ベスト・オブ・エネミーズ〜価値ある闘い〜

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ベストオブエネミーズ

出典:IMDb

 

「ベスト・オブ・エネミーズ〜価値ある闘い〜」

原題:The Best of Enemies

監督:ロビン・ビッセル

2019年 アメリカ映画 133分

キャスト:サム・ロックウェル

     タラジ・P・ヘンソン

     ウェス・ベントリー

     アン・ヘッシュ

 

1970年代のノースカロライナ州、ダーラム。黒人の

通う学校が火事で焼け、勉強する場を失った黒人の

保護者から、白人の通う学校への編入案が出される。

しかし白人側の強い抵抗に遭い、廃案になりかけるが、
全米黒人地位向上委員会の支持を得て、黒人と白人で

「10日間のシャレット」という話し合いの機会を設ける

ことになるのだった。黒人代表の活動家アンは白人代表で

KKKの支部長であるエリスと対立しながらシャレットを

進めていくが...。


<お勧め星>☆☆☆半 タイムリーに見た映画だけれど、

これが半世紀前のアメリカの出来事ということに愕然と

します。


孤独からの解放は差別だった


KKKといえば多くの人が例の目の部分だけ穴をあけた白い

袋を被り、たいまつを持って儀式を行う姿や極端な

人種差別思想の集団というイメージを思い浮かべると思います。

今、全米各地で起こっている白人警官による黒人暴行死への

抗議デモでも、6月8日にはバージニア州で一人の男が車で

突入する事件を起こしました。その男はKKKに所属していたと

いう報道があります。
KKKはKu Klux Klan といい、プロテスタントのアングロ

サクソン人(WASP)つまり北方系白人のみが神に選ばれた

優先人種であるという思想で、現在は
白人至上主義
反共主義
反ユダヤ主義
反イスラム主義
反同性愛
ネオナチズム
を掲げています。

冒頭に1971年当時の団体の入団式が映りますが、ちょっと

日本でいう反社会勢力の集まりと似た雰囲気があります。ここの

支部長がサム・ロックウェル演じるC・P・エリスです。
そして次に黒人の活動家アン・アトウォーターが、黒人の住宅

環境についての市会議員への要望に訪れるシーンに変わるのです。

ろくに話も聞かない白人議員と対等に張り合おうとするアンは、

正義感が強く、そしてお節介屋さんでもあるようです。

 

ベストオブエネミーズ
出典:IMDb

 

そして黒人の子供たちが通う(アンの娘も)イーストエンドの

学校が火事で焼けてしまい、その教育の場を設けるために、白人の

子供たちが通うダーラムに編入させようという話が持ち上がります。
この話し合いの最中に驚くべき事実が分かるんですが、黒人の

子供は教科書が白人の子供より1年下のものを使用させられて

いるのです。

「黒人が隣に座ったらこわい」

「黒人は能力が劣っている」
などすべて無知から来る発想なのです。無知というより知ろうと

しない、知る気持ちすら持たないという無関心かもしれません。
結局黒人は焼け残った校舎で交代で通学し勉強することになります。

その話し合いを見ていたのが「全米黒人地位向上委員会」NAACPで

「公立学校への人種統合要望」を市に提出するのです。
KKK所属の市会議員は大慌てで、事態を収束させようと

ビル・リディックという黒人を呼び「10日間のシャレット」

(人種間の話し合い)を実施することになります。

 

ベストオブエネミーズ

出典:IMDb

 

これには白人、黒人の代表が出席し、問題点を掲げたうえで、

解決策を模索し、最終的に公平な人選による12人の投票で、

3分の2を占めたものを採択していくという流れになります。
しかしエリスは、そもそもガソリンスタンドでガソリンを白人に

しか売らない男です。町の人に黒人であるアンやビルと話して

いる姿すら見られたくないのです。この狭量な人物に対し、

アンは攻撃的ではあるけれど、人々に公平に接しています。

 

ベストオブエネミーズ

出典:IMDb

 

とはいえ、話し合いの後にゴスペルを歌うこと(アフリカ発祥の

音楽)を認める代わりにKKKの衣装やチラシを置くことを許可

するというのはかなり極端ではないでしょうか。
それでも話し合いは続き、その間にエリスには、知的障がいの

あるラリーという息子がいることが分かってきます。また

エリスの妻は極端な差別思想の夫に対して反感を持っており、

そのせいで町の人口の半数を占める黒人の客が来ず、生活が

苦しいことを訴えます。もちろん却下。
しかしラリーが突然相部屋になって、パニックを起こしたとき、

アンがその顔の広さで、彼を個室に入れる交渉をするのです。

なんとなくアンとエリスは心が通じ合い始めたと思うけれど、

問題はそんなに簡単ではありません。

「シャレット」で評決をする人のうちリベラルな白人評決員

への嫌がらせが始まるのです。こんなことはいくらでもあったん

でしょうね。道を歩いていても唾をかけられ、すれ違う時には

黒人が道を譲らなければ暴行を受けた時代です。
ラスト付近は思いがけない展開となります。そしてエンドロールで

実際の人物が映ると、C・P・エリスって男の中の男

(この表現はいけないかな)じゃない!と実感します。
恐怖で支配することは、相手に怒りのエネルギーを蓄積させ、

それがいずれ爆発するのだと思わないといけません。そして

「強い白人」に憧れることが最も愚かであると気づいてほしい。

それも有色人種が「強い白人」に憧れるなんてすっとこどっこいも

甚だしいと思うばかりです。エリスのベルトにはいつも銃が

つけてあったし、車にもライフルが入っていたじゃない。ただ

肌が白いだけで他に何の強さもないからではないでしょうか。それを

認めるのは西部劇に憧れる能天気な時代遅れの頭と言わせてもらう。

映画の中で一生憧れていたらいいと思います。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


赤の涙

4

JUGEMテーマ:洋画

 

赤の涙

出典:IMDb

 

「赤の涙」

原題:Migas de pan/Breadcrumbs

監督:マネナ・ロドリゲス

2016年 ウルグアイ映画 109分

キャスト:セシリア・ロス

     ジマスティナ・ブストス

     キケ・フェルナンデス

 

1975年、軍事政権下のウルグアイで反政府グループの

一員として活動するリリアナは、突然軍によって拘束、

監禁される。彼女も含め拘束された男女は昼夜を問わず

拷問、暴行を受け、家族との面会もできぬまま9か月後

刑務所に移送される。しかしリリアナの一人息子ディエゴの

親権は夫カルロスに渡ってしまい、彼女は出所後も息子に

再会できないままブラジルに渡るのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 当時に事実を知る映画としては重要

ですが、説明不足な部分が多いです。


警察国家体制の恐怖


南米ウルグアイでは、1973年〜84年まで軍事政権下に

置かれ、軍と警察を合わせて10万人の治安組織要員と市民

社会に10万人の密告者が存在したそうです。1982年の

人口が296万人なのでおよそ1割が監視する側の人間という

異常な警察国家体制だったわけです。そのため国民の17%

ほどが他国に移住していきました。
そんな時代を経て2010年、ウルグアイ、モンテビデオで

一人の青年の結婚式がとり行われます。母親らしき女性は

なぜか息子の親戚に無視され、さらには聖体拝領する神父に

さえ無視されます。
え〜、教会の神父さんって分け隔てないんじゃないの〜!
そして彼女は同じ年代の男女が集う場所で、和やかに過ごす

シーンに変わります。この彼女はリリアナ。

 

赤の涙
出典:IMDb

 

時は遡り、1975年、ウルグアイ、モンテビデオで、反政府

活動を送る若者が映ります。リリアナは1歳になる息子を実母

に預けてその活動に参加しているのです。リリアナの家も彼女の

夫カルロスもかなり裕福であり、当時富の恩恵にあずかっていた

側の人間です。したがって社会主義革命軍に参加するリリアナの

行動自体が許せるはずもないのです。おまけに息子は実母に

預けたままだし。
リリアナがこの活動に入ったきっかけは全く説明されません。

ただ人民を抑圧する軍事政権への強い不満を抱いていて、それを

行動に起こしていたことはわかるのです。しかしある晩、突然

アジトが軍に急襲され、翌日、私服の軍人たちにリリアナは誘拐

されてしまいます。彼女が連れていかれたのは、14番兵舎と

呼ばれる場所で、そこには多くの仲間が監禁されており、全裸に

され、昼夜を問わず焼き鏝をあてられる拷問やレイプなどを受け

続けることになるのです。日本版ジャケットはその時に恐怖に

おびえるリリアナの姿をそのまま使っていて、センセーショナルな

文句も書かれていますが、拷問などの時に大音量で流される能天気な

ラテン音楽にかき消されるかのように、映像としてはそのまま映る

ことはありません。

 

赤の涙
出典:IMDb

 

そして9か月後に突然刑務所に移送されるのです。刑務所内も

威張った女性看守の姿は目につくものの、特に目を覆うような

シーンはありません。時々訪れて威張り散らかしていく将校の

いやらしい言葉だけが心に残ります。つまりかなり単調であり、

親権がカルロスに渡ったことを知ったリリアナがそれほど

ショックを受けていなかったり、独房に入れられてもそこで

黙々と運動する彼女の姿しか見えなかったりとかなり中途半端な

描き方になっているのです。
そして1982年にリリアナは出所しますが、ディエゴに会う

ことができず、失意のままブラジルに渡るのです。したがって

冒頭の結婚式までディエゴに会うことがなかったということなの

です。
1988年に軍事政権下で人権侵害に関わった軍人及びテロ活動

構成員が恩赦を受けました。このどっちもいっしょくたに恩赦と

いうものが正しいのかどうか私にはわかりません。
しかしリリアナ達は2010年に、平和維持軍が少年に暴行し、

それを動画にアップしているのを見て、やはり軍事政権下の自分

たちが受けた非道な行為を告発するべく行動を起こすのです。

それを理解しない息子夫婦の言葉より、「孫のために行動したい」

というリリアナの言葉は、彼女の意志の強さを物語っていると思う

のですが、最後がどうも理解しづらいというか、あんな急に仲良く

なれるものなのかと少し驚いてしまいました。
ただ、何かの権力を盾に人を貶める行為を働く人間はいつの時代

にも存在し、その罪を追及されないまま、逆に相手をさらに貶める

行為、発言を行うこと人が多く、それがいかにその人間の価値を

下げていくかいい加減に気付けよと思うばかりです。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


イカルイト

4

JUGEMテーマ:洋画

 

イカルイト

出典:IMDb

 

「イカルイト」

原題:Iqualuit

監督:ペノワ・ピロン

2016年 カナダ映画 102分

キャスト:マリ=ジョゼ・クローズ

     フランソワ・パピノー

     ナター・アンガラアク

     セバスチャン・フーパドー

 

カナダのイカルイトに単身で赴任している夫ジルが

事故で大けがを負った知らせを聞き、妻カルメンが

オタワからやって来る。しかしジルはそのまま

亡くなり、彼女は夫の死について調べ始めるのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆ 極北という言葉がそのまま当て

はまる場所での人と人のつながり方を静かに描いています。


朝か夜かわからない


原題も邦題もカナダ、ヌナプト準州にある地名です。

もちろん初めて聞く名前なので位置を調べてみるとこの辺り。

 

イカルイト

出典:World-backage

 

映画内のジルの妻カルメンが仕事をしているオタワからは

飛行機で約3時間のフライトだそうです。
(World-backageより)
そしてもう一つ映画内の季節が「夏」なので「白夜」なのです。

「こんな時間に呼び出してごめんなさい」という時間が

深夜2時と言われても、バーの外に出ると外は昼間のような

明るさなのでピンときません。
したがって現地の人々が話すように「いつも通り過ごす」ことが

体内時計を正しく保つ秘訣と言えるでしょう。
冒頭にアザラシを捕まえ、ボートの乗って得意そうに戻って

くる1人の若者が映ります。彼はダニーと言い、帰宅すると

一家は大喜びで、そのアザラシを生で食していくのです。これが

イヌイットの食文化で、自然との共生をしてきたことが伺えます。

 

イカルイト
出典:IMDb

 

一方で、この地域の港で荷下ろし作業を行っている会社のボスが

ジルという白人で、先ほどのダニーの父親ノアとは親しく

付き合っているものの、他の家族とはどうも微妙な距離感を

覚えます。それでも勧められたアザラシの肝臓を生で食べて

いきます。

 

イカルイト

出典:IMDb

 

さらにそこの家にいたアニという幼児を連れた娘には金を

せびられるのです。この辺りの人物関係は、序盤は全く謎で、

ジルは何かノア一家に弱みを握られているか、負い目がある

のかと思ってしまいます。
そしてジルが大けがを負い、オタワから妻カルメンがやって

来るのです。寒々しい景色の中、カルメンはジルの同僚ビクター

に連れられ病院へと向かいます。吐く息は白くなる時もあり、

この地域では夏でさえも決して暖かくないことに気づきます。

そりゃ北極が近いんだから当たり前か。
カルメンはジルと毎日電話で話していたけれど、自分の仕事も

あり、今までにここに来たことがなく、したがって、ジルが

どういう生活をしていたのか初めて知ることになるのです。

彼女が驚きなのか好奇心なのか不思議な表情を浮かべている

ことに気づくと、毎日電話で会話をしていても、ある一定の

距離が開いていたと思わずにいられません。
ジルが亡くなり、カルメンはオタワで検視を受ける夫と一緒に

帰るはずが、やはり現地に残るのです。それは夫の死が「事故」

なのかはっきりしていないからで、警察でも

「ここでは大して捜査をしない」
と言われたことから、自分の力で真相をつかもうと考えたのです。

ジルの家にあったたくさんの石の彫刻は何を意味するのでしょうか。
この地域に元々住んでいた人々は、貧しく、日雇いの仕事か石の

彫刻を観光客に販売して生計を立てていることを知るシーンも

あります。昔ながらのイヌイットの狩猟生活は、現代では通用

しなくなっているのです。
それは逆に現地の人々が、外からやってきた金持ちの白人に対して、

憧れと同時に憎しみを抱く要素にもなります。

 

イカルイト
出典:IMDb

 

また例の金をせびったアニとジルの関係を知った時カルメンは、

ノアに怒りをぶつけるのです。しかしノアはあくまでも表情を

変えず、平穏と静寂がある場所へと彼女を連れていきます。

そこには大自然が広がり、川で魚を釣り、それをそのまま

食べるという行為ができるある意味、人間社会のややこしさを

すべて忘れることができる場所でもあったのです。

そしてそこをジルも好いていたと言う。
この極北の地で、周囲の仲間とは全く違う立場ゆえに、心を

割って話す相手がほとんどいない孤独というものを、カルメンは

そこで初めて知るのです。

 

イカルイト

出典:IMDb

 

冒頭とラストに流れるハミングと息遣いは、緩やかに流れる川を

進むボートと重なり、人間本来の進み方を感じることができたよう

にも思います。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 


ジェニーの記憶

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

「ジェニーの記憶」

原題:The Tale

監督:ジェニファー・フォックス

2018年 アメリカ=ドイツ 117分 R18+

キャスト:エリザベス・デビッキ

     ローラ・ダーン

     ジェイソン・リッター

     チェルシー・オルデン

 

マーティンと婚約中のジェニファーのもとに母から

電話がかかる。それは彼女が少女時代に書いた物語の

ことで、乗馬を習っていたミセスGとコーチのビルとの

間にあった出来事を問いただすものだった。
ジェニファーは当時の関係者を訪ねながら自らの記憶を

たどっていくが...。


<お勧め星>☆☆☆ 記憶は美しいものだけ残り、事実と

かけ離れていくことがあるのですね。それは思い出したく

ないのか、忘れてしまったのかどちらだろう。


わたしは被害者じゃない


「事実は1つ、真実は人の数だけある」とよく言われますが、

それは「記憶」も同じことで、1つの事実に対しての記憶は、

それを体験した本人、周りにいた人々、噂を聞いた人々など

によっていくつもの姿に変わっていくのだと思います。
「あなたは小学校の時にどうしてわたしに冷たかったの?」
と言われたことがありますが、わたしにはその子に冷たくした

記憶はなく、すぐに先生に告げ口する子というイメージしか

ありませんでした。逆に自分こそよく仲間外れにされたものだ

と被害者のつもりでいたことに驚きます。

いったいどれが事実なんだろう。今となってはまさに藪の中です。

 

ジェニーの記憶
出典:IMDb

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

この映画のヒロイン、ジェニファーは親の勧めで馬術を習い

始めるのですが、それを本人は15歳くらいの時、と思い

込んでいたのに、実母から「13歳だった」と指摘されると、

記憶の中の自分があっという間に幼くなります。この映像は

大そう衝撃的で、自分の記憶のあいまいさを痛感させられる

のです。
実母がジェニファーに連絡してきたのは、当時彼女が書いて

いた物語や、馬術を習っていたミセスG、ランニングコーチの

ビルからの手紙、写真などを見て、その時に「何かがあった」

と確信したからなのです。
ジェニファーはそこから、当時の知り合いの人々に再会する

ために行動を開始します。
13歳のジェニファーとが現在のジェニファーがかわるがわる

映り、時折、互いにその行為を質問し合うという手法も取られます。
当時一緒に馬術を習っていたのは、ベッキーとフラニーという

年上の少女で、彼女たちからは、当時の記憶を丁寧に説明して

もらえるのに、ミセスGは、なぜか話をそらします。

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

若い頃のミセスGを演じるのがエリザベス・デビッキで、なんと

美しいことでしょう。身長190cmかつスタイル抜群の上、

ブロンドの髪がカールしたショートヘアは、思わず息をのむほど

です。それが今はただの老女になっていて、その面影が一切

ないことに月日の経過はあまりに残酷であると思ってしまう。
さらにランニングコーチだったビルとは一切連絡が取れません。

その頃には、13歳のジェニファーに彼らが何をしたかが鮮明に

蘇ってきているのです。5人の弟妹を持ち、仕事が忙しい両親は、

ジェニファーの気持ちを汲み取ることはなく、彼らの価値観を

押し付け、自由を奪い、束縛する毎日でした。そんな生活から

解き放たれるのが馬術の訓練の日で、ある時から宿泊することに

なるのです。このシーンは本当に気持ちが悪い。ビルの言葉の

1つ1つが、何も知らない子供をだますのにうってつけのもの

ばかりなのです。そしてジェニファー自身も、

「自分は選ばれた」

「自分は特別だった」と信じ、
「被害者じゃない」と思い続けてきたのです。
それが記憶を塗り替えた一番の要因であり、自分自身はとっくに

気づいていたし、なぜ乗馬訓練をやめたのかも、その理由であった

ことを思い出します。

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

大学で教鞭をとり、ドキュメンタリー作家として成功をしている

彼女が、自分の身に起きていた事実から目を背けていたのです。
この映画は監督自身の体験を自ら映像化したもので、当事者の

告発という意味では大変の意義のあることだと思うし、勇気ある

行動だと思います。映画内のリアルなシーンは大人が代役を務めたと
クレジットが出るほどの行為を受けた事実は、一生心の傷として

残るはずなのに、それを美しくすり替えて「素敵な出来事」と思い

込ませていた。そうしなければ彼女は耐えられなかったんじゃない

でしょうか。そうするしかなかった彼女に対してミセスGやビルの

行為やそれらを黙認した人々は永遠に糾弾されるべきですね。

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ

 


心のカルテ

4

JUGEMテーマ:洋画

 

心のカルテ

出典:IMDb

 

「心のカルテ」

原題:To the Bone

監督:マーティ・ノクソン

2017年 アメリカ映画 107分 R15+

キャスト:リリー・コリンズ

     キアヌ・リーヴス

     キャリー・プレストン

     アラナ・コーバック

 

重度の摂食障害に苦しむエレンは継母の勧めで

ベッカム医師のもとを訪れる。彼女はベッカムの

指示で6人の患者が暮らす「門出の家」での共同

生活を始めるが、症状は一向に改善しないのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 摂食障害に悩む人々の胸の内が

明確に伝わる内容です。


飢えていることに依存


海外では配信停止を求められているという問題作ですが、

病気に苦しむ人の実態を知らない人間にとっては、そう

いう人の存在と苦しみを強く印象付ける内容でもあります。
ヒロイン、エレン役は「まゆげちゃん」ことリリー・コリンズ。

映画内では長年摂食障害に悩み、一向に改善しない現状に

対してかなり投げやりになっている女性を演じています。

 

心のカルテ

出典:IMDb

 

診察を受けたり、体重計に乗るときの彼女の背中や腹が

本当に骨と皮だけで、姿勢も猫背であり、目が落ちくぼんだ

顔などは、役作りなのかメイクとCGなのかどちらだろうと

思ってしまうほどリアルです。

ただこれが摂食障害に苦しむ人々のありのままの姿(実際は

さらにすさまじい)なのでしょうね。
エレンの家庭環境はかなり複雑で、エレンが生まれて間もなく、

実母は親友(女性)と家を出ており、今は継母と妹(母親違い)

と仕事でほとんど家を空けている父親と暮らしているのです。

実母は双極性障害を患った過去があり、同性愛をカミングアウト

して、今はその女性と牧場暮らしをしています。娘のことは

気がかりではあるけれど、自分の心に余裕はないというのが

実情かもしれません。

 

心のカルテ
出典:IMDb

 

エレンの継母ローザは、決して悪い人間ではなく、逆に血の

つながりのないエレンに対しても、積極的に関わるという

「ザ・母親」という感じ。けれどとにかく自分のペースで

話す、話す。ああ、
こういう人間の話を遮るのがどれほど難しいことだろう。
ほかの病院での治療の効果がなく、エレンは、キアヌ・リーヴス

演じるベッカム先生のもとを訪れます。そこで紹介された

治療法が、同じ病気の仲間と共同生活を送り、悩みと目標を

語り合って前進しようというものです。

 

心のカルテ
出典:IMDb

 

この「門出の家」では「ポイント制」が用いられており、善行を

するとそれが加算されて、自分の望みが少しずづかなっていく

というシステムです。こういう手法は他の病でも使われると

聞いたことがあって、「何かの目標」を達成させることへの

自分の努力が報われることこそが、自分を否定することからの

脱却の方法の1つかもしれません。
このホームにいる患者たちは、みんな様々な方法で食べることを

拒否しており、それを描くことも問題だったようです。しかし

この病についての知識がほとんどない者にとっては、「なぜ」

食べないのか?という素朴な疑問への答えが一部ではあるけれど

描かれていて、患者の気持ちに少しだけ近づけるような気もします。
「食べると世界が終わる」
エレンは、食べていない期間が長すぎるため、食べ方を忘れて

しまっているし、食べた始めたら止まらなくなるのではないかを

恐れているのです。
序盤に「家族セラピー」が実施されますが、そこでの継母と実母と

そのパートナーの罵り合いは、この3人が本当にエレンのことを

考えているのか疑問になり、約束していた父親が仕事で来ないと

いう状況にも驚かされます。そういえば父親は1度も出て

こなかったな。エレンにとって、父親の存在は大きくないんだろうか。
「門出の家」での生活もそれぞれが秘密を抱えていたり、妊娠

している患者がいたり、やけにハイテンションな男性がいたりと、

普通の生活とはかなりかけ離れている気がします。それでも彼らの
ただ一つの目標が「普通に食べること」ということなのです。

それが達成できつつあるハイテンション男ルーカスは、実は前から

エレンを知っていて、彼女に恋をしています。なぜ知っていたのか、

という理由もエレンが罪の意識にさいなまれているある事件の

引き金になったことで、それがエレンの回復を妨げている1つの

要因かもしれません。
目の前にある物を口に入れて噛んで飲み込む、という行為がこんな

にも難しいことなのかと映像を見ていると感じます。

リリー・コリンズ自身もかつて摂食障害になっていた時期があった

ということで彼女の食べ物を前にしたときに動作や表情が、本当に

リアルなものでした。また監督自身もその病気に体験者だったと

いうことは、この映画を作った意味を考えさせられます。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ

 


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

3

JUGEMテーマ:洋画

 

ワンスアポンアタイムインハリウッド

出典:IMDb

 

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

原題:Once Upon a Time in Hollywood

監督:クエンティン・タランティーノ

2019年 アメリカ映画 141分 PG12

キャスト:レオナルド・ディカプリオ

     ブラッド・ピット

     アル・パチーノ

     ブルース・ダーン

 

かつて売れっ子テレビ俳優だったリックは、映画界への

転身を目指して不遇の日々を送っている。彼の付き人

兼スタントマンのクリフの支えもあり、なんとか仕事を

こなしているが時々役に立たなくなった自分を認めては

涙にくれるのだった。そんな時自宅の隣に

ロマン・ポランスキー監督と妻で女優のシャロン・テート

が引っ越してくる...。


<お勧め星>☆☆☆半 60分あたりまで耐えて見ていると、

そこからどんどん楽しくなってきます。


火炎放射器と番犬は大事


ロマン・ポランスキー監督といえば
「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)でルックスも

ファッションもとてもキュートなミア・ファロー主演の

ぞくりとする恐怖を体験し、
「チャイナタウン」(1974)では私立探偵が関わった

調査から殺人事件に発展し、そして露呈する過去の愛憎劇に

驚き、
「おとなのけんか」(2011)での子供のけんかを話し合いで

穏便にすませるはずの2組の夫婦が次第に本気のけんかに

なってしまう姿に笑ってしまう
など数多くの映画を手掛け、そのほとんどが優れた内容で

あると評価されています。ただ監督本人は少女への性的暴行

事件のためアメリカを出国し、主にヨーロッパに活動拠点を

置いています。
その映画監督としての仕事とは別に、彼の妻であった

女優シャロン・テートが友人とともに、チャールズ・マンソン

率いるカルト教団によって惨殺された事件でも有名になりました。

この事件を知っていれば主人公のリックの家の隣

(隣と言っても豪邸なので坂を下りてまた坂を上らないと

着きません)にロマン・ポランスキーとシャロン・テートが

引っ越してくるシーンを見ると、「まさかあそこで?」
と思ってしまうのです。それがいつなのかドキドキしっぱなし

です。

 

ワンスアポンアタイムインハリウッド
出典:IMDb

 

シャロン・テート役のマーゴット・ロビーはこんなミニスカート

と白いブーツを履いて、街を闊歩するので、「Oh、モーレツ!」

の小川ローザを思い出してしまいます。

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」(2017)

のトーニャ役とは全く違った雰囲気で、自分の出演した映画

(端役)を観に行って、自分の登場するシーンにうっとりする

ようなとても可愛い女性です。

 

ワンスアポンアタイムインハリウッド
出典:IMDb

 

さて、レオ様演じるかつてはテレビ番組「賞金稼ぎの掟」で

大人気だったリック・ダルトンは既に過去の人間となっており、

新人スターに殴られるような役で映画に出演している身の上

なのです。
このテレビ番組映像がしばしば出てきますが、西部劇であり、

とにかく派手に撃って撃って撃ちまくるアクション物。その

スタントを演じていたのが、ブラピ演じるクリフ・ブースです。

クリフは落ちぶれた自分を嘆くリックを慰め、一緒に酒を飲み、

煙草をスパスパ吸いながら、大きな車(キャデラック)の運転も

務めます。本当にアメリカの楽しかった時代そのものを反映して

いるように思えるのです。

 

ワンスアポンアタイムインハリウッド

出典:IMDb

 

リックがセリフがとんでしまい、思い切り自己嫌悪に陥って

へこんでいても、クリフが必ずそばにいます。そのクリフは

チャラそうに見えて、結構堅実なんですよね。ヒッチハイクの

ヒッピー娘を車に乗せても、何をするでもなくちゃんと目的地

まで送り届けます。(年齢確認を忘れていません)しかしそこは、

ヒッピー村であり、そこに生活する若者たちの異常な姿と異様な

雰囲気には、「何かが起こりそう」と感じるのです。

 

ワンスアポンアタイムインハリウッド
出典:IMDb

 

そしてこれが最後のシーンへの伏線であると気づくのは、無事に

クリフがそこを車で走り去った時です。
終盤のリックの自宅での怒涛のシーンの連続は、さすが

タランティーノ監督らしい手加減のない暴力の連続かつ、そこに

なぜか笑いが込められていて、やはり見ていてよかったと思うはず。

さらにこれが真実だったら尚更よかったのにと思ってしまうのです。
クリフの愛犬ブラディ役のピット・ブルはカンヌ映画祭で

パルム・ドッグ賞を獲得しています。ドッグフードの缶詰を

開けているときのブラディの表情が本当に可愛いです。すごく

いっぱい食べるんですね。そして番犬としてはものすごく有能

なんですね。ドッグランには来てほしくないワンコだけれどね。

映画内で流れる約60の曲も懐かしいものがたくさんありました。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ

 


ビール・ストリートの恋人たち

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ビールストリートの恋人たち

出典:IMDb

 

「ビール・ストリートの恋人たち」

原題:If Beale Street Could Talk

監督:バリー・ジェンキンス

2018年 アメリカ映画 119分

キャスト:キキ・レイン

     ステファン・ジェームス

     レジーナ・キング

     コールマン・ドミンゴ

     テヨナ・パリス

 

1970年代のニューオリンズ。幼なじみの

ファニーとティッシュは恋人となり、2人で住む

家を探していた。そんな矢先、ファニーがレイプ犯

として逮捕されてしまう。妊娠が発覚したティッシュは
家族の協力を得て、彼の無罪を証明しようと奔走する

のだった。


<お勧め星>☆☆☆半 ストーリーは予告編通りのもの

でしたが、音楽や衣装などがとても美しく、印象的でした。


この子の時代にはすべてが変わっている


「ムーンライト」(2016)のバリー・ジェキンス監督

作品です。1970年代のアメリカで、黒人青年が白人警官

にハメられ、逮捕されてしまう...という予告編を見ただけで、

「フルートベール駅で」(2013)の黒人青年の死を

思い出すし、「デトロイト」(2017)での自白強要を

する白人警官たちの高圧的な姿がよみがえります。しかし

今作では、その「差別」という大きな壁以上に、若い二人の
初々しい純愛が描かれ、そのシーンだけ切り取ると、

どこにも「憎悪」のような黒い影は見られないのです。

 

ビールストリートの恋人たち

出典:IMDb

 

ファニー22歳、ティッシュ19歳という一番輝いている時代の

話です。電車の中でも道を歩いていてもお店の前でも、お互い

しか見えていない、そんな時代はある年代を過ぎると消えて

しまうのですよね。あれは何に変わってしまったんだろう。
幼なじみであったファニーとティッシュが互いを意識し、

恋人同士になっていく過程と、ファニー逮捕後、ティッシュの

妊娠が発覚し、それを祝福する彼女の家族やファニーの父親の

姿が映されます。

しかしごくごく庶民のような雰囲気のティッシュの家族に

引き換え、ファニーの母や姉妹は、身なりも上品だし、どこか

彼女一家を見下している風があります。それはまるで白人が

黒人を蔑んでいる姿のようで、黒人の中でも存在した階級を

感じ取ることができるのです。

 

ビールストリートの恋人たち
出典:IMDb

 

そしてファニーにレイプされたと主張したプエルトリコ人の

ヴィクトリアという女性の行方探しや、弁護士費用、

ヴィクトリアの所在が分かると、そこに向かう渡航費用のため、

家族はあらゆる方法で金を得ようとします。当のティッシュは

デパートの香水売り場で、とても小ぎれいな姿で立っています。

しかしそこでも客から受ける差別行為があるわけです。

 

ビールストリートの恋人たち
出典:IMDb

 

逮捕前と逮捕後の映像を描くうちに、なぜファニーは白人巡査

ベルに「犯人だ」と証言されたのかわかってきます。この時代の

黒人は、白人に対して何一つ不審な行動をとってはいけなかったし、
反抗することなどもってのほかだったと多くの映画で描かれ、

実際にそうだったのです。映画の最初と最後に流されるモノクロ

写真は、当時のものなのか、今のものなのか、迫害される黒人たちが

映っています。

 

ビールストリートの恋人たち
出典:IMDb

 

この不条理な世界がなぜか美しく感じられるのは、登場人物の

衣装の鮮やかな色や可愛らしさ、そして家においてある小物類、

冷蔵庫、ポット、バスタブなど1つ1つが「ままごと」に登場

するようなこじゃれたものであることと、レコードから流れる

素敵な音楽によるものだと思うのです。雨が降ってきたシーン

では、小さな真っ赤な傘をさします。とても2人が入りきるとは

思えないほど小さいのです。それがまた二人を接近させます。
この子の時代には変わっている..と考えたような世界になって

いるのかどうか、今考えてほしい。「差別」のない世界が訪れて

いるのか考えてほしい。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ


ある少年の告白

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ある少年の告白

出典:IMDb

 

「ある少年の告白」

原題:Boy Erased

監督:ジョエル・エドガートン

2018年 アメリカ映画 115分

キャスト:ルーカス・ヘッジズ

     ニコール・キッドマン

     ラッセル・クロウ

     ジョエル・エドガートン

 

アーカンソー州に住む牧師の父マーシャルと

母ナンシーの一人息子ジャレッドは大学入学後、

自分がゲイ出るあることに気づく。そして1本の

電話で息子の状況を知った両親は、彼を同性愛救済

プログラムに参加させるのだったが。


<お勧め星>☆☆☆半 両親の愛情が強く感じられる

ものの、1人の人間としての個性を否定することは

あってはならないと実感します。


自分自身が神


監督は「ザ・ギフト」(2015)で超気色悪く不気味な

男を演じ、監督も務めたジョエル・エドガートン。今作も

監督と矯正プログラムの指導者を演じています。

「ザ・ギフト」のギフト=贈り物
の本当の意味を理解した時の恐怖は今も忘れません。
そして今回最も驚いたのが、アメリカにはLGBTQである人々を

矯正する施設が存在しているということです。様々な活動の

起点となることが多いアメリカにおいて、2014年に

オバマ大統領が矯正治療をやめる声明を発表した後も、

34の州では法律が整備されておらず、プログラムは進められて

いるのです。
ジャレッドの幼い頃のVTRから始まる映画は、彼がいかに両親に

愛され、ごく普通の男の子の夢を抱いていたことが伺えます。

活発に動き、たくさん笑い、好きなスポーツはアメフトとバスケで

将来はバイク乗りになりたいと言う。

 

ある少年の告白
出典:IMDb

 

アーカンソー州の田舎町に育ったジャレッドは、牧師の父

(もう太っちゃって残念なラッセル・クロウ)マーシャルと

専業主婦ナンシー(ニコール・キッドマン)の一人息子で、

スポーツを愛し、一応GFらしき女子もいるのですが、なんか

おかしいのです。おかしいと言えば、この地区は白人しか

おらず、ナンシーは金髪で専業主婦という、かつての

「良きアメリカ」の象徴のように描かれていることです。

 

ある少年の告白
出典:IMDb

 

その話は関係ないので、おいといて、ジャレッドが大学に

入学してから、彼自身がゲイであるという自覚を持つのです。

それはあまりに衝撃的な出来事からだったのですが、その話が

両親の耳に入ると、牧師である父は彼を矯正するため、

サイクス氏が運営する救済プログラムに参加させるのです。

キリスト教福音派の牧師であるマーシャルにとって、自分の

息子が「罪」を冒しているのならば、それを改めなければ

なりません。

 

ある少年の告白

出典:IMDb

 

サイクス役はジョエル・エドガートンで、かなり高圧的で

ありながら、いかにも「正しいことをしている」かのように

話すので、見ている側は不快感が募るばかり。
両親はジャレッドのホルモン異常かと考え、医者に男性ホルモン

の量を図るように依頼もしています。しかしこの医者は

「あなたは健全な若者よ」と諭すのです。どこか病気で投薬で

治るのではないかという親の淡い期待は打ち砕かれます。

ジャレッドが自分に自信を持っていたならば、こんなプログラムに

参加することもなかったのでしょうが、ゲイ=悪と信じている

若者にとって、自分の嗜好が異常で、できれば普通

(何が普通だろう)の若者のように異性に興味を持ち、子供を

授かり、家庭を築くということを目標にしてしまうのは当たり前の

ことなのです。こんな1パターンしかない人生などあり得ないと

気づくのはいつだろうか。

 

ある少年の告白
出典:IMDb

 

プログラムでは多くの規則があり、さらに「男らしい姿」

「男らしいスポーツ」「心の清算」を行うのです。男らしい姿は、

腰に手を当てて足を開いて立つって大笑いなんだけど。

このような型にはまった価値観の押し付けは、幾人かのプログラム

体験者にとっては苦痛でしかないのです。おそらくは全員が

そうだけれど、「できるふりをする」という賢い選択をする若者も

います。あ、思い出しました。ジャレッドの友人の中に

グザヴィエ・ドランがいました。

 

ある少年の告白
出典:IMDb

 

プログラムはいつ終わるのか、どういった結果を待つのか参加者

には知らされず、スタッフに暴言を吐かれたり、罪を認めない者

は聖書で叩くという虐待も行われるのです。
終盤は逃亡を図るジャレッドと彼を救うために施設に急行する

母ナンシー、サイクスを含めスタッフとの攻防が描かれ、これは

どうなるのだろうとハラハラしてしまいます。ナンシーが

「何かが違う」と感じたことは、まさにその通りだったのです。
人間一人一人の個性を無視する行為は、やはり宗教的な戒律に

触れるとしても許されるべきことではないし、罪に問われるような

行為でなければ、個人の嗜好は尊重されるべきだと思います。
ジョエル・エドガートンが「スリー・ビルボード」(2017)

の時同様に繊細でありながら行動的な姿を見せてくれました。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ

 


ブリムストーン

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ブリムストーン

出典:IMDb

 

「ブリムストーン」

原題:Brimstone

監督:マルティン・コールホーベン

2016年 フランス=イギリス=スウェーデン

=オランダ=ベルギー映画 148分

キャスト:ダコタ・ファニング

     ガイ・ピアース

     キット・ハリントン

     カリス・ファン・ハウテン

 

開拓時代のアメリカ。助産師をしているリズの住む村に

新しい牧師がやって来る。その時からリズにとって不幸な

出来事が連続して起こるのだった。

「リズを罰するために来た」という牧師の正体は..。


<お勧め星>☆☆☆半 女性が抑圧された時代に強く生きた

一人の女性の姿が描かれています。


支配者は都合よく解釈する

 

 

 

<ネタバレしています>

 

brimstoneの意味は、1、硫黄、2、地獄の業火、

3、激しい情熱、4、口やかましい女の4つが出てきます。

映画を見終わってどれが当てはまるかと言われると2でしょうか。
映画は四部作で

「第一章 啓示 黙示録」

「第二章 脱出 出エジプト」

「第三章 起源 創世記」

「第四章 服従 審判」の順に描かれるものの、時系列では

三章→二章→一章→四章です。

まず、小さな村で口の利けないリズが助産師をしている姿から

始まります。それなりに人望もあり、村人からも気軽に声を

かけてもらえ、父親かと思うほど年の離れた夫イーライと

その連れ子マシュー、実子のサムとでささやかながら幸せに

暮らしていたのです。

マシューは継母を母と認めず反抗的だけれど、イーライは優しく、

サムは可愛い盛りです。これ以上求めるものはありません。

 

ブリムストーン
出典:IMDb

 

しかーし、一人の新しい牧師が村にやってきた途端、リズは

身を固くするのです。さらに取り上げた子供が死産だった

ことで村人からの信頼はなくなり、その報復で銃弾を撃ち込まれ

たりと、彼らの身に危険を迫り始めます。

あの牧師は「悪魔」なのかと思ってしまうほど。ここから

リズの周りで起きる出来事はかなり残酷であり、この映画が

生ぬるい内容ではないと急に気づきます。

 

ブリムストーン
出典:IMDb

 

そして二章では、傷だらけの少女が娼館に売られるシーンから

始まるのです。

この少女はどこから来たのか。

それよりも娼館で働く女性への差別や暴力の激しさには怒りを

覚えるほどで、客に反抗すれば公開処刑や射殺も当たり前のことと

いうのは、娼婦に対してだけではなく、この時代の女性の地位の

低さを物語っています。カッコいいと思っていた西部開拓時代の

男たちの陰にはこのような闇の部分が横たわっていたのですね。
そして一人の客が現れ、店を貸し切りにすると、なぜか例の少女

だったジョアナを指名するのです。これがジョアナがリズと名乗り、

自ら舌を切って話せなくした理由だと知ると、あまりに悲惨極まり

ないことです。絶望の先に行ってしまった感があります。

 

ブリムストーン
出典:IMDb

 

そして三章では、幼いジョアナ(この子がかわいい)と夫を嫌う

妻アナが映るのです。

「あ!!」この人...。
夫に反抗すればむち打ちされ、背中に生々しい傷跡をつけられ、

さらには金属製のマスクをつけさせられるのです。それでもアナは

逃げ出そうとはしません。そういう選択肢が存在しなかった時代

でしょうか。しかし夫はさらなる要求をするのです。

「おい、こら、ええかげんにせんかい!」などという人はおらず、

そもそも夫は牧師として村人に敬われている人物なのです。

その口から出てくる聖書の一説はどれも自分に都合の良いように

解釈され、それを強要しているのだけれど。

 

ブリムストーン
出典:IMDb

 

四章は夫も夫の父親も殺されたリズが遂に銃を持ち、人を撃つのは

男性だけではないと勇気を感じさせる姿を見せてくれます。しかし

実際に発砲するのは、最後の最後の選択で、そこまで服従させられる

のが普通であった時代なのかとも感じさせられるのです。
皮肉なラストは冒頭に映った水中のシーンへとつながります。
「母の記憶」を受け継いだサムは恐らくは、それほど変わることは

なかったと思いますが、無条件に服従を強いられた時代に、抵抗する、

声を上げるという姿を少しは見せたのではないかと信じています。

ガイ・ピアースの悪人顔がものすごくぴったりでした。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ

 


馬を放つ

4

JUGEMテーマ:洋画

 

馬を放つ

出典:IMDb

 

「馬を放つ」

原題:Centaur

監督:アクタン・アリム・クバート

2017年 日本=ドイツ=キルギス=フランス

=オランダ映画 89分

キャスト:ヌラリー・トゥルサンコジョフ

     ザレマ・アサナリヴァ

     アクタン・アリム・クバート

 

キルギスのある村に住む通称ケンタウロスは、耳と

言葉が不自由な妻と一人息子との3人暮らしで大工を

して生計を立てている。彼は深夜厩舎に忍び込む馬を

野に放って、それを乗り回すということを行っていたが、

ある晩放した馬が村の有力者カラバイのものだったこと

から大騒ぎになるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 キルギスの大草原をさっそうと

駆け抜けていくケンタウロスの姿は自然と一体化して

いて神々しいほどです。


キルギス遊牧民の血


映画内で吊り橋を渡るシーンが数回出てきます。1度目は

女性に引率された子供の集団が半分以上橋を渡った時、

前から来た主人公ケンタウロスを見ると、わざわざ

引き返して道を譲ります。女性が髪を覆っていることから

イスラム教徒であるとわかるのです。次はケンタウロスと

妻マリパと息子ヌルペルティが仲良く橋を渡るシーンです。

そして最後の方で中学生くらいの若い男女が橋の上で
親し気の話し込んでおり、そこを通り抜けようとした

ケンタウロスを見ても気にも留めず、そのまま話し続け、

逆にケンタウロスの方が彼らをよけて通る抜けるのです。

この3つのシーンだけでも多くの意味を持っているように

感じます。
キルギスという国は中央アジアに位置しており、東に中国、

西にウズベキスタンから始まる地中海沿岸諸国をつなぐ古代の

貿易ルート、シルクロード沿いにあるのです。民族としては

キルギス人が7割占めているのに対し、キルギス語を母国語と

する者が5割、3割弱はロシア語を話すという国で、

ケンタウロスの妻がロシア語しか読めないというのも理解

できるのです。彼女は耳が不自由で言葉を発することが

できません。したがって手話かロシア語の筆談しかできない

のです。

 

馬を放つ
出典:IMDb

 

ストーリーは、深夜厩舎から馬を解き放ち、その馬に乗って

両手を挙げながら草原を駆け抜ける男の姿から始まります。

ケンタウロスは「馬は人間の翼である」と昔のキルギス人の

考えを持ち続け、馬が食肉や競争用に使われることに強い

抵抗感を抱いています。ケンタウロスが大工仕事で稼ぐ金が

わずかなのかどうかわかりませんが、移動手段はもっぱら徒歩で、

馬に乗って移動する者や日本製のSUV車に乗る者とは格差を

感じます。かつては遊牧民として、家畜と共に家を移動した

キルギス人も時代の変化で、貧富の格差が生まれてしまったと

思えてなりません。

 

馬を放つ
出典:IMDb


一方ケンタウロスの息子ヌルペルディは父親にとても懐いて

いるし、成長も人並みなのですが、5歳になっても言葉を

発しません。中盤、隣村で透視できるという人物のテントに

向かうシーンがありますが、そういうもの頼っていることや、

終盤、ケンタウロスの罪に対し、村長が村人を集めて多数決で

贖罪の方法を決めるというのも、まだこの地に残る習慣と

いうものを実感します。その時に女性もしっかり意見を

述べるんですよね。

「キルギス人の女性はかつて権力を持っていた」

と語るけれど、近年では、この国で行われている「誘拐婚」と

いうものが国際的に問題視されているので、そのあたりは
どのくらい昔の時代のことかと考えてしまいました。
またケンタウロスは、ちょっと女好きっぽく描かれ、マクシム

売りの女性シャラパットととても親し気に接します。この

シーンを見て「浮気」と告げ口するおせっかいおばさんが存在

するのはどこの国でも同じだよなと少しだけ親近感?を覚えます。

ケンタウロスはなぜシャラパットのマクシムばかり飲んでいたん

だろう。彼女は未亡人で、夫は25年ほど前にアフガニスタンで

戦死していているという話を聞くと、かつてこの国はソビエト連邦

に属していたことを思い出しました。
ケンタウロスはイスラム教に入信し、メッカ巡礼をした後、

カラバイの厩舎で働くという罰を与えられます。これを受け入れて

いれば妻子と再び暮らすこともできたはずなのです。しかし彼は
礼拝中に、礼拝所のモスクの2階にある映写室に入り、映写技師

だったことを思い出すかのように馬に乗って男性が草原を駆けて

いくフィルムを見て満足気に笑います。本当にかつてのキルギス人

の姿にこそ自分の中の魂が宿っていると信じているとしか思えません。

その2階を木で打ち付けて入れなくすると、モスクのドアがぱたん

と開き砂ぼこりが立ち込めるのです。過去との決別を表すの

でしょうか。
富や便利さと引き換えに失っていくものがそれだけ多いのか、人は

それを受け入れつつも時々振り返ってみる必要があると思います。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ



カレンダー

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< July 2020 >>

ブログランキング

今日のわんこ

powered by 撮影スタジオ.jp

アマゾン

遊びにきてくれてありがとう!

カウンター

死語レッスン

最新記事

categories

過去の記事

コメントありがとうございます!

トラックバックありがとうございます!

recommend

お友達

ミス・マープルについて

書いた記事数:3167 最後に更新した日:2020/07/06

あの映画を探そう!

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM