストーリー」

原題:True Story

監督:ルパート・グールド

2015年 アメリカ映画 99分

キャスト:ジョナ・ヒル

     ジェームズ・フランコ

     フェリシティ・ジョーンズ

     イーサン・サプリー

 

記事をねつ造したことでNYタイムズ紙を解雇された

記者マイケルは、オレゴン州の妻子殺害容疑者ロンコ

が逃亡先で自分の名前を語っていたと知る。ロンコと

面会するチャンスを与えられたマイケルは、事件の

真相を彼の口から聞き出そうとするが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 実際の事件に基づいているだけ

あって、なかなか奥の深い内容になっています。

 

いつもコミカルな役を演じているジョナ・ヒルが冒頭から、

額に汗をかきながら取材をするNYタイムズ紙の敏腕記者で

あることを映し出します。

 

トゥルー・ストーリー

 

その妻ジル役は、「博士と彼女のセオリー」(2014)

のフェリシティ・ジョーンズです。きれい過ぎる。

 

〇見どころ

ねつ造記事で職を追われ、一発逆転を狙って妻子殺人事件の

容疑者ロンコと面会を重ねるシーンは、終始マイケルのペース

のように思えつつ、法廷では全く異なる証言をするロンコに

振り回される続ける姿を描いています。

 

トゥルー・ストーリー

 

ここで興味深いのはマイケルがロンコと信頼関係を築くことで

「真実」を自分だけに語るという確信を持ってしまうところ。

その確信によって彼は再び記者として一線で働けるという願望を

持ってしまったところです。その願望は「真相」からマイケルを

限りなく遠ざけてしまい、妻ジルの方がそこにいち早く気づきます。

ロンコの無実を証明することで、マイケル自身の復活も成功する

という、自分をロンコに投影するという極めて危うい状況に

陥るのもテンポよく描かれます。

「でっち上げの記事を書いた記者は証人にはならない」

「証拠などいくらでもあったじゃないか」

裁判関係者の言葉がそれこそ真実なのです。

 

●惜しいところ

面会シーンが多く、内容がかなり平坦であり、終盤の法廷シーン

でのロンコが、マイケルが教えた「二重否定」の論法を全く同じ

形で証言に使うまで驚くような展開はありません。

 

 

 

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アンダーカバー

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アンダーカバー

 

「アンダーカバー」

原題:Imperiun

監督:ダニエル・ラグシス

2016年 アメリカ映画 109分

キャスト:ダニエル・ラドクリフ

     トニ・コレット

     トレーシー・レッツ

     デビン・ドルイド

 

アメリカ国内にセシウム缶が違法に持ち込まれ、

ネオナチ団体によるテロ計画に使用されると

疑ったFBI捜査官アンジェラは、部下のネイトに

潜入捜査を命じる。彼はラジオ放送で決起を呼び

かけるウルフに近づこうとするが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 実話ベースなのに先が

読めない面白さがあります。恐怖も募ります。

 

ネタバレしています。

 

主役のFBI捜査官ネイト・フォスター役は「ハリーポッター」

シリーズのダニエル・ラドクリフ。成長してからは内向的、

孤独、異常性格というような役柄が多いですが、この映画でも

インテリで頭がキレるが、同僚からはのけ者にされている

頭でっかち男という感じ。

 

アンダーカバー

 

彼に潜入捜査を命じる国内テロ課のアンジェラ役は

「マイ・ベスト・フレンド」(2015)のトニ・コレット。

 

アンダーカバー

 

〇見どころ

アメリカ国内における人種差別団体はいくつかあり、有名なKKK、

ネオナチ、アーリア人同盟などの様々な男たちとネイトは接触し、

その都度スリルある会話やシーンが映し出されます。

 

アンダーカバー

 

ダラス・ウルフという白人至上主義を唱えるラジオ放送を流す

男を本丸と考えたアンジェラの見立てが異なった時のネイトの

苦悩と葛藤もとても上手く描かれているのです。

 

●惜しいところ

ネイトは白人至上主義団体のデモに参加するなど、素顔を堂々と

さらしていますが、ラストに彼が潜入であることを、他のメンバー

の前でバラしてしまう。

 

アンダーカバー

 

彼はその後のことを考えなかったのだろうか。過激な

メンバーも存在する集団からのターゲットになるに決まって

いるのに。それととてもいい話でラストを締めくくった

ところも惜しいなあ。

 

被害者意識がファシズムを生む。今の不幸を何かのせいに

することで、打開する道が開かれると単純に説く指導者に

すがることの危険を強く訴えています。

 

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ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソティ)

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ホワイト・ゴッド

 

「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソティ)」

原題:Feher Isten監督:コーネル・ムンドルッツォ

2014年 ハンガリー=ドイツ映画 119分 PG12

キャスト:ジョーフィア・プショッタ

     シャーンドル・ジョーテール

     ラースロー・ガールフィ

     リリ・ホルバート

 

雑種犬には税が課せられる町に住むリリは、父によって

愛犬ハーゲンを捨てられてしまう。ハーゲンは過酷な

状況を経て保護施設に収容されるが、処分の直前、

他の犬と共に施設を脱走し人間を襲い始める...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 最近見た映画では最も心に

残る内容です。そして余韻の残るラストでした。

 

 

ネタバレしています。

 

 

 

〇見どころ

 

ホワイト・ゴッド

 

主人公リリが恵まれない家庭環境の中で、唯一心を許せる

のが雑種犬ハーゲン。そのハーゲンが人に慣れていて大人し

かったのに、野良犬となり、売り飛ばされ、闘犬として訓練

されるうちに、本能に目覚めていく姿が1つ1つの表情に

現れていて、まさに犬が主役の感じです。

 

ホワイト・ゴッド

 

終盤、保護施設を脱走し、ハーゲンを虐げた人間に復讐して

いくシーンは、もうホラー映画のような怖さです。

 

ホワイト・ゴッド

 

そのハーゲンがリリと対峙した時、このような顔で唸るのですが、

リリが吹くトランペットの音色で、失われた過去の記憶を取り戻す

シーンは美しい音とともに心に残るものになっています。

 

●惜しいところ

かなり残酷なシーンがあるので、見るときは要注意。

 

本作に登場する犬200〜225頭の犬たちはすべて保護施設

から来たもので、50名のトレーナーが4か月をかけて訓練し、

犬のペースで撮影したとのこと。そして撮影終了後は、すべて

里親が見つかりもらわれていったそうです。

ちなみにハーゲンを演じる犬はルークとボディという兄弟犬で

2頭1役を演じています。これはすぐに気づくと思う。

とにかく犬目線の映画であり、ラストシーンのその後を想像

することも含めて余韻の残るものでした。

 

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人生スイッチ

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人生スイッチ

 

「人生スイッチ」

原題:Relatos salvajes

監督:ダミアン・ジフロン

2014年 アルゼンチン=スペイン映画 

122分 PG12

キャスト:リカルド・ダリン

     リタ・コルテセ

     ダリオ・グランディネッティ

     フリエタ・ジルベルベルグ

 

それぞれの主人公が暴力によって復讐を企てる

ショートストーリーです。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ どの話もおもしろい。

ブラックな笑いが満喫できます。

 

  屬かえし」 

 

人生スイッチ

 

航空機に乗り合わせた乗客全員が、ある男の恨みを買って

おり、離陸後、何気ない会話をするうちに、そのことに

気づくと飛行機は急降下していきます。

 

◆ 屬もてなし」

 

人生スイッチ

 

田舎町のダイナー訪れた客は、ウェイトレスの家族を不幸に

陥れたまさに張本人で、彼女は料理人の女に、料理に毒を

盛るように唆されますが、躊躇していると勝手に毒を盛られ、

そこへ男の息子も到着してその料理を食べ始めます。

 

 「パンク」

 

人生スイッチ

 

前を走る車に悪態をついて追い越した男の車がパンク。そこへ

先ほどの男の車が到着し、ものすごい暴挙を始めます。これ

すごいんです。おまけに市内から60kmも離れており、修理会社

の車が到着した時には、なぜか2台の車は大爆発。2人は「心中」

のように抱き合った焼死体になってしまう。この皮肉が何とも

言えません。

 

ぁ 屮辧璽蹇爾砲覆襪燭瓩法

 

人生スイッチ

 

「瞳の奥の秘密」(2009)のリカルド・ダリン主演。

納得がいかない駐車違反車のレッカー移動に始まり、彼の生活が

崩壊していく様と、爆破作業員という特殊な仕事に長けた

主人公の技で、なぜか「ヒーロー」になっていく姿がテンポ

よく描かれます。

 

ァ 峩鯊」

 

人生スイッチ

 

息子が起こしたひき逃げ死亡事故の身代わりを、自宅の使用人に

依頼する男と、彼の顧問弁護士、検察、使用人の姿を醜さも交えて

かなり滑稽に描いていますが、この話は極めて不条理です。

 

Α HAPPY WEDDING」

 

人生スイッチ

 

幸せな結婚式の途中、夫アリエルの浮気相手が会場にいることを

知ったロミーナのど派手な復讐劇。個人的にはこの話が一番面白く、

中盤ホラー映画並みの行為を重ねるロミーナはすごい!そして

まさかのハッピーエンドなんです。招待客も呆れて帰るはずだわ。

 

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