海よりもまだ深く

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JUGEMテーマ:邦画

 

海よりもまだ深く

 

「海よりもまだ深く」

監督:是枝裕和

2016年 日本映画 117分

キャスト:阿部 寛

     真木よう子

     小林聡美

     樹木希林

     リリー・フランキー

     池松壮亮

 

バツイチの良多は、売れない作家で探偵事務所に

勤めているものの、息子の養育費すら払えない。

ある台風の日、この親子3人が、良多の母、淑子の

家に泊まることになってしまうが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 是枝監督らしさが随所に

表れている秀作です。

 

題名の「海よりもまだ深く」は、テレサテンの「別れの予感」

の歌詞であり、映画内で淑子が一度だけ聴いています。

この歌が頭から離れなくなります。

 

〇見どころ

探偵事務所での仕事はあくまでも仮のもので、そこで次の

小説のネタを探しているという良多は、探偵の仕事でも

インチキをし、それで得た金をギャンブルにつぎ込んで

すってんてん。

 

海よりもまだ深く

 

阿部寛がこのダメダメ男にすごく似合っているんだなあ。

イケメンだからこそあらゆる役をこなして、そしていい俳優に

なるのだと実感。今更だけど。

 

海よりもまだ深く

 

樹木希林演じる母淑子の住む古い団地は、とても狭く、物が多く、

生活感があふれていて、このあたりの演出も素晴らしいです。

大きな体の大の大人である良多をこよなく愛する淑子の姿には、

母親はいつまでたっても母親なのだと感じさせるシーンが

たくさん出てきます。亡き夫の悪口はどれだけでも言うけれど、

このろくでもない息子のことは一切けなさない。

一方、姉千奈津を演じる小林聡美は、ちゃっかり、しっかり娘と

いう感じ。どうやら亡くなった父親も良多のように甲斐性なしで、

家族に苦労をかけたらしいとわかると、この家族のイメージが

リアルに思い浮かぶのです。

 

海よりもまだ深く

 

また一人息子で今は別れた妻響子と暮らす真悟も、おそらくは父親に

似ており、ガツガツした性格ではないのです。少年野球でもヒーローに

なるより、フォアボールで出塁する方を選ぶ。なんとなくわかるなあ。

そうなるとこの真悟の将来を不安に思いつつ、「優しい」「愛情深い」

というとても良いところも父親から受け継いでいて、好感が持てます。

台風の後、この元夫婦の交わす会話が、まさに海よりも深い。

「こんなはずじゃなかった」

「決めたから前に進ませてよ」

「わかってる、わかってた」

涙は出ないけれど、胸にぐっとくるものがあります。

 

●惜しいところはありません。

 

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殿、利息でござる!

5

JUGEMテーマ:邦画

 

殿、利息でござる!

 

「殿、利息でござる!」

監督:中村義洋

2016年 日本映画 129分

キャスト:阿部サダヲ

     瑛太

     妻夫木聡

     竹内結子

     寺脇康文

 

江戸中期、藩の重税に苦しむ吉岡宿では、穀田屋の

当主十三郎が、町のために藩に大金を貸し付けることを

思いつくが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 実話に基づいているだけに、

違和感のない話で、笑いと涙の両方を楽しめます。

 

ナレーターは一言話せばすぐにわかってしまう濱田岳。

今この声を聞くとauのCMに見えてしまう。監督は

「ちょんまげぷりん」「ポテチ」などどれも心に残る作品を

手掛けている中村義洋。だから絶対に面白いと確信します。

 

〇見どころ

軽快なリズムに乗ってテンポよくストーリーが進みます。

貧しい宿場町吉岡が、いかにして町を再建していったか、

様々な人間模様を絡めながら描いています。

 

殿、利息でござる!

 

穀田屋十三郎役の阿部サダヲと飲み屋のとき役の竹内結子を

見ると「なくもんか」(2009)を思い出してつい笑って

しまう。しかしこの映画では彼のハイテンションぶりは封印

されています。十三郎の弟で浅野屋甚内役の妻夫木聡も、

感情をかなり抑えているので、今回は好印象です。

それと伊達藩の出入司、萱場役の松田龍平は相変わらず飄々と

していて素敵です。

 

殿、利息でござる!

 

なんか意地悪をしそうに思えましたが、今回はなし。

 

●惜しいところ

大肝煎り、千坂仲内を演じるのが千葉雄大。

 

殿、利息でござる!

 

ちょいちょい、この童顔甘いマスクに、この役は厳しいん

じゃない?肝煎りが寺脇康文ですよ。親子じゃん。

 

貨幣価値をその場で説明する文字が入るので、1両がどの

くらいの価値だったのかとか、金と銭の違いなどに戸惑う

こともありません。丁寧に作っています。エンドロールに

流れるRCサクセションが歌う「上を向いて歩こう」がすごく

心地良く感じられました。

 

殿、利息でござる!

 

それと伊達藩七代目藩主伊達重村役は羽生結弦くん。お殿様

より王子様という雰囲気だけれど、よく似あっています。

 

 

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駆込み女と駆出し男

5

JUGEMテーマ:邦画

 

駆け込み女と駆け出し男

 

「駈込み女と駆出し男」

監督:原田眞人

原案:井上ひさし 「東慶寺花だより」

2015年 日本映画 143分

キャスト:大泉 洋

     戸田恵梨香

     満島ひかり

     内山理名

     キムラ緑子

     樹木希林

     山崎 努

 

江戸時代、幕府公認の縁切り寺、東慶寺に

お吟とじょごが同時に駈込む。2人は聞き取り

調査の後、寺に匿われるが、そこには信次郎と

いう戯作家見習いの男がいて...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 笑いと涙がうまく組み

合わさった映画です。

 

原案となった井上ひさしの「東慶寺花だより」という

小説の名前通り、この映画には、東慶寺を取り巻く

山々や、その庭を彩る四季折々の花がとても美しいです。

春は桜が咲き乱れ、緑深い新緑の時期を経て、蝉が鳴き、

風鈴の音が響く夏。そして山を真っ赤に染める紅葉の後

には、椿の花の上に雪が積もっていく冬が訪れます。

それだけを見ていても心に深く残る映像です。

監督、脚本共に「わが母の記」などの原田眞人。まず脚本

が楽しいのです。大泉洋演じる信次郎の口八丁手八丁は、

予想通りのものですが、彼とキミラ緑子のセリフの掛け合い

はまるで夫婦漫才のようで、絶妙な「間」が秀逸です。

ストーリーは、江戸後期、天保十二年。江戸四大飢饉の一つ

天保の飢饉の後、町には「質素倹約令」が出され、民衆の

娯楽を取り締まる一方、地方では農民一揆や打ちこわしが続く

不安定な時代の話なのです。

堀切屋の妾、お吟と浜鉄屋の妻じょごは、各々の理由で東慶寺

に駈込んできます。

 

駆け込み女と駆け出し男

 

キップのいいセリフの言い回しをするお吟役は、満島ひかり。

飲んだくれ働かない夫(武田真治)に見切りをつけ、いつもの

低い声で強い意志を秘めた表情を見せるじょご役は戸田恵梨香。

駈込むとまず柏屋で聞き取り調査がされ、その後格付けされて

寺に住まうことになるわけです。柏屋源兵衛役は樹木希林で、

彼女の甥で戯作家志望の男が大泉洋演じる信次郎。一応医者の

見習いでもあるようで、男子禁制の寺での診察にも向かいます。

 

駆け込み女と駆け出し男

 

結構蘭学も勉強し、医師としての知識も高いようです。患者の

目を見てはいけないので、天井を見ながら診察したり、浣腸

したりともう大変。

たくさんの笑いの中に、この寺に駈込まざるを得なかった女性

たちの悲しい過去の話も盛り込まれ、日々学問に武術に修行する

姿が映し出されていきます。女侍ゆうも入山。彼女の駆け込み

理由はあまりに悲惨であり、それがラスト付近の大立ち回りに

関係してくるのです。内山理名がキリっとしていてかっこいいの。

 

駆け込み女と駆け出し男

 

一方で東慶寺をつぶす画策をする奉行鳥居の姿も映るのですが、

それほど印象に残るものではなく、彼が寺にスパイとして送り

込んだ女も、かなりあっさり転向。まあその理由には納得します。

曲亭馬琴が節目節目に、本人だけではなく、作品も登場する辺り

も良かったです。ラストにあそこに行くなんてね。

見終わって気分がほっこりします。

 

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あん

4

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あん

 

「あん」

監督:河瀬直美

原作:ドリアン助川

2015年 日本映画 113分

キャスト:樹木希林

     永瀬正敏

     内田伽羅

     市原悦子

     水野美紀

     浅田美代子

 

前科持ちの千太郎はどら焼き屋の雇われ店長を

している。ある日徳江という老女がアルバイト

に応募してくるが、彼は全く相手にしない。しかし

翌日徳江が持ってきたあんを食べた千太郎は、その

味に魅せられてしまうのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 美しい日本の自然と人間の

心の機微が細やかに描かれています。

 

らい予防法廃止は、日本では1996年。ほんの

20年前なのです。1945年には既にその病が遺伝性

を持っておらず、感染することもほとんどないとわかって

いたのに、多くの患者が隔離され、子供を持つことを

許されず、一般の人々との交流もないまま、この世を去って

行ったと知ると胸が締め付けられます。

「どら春」の雇われ店長千太郎役は、やさぐれ感あふれる

永瀬正敏。

 

あん

 

彼は前科持ちであり、慰謝料を肩代わりしてもらった先輩夫婦の

どら焼き屋の雇われ店長をしているらしい。寂しそうでやる気の

なさそうな1日の始まりが、彼の孤独を物語ります。それでも

手際よく粉を混ぜ、卵を割り、熱々の鉄板できれいにどら焼きの

皮を焼いていきます。まるでここまでおいしい匂いがしてきそう。

この映画の素晴らしいのは、食べ物をとてもおいしそうに映すことと、

日本らしい四季の風景を花や木や鳥、風の音などを使ってまことに

上手に描いている点で、優しい日差しも含めて、それらが後に

現れる徳江がこよなく愛したものばかりだと感じるのです。

「光が当たる社会で生きたい」

 

あん

 

そんなごく当たり前のことが出来なかった彼女は、「どら春」で

働くことで、生きる喜びを見出します。もちろん彼女の作る「あん」

は絶品で、あっという間に行列のできる店になってしまう。ところが

誰かが、彼女の病のことを噂し始めるとあっという間に、店は閑古鳥

になるのです。悪い噂は本当に早く広まるものです。毎日遊びに

来ていた中学生も来なくなってしまう。

母親のネグレクトを受けているワカナ役は樹木希林の孫娘、という

ことはもっくんの子供ってことね。なんとなく似ているかな。徳江が

彼女を見るまなざしが、ひときわ優しく感じられるのも頷けます。

また演技がものすごく自然体で初々しく感じます。

千太郎と徳江とワカナの交流が、再び訪れたソメイヨシノの季節に

開花したような気分になりました。

 

 

 

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六月燈の三姉妹

4

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六月燈の三姉妹

 

「六月燈の三姉妹」

監督:佐々部清

2013年 日本映画 104分

キャスト:吹石一恵

     徳永えり

     吉田 羊

     津田寛治

     西田聖志郎

     市毛良枝

 

鹿児島で和菓子屋を営む中薗家の次女奈美江は、夫と

離婚調停に入り、東京から戻って来る。そんな彼女を

追って夫の徹が家を訪ねてくるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 見終わると心がとても温かくなり、

とても穏やかな気分になれます。

 

鹿児島の和菓子屋「とら屋」が実家の次女奈美江役は

吹石一恵さん。どうしても福山雅治の顔がかぶってしまう。

彼女だけなぜ東京言葉を話し、鹿児島弁がわからないのかは、

姉妹の母親中薗恵子の2度の結婚と離婚にあるわけです。

つまり長女と次女は先夫の子供で、離婚の際、次女だけ東京に

連れて行ったらしい。そして菓子職人の有馬眞平と再婚し、

三女栄をもうけたものの、眞平の浮気が原因で離婚、今は職人

として、一つ屋根の下に暮らすという風変わりな生活を送って

いるのです。なんでもフランス式なんだそうな。

どなたかのレビューにありましたが、吉田羊の鹿児島弁は、

かなり上手で難しいイントネーションもバッチリらしい。

 

六月燈の三姉妹

 

田舎町の商店街にこんなきれいな三姉妹がいたら、そりゃあ、

目立つというもの。夏祭り「六月燈」で3人で歌うキャンディーズ

はいいですよー!長女静江は夫の借金が原因で離婚、次女奈美江は

嫁姑問題で離婚調停中のため、実家に戻ってきています。そして

三女栄は、妻子ある男性と不倫中。あらら、みんあ波乱万丈の人生

だわ。でもそれぞれが自分の本音を話すとき、どこからか進むべき

道が見えてくるのです。その描き方がとても上手い。

 

六月燈の三姉妹

 

奈美江を追いかけてきた夫徹に、徹底的に頑なな態度をとる彼女は、

実は、もう一人彼女に思いを寄せる年下の男性がいるとわかって

しまう。栄はこのスキャンダルに興奮するけれど、静江は

「人間、道を外してはやっせん」

と諭します。それは道を外れたことを悔いる姉の貴重な助言なの

でしょうね。その静江の見合い相手が沢村一樹で、見合い写真

のみの出演ですが、たまたま彼を知っている徹が「アンポンタン」

とぼろくそけなす理由がすごくおかしかった。さすがセクシー部長。

ものすごく大きな事件が起きるわけでもないけれど、家族1人1人の

心の動きが丁寧に描かれていてとても心地よい映画でした。

和菓子が食べたくなります。

 

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娚の一生

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JUGEMテーマ:邦画

 

男の一生

 

「娚の一生」

監督:廣木隆一

2015年 日本映画 119分

キャスト:榮倉奈々

     豊川悦司

     向井 理

     安藤サクラ

     前野朋也

 

東京の大手電機メーカーに勤務していたつぐみは、

妻子ある男性との恋愛や仕事に疲れ、祖母の住む

鹿児島で休暇を過ごしていた。しかしその祖母が

亡くなり、葬儀の後、突然海江田という男性が

離れに住み始めるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 原作の漫画は知りませんが、

見終わると気分の良くなる映画です。

 

トヨエツの床ドン、足キスで有名になった映画ですが、

所詮原作は漫画だと侮るなかれ、なかなか共感する

ものが多いストーリーになっています。

ヒロイン堂薗つぐみ役は、榮倉奈々。手足が長く、

化粧っ気のない色の黒い女優さんで、色気とは最も遠い

位置にいます。

オープニング、染め上げられた生地を天日干ししている、

その生地がはためく中で、後ろから若い男性に抱きすく

められるのは、つぐみの祖母で、このシーンはラストに、

つぐみが男性を抱きすくめるシーンとなって描かれ、

個人的には大好きです。さてつぐみは東京の大手電機

メーカーで仕事をバリバリこなしていたものの、仕事に

疲れ、さらに妻子持ちの男性との恋愛に疲れて、祖母の

住む鹿児島で休暇を取っているのです。都会の喧騒から

逃れ、自然豊かで人情味のある田舎へ向かうのは、よく

あるパターンです。ところが病床についていた祖母が

亡くなり、あわただしく葬儀が行われた後、なぜか離れに

見知らぬ中年男性が住み始めているからびっくり仰天。

 

男の一生

 

彼は祖母に合いカギをもらっていて、かつて染色を教えて

いた祖母の教え子であり、どうやら恋愛関係もあったらしい。

それが冒頭のシーンだろうなあ。これがキモイ小太りで、

禿げたおっさんなら、とっとと追い出すところだけれど、

なんせトヨエツだし、大学で哲学を教えているインテリ。

ちなみに温水洋一さんはトヨエツより2歳年下。でも彼がいたら

やっぱり嫌だわ。

彼は近所さんにも勝手に「つぐみさんと結婚する」と言いふらす

のです。つぐみが東京でどんな悲しい恋愛をしていたのか、

深くは描かれませんが、妻子持ちの中川役は向井理で、

イケメン対決が映画の後半にあります。で、海江田に何か

下心があるのかと思うけれど、彼は純粋につぐみを好きなだけで、

つぐみに対し、人生の先輩として様々な助言を与え、心の支えと

なるわけです。

 

男の一生

 

大学の助手には「枯れ専」などと揶揄されますが、そんなことは

ない、めっちゃかっこいいじゃん!そして床ドンから、つぐみの

足なめシーンが映ると、トヨエツの色気にうっとり。逆につぐみは

何て色気がないんだろう。多分色気からかけ離れた子だから、

トヨエツのこのシーンが印象的になるんだろうね。つぐみに尽くす

海江田と彼に対し、少しずつ心を開いていくつぐみの姿がとても

心地よく描かれていました。

 

 

 

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残穢 住んではいけない部屋

4
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残穢

「残穢 住んではいけない部屋」
2016年 日本映画 107分
監督:中村義洋
原作:小野不由美
キャスト:竹内結子
     橋本 愛
     佐々木蔵之介
     坂口健太郎
     遠藤賢一

怪奇小説を書いている「私」のもとに女子大生の
久保さんから手紙が届く。そこには「一人住まいの
部屋に誰かがいる」というもので、彼女が同じ建物
の住人から過去に似たような手紙を受け取っていたこと
を思い出し、強く興味を惹かれるのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆ 本よりずっと怖いです。久しぶり
にゾクゾクっときました。


原作者は第26回山本周五郎賞を獲得した同名小説「残穢」
著者小野不由美さんです。映画化されると知ってから読み
ました。彼女のベストセラー作品「屍鬼」は未読ですが、
こちらも面白いそうです。
さて原作では、序盤の恐怖が中盤以降ややだれてしまい、
収拾のつかないようなラストになっていた気がします。
それがこの映画ではとても上手く映像化されているのです。
まず、オープニングに持ってきたエピソードがものすごい
インパクトのあるもので、それがいつつながるのかと思って
見ていると、終盤にある人を通じてつながるのです。子供
の頃遠縁が住む九州のある家に泊まった時、夜中にトイレ
に行きたくなったMさんは、その家には「河童のミイラ」が
あると聞いていた。恐る恐るトイレに行くと、突然ゴーッと
地下から吹き上がるような音を聞き...。この「音」がとても
効果的です。そして母親から「開けてはいけない」と言われて
いた部屋を開けてみると...。やだ、もう怖い。


残穢

そしてシーンは変わって、怪奇小説を書いている「私」の元に
女子大生、久保さんから1通の手紙が届くのです。
「私の部屋に誰かいる気がする」
この手の手紙を何通も受け取っている彼女にとって、なんの
興味もわかない内容だったのに、次に久保さんから届いた手紙
には、その音の正体を少し見てしまった、とあります。住所を
見ると、同じような怪奇現象に会った人が2年ほど前に手紙を
くれた岡谷マンションであり、「私」はこの現象に俄然興味を
持つわけです。「何かいわくつきの建物ではないか」と。


残穢

久保さんの聞く音は「ザーザー」とまるで畳をほうきで掃く
ようなもので、自分が見ているときはしないと言う。しかし
ふすまを閉めるとその音がし、こっそりのぞいて見ると、そこ
には金糸が織り込まれた帯のようなものをずっていたと言う
のです。再びこの「音」とちらりと見える帯のようなものから
背筋が寒くなります。2年前に手紙をくれた人は、違う部屋の
人ですでに転居していたけれど、その人の幼い娘は和室の天井
を見て「ブランコ」と言い、ある日ウサギの人形にひもをかけて
来て「ブランコ」と見せるわけです。きゃー、この見せ方も
子供が可愛いだけに怖いのなんのって。

結局「私」と久保さんは、この岡谷マンションについてあれこれ
調査を始めるわけで、この建物で何の事件も事故も起こっていない
と知ると、時を遡ってこの土地に住んでいた人々について調査を
開始します。これが文字ではとてもわかりづらく、多くの人間が
登場するのでかなり混乱しましたが、映画では、時代ごとの地図を
重ねるという手法でものすごくわかりやすくなっています。

終盤付近は原作とかなり異なりますが、これぞ「ザ・ホラー」と
いう感じ。「リング」「呪怨」「仄暗い水の底から」などが一番
怖いと思っているわたしにとっては、当分引きずりそうな恐怖を
体験できました。
橋本愛ちゃんの演技が、無理やり怖がる姿を出さず、それだから
こそゾクリとくるものです。「聞いてもいけない、見てもいけない」
ああ、聞いたし、見ちゃったよ!




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くちづけ

4
JUGEMテーマ:邦画

くちづけ

「くちづけ」
監督:堤 幸彦
2013年 日本映画 123分
キャスト:宅間孝行
     貫地谷しほり
     竹中直人
     田畑智子
     橋本 愛

グループホーム、ひまわり荘に娘マコを入れ、
自らもスタッフとして働いていた漫画家愛情いっぽん。
しかしその冬、マコは死んでしまうのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆ ラストが賛否分かれるものに
なっていますが、様々な問題を提起した内容です。泣ける
シーンがいくつかあります。


ラストになじみの警官が「何とかなったんじゃねえか」と
言います。映画を最初から見ていると、あちこちで何とか
できたかも?と思うのですが、実の親子だからこそ、愛情
がいっぱいあったからこそ、「何とか」なんて曖昧な未来
ではなく、確実な100%安全な未来を娘に送ってほしかった
のだと実感します。
12月25日、あるグループホームがあった家で、何やら
パーティーが開かれようとしています。しかしその主役の
うーやんの妹智子は
「お兄ちゃん、マコちゃんは来ないんだよ」
と悲しげに言うのです。軽度の知的障がいのあるうーやんは、
「え〜、もっと缶がいるんですか!?」

とその言葉の意味を理解せず、マコちゃんの好きだった空き缶
を大量に差し出すのです。
話は4月に遡ります。国村医院の運営するグループホーム、
ひまわり荘は、知的障がいのある成人の自立支援を促す目的
の場所で、そこにはうーやんを始めとして数名の入所者が
いるのです。この映画はもともとは舞台作品であり、映画も
ほぼ舞台セットのような映し方なので、普通の映画とは少し
趣が異なります。

うーやんのもっぱらの悩みは、大好きな妹智子が婚約したこと。
自分のもとへ智子が面会に来ないことでかなりのストレスを
受けているのです。序盤は堤監督ならではのコミカルなシーン
の連続で笑いを誘います。そしてそこへ漫画家愛情いっぽんが
娘マコを連れてきたことから雰囲気が変わるのです。


くちづけ

マコ役の貫地谷しほりが本当にピュアな役をうまく演じています。
そしていつもはおちゃらけたイメージの強い竹中直人が、娘を
こよなく愛する父役を熱演しているのです。マコはかつて男性に
連れ出されたことがあり、今でも男の人と2人きりになると
パニックを起こすらしい。ところがこのホームでは、うーやんと
2人きりでも全く平気なのです。


くちづけ

2人はすぐに意気投合し、マコの作るパンのお礼にうーやんは
つぶした缶を渡します。
「うわー。きれい」
このほんわかムードを壊すのは、バーベキューの日に国村先生
の娘、はるかが連れてきた友人南の言葉で、実は一般の人々が
口に出さないものの、心の中で持つ感情をそのままストレートに
発してしまいます。


くちづけ

実際に知的障がいのある肉親を持っていなければ、そばで見る
ことも少ないし、彼らの気持ちなどわかるはずもないのですが、
きれいごとで片づけているのを皮肉っているのかもしれません。
さらに智子の婚約が破棄されたことを知るとうーやんは、
「俺がバカだから智ちゃんは結婚できないんだ」
と泣きます。しかしこれもスタッフの袴田さんの言葉
「障がい者を家族に持つことを拒否した相手を責められるのかよ」

がすべてを代弁している気がするのです。一生智子を必要とする
であろううーやんの存在を受け入れることができなければ、
智子と結婚することなど絶対に無理だから。

その上、入所者の両親が、彼の障がい者年金を私的に使い、
ホームの入居料が1年も滞っていることが判明します。本来家族
が一緒に暮らすべき彼らを預けたうえ、年金まで使い込むと
いう信じられない事実。もちろん預けることは彼らにとって
社会との接点を持つうえで有益だし、自立支援につながると
思います。しかしその受け皿があまりにも少なすぎるのと、
財政面での苦しさが伝わってきます。高齢者に一律3万円と
いう無意味なお金を配るのなら、福祉対策に使えばいいのに。
一億総活躍って、文字だけが踊っていますよね。

また顔見知りでこのホームに出入りしている警官や地域情報誌
の記者が
「刑務所にいる人やホームレスは知的障がいの人が多い」
と語ります。確かに知的障がいのある人は、警察官に潔白など
説明できないし、誘導されれば自白もするでしょう。これらの
言葉がいっぽんを苦しめるのです。なぜならいっぽんは末期の
肝臓がんで、余命が数か月であることがわかってしまったから。
うーやんが智子と一緒に暮らすために退所し、マコは違う施設
に入所することになります。しかしマコは幾度となくそこを
抜け出すわけですよ。マコはいっぽんが大好き。もちろんいっぽん
だってマコのことをこよなく愛しています。でももう一緒に

いる時間は限られてしまったのです。その時のいっぽんの決断は
くるくる回るカメラで2人を映しながら描かれていきます。
そして冒頭の12月25日に変わるのです。楽しいパーティに
なるはずが主役の1人はいません。そもそもそのパーティでさえ、
実際に行えたかどうかもわかりません。だからこそ、彼らは
パーティーを実行したのかな。
ラストはもう涙腺崩壊でした。うーやんとマコが、いったん別れを
告げ、12月25日に結婚式を挙げようと話すとき、カーテンの
向こうに隠れる2人の姿が日差しを浴びてまぶしかったな。




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海街diary

5
JUGEMテーマ:邦画


海街ダイアリー

「海街diary」
監督:是枝裕和
2015年 日本映画 128分
キャスト:綾瀬はるか
     長澤まさみ
     夏帆
     広瀬すず

鎌倉に住む幸、佳乃、千佳は、家族を捨てた父の
葬儀へ出席する。そこには父の再婚相手の娘すずが
おり、義母との関係が芳しくない彼女を引き取る
ことに決めるが...。

<お勧め星>☆☆☆☆ 静かな映像と美しい姉妹、
そして音楽、景色が心地よいです。


原作の吉田秋生さんの漫画はものすごく有名なのですが、
もちろん未読です。
これといった大波乱もなく、ざわっとくる瞬間がいくつも
訪れ、それが終盤付近には、未来を予感する明るいざわつき
に変わっていく気がします。鎌倉の季節感あふれる自然に
満ちた美しい景色がふんだんなく映し出されていくのです。


海街ダイアリー

まずこの鎌倉に住む3姉妹、香田幸、佳乃、千佳が美しい
です。ダントツは長澤まさみかな。きれいで長い手足を
惜しげもなく見せてくれます。綾瀬はるかは長女らしく
毅然とし、妹たちの世話を焼く。次女長澤まさみは奔放な
役を冒頭から演じます。そして末っ子役の夏帆はマイペース
で平和主義。それぞれの個性が描かれた上で、家族を捨てた
父の葬儀の話が舞い込むのです。山形の山奥に向かうと
そこには、2番目の妻との間に生まれた娘すずと3番目の
妻そしてその連れ子がいて、どうもすずは義母との仲が
うまく行っていないと感じさせます。すず役の広瀬すずちゃん
も可愛い。


海街ダイアリー

映画の中盤にはこんな姿も見せてくれます。前からでもいいよ。
ワクワクしちゃう。
すずを引き取ることにすると、大船のおばさんが
「猫や犬じゃないんだから」
と世話を焼きます。さらに後半の幸たちの祖母の法要に訪れた
実母美也子と幸の喧嘩を一言で制する、という絶妙なセリフの
タイミングをとれるのは、樹木希林ならではのものですね。
桜の木のトンネルからアジサイの咲く道、セミが鳴く中、梅の
実をもぎる。そして海に浮かぶ小舟から、銀行の屋上から、
勤務先のスポーツショップの窓から眺める花火。季節感があふれる
美しい映像と共に姉妹の心の動きが、少しずつ変化し、強い愛へと
変わっていくのがリズミカル描かれているような映画でした。
「きれいなものをきれいと見えるのがうれしい」
そんな気持ちでずっといたいですね。



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震える舌

3

震える舌

「震える舌」
原作:三木 卓
監督:野村芳太郎
1980年 日本映画 114分
キャスト:渡瀬恒彦
     十朱幸代
     若命真裕子
     中野良子
     宇野重吉

昭と邦江は一人娘昌子と三人である団地に暮らして
いる。ある日昌子は外遊びで指先を傷つけ、その日
から少しずつ様子がおかしくなる。ある晩痙攣を
起こした昌子は救急車で搬送されるが...。

<お勧め星>☆☆☆☆ ホラーのジャンルにあります
が、違う意味での恐怖を描いています。


原作は三木卓が1975年に発表した同名小説で、彼
の実体験がベースになっているとのこと。
オープニングは、蝶々を追いながら泥水の中で何かを
探して遊ぶ女の子が映ります。この子、昌子は目の前
の団地に父昭、母邦江と暮らしており、甘やかす母と
厳しくしつける父をそれぞれ十朱幸代、渡瀬恒彦が
演じています。


震える舌

ところがその昌子が、ある日口を開けなくなり、次にうま
く歩けなくなるのです。近所のかかりつけ医では、風邪だの
心因性のものだのとはっきりと原因がわからないまま、ある
晩、夫妻が楽しいひと時を過ごしていたその襖1枚隔てた
部屋で、寝ている昌子の手がピクピク動き、次の瞬間、
「キィー!」
という悲鳴と共に、昌子は舌を噛み体を大きく痙攣させます。
真っ赤に染まる口元はこの映画では幾度となく映る痙攣シーン
であり、何度見ても恐怖を覚えます。
救急搬送された昌子は大学病院で検査を受けるのですが、この
検査風景も、細い腕に足に背中に針を刺し、そのたびに昌子の

「キィー!」
という悲鳴が流れます。しかしそれはまだこれから始まる
夫妻の苦悩の日々に序盤に過ぎないのです。「破傷風」と診断
され、脳腫瘍や髄膜炎でなかったことに安堵した昭をよそに
担当医、能勢は、
「決して安心できる病気ではない。」
と言うのです。能勢役は、まだ若くてお美しい中野良子。


震える舌

「破傷風」という名前は聞いたことはあっても、いったいどんな
病気なのか、治療法はなんのかピンと来ません。この病気は刺激
によって痙攣を起こし、それが引き金で心不全や呼吸困難を
起こし極めて致死率の高い病気と聞き、そんな恐ろしい病気なの
かと実感したぐらいにおおよそ今の生活では起こりえない、と
思ってしまう。しかし東日本大震災の瓦礫撤去の際に、この病に
かかった人たちもいたと聞き、実は身近に潜む病なのだと知り
ました。

さて光や音を遮断するため、昌子は個室に入れられ、窓は黒い布
で覆われます。周りは病気ながら、ある程度元気な子供の大部屋
であり、その子たちが騒ぐことで昌子は痙攣を起こすのです。
「静かにしてちょうだい!」
邦江の悲痛な叫びが響き渡ります。その一方で、昌子は血清注入
されたものの、病状は悪化の一途をたどり、鼻からの栄養補給、
直腸麻酔、舌を噛む恐れがあるからと乳歯を抜歯、さらには酸素
テントの中へと入れられます。それと共に疲弊していく夫妻の姿
を渡瀬、十朱が本当に上手に演じます。
「俺も昌子に噛まれたから、感染したんじゃないか」
と言う昭。
「もう何もしないで」
と果物ナイフを持って医師に迫る邦江。この頃には見ている側も
昌子の親のような気持になっているのです。


震える舌

病室内はいつも薄暗く、その中で聞こえるのは、昌子の荒い
息遣いとしばしば起こる痙攣の声。必死で付き添う昭が疲れの
あまりううたた寝した時、昌子が痙攣をおこすと、医師は
「もっとしっかり見ていてくれ」
と冷たく言うのです。この医師は能勢ではないけれど、病人を
家族に持ったことがある人ならば、こういう場面に遭遇した
経験を持つ人も少なくないはず。追いつめられた家族をもっと
追いつめるのは医療従事者だと思う。
ラストはあっけなく訪れ、カーテンが開いて、昌子の口から
呼吸の管が抜かれていきます。その時昌子が言うのです。

「チョコパン食べたい」
「ジュースの薄めたものならいいわよ」
と言う能勢の言葉を聞き、大喜びで自販機に向かう昭は本当に
体全体でその気持ちを表しているのです。そして缶ジュースを
持ったまま、勢い余って転んでしまう。転がる缶を見つめてまた
笑う昭を見ると、それは昌子の回復だけでなく、今までの拘束
からほどかれた喜びにも満ちているのだと思いました。


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