空の沈黙
JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
「空の沈黙」
原題:The Silence of the Sky/O Silencio do Ceu
監督:マルコ・ドゥトラ
2016年 ブラジル映画 102分
キャスト:レオナルド・スバラーリャ
カロリーナ・ジッケマン
チノ・ダリン
アルバロ・アルマン・ウゴン
夫マリオが留守中に妻ダイアナは2人組の男に
乱暴される。偶然その現場を見てしまったマリオは
ダイアナがその事実打ち明けることを望むが、彼女は
一切口にせずいつも通りの生活を送っていく..。
<お勧め星>☆☆☆ なんとなく不快な思いに包まれた
ままエンドロールを迎えます。
言葉と心の断絶
オープニングクレジットの背景は昼間の真っ青な空。
この空の下のある一軒の家では大変なことが起きている
のです。それはまずダイアナの視点から描かれ、おそらく
2人組の男が彼女の自宅の寝室で彼女を乱暴しています。
彼女の悲鳴とぼんやりした映像、そして男たちの声と
ガタガタと小さく響く音が何が行われているのかを想像
させるのです。そしてすべてが終わった後、1本の電話が
かかり、夫マリオからだとわかっても、子どもたちの迎えを
頼むだけなのです。なぜに夫に知らせないのか。そもそも
なぜ通報しないのか。
一方、この時間を再び映し、今度はマリオの視点からダイアナが
乱暴を受けるシーンが映ります。外で岩を持ち、ガレージでそれを
はさみに持ち替え、現場付近まで行くものの、結局何もできない。
彼は妻に電話をかけ、普通通りの会話をするのです。なぜに
お互いに知らないふりをするのでしょう。この2人の間に広がる
心と心の隔たりは何に起因しているのでしょうか。
どうやら夫婦は8年間の結婚生活のうち、2年余り別居しており、
妻子を残して、マリオは他の女性と暮らしていたらしい。何と
なく会話がおかしいなと思っていたら、夫妻はスペイン語で
話すのに、ダイアナは知人とはポルトガル語で話しているらしい。
これは後から知ったことで、この言葉の壁によって微妙な感情を
伝えきれずにいたかのように感じられます。何かを象徴するように
出てくるサボテン。このトゲがまたとても鋭いのです。サボテンは
昔はよく見かけましたが、今は観葉植物の方が多く売られていて、
敢えてとげとげしたサボテンを購入することもなくなりましたねえ。
マリオは最初のシーンで、このサボテンを握ったために掌が
ぼつぼつの血まみれになるんです。これは夫妻のお互いの心の中を
表しているのかもしれません。
そしてマリオは独自に暴行犯を調べ上げていくのです。調べて
どうするというのか。そこでも真っ青な空が映ります。
エンドロールの背景は少しずつ明るさを取り戻していく早朝の空。
ただただ無音でその光景が映るのみです。目の前で起きたことは
大変なことばかりなのに、お互いに何もかも知っている夫妻は、
何もなかったかのように「家に入ろうか」と言葉を交わす。この
夫妻はずっと平行線をたどるような人生を送っていくのでしょうか。
それを考えると深い絶望のような感情に包まれて、明け方が
夕やみに変わっていくように思えました。

にほんブログ村

- 2018.04.19 Thursday
- サスペンス★★★
- 15:03
- comments(0)
- trackbacks(0)
- -
- by マープル