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    • 2023.01.12 Thursday
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    子宮に沈める

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      JUGEMテーマ:邦画

       

      子宮に沈める

      出典:IMDb

       

      「子宮に沈める」

      2013年 日本映画 95分

      監督:緒方貴臣

      キャスト:伊澤恵美子

           土屋希々

           土屋瑛輝

       

      3歳の幸と1歳の蒼空の母由希子は、二人の子供に愛情を

      注ぎつつ、めったに戻らない夫の帰りを待っていた。しかし

      ある日夫は荷物を持って家を出て行き、母子3人で暮らす

      ことになる。資格を取って仕事を探そうと考える由希子も

      生活苦から夜の仕事を始め、次第に子供への関心が薄れ、

      大量のチャーハンを作った後に帰宅しなくなる。幸は弟の

      世話をしながら母の帰りを待つが...。


      <お勧め星>☆☆☆ とてもしんどい映画です。しかし同じ

      ことは今も起きています。


      毛糸 編み棒 レジャーシート


      この映画は大阪2児餓死事件に基づいて作られた2013年の

      映画です。事件についてはあちこちに書かれていますので

      そちらを参考にされるといいと思います。
      映画の始まりは幸せそうな母親と娘、息子の遊ぶ姿で、絵を

      描いたり、好きな食べ物を作ってあげたり、子供のため?

      に赤い毛糸でマフラーのようなものを編み始める様子、また

      ピクニックに行った気分で広げたレジャーシートの上で豪華な

      お弁当を広げる3人が見られるのです。

      しかしなぜかそこに父親はいません。

      またピクニックも外ではなくマンションの部屋の中で行っている

      ことがわかります。じゃあ娘が小さなお手手で顔まで書いた

      てるてる坊主は意味あったのかな?と思ってしまう。冒頭に

      母親が出血で汚れたショーツを洗剤ですすぎ洗濯機に放り込む

      シーンは、彼女がまだ「女性」であることを強く印象付けて

      いるのでしょうか。
      さて夜中に急に帰ってきた夫は顔がろくに映らず、おまけに

      荷物を詰めて家を出てきます。由希子が帰宅した音を聞いて

      そっと口紅を塗る姿が本当に空しく感じられるのです。母親と

      しても妻としてももっと夫に認めてもらいたかったし、愛して

      ほしかっただろうにそれはどちらも叶わない結果に終わり、

      3人は狭いアパートで暮らし始めます。
      二人の子供が本当に可愛いので、この子たちの行く末を知って

      いるだけにこの辺りから胸が苦しくなります。
      由希子は何か資格を取って仕事をしようと考えますが、2人の

      子育てと家事と仕事の両立は難しく、仕事に行こうとすると

      グズる娘や発熱している娘、そしてまだまだ手のかかる息子の

      世話で由希子は次第に疲弊していくのです。ここもかなり淡々と

      描かれていますが、由希子の服装や靴の変化、また男を連れ込む

      シーンなどから、既に昼間の仕事ではなくなっていることが

      わかります。
      由希子がいない間、どこかに預ければいいじゃないかという声も

      聞かれそうですが、それを知らなかったかもしれないし、彼女の

      相談できる相手が全くいなかったと思われます。唯一遊びに来た
      高校の同級生が、あまりにスレた女性で、その人くらいしか声を

      掛けられる人物がいなかったと思うと、本当に哀れに思えてしまう。
      3歳の幸は母親の留守の間に蒼空の世話をします。

      しかしある日、チャーハンを山ほど作った由希子がそれきり

      戻らなくなります。部屋はドアが開かないように鍵がしてあり、

      ベランダの掃き出し窓もガムテープで止められています。シーンが

      暗転するたびに、2人が食べ物に困り、幸はトイレに困り、そして

      それぞれが汚れていくのがかなりソフトに描かれていきます。

      食べ物がなくて、パイナップルの缶詰を出したものの缶を包丁で

      開けようとして幸は手を少し傷つけてしまう。

      また蒼空の哺乳瓶を幸が飲むようになる。

      マヨネーズの入れ物が綺麗になるまで何度も水を入れて飲む。
      実際の事件はこんな程度のものではなかったでしょう。それでも

      母親の帰りを待つ2人の姿は目に焼き付いていきます。
      ようやく帰宅した由希子は、冷たくなった蒼空をきれいにし、

      また帰りを待ち焦がれていた幸もきれいにして、最初に作っていた

      ロールキャベツのようにレジャーシートにくるみます。由希子の

      生い立ちや離婚の理由は全く描かれません。またどこに行って

      いたのかもわかりません。目の前の事実が全てなのです。
      幼い子供を置いて男と遊びに出かけるとはけしからん、と多くの方が

      思うことでしょう。しかし子供は一人では生まれてこないのです。

      そこに相手があり、彼らにも同じような責任があるはずです。
      生産性を問う発言をするのであれば、こういう境遇の女性を一人

      でも多く救う環境を作るように動いてほしい。またネグレクトの

      子供たちを漏らさず救い上げるシステムを構築してほしい。さらには
      望まぬ妊娠をした場合の選択肢も広げてほしい。

      本当に多くの問題を問いかける映画でした。

       

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      弧狼の血 LEVEL2

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        JUGEMテーマ:邦画

         

        弧狼の血

        出典:IMDb

         

        「弧狼の血 LEVEL2」

        監督:白石和彌

        原作:柚月裕子

        2021年 日本映画 139分 R15+

        キャスト:松坂桃李

             鈴木亮平

             村上虹郎

             西野七瀬

             滝藤賢一

             中村梅雀

             早乙女太一

         

        伝説の刑事、大上が亡くなってから3年。若い刑事

        日岡は彼の教えのまま呉原市内の暴力組織を取り

        仕切っていたが、上林が出所したことで事態は一変

        する。極めて残虐な上林は、次々と殺人を犯し、
        遂には日岡との直接対決へと向かうのだった...。


        <お勧め星>☆☆☆ 鈴木亮平の怪演が怖すぎる


        悪を暴く側にも悪が存在する


        「孤狼の血」(2018)では伝説の刑事、大上役の

        役所広司の印象が強く、彼が持っていた狼が描かれた

        ジッポーのライターを今作で日岡が持っているのを見て、

        そうか、彼にすべてを託したんだったと何となく思い

        出してきました。

         

        弧狼の血 
        出典:IMDb

         

        平成3年、広島、呉原市。暴力団を追う日岡はすっかり大卒の

        インテリぶりが消え、制服がなければ、捕まえられる側に

        見えるほどです。そして彼は村上虹郎演じるチンタをスパイと

        して使っているわけです。これも大上の教えでしょうか。

        すべては日岡だけが知ることで、暴力団同士の抗争を抑え込み

        街の平和を保つための手段でもあったわけです。

         

        弧狼の血
        出典:IMDb

         

        ところがそこに鈴木亮平演じる上林が出所してきます。この役の

        ために体を絞ったのでしょうか。割れた筋肉に派手な刺青が

        山ほど入れてあります。なんせ、目つきが怖い。そして出所

        早々向かった場所が、収監中に彼をとても可愛がってくれた

        刑務官の家というのも怖い。上林の生い立ちが彼の残虐な性格を

        築いているのは確かだけれど、ある意味、元々そういう素養が

        あった気もします。

        彼は人間が見つめる瞳にこだわり、殺した相手の目玉をくり

        抜いていくというにもその変質ぶりを物語っている気がするの

        です。また彼は疑い深く、忠誠を誓わせてもなお疑います。
        一方日岡には県警から瀬島という相棒が派遣されるのです。

        瀬島は公安出身の定年まじかの警官で、それはそれは日岡に

        親身になって接してくれるので、彼としては最終的には自分の

        持っている秘密を彼に語れるほどになるのです。中村梅雀って

        こういう役がぴったりですよね。

         

        弧狼の血
        出典:IMDb

         

        また日岡のスパイであるチンタ役の村上虹郎の演技もいい。

        どこか心に陰がありつつ、優しさを瞳にたたえています。チンタ

        の姉役でスナックのママを演じる西野七瀬も印象に残ります。
        他にも有名俳優が山ほど出ているし、それが極めて残虐な方法

        で殺されたり、銃で撃たれたりしてあっという間に消えていく

        のはなんかもったいない感じです。

         

        弧狼の血

        出典:IMDb

         

        わたしの一押しは尾谷組構成員、花田を演じる早乙女太一くん。

        スカした役もできる(朝ドラ)と思ったら、ヤクザもぴったり

        じゃん。あの気性が荒く冷徹そうな眼差しがいいよね。
        今回は猟奇的な殺人の連続と終盤見られる上林と日岡の

        カーチェイスが見ごたえがありますが、結局何が一番「悪」

        なのか、それを断つためには「悪」で対峙するしかないのかと

        いう疑問が残りました。
        威張っている管理官、嵯峨だって、最初は大上の内偵のために

        日岡を送り込んだんですものねえ。その日岡を狙っていたのは

        上林だけじゃなかったしねえ。

         

         

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        ドライブ・マイ・カー インターナショナル版

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          JUGEMテーマ:邦画

           

          出典:IMDb

           

          「ドライブ・マイ・カー インターナショナル版」

          監督:濱口竜介

          原作:村上春樹

          2021年 日本映画 179分 R15+

          キャスト:西島秀俊

               三浦透子

               岡田将生

               霧島れいか

           

          舞台俳優兼演出家の家福悠介は、脚本家である妻、音と

          強く繋がった日々を送っていた。しかし音が

          「帰ったら話をしたい」と言ったその晩、帰宅した悠介が

          見つけたのは倒れている彼女だった。彼女はそのまま息を

          引き取り、大きな喪失感を抱えたまま2年が過ぎる。広島

          での演劇祭を任された悠介は、ドライバーとして紹介された

          みさきの運転で愛車のSAABに乗り込み、毎日仕事に
          向かうのだったが...。


          <お勧め星>☆☆☆半 うーん。3時間近い内容を一気に見る

          のがしんどかった


          もうどうしようもない


          濱口監督の「寝ても覚めても」(2018)はすごく好きな映画

          です。柴崎友香さんの原作を読み、映画も見ましたが、あの

          ふわふわした空気感は独特のものだと思っています。

          あれ?あそこで起きたことは現実なのか夢なのかと思うシーンが

          いくつか出てきます。

          わたしが敬遠していた黒沢清監督作品の中で

          「スパイの妻」(2020)の共同脚本に携わったと読み、映画

          も見ましたが、あの映画は初めて黒沢清監督の作品で心を引き

          込まれました。謎めいた登場人物と美しい異人館が混じり合って、

          まさに多国籍の香りが漂う雰囲気を醸し出していたと思います。
          で、大評判のこの映画を意気込んで見たのですが、まず原作の

          村上春樹さんの本が性に合わないということに気づかされます。

          彼のエルサレム賞受賞の際のスピーチ、「Of Walls and Eggs」を

          読むと心を揺り動かされるし、彼自身が静かに訴えたいことも

          とても理解できます。このスピーチは知り合いに勧められて読み、

          そして感銘を受け、原文のままPCに保存してあるのですが。

           

          ドライブ・マイ・カー
          出典:IMDb

           

          映画の主人公は、舞台俳優兼演出家の家福悠介で、彼は脚本家の

          妻、音が二人の行為のあと口から出す言葉を反芻し、それを

          テープに吹き込んで愛車のSAABの中で聞く日常を送っています。

          ある時予定外に帰宅すると、音は自宅でほかの男性と抱き合って

          います。それを見ても悠介は何も言わず気づかれないように家を

          出るのです。
          彼はチェーホフ原作の「ワーニャ叔父さん」の舞台劇を演じており、

          そのセリフと彼自身の日常が何となく重なって映ります。

          思い出しましたが、「ワーニャ叔父さん」1971年製作映画は、

          学生時代に劇場で観たことがあり、当然のことながら眠くて

          たまらなかった。そのあらすじすらも覚えていません。当時は

          ソ連映画だったことだけ覚えています。
          さてある朝「今晩帰ったら少し話せる?」と悠介に言い、彼も

          いつも通り笑顔で頷きますが、その日はなぜかSAABを走らせ深夜に

          帰宅すると妻が自宅内で倒れているのです。彼女はそのまま亡くなり、
          その2年後広島での演劇祭の演出の話が持ちかけられるシーンに

          変わります。表情の変わらない悠介の胸の内は見ている側が推し量る

          しかありません。
          演劇祭の主催に関わっている韓国人ユンスは韓国語、日本語、英語、

          そして手話が話せると言う。また決まりだからとドライバーを用意

          すると言われるのです。SAABの運転席は自分の空間であり、音が

          生前運転した際もあれこれ文句をつけていたシーンを思い出します。

          したがって何度も断るのですが、とりあえずテストドライブをして

          みることになると、現れたドライバーは、みさきという若い女性で、

          さらに悠介が思っている通りの運転をするのです。

           

          ドライブ・マイ・カー

          出典:IMDb

           

          もちろん車内で例のテープを流し、悠介は脚本に没頭しても一つも

          雑音が入らない空間を作り上げてくれます。みさきの運転が

          なぜこんなに上手いのかはこの後で彼女の生い立ちからわかって

          きますし、悠介と音が過ごした23年の間に起きた出来事も後半に

          わかってきます。

           

          ドライブ・マイ・カー
          出典:IMDb

           

          一方、演劇祭で上映される「ワーニャ叔父さん」の配役を公募すると

          様々な国の人々が集まってきます。その中に、かつて音の脚本で

          テレビドラマの役を演じた高槻もいるのです。この高槻役は

          岡田将生くんなんですが、彼は悠介と全く異なり、いや、応募して

          きた他の俳優たちとも異なり、ストレートに感情を表すし、それは

          行動にも現れてきます。自分の言葉が伝わらないことが普通である、

          ということが彼には理解できないし、言葉が伝わらなければ体で

          理解するという自らの欲望に極めて素直?な人間でもあるのです。
          悠介と音、そして悠介と高槻、悠介とみさきの関係の中で演劇祭に

          携わる人々の心の底にある何かが次第に露呈していきます。

           

          ドライブ・マイ・カー

          出典:IMDb

           

          韓国人女優ジャニスとユンスの妻で手話でしか会話できないユナが

          練習中に思わずハグするシーンがあります。その時悠介は

          「2人の間に言葉を超えた何かが起きた」

          と語るのです。これを高槻は理解できているのでしょうか。しかし

          普通の人間が感じるものを超越した位置にいるような悠介は、

          本当にその平穏な感情のままで過ごしてきたのでしょうか。
          みさきが語る実母の話とその後悠介の口から出た

          「正しく傷つくべきだった」

          という言葉は根本は同じところから始まっているのかもしれません。

          印象的なのはSAABの車内での悠介の座席で、最初は後部座席、
          高槻が乗り込んでも後部座席、しかしその後高槻が下車すると、

          助手席に乗り変えます。ここに彼の大きな心の変化が現れている

          気がします。
          舞台「ワーニャ叔父さん」での最後のセリフ

          「その時が来たらゆっくり休みましょうね」

          はあらゆる人々に向けての言葉のように思えます。
          絶賛レビューが多い中、この世界観に入れなかったことは自分の

          感性の鈍さが原因だと思いますが、一度は見ておくべき映画だとは

          感じました。

           

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          ロマンスドール

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            JUGEMテーマ:邦画

             

            ロマンスドール

            出典:IMDb

             

            「ロマンスドール」

            監督:タナダユキ

            原作:タナダユキ「ロマンスドール」

            2019年 日本映画 123分  PG12

            キャスト:高橋一生

                 蒼井 優

                 きたろう

                 渡辺えり

                 ピエール瀧

             

            美大の彫刻科を卒業したものの定職のない哲雄はひょんな

            ことからラブドール製作会社に勤務し始める。彼はそこで

            先輩の相川とともに究極のドールを作るため、目的を偽り

            モデルを募集する。そこに応募してきたのが園子で、哲雄は

            一目で彼女を気に入り、プロポーズするのだった。しかし

            自分の本当の仕事内容は伝えられない...。


            <お勧め星>☆☆☆半 主役2人の演技が自然かつ艶めかしくて

            つい見入ってしまいます。


            犬の名前を思い出すとき


            「妻がその命を終えた」で始まる映画は、10年前に遡り、

            ラブドールを作る会社に美大の彫刻科出身の北村哲雄がやって

            来るシーンに変わります。ラブドールというと、なんか犬の

            名前のようだし(それはラブラドール)可愛いお人形かな

            と思ってしまいますが(可愛いいお人形です、一応)これは

            アダルトグッズの範疇になる人形なのです。かつては

            ダッチワイフと呼ばれ(日本でのみ呼ばれていたらしい)

            いろいろな方式のものがあったようです。詳しく知りたい場合は

            ググってみてください。
            その会社というか工場には相川金次(きたろう)という先輩が

            おり、彼が仕事内容をとんとんと教え、「究極の人形作り」

            つまり人肌を感じる人形=魂が宿ったものを製作することを

            目指し、日々研究を重ねていくのですが、どうも型取りが人形の

            域を出ず、目的を偽ってモデルを募集することにするのです。
            このラブドールに関する映画でまず思い出すのは

            「空気人形」(2009)です。あの映画では人形が突然瞬きを

            し、動き出し、心を持ってしまうものでした。ペ・ドゥナ

            演じる空気人形「のぞみ」のメイド服姿がとても可愛らしかった

            です。

            また「ラースと、その彼女」(2007)では

            ライアン・ゴズリング演じるラースが、彼本人にしか動いて

            いると見えない、そして話していると聞こえないラブドールとの

            関係を家族だけでなく、町の皆が温かく見守るというちょっと

            奇妙だけれど幸福感にあふれた映画でした。

            そして「her/世界にひとつの彼女」(2013)は人工知能AIを

            持ち、本物の人間同様に動き、話し、考えることができる人形が

            登場します。
            しかしながら、この「ロマンスドール」では当然のごとく

            シリコン製のラブドールを作り、それが動くわけでも話すわけ

            でもありません。ただそういう人形を求める人たちに向けて究極の

            作品を作り出そうとするのです。

             

            ロマンスドール

            出典:youtube

             

            そして「乳房再形成」のための乳房作りと偽り、モデルを募集

            すると、応募してきたのが蒼井優演じる小沢園子で、哲雄は

            一目でロックオン!石膏で型を取るだけでなく「触らせてください」
            などという無謀な要求に園子はニコニコして応じるのです。

            その時の気分は「クララが立った」感じと本人が言います。

            そして工場に彼女が忘れたイヤリングを届けながら、そのまま

            プロポーズ、結婚ととんとん拍子で進みます。

             

            ロマンスドール

            出典:IMDb

             

            序盤はこの出会いからままごとのような新婚生活が楽しそうに

            映ります。例の園子をモデルにして作ったラブドール「幸子」が

            大人気商品となり、会社は大盛り上がりです。
            ここまで来ると哲雄は自分の本当の仕事内容を園子にますます

            言えなくなるし、さらに素晴らしい人形作りに没頭するため、

            園子のいる家庭を一切省みなくなってしまいます。さらに相川が

            急死、その後に入社したもろずみに新製品のデータを盗まれて

            しまう。哲雄が園子のいる家に戻ることを避け、ゲームセンター

            に向かったのは、彼女を見ると相川を思い出すからでしょうか。

            彼と一緒に目的を偽り人形作りに励んだあの時期があまりに

            懐かしかったからでしょうか。
            そしてゲームセンターで出会った女性とカラオケに行き、帰宅

            すると園子は置手紙をして家を出ています。「父の具合が悪い」。

            しかしその実家から電話がかかり、その話が嘘とバレてしまうと、

            哲雄は例のゲーセン女と再会し、当然のごとくホテルに向かいます。
            一方の園子は3日外泊して帰宅し、それを責める哲雄に

            「てっちゃんが帰宅が遅れる時連絡などしなかった」

            と言ったきり寝室に向かうのです。哲雄はここで自分がいかに

            園子を粗末に扱ってきたのか気づくんですね。マジ、遅い。

            そして互いの秘密を告白し、初めて哲雄はラブドールを作っている

            ことを園子に伝えるのです。また互いの浮気も話します。その上

            園子はガンを患っていて、近々入院するというのです。これだけの

            重要な情報を哲雄は知ろうとしなかったし、知らせてもらえる時間

            すら持っていなかったことに気づきます。しかし時すでに遅しで、

            園子に一方的に「離婚」を告げられます。

            これで幸せな結婚生活は終了...と思ったら、その後に二人は復縁

            します。(多分再び入籍するんだと思う)
            そのきっかけは園子のガンの再発で、進行性のガンはあちこちに

            転移し、治療ではなくQOL(生活の質)を優先するしかないと

            哲雄は医師に告げられます。そしてそれを知った園子は自分を

            モデルにラブドールを製作してほしいと哲雄に頼むのです。

            ラブドールを限りなく本物に近づけるために自分の妻の体を

            モデルにするということです。

             

            ロマンスドール

            出典:youtube

             

            この後は毎回園子を抱いては感触を確かめ、スケッチをし、
            人形の型作りをして行く哲雄に変わります。しかし人形の完成が

            近づくと園子の体は逆にやせ細っていき、結婚指輪がくるくる

            回るほどです。やせ細っていく愛する人の姿を日々見るのは

            本当に辛いことですが、園子は

            「覚えているばかりじゃ悲しいこともある」

            と優しく語ります。それは前の桜の咲く時期に二人で見た犬の

            名前を哲雄が度忘れしたことを園子に話した時のことです。

            思い出は美しいけれど、それを思い出すと悲しくなるものも

            たくさんあります。そういうものは心の奥の引き出しにしまって

            おいて、ごくたまにのぞいてみるくらいがいいのでしょうね。

            のぞいてみてもやはり涙することはわかっているけれどね。
            哲雄は園子にそっくりな人形を作り続けます。シリコンの

            つなぎ目を綺麗にハサミで切り取り、磨き、髪の毛を1本1本

            植え付け、唇に紅をさします。そこには園子への愛情があふれて

            いるのです。
            ようやく完成し、それを自分で試すとき、哲雄は園子を思い出し

            つつ、例の犬の名前も思い出すんです。そこで彼は号泣します。

            園子と過ごした日々が走馬灯のように頭の中を駆け巡っている

            映像が流れると、高橋一生の嗚咽が、胸にビシビシ響いてくるの

            です。
            そういえば高橋一生と蒼井優は「スパイの妻」(2020)でも

            共演していました。その時の謎めいた雰囲気とは全く異なり、

            純朴で真面目な青年役もできる高橋一生以上に

            「宮本から君へ」(2019)など、その映画ごとに雰囲気が

            全く異なる蒼井優には驚きます。この二人は完璧すぎる。

            ラブシーンもキスシーン程度ですが、ちょっと前に見た

            「ファーストラヴ」の北川景子と比べたら月とスッポン、暴動を

            起こす気持ちは微塵も浮かんできません。

            きれいなだけじゃダメなんだよ。
            そしてラスト付近は上映が延期になった理由と被るようにこの

            ラブドール会社の社長久保田が逮捕されます。

            久保田役はピエール瀧。逮捕理由が「リアルすぎ」だって。

            ここはちょっと笑えてしまいました。
            あくまでもアダルトのおもちゃで収めないといけないらしい。

            それは誰が判定するんだろうな。
            高橋一生と蒼井優の演技がとても自然で映画に入り込むことが

            できました。

             

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            泣く子はいねぇが

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              JUGEMテーマ:邦画

              泣く子はいねぇが

              出典:IMDb

               

              「泣く子はいねぇが」

              監督:佐藤快磨

              2020年 日本映画 108分

              キャスト:仲野太賀

                   吉岡里帆

                   古川琴音

                   筧 一郎

                   松浦祐也

               

              秋田県、男鹿半島に暮らすたすくは、待望の子供が

              生まれ喜んでいた。しかし妻ことねは育児に疲れ果てて

              いる。恒例の「なまはげ祭り」の晩、酒を飲まないと

              妻と約束して祭りに参加したたすくは、泥酔し、全裸で

              さまよう姿がテレビに映ってしまう。2年後、妻と離婚し

              東京で暮らすたすくの元の友人筧が訪ねてくる...。


              <お勧め星>☆☆☆半 とことんダメな男を描きながら

              大人になること、父親になることの難しさを感じさせます。


              ラストのなまはげの咆哮


              最後までたすくの大人になれないダメ男が印象付けられて

              いてちょっと気持ちが入り込めませんでした。
              秋田の男鹿半島で行われている「なまはげ祭り」では怖い

              お面をかぶった男の人たちが、近所の家を周り、

              「悪い子はいねぇが」と言いながら子供を抱き上げて

              いきます。

              怠け心を戒め、無病息災・田畑の実り・山の幸・海の幸を

              もたらす年の節目にやってくる来訪神として、その家の

              人たちは「なまはげ」をもてなすらしいのです。
              しかしこんな天狗のようなお面をかぶった見知らぬ男性に

              抱かれて「おお〜〜」などと言われた幼子は、絶対に

              その晩には悪夢を見るといつも思っています。神事で

              あっても、トラウマになりそうで心配しちゃう。
              映画の始まりから、不機嫌そうな妻ことね(吉岡里帆)と

              何となく大人になりきれていないたすく(仲野太賀)が

              映ります。一応子供(娘)が生まれたらしいのですが、その

              子供の出生届を出すたすくと家で娘、凪と実父の世話を

              していることねとの温度差が大きのです。ことねは育児に

              疲れ切っているし、たすくを全く信頼していません。

              おそらく定職がないたすくを見限っているのでしょうが、

              たすく的には、今のままで何の不満もないみたい。

              多分、そういうところがことねは嫌なんだろうな。
              そして「なまはげ祭り」に駆り出され、ことねが

              「飲まないよね」と念押しし、「うん」と言ったくせに、

              たすくは飲んで、飲んで、飲みまくるのです。それは地元の

              風習だし、大先輩の夏井の言葉に逆らえるはずもないのです。

              そしてテレビ取材を受けている夏井の前に、あろうことか

              たすくはお面をかぶった上で全裸で走っていきます。それは

              彼の本心で、おそらく、抑圧された自分を発散しただけ

              だったのに、いや、ただ酒癖が悪かったのかもしれません。

              だからことねが止めたんですね。そして海岸まで行き倒れます。
              それから2年後、たすくは東京にいてフットサルのコーチを

              しているのです。この2年の間に何があったのか、それは

              見ている側が想像するしかありません。しかしたすくの今の

              姿を見ても、あの出来事の責任をしっかりとったとは思えず、

              ただその場から逃げ去ったようにしか感じられません。

              というのは、彼が酔いつぶれた同僚の女性を自分のアパート

              まで連れ帰り、翌朝目を覚ました女性に自分の身の上を

              聞かれた時、十分に説明ができないからです。さらに

              「この話は内緒で..」と念を押します。

              そうそうこの同僚役は「エール」で音の娘、華を演じた

              古川琴音さん。個性的な顔立ちなのですぐにわかります。

              何とも言えない雰囲気を持っているので結構好き。
              そんなたすくの元に地元の友人、筧が訪ねてくるのです。

              「なまはげの会、復活する」

              「ことねの父は亡くなった」

              「ことねはキャバで働いている」

              この3つの事実のどれにもたすくは驚きますが、彼が最も

              関心を持ったのは、もちろんことねが水商売をしている

              ことなのです。そもそも「なまはげの会」が中止になった

              原因は自分にあって、それから逃げてきたのに、その責任

              よりも、失ったことねへの未練の方が強く、彼は突然秋田に

              戻ります。ここも、秋田に戻った時の仕事があるのか、

              とかどういう方法で関係者に謝罪するのか、とか全く考えて

              いないんですよ。2年という時がすべてを水に流してくれた

              と考えているかのよう。
              自宅に戻れば、優しい母親がいて、陰気な顔の兄も「おかえり」

              と出迎えてくれます。甘い。極めて甘い。
              そして彼は筧と一緒にことね捜しを始めるのです。昼間は

              母親が手掛けている「ババヘラアイス売り」のドライバーと

              売り子を手伝います。それも全然やる気がないんです。ただ

              彼の頭にあるのは、ことねと再会し、復縁したいということ

              だけです。いやあ、何かが変わっていればともかく、2年前と

              全く変わっていないたすくを、2年前に見限ったことねが

              受け入れるとは到底思えないのですが、たすくの頭はそれが

              理解できないのですね。
              さらに「なまはげの会」の代表、夏井と出会い、思い切り

              叱られます。「すみません」「ごめん」たすくはこの言葉を

              すぐに口にしますが、それに見合った行動を起こしていません。

              ただその場が静まればいいと考えているかのようです。
              身の入らないアイス売りの準備中に、自分の母親が倒れた

              のも背後でその音を聞いてから気づくほどだし、兄からは

              「製材所を売るから出て行ってほしい」と言われ、小遣い

              稼ぎとして手伝っていた筧の「密漁」も通報を受けた警察に

              見つかってしまいます。
              たすくにとって試練は続き、ようやく2人きりで会えた

              ことねに
              「決めたの。キミじゃない。わたし再婚するから」
              と言われるのです。「キミ」...ことねの中では既にたすくは

              過去の人物になっているのに、過去から一つも進んでいない

              たすくは、この言葉がやはり理解できないのです。
              しかし自分の娘の通う保育園のお遊戯会にこっそり向かっても、

              壇上でお遊戯をしている子供の中の誰が自分の子供なのか、

              たすくは区別がつかないのですよ。観客席には、ビデオを

              構えたことねと再婚相手が、楽しそうに娘の様子を見守って

              います。ここでようやく自分がことねとはもう復縁できないと

              気づくのです。おそっ!
              ラストは「今日だけ」と夏井に頼み込み、なまはげ姿になった

              たすくが、ことねの家に向かいます。廊下のガラス戸を開けた時、

              ことねの表情が固くこわばったものから、少し時間をおいて、

              あきらめの境地のようなものに変わり、たすくを招き入れるの

              です。
              一族で団らんしている場所で、なまはげ姿で咆哮するたすくは、

              何を思っていたのでしょうか。怖がる娘は再婚相手の膝の上に

              しっかり座っています。たすくがお面越しのため、表情が一切

              わかりませんが、そこには強い後悔と悲しみが宿っていたような

              気がします。

               

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              タイトル 拒絶

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                JUGEMテーマ:邦画

                 

                タイトル、拒絶

                出典:IMDb

                 

                「タイトル、拒絶」

                監督:山田佳奈

                2019年 日本映画 98分 R15+

                キャスト:伊藤沙莉

                     佐津川愛美

                     恒松祐理

                     でんでん

                     円井わん

                     野崎智子

                 

                派遣型風俗業の面接を受けたカノウは、実際の

                仕事から逃げ出してしまい、そこの雑用係として

                働くことになる。店長山下の暴力にも耐え、個性

                豊かなデリヘル嬢に仕事を回す、カノウは、いつも
                笑っている人気ナンバー1のマヒルに密かに憧れて

                いる...。


                <お勧め星>☆☆☆ 底辺にうごめく人々が抱える

                苦悩や喜びや悲しみを短い時間に一気に見させられる

                気がします。


                ゴミをため込んでバランスをとっている


                悪質なポン引き禁止の看板の隣で上半身下着姿の

                伊藤沙莉演じるカノウが語ります。

                「わたしはウサギではなくタヌキを選んできた。」
                そして彼女が「クレージーバニー」というデリヘル店の

                店長の面接を受けるシーンに変わります。この店長

                山下役の般若がすごい。なにがすごいって、そのもの

                ずばりの配役なんです。まさか地で演じているん

                じゃないの?本当にクズで、言葉が悪く、下に威張り、

                上にへこへこし、無類の女好きときた。さらに女性に

                対してもすぐに手をあげる。正真正銘のクズってこういう

                のかもね。

                映画の終盤にカノウは彼からものすごいパンチを受けるん

                だけど、この時の状況を伊藤沙莉さんは

                「本当に殺されるかと思った」と舞台挨拶で語っています。

                 

                タイトル、拒絶
                出典:youtube

                 

                そしてカノウは初仕事を受けたのですが、「どうしても無理!」

                とそこから逃げ出します。ホテルから下着姿で飛び出し、

                それを追いかけるキモイ男と、彼女を救おうとする通りすがりの

                男性2人の姿を見ると、こういう仕事は実はものすごく「自分」

                というものを殺して臨まなければならないのだと感じるのです。

                理由は手っ取り早く稼ごう、というだけではないことに

                気づきます。

                 

                タイトル、拒絶
                出典:IMDb

                 

                カノウはこの件で、デリヘル店の雑用係となり、買い出しや

                客への対応などに携わることになるのです。デリヘル嬢たち

                のいるマンションの一室では、テレビに見入る者、隅で何かを

                書いている者、大声でおしゃべりする者などで大そう混沌と

                しており、中でも佐津川愛美演じるアツコの個性がとても強い

                です。仲良く話していたかと思ったら、ちょっとしたことで

                喧嘩になり、キーキーキャーキャーと喚き散らすのは、これ

                また実際もこうなんだろうと思うほどのシーンです。そして

                怒ったアツコがとっとと帰ってしまうと、それを責められて、

                カノウは山下に殴られます。「はい、すいません」
                彼女はここではひたすら「タヌキ」に徹し、綺麗に着飾った

                女の子と同じ位置には立てないと納得しているのですね。

                 

                タイトル、拒絶
                出典:IMDb

                 

                とはいえデリヘル嬢の中でもヒエラリキーは存在し、今の

                ところナンバー1人気は、いつもニコニコ笑っていて可愛い

                マヒルちゃん。カノウは彼女こそ「ウサギ」だと思うわけ

                です。
                一方スタッフの1人リョウタと1回だけ関係を持った

                キョウコは、リョウタにぞっこんで、ぼろくそ言われようが、

                車から放り出されようが、金だけ抜き取られようが、彼への

                気持ちは変わりません。
                映画内でキョウコは手編みのマフラーを編み、リョウタに

                渡すと

                「なんだ、これ!」

                と怒られるのに、次に会った時にはそのマフラーをリョウタは

                首に巻いているんです。それぞれが心に闇を抱えていて、

                素直な気持ちを表に出せない性格になっているのでしょうか。
                カノウが憧れるマヒルは、山下とも関係があり、それはすべて

                お金で繋がっています。マヒルは

                「お金をいっぱい貯めて使用人に全部身の回りのことをして

                もらう生活をしたい」

                と言います。

                 

                タイトル、拒絶

                出典:IMDb

                 

                しかし彼女には妹がおり、おそらくはDV男の子供を身ごもり、

                とりあえず結婚すると伝えに来ます。マヒルは妹から蔑まれて

                いるのを知っているけれど、彼女にお金を渡すんです。それも

                いつも通りにこにこ笑いながら。この姉妹の会話は一言一言が

                意味深で、ごく普通の人たちの人生にも当てはまるようなことを

                さらりと口にします。

                「わたしの人生ぐーるぐる」
                そして新人リユが入ってくると、この店内での人間関係の

                バランスが微妙に狂ってきます。この子がやけに冷静でそして

                可愛いということもあるかもしれません。山下がアツコに

                「自宅待機」を言い渡すとアツコはこれまたワーワー泣くのです。

                それに対し、隅っこ暮らしのチカは

                「簡単に泣かないでよ。」

                と言う。彼女の父が今病院で死亡したという電話が入った

                ばかりで、「クビ」ごときで泣きわめくアツコにイラつくのです。

                この人間同士のオブラートに包まれていないぶつかり合いは、

                本来なら現れないような状況をすぐに引き起こしてしまうもので、

                これを言うと鬱陶しいけれど「絆」とか「信頼」とかは存在

                しないんでしょうね。
                店にはちょっとイケメンのスタッフ、ハギオがいますが、彼は

                もっぱらドライバーであり、どうやらカノウは彼に憧れている

                らしい。しかし彼も男娼のように金のために年増の女性の相手を

                しているのです。
                中盤に店にちょっと場違いな女性が入ってきます。この時の

                オーナーの言葉には笑ってしまったけれど、こういう考えで

                ないと仕事をこなしていけないだろうなとも思ってしまう。
                マヒルはある時、カノウと二人きりになることがあり、その時に

                いつものように笑いながら自らの壮絶な過去を語るのです。

                これには自分が一番最低の生活をしてきたと思っていたカノウも

                驚きます。そして憧れていたマヒルから

                「わたしもカノウちゃんみたいになりたかったよ」

                と言われてしまいます。カノウの中で「ウサギ」だったマヒルも

                実は「タヌキ」で、多分ここにいる人たちは、世間一般から
                見たら「タヌキ」であることは間違いなく、それでも生きる

                ために必死で何かにしがみついているのだと気づくのです。
                終盤、山下が女性やスタッフに対し

                「てめえらはみんなゴミ。ここで息ができるだけで感謝しとけよ」

                などと怒鳴ります。そういうあんただってゴミの中にうずもれて

                いるくせに。
                この言葉にブチ切れたアツコがオイルを撒き、マヒルから

                手渡されたライターで火を放とうとしますが、それは最初に

                アツコが使っていて、火のつかないライターなのです。誰もが

                イライラし、誰もが自分に幻滅し、誰もが誰かを愛そうとして

                いるこの狭い世界で、カノウは大泣きするんですよね。

                その理由がハギオに

                「そういう対象じゃない」

                と言われたからです。

                自分の価値は他人が決めるものじゃないし、人の心の中は

                その人にしかわからない。いやその人自身もわかっていない

                かもしれない。それでも先に進むしかないのが人生なのだと

                思っています。

                 

                 

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                火口のふたり

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                  JUGEMテーマ:邦画

                   

                  火口のふたり

                  出典:IMDb

                   

                  「火口のふたり」

                  監督:荒井晴彦

                  原作:白石一文「火口のふたり」

                  2019年 日本映画 115分 R15+

                  キャスト:柄本 佑

                       瀧内公美

                   

                  10日後に結婚を控えた直子は、自分の結婚式のために

                  実家に帰省している元カレ賢治の元を訪れる。直子は

                  かつて恋人時代に撮影した二人の写真を張ったアルバム

                  を彼に見せる。そして「今夜だけあの頃に戻ってみない」

                  という彼女の誘いに二人は恋人時代に戻るのだったが...。


                  <お勧め星>☆☆☆ 火口の二人の意味はそこに繋がる

                  のかと最後に実感します。


                  自分のからだの言い分


                  登場人物はほぼ二人だけだし、映画の半分以上は濡れ場

                  です。なのでなぜかコソコソ見てしまうのです。
                  賢治がビールを飲みながら川で釣りをしていると、そこに

                  父から電話がかかります。

                  「従妹の直子が結婚する。式に出るために帰省してくれ」
                  この時点では、賢治がどこにいて、そしてなぜ昼間から

                  釣りなどをしているのかよくわかりません。また従妹の

                  直子、に反応する意味も分からないのです。
                  そして次は一人家の中で寝ている賢治に変わります。

                  そこに押し掛けるのが直子で、彼女は10日後に自衛官と

                  の結婚を控えていると語るのです。その時、賢治の身の上

                  が語られ、離婚し、会社を辞め、そして紹介された会社は

                  震災の影響で倒産、その後4年間無職だと言います。

                  そういう直子もフリーターで、気ままに働いているらしい。
                  なぜ結婚するのか?という問いに、直子は

                  「子供を産みたいから」

                  と答えるのです。そして直子の自宅に賢治を連れて行き、

                  かつて二人が恋人時代に撮ったモノクロ写真を貼った

                  アルバムを彼に見せます。
                  モノクロだと余計に淫靡な雰囲気を醸し出す写真の写って

                  いるのは、これまた奔放すぎるほどの二人の姿であり、

                  ほとばしる若さとエネルギーを感じるものばかりです。
                  そのアルバムの最後は富士山の火口の写真の上で、

                  吸い込まれて行こうとする二人が全裸で抱き合っている姿

                  の写真でした。賢治25才、直子20才。
                  さて、直子はなぜ賢治の家を訪ねたかというと、実は新居に

                  購入予定のテレビの特売品を入手したいからで、それを

                  運ぶために賢治の手が必要だったのです。先着5名は明け方

                  から並ばないと買えないんだ、とこの映像を見て初めて

                  知ります。

                  家電量販店の「先着何名様限り」という文字を目にすると、

                  少し心が動くけれど、「どうせ無理」と思ってそのまま

                  チラシは古紙回収箱に移動するのが常です。あれをゲット

                  しようと考える人たちのエネルギーはどこから湧いて

                  くるんだろう。
                  次に向かった直子の新居は海が見える絶好のロケーションで、

                  築20年、500万円だと言います。そしてテレビを搬入後、

                  直子は突然賢治に抱きつくのです。
                  「今夜だけあの頃に戻ってみない?」
                  そこからはかなりハードな濡れ場シーンの連続で、アダルト

                  ビデオと見間違うほどですが、時々、彼らが交わす会話に

                  心を揺り動かされます。
                  東日本大震災の時に、どこにいたかで、直子は負い目を

                  感じていたと言います。震災で家や家族を失った人と、同じ

                  東北ながら、被害の少なかった秋田にいた直子は、知り合い

                  と会話をするたびに
                  「生きていることはありがたい」

                  と思うことにしているのです。一方の賢治は東北は歴史を

                  見ても不幸続きだ、と語ります。

                  そういう自分の人生も今のところ幸せには縁遠く、離婚した

                  妻との間にもうけた息子との面会権は放棄させられているの

                  です。あんなに楽しそうだった二人が、なぜ別れたのか、

                  そして憎み合うこともないまま、こんな形で再会できるのか

                  とても不思議に感じますが、二人のツーと言えばカーという

                  意思の疎通具合は磁石のように引き合う関係がいまだに存在

                  している証なんだろうな。
                  料理の得意な賢治が作ったハンバーグで酷い腹痛になった

                  直子を看病する賢治に対し、直子は

                  「北野さん(婚約者)に看病してもらうのは恥ずかしい。

                  賢ちゃんの前なら何でも平気」と語ります。
                  いとこ同士で結婚するのは特に違法でもないけれど、賢治的

                  には「いとこであることがやましく」思えていて、いつも

                  物陰で関係を持っていたと語ります。直子がいとこだから

                  赤の他人とは違う存在に思っていたのとは全く異なっていた

                  のです。
                  そして賢治を好きで東京まで追ってきた直子と暮らし始めた

                  ものの、賢治は浮気をしてしまいます。それが元の妻で、

                  その人と浮気をしてきた日はすぐに分かったと直子は語るの

                  です。それでも賢治を好きだったからそれを受け入れたと。
                  今夜だけが、婚約者が戻るまでの5日間に延び、二人は

                  ただただ恋人時代だった瞬間に戻り続けますが、時折入り込む、

                  食事のシーンや祭りのシーンまでも艶めかしく思えてきます。

                  本当にそれしか頭にない二人だということがよくわかります。

                  ここで、無職とフリーターなのに、どこからそのお金が出て

                  きたのか?とか、これらの行動に意味があるのか?などと

                  考えるけれど、それも5日という期限が決まっているので、

                  夢物語を描いているわけではないのです。
                  しかしラストにまさかの展開が訪れます。
                  「もう何が起きてもおかしくないよ」
                  これ原作ではどんな風に描かれていたんでしょう。二人の過去に

                  さかのぼって丁寧に説明されていたのでしょうか?

                  少し原作を読みたくなりました。

                   

                   

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                  MOTHER マザー

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                    JUGEMテーマ:邦画

                     

                    MOTHER

                    出典:IMDb

                     

                    「MOTHER マザー」

                    監督:大森立嗣

                    2020年 日本映画 126分 PG12

                    キャスト:長澤まさみ

                         奥平大兼

                         郡司 翔

                         阿部サダヲ

                         夏帆

                     

                    シングルマザーの秋子は生活保護費や元夫からの養育費を

                    パチンコやゲームセンターにつぎ込む自堕落な日々を

                    送っている。一人息子の周平はろくに学校に行かせて

                    もらえず、実家へ金の無心に行くときだけ利用されている。

                    ある時ホストの遼と知り合った秋子は1か月ほど家を空ける。

                    周平はガス、電気が止まった部屋で一人で母親の帰りを待つ

                    のだった。


                    <お勧め星>☆☆☆半 本当に不愉快な内容でいろいろ思う

                    ところがありますが、長澤まさみさんの演技は素晴らしい

                    です。


                    生んだのはあたし


                    ずっと見ないでおこうと思っていた映画でしたが、やはり

                    手を出してしまい、最後まで見終えてとても不快な思いだけ

                    残ります。しかしそれだけ秀逸に作られ、演技力のある

                    俳優さんたちを起用しているのだとも感じるのです。
                    冒頭に仕事をさぼってきた母、秋子と、転んだことで学校

                    から帰ってきて周平が映ります。「フケちゃおう!」秋子は

                    とても楽し気に笑い、二人でプールに向かうのです。秋子は

                    周平を女手一つで育てているものの、金銭にルーズで

                    パチンコやゲームセンターに入り浸り、生活保護費や元夫

                    からの養育費を使い果たし、さらには親や妹にまで借金を

                    重ねています。しかし彼女は決して自分が悪いとは考えない

                    のです。

                    秋子の生育過程が全くわからないのでどういう経緯でこういう

                    生活態度をとるようになったのかわかりませんが、妹の会話

                    から、どうやら出来の良い妹は大学まで行き、出来の悪かった
                    秋子は常に卑屈な思いを抱いて成長したらしいことが伺えます。

                    父親がこっそり周平に手渡した金を持って、秋子はまた

                    ゲームセンターに行き、金を使うのです。そしてそこで遼

                    という男と知り合います。秋子はこの遼をすっかり気に入って

                    しまい、家に連れ込んだあげく、周平にはカップラーメンを

                    買いに行かせます。この命令の仕方が、彼女が周平を自分の

                    子供として愛しているものの、ある部分では所有物のように

                    考えている気がするのです。秋子の家はガスが止まっている

                    ので、お湯が沸かせられないから、コンビニでお湯も入れて

                    こいと言う。小4の少年が健気に言うことを聞くのです。戻って
                    くれば母親と遼は寝室に入っている。

                     

                    MOTHER

                    出典:youtube

                     

                    もうこの時点で遼が不憫でなりません。
                    また生活保護を担当している市の職員、宇治田に周平を預け、

                    秋子は遼と名古屋に向かってしまいます。一人アパートに

                    戻された周平は、宇治田が購入してくれたカップ麺をそのまま

                    かじります。もちろん入浴や洗濯ができるはずもなく、その上

                    電気も止まります。
                    6日後秋子と遼は戻ってきますが、今度は宇治田を脅迫して

                    金をせしめようと考え、それに周平を利用するのです。

                    利用しつつ「お前はお荷物なんだよ」と遼に言われる周平の

                    気持ちはどんなものだったでしょう。その場が上手くいけば

                    いいと考える浅はかな大人の姿は子供の目にどう映っているの

                    でしょう。しかし周平の居場所は母親のそばしかないのです。
                    宇治田と遼がもみ合いになり、ナイフが彼に刺さったことで、

                    遼と秋子は、全く違う土地に逃げていきます。そこで働く

                    のは遼だけで、秋子は相変わらず携帯が料金未払で止まった

                    ことを怒るだけなのです。
                    社会生活が普通に送れない人はどこか脳に欠陥があるのでは

                    ないかと思うのですが、その「普通」という定規は誰が示す

                    ものかにもよります。秋子の場合、勤労意欲はなく、おそらく

                    ギャンブル依存症で、それでいて我が子である周平への執着が

                    人一倍強い。これは愛情というより依存であるようにも

                    思えます。
                    映画の中盤で、周平の実父に金をせびりに行かせる秋子は、

                    それが「恥」だとは一向に思わないのです。おまけに自分は

                    隠れていて周平にすべて命令して金を要求させます。その時

                    父が「お父さんと暮らすか?」と周平に尋ねるのですが

                    「いや、お母さんがいい」と彼は答えます。その言葉は一見

                    すると「本心」でないように思えますが、映画のラストでも

                    彼は「お母さんを大好き」と言います。この二人は普通では

                    ない歪な愛情で強く結ばれていると感じるのです。
                    叔母にあたる秋子の妹に金を借りに行かされ、妊娠したことを

                    遼に告げた時に酷い暴力を受けた秋子をかばい、さらには

                    実家への金の無心も一人で行かされる周平は、なぜにこの母

                    から逃げなかったのだろうとばかり考え続けます。それでも

                    秋子は遼に逃げられると「周平だけが頼り」ときつく抱きしめ

                    るのです。それは愛情ではなく「執着」に近いのではないの

                    でしょうか。

                     

                    MOTHER
                    出典:youtube

                     

                    5年後、冬華という娘を連れて、3人はホームレス生活になって

                    います。それでも秋子は相変わらずパチンコ三昧なのです。

                    そこに手を差し伸べたのが児童相談所の職員で、それによって

                    周平はフリースクール通えるし、一家には部屋も与えられます。

                    冬華は「お布団、お布団」と言ってはしゃぐ姿には胸が痛く

                    なるほどです。またフリースクールで学ぶ喜びを覚えた周平

                    とは違い、秋子はハローワーク通いが「だるい」と言い、突然

                    現れた遼にまたご執心になるのです。しかしこの遼は実は

                    借金まみれのDV男ですよ。
                    「あんた、もう学校行かなくていいっしょ」

                    と周平に秋子は言い、遼の夜逃げに一家で同行します。しかし

                    また遼に秋子は捨てられます。「もう周平しかいない」ここ

                    でも秋子は周平にすがりついて泣くのです。

                    秋子と周平のつながりがどういうものだったのか、一つ一つの

                    事例を出して見る側に考えさせているような気もします。
                    6か月後、今度は周平が土木作業で働き、その事務所に一家で

                    寝泊まりし、相変わらず働かず、パチンコをしたりゴロゴロ

                    している秋子が映ります。周平は弁当もなく、また給料も前借り

                    してばかりです。
                    なぜに彼はここまで母親の言いなりなのか。
                    そしてその事務所の社長と秋子は関係を持ったものの、遼から

                    「明日までに50万」というメッセージが届くと、その事務所

                    から周平に金を盗ませるのです。しかし金が足りず、一家は

                    そこを後にします。

                     

                    MOTHER
                    出典:youtube

                     

                    周平に落ち度は一つもありません。それなのに、いつも腹を

                    空かせ、生活費や寝場所に困る生活をこの年までずっと送って

                    きたわけです。それでも秋子に一切口答えせず、彼女の言う

                    ことにすべて従ってきました。それが最後の事件に繋がります。
                    周平は、母親を好きだけれど、実はその呪縛から逃れたかった

                    のではないでしょうか。そばにいたら、相互依存の関係は

                    この先もずっと続いていったことでしょう。この周平のような

                    子供は世間にどれくらいいるのでしょうか。
                    また秋子には1ミリも共感する点がないのですが、彼女の

                    この先の人生はどうなっていくのでしょうか。どうしたら

                    こういう人間ができあがるのでしょうか。見終わってから

                    気持ちが思い切り暗くなっています。

                     

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                    ヤクザと家族 The Family

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                      JUGEMテーマ:邦画

                       

                      ヤクザと家族

                      出典:youtube

                       

                      「ヤクザと家族」

                      監督:藤井道人

                      2021年 日本映画 136分 PG12

                      キャスト:綾野 剛

                           舘 ひろし

                           尾野真千子

                           北村有起哉

                           市原隼人

                       

                      <お勧め星>☆☆☆ 出演者の個別の存在感は大きい

                      もののその背景がややわかりづらい映画です。

                       

                      あんたさえ戻っていなければ。


                      どう見てもチンピラ風の綾野剛演じる「けんぼう」が

                      誰かの葬儀にやって来ます。それがどうやら実父の葬儀

                      らしいのですが、なぜに彼が父と疎遠だったかとか、

                      葬儀に暴力団担当の刑事が参列しているのかとか、その

                      説明は映画の中盤頃にあったのかしら。いやあらゆる面に

                      おいて登場自分についての説明が「セリフ」で語られる

                      のみで、映像がほとんどないのでかなりわかりづらいです。

                      それでも先を見たくなるのは、「ヤクザ」という集団での

                      「家族」が疑似家族的な存在に思えてしまうからでしょうか。

                       

                      ヤクザと家族
                      出典:youtube

                       

                      1999年、父の葬儀に顔を出した後に、賢治は仲間2人と

                      ともに、父に覚せい剤を売っていた売人を殴り、売上金と

                      覚せい剤を奪います。彼らがなぜチンピラなのかわかり

                      ませんが、とりあえず賢治は金だけ残して覚せい剤を海へポイ!

                      そして知り合いの焼き肉屋に繰り出すのです。そこの女主人役

                      は寺島しのぶ。彼女も夫を暴力団の抗争で亡くしているの

                      ですが、その説明も誰かのセリフで語られるのみです。
                      そこへオーラを放つ柴咲組の組長がやって来ます。昭和の

                      ヤクザってこんな感じでしたよね。親分は威厳があり、常に

                      にらみを利かしているのは子分たちです。って本物を見たこと

                      ないけど、映画ではそういう感じだった気がします。さて、

                      その焼き肉屋に外国人のチンピラ集団が襲撃をかけ、銃口を

                      向けられた組長をなぜか賢治は庇います。その後、若頭の

                      中村(北村有起哉)に呼ばれ、柴咲組事務所に行った賢治は、

                      組に入ることを勧められるものの即答で拒否するのです。

                      仕事もせず、チンピラ行為をしている賢治にとって、渡りに

                      船なのに、なぜに断ったのか、ちょっとわかりづらい。
                      しかし冒頭に覚せい剤を奪ったヤクザの集団に追われ、それは

                      侠友会の手下であったことから、賢治たちはボコボコにされる

                      のです。

                       

                      ヤクザと家族

                      出典:youtube

                       

                      この侠友会の川山役の駿河太郎がはまり役で、まるで本物の

                      やくざみたいなんです。臓器売買に使われるため香港行きの

                      船に乗せられることになった時、賢治のポケットに入って

                      いたのが「柴咲組」の名刺です。ほほう、名刺を持っている

                      のってとても大事なんだな。
                      というわけで、3人は柴咲組に身柄を渡され、遂に柴咲博と

                      山本賢治は「血縁盃」を交わします。

                       

                      ヤクザと家族

                      出典:youtube

                       

                      本当にこんな風に神事のようなことをしていたんだろうか。
                      そして2005年、中村が若頭に就任します。賢治が持って

                      きたお祝いの品はロレックスの腕時計かしら。ヤクザだったら

                      もっと金ぴかの方を選びそうだけれど、極めてオーソドックス

                      なタイプです。この腕時計を中村はずっとはめているんです

                      よね。それこそ義理人情の世界に生きている証なんだろうな。
                      ところが暴力団への対策が厳しくなっていた時代で、警察は

                      2つの組を対立させて何かを起こした方を逮捕し、弱体化

                      させようと考えるのです。今も暴力団の組事務所に警察が

                      家宅捜索に入ることがありますが、その映像を見ていると、

                      どちらが警官かヤクザかわからない。言葉遣いも体格も人相も

                      「うりふたつ」です。もしもこういう現場で警察人生を終えて

                      いたら、定年後に一般人に見られる確率はほとんどないんじゃ

                      ないかといらない心配をしてしまいます。
                      そんな時、柴咲組の縄張り下にあるクラブでトラブルが発生し、

                      そこに賢治が駆けつけると、案の定、川山たちがとぐろを

                      巻いているのです。手を出したら負けだけれど、ここで手を

                      出さないと男が廃る?的発想でしょうか。それとも縄張りを

                      荒らされたことへの怒りでしょうか。賢治は捨て台詞を吐いて

                      帰ろうとする川山を後ろからシャンパンボトルでブチ殴ります。

                      あのシャンパンはドンペリじゃないよね?
                      一度飲んでみたいドンペリ...。

                      その後そこで働いていたホステスの由香を安ホテルに呼んで、

                      賢治は憂さ晴らしをしようとしますが、なんと激しく拒否

                      されます。

                      「なんで来たんだよ」

                      「呼ばれたから」

                      「じゃあわかってるだろ」

                      「いやです」
                      「こっちだってお前なんかとやれるかよ」

                      「さっき触りましたよね?」

                      というような会話があったと記憶していますが、この由香役の

                      尾野真千子に色気がないのです。そこがものすごく惜しい。

                      学費のために水商売のバイトを選んだとしても、なぜに賢治が

                      この子を気に入ったのか理由が一つもわからないのです。

                      そこはまあいいのか。
                      しかしシャンパン問題はかなり大きくなり、柴咲と侠友会の

                      加藤との手打ちは失敗に終わります。この時点で既に侠友会

                      と暴力団担当の刑事とはかなり深くつながっていたことも

                      わかるのです。侠友会は覚せい剤で大金を稼いでおり、古い

                      ヤクザ組織の柴咲はもう時代に乗り遅れていたのかもしれません。
                      そして柴咲の乗った車が銃撃され、彼をかばった賢治は負傷、

                      運転していたチンピラ仲間だった大原は死亡してしまうのです。

                      警察に任せろ、という暴力団担当の刑事の言葉はつまり

                      「犯人は別に作る」という意味で全くの解決になりません。

                      点滴の管を引き抜いて銃弾の跡の残る服を着て(なぜにその服?)

                      報復に向かう先は、もちろん川山のいるクラブです。

                      ところが川山に発砲する寸前に中村が割込み、刃物で川山を

                      刺します。賢治はその刃物を奪い、川山をブスブスに刺すわけ

                      ですよ。つまりすべての罪は自分で被るということです。そして

                      賢治は逮捕されます。
                      2019年、14年の時を経て出所した賢治の見た壁の外の

                      光景は、一変していました。さらに暴力団対策法が厳しくなり、

                      携帯一つも買えない身分になっているのです。ちなみに

                      1999年の携帯はアンテナを伸ばすタイプ、2005年は

                      二つ折り、2019年はスマホです。

                      柴咲組にいるのは年老いた古参の組員のみで、彼らはシラスを

                      違法に獲るのが主な収入源らしい。さらに柴咲は末期がんに

                      冒されている。かたや覚せい剤の売買で財を成した侠友会は、

                      ほとんどの縄張りを手中に収めているのです。
                      しかし時代はヤクザ組織主体ではなくなり、半グレ集団が街を

                      仕切り始めています。その中にいるのが、焼き肉屋の息子で、

                      いつも店で宿題をしていたツバサなのです。

                       

                      ヤクザと家族

                      出典:youtube

                       

                      暴力を振るわなくても、動画を拡散させるという極めて影響力の

                      大きい手段を用いて彼らは力をつけています。そこに

                      「義理、人情」は存在せず、損得とその場が楽しければいいと

                      いう刹那的な喜びしか持ち合わせていないようです。
                      出所した賢治と例の焼き肉屋で食事をする竜太もいまはヤクザ

                      から足を洗い、産廃施設で働き妻子までいると言います。その上、

                      「ヤクザはやめても5年間は人間として扱ってもらえない。

                      だからもうアニキとは付き合わない」と支払いもきっちり済ませ

                      店を後にします。かつてヤンチャをしていた時代とは全く変わって

                      いるのです。
                      またようやく居所を探し当てた由香も今は役場で働いており、

                      「もう会わない方がいい」と言います。ところが由香には一人娘

                      がおりなんと14才だという。つまり...。
                      結局組を抜けた賢治は、竜太の紹介で同じ仕事に就き、由香と

                      一緒に暮らし始めますが、幸せはわずかな期間しか続きません

                      でした。
                      「ヤクザに人権はない」と語る暴力団担当の刑事の言葉をただ

                      黙って聞くしかない賢治に対し、傘下で働くように言う侠友会の

                      加藤に対して「俺、結構うまくやってるんで」と少し笑いながら、

                      動画を見せて脅し返すツバサを見ると、時代は思っていたよりも

                      さらに大きく変わっていたことを実感するのです。もちろんどれも

                      知らない世界ばかりですが、「あんたさえ戻って来なければ」と

                      信じていた人に言われ続ける寛治の胸の内を考えると、彼は

                      どこまでも孤独だった気がします。

                      ラストシーンだけ救われたかな。

                       

                       

                       

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                      私をくいとめて

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                        JUGEMテーマ:邦画

                        ​​

                        私をくいとめて

                        出典:youtube​

                         

                        「私をくいとめて」

                        原作:綿矢りさ「私をくいとめて」

                        監督:大丸明子

                        2020年 日本映画 133分

                        キャスト:のん

                             林 遣都

                             臼田あさ美

                             若林拓也

                             片桐はいり

                             橋本 愛

                         

                        東京在住の会社員みつ子は31才。脳内に存在するもう

                        一人の自分Aを話し相手にお一人様生活を満喫している。

                        しかしひょんなことから近所に住む取引先の営業マン多田

                        の夕食を作ってあげることになってしまい、彼女は次第に

                        恋愛感情を抱いていく自分に戸惑いを隠せない..。


                        <お勧め星>☆☆☆半 世間をいろいろ知ってしまった

                        こじらせ女子の姿をのんが好演しています。


                        来客が帰った後の部屋の広さ


                        原作は綿矢りさの同名小説で、

                        「勝手にふるえてろ」(2018)同様に大丸明子監督が

                        製作しています。「勝手にふるえてろ」はとにかく

                        松岡茉優さんのオタクっぽい演技が素晴らしかった。勝手に
                        「イチ」「ニ」と彼氏と決めて10年間思い続けている

                        かなり情緒不安定気味のヨシカの姿はすべて当てはまる人は

                        いないだろうけれど、そこかしこで「あーそうそう」と頷く

                        シーンが見られました。

                         

                        私をくいとめて
                        出典:youtube

                         

                        さて、今作では31才の会社員黒田みつ子がヒロインです。

                        みつ子役はのん。彼女の親友役で橋本愛さんが登場するので

                        「あまちゃん」を思い出すかもしれません。みつ子は会社でも

                        「ミニお局」クラスとなっていて、たった一人の友達が

                        臼田あさ美演じるのぞみ先輩です。

                         

                        私をくいとめて

                        出典:youtube

                         

                        彼女の会社には片桐(通称カーター)という自称イケメンが

                        いるんだけれど、彼は周りから浮きまくり、みつ子も嘲笑の
                        対象にしているのです。自分より下に思える人物を徹底的に

                        叩くというその嫌らしさは、本人は気づいていない模様だし、

                        そのカーターをのぞみが好きだとはもっと気づいていないの

                        です。
                        みつ子にとって大事なのは自分であり、自分の生活であり、

                        自分のペースです。そして何か判断に迷ったり、寂しくなったり

                        すると、脳内に存在するもう一人の自分Aに語り掛けます。

                        Aの声が中村倫也さんなんですよ。

                        それなのに終盤姿を見せたAは...「あなただれ?」

                        もちろんそれもみつ子の脳内に登場しただけのことですが。

                         

                        私をくいとめて
                        出典:youtube

                         

                        さて、そんなみつ子が夕食を作って手渡す相手がいて、それが

                        取引先の営業マンで2歳年下の多田です。多田役は林遣都。

                        のんも童顔ですが、林遣都はさらに童顔なので、まさしく

                        「ザ・年下」という感じですね。
                        そして彼が夕食を取りに来る時には、しっかりメイクをして、

                        エプロンをかけて、玄関にアロマスティックを置いたり、

                        新しいスリッパを履いたりするんです。でも家に上げることは

                        なく、みつ子は「お一人様」で体験できることをどんどんして

                        いきます。

                        なぜに「お一人様」にこだわるのかは、過去に恋愛対象に思った

                        相手に、全く違う対象として見られたことが大きなトラウマなん

                        でしょうか。また、出来事の先の先まで読める年齢になっている

                        ということでしょうか。何が起こるかわからない、何が起きても

                        平気でいられるという冒険心あふれた時代は過ぎ去ったということ

                        でしょうか。
                        ところがある時多田がみつ子の部屋で夕食を食べることになるの

                        です。えらいこっちゃ。気合を入れた買い物シーンから始まり、

                        「お客さんが来る日」を迎えると、多田はみつ子に

                        「黒田さんって社交的なんですね」と言います。いやいやこの人

                        「ネクラ」ですよ〜。それでも久しぶりの来客が帰ったあと、

                        みつ子はAに「この部屋、こんなに広かったんだ」とつぶやくの

                        です。一人でいたら感じなかったことを初めて知ったのです。

                        多分みつ子は、もう多田に惹かれているんだけれど、それを

                        認めるのが怖くてたまらないのです。だって年下だよ。

                        会社に出入りしている取引先の営業マンだよ。一歩踏み出した

                        後に何が待っているか悪い事しか想像できないじゃない。

                         

                        私をくいとめて
                        出典:youtube

                         

                        そしてみつ子の唯一の親友であり、結婚してローマで暮らす

                        さつきのもとに向かうことになります。みつ子、飛行機が

                        めちゃめちゃ怖いらしい。その時もAの言葉に頼ってなんとか

                        イタリアに到着するのです。さつきはみつ子と同じ道を歩んで

                        いたのに、結婚してローマに住むということで、大きな変化を

                        遂げ、さらにもうすぐ母親になるのです。それに引き換え、

                        みつ子は相変わらず同じ景色を眺めて、マンネリ化した生活を

                        送っている。彼女は実はそれについて卑屈になっていて、

                        ローマでの生活に押しつぶされそう、と語るさつきを見て、

                        少し喜んだのではないかと思ってしまいます。
                        それくらいみつ子の心はひん曲がっている気がします。ローマに

                        いる時に多田から届いたLINEも、多田はすぐに既読になること

                        から、みつ子に対して好意を持っていると気づくはずなのに、

                        彼女はそれに気づかないふりをするのか、気づかないのか

                        そっけない返信をして終わるのです。

                        さらに多田が「炊飯器を買った」=彼女ができて家でご飯を

                        炊いてもらえるようになった、という考えまで持ってしまいます。

                        ああ、これが10代のこじらせ女子なら何とかなりそうだけれど、

                        いや、いろいろな体験をしてきたからこそ素直に物事を受け

                        入れられないと考えた方がいいですね。
                        そして帰国後やはりAに相談をし、多田に帰国したというLINEを

                        送信します。返信早っ!そして食事に誘われるのですよ。
                        一方のぞみもカーターと初詣に言ったと嬉しそうに語ります。

                        この二人がどうして仲がいいのかとてもよくわかるのは、互いの

                        ことを詮索せず、さらに自分の気持ちだけ話すからでしょう。
                        遂に多田に告白されたみつ子は、もちろんウェルカム

                        なんだけれど、それが素直に表せない姿がとてももどかしいです。

                        彼女は今ある自分の姿を変えることが怖いのか変わることが

                        怖いのか、その場にずっと留まっていたのかそのどれでもない

                        かもしれません。誰もが違う価値観を持っているし、なりたい

                        自分像があると思うけれど、それを他人に合わせることが

                        ベストなことなのかどうかも含めて、みつ子の姿を見ていました。

                         

                         

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