しあわせの百貨店へようこそ

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JUGEMテーマ:洋画

 

しあわせの百貨店へようこそ

出典:IMDb

 

「しあわせの百貨店へようこそ」

原題:Ladies in Black

監督:ブルース・ベレスフォード

2018年 オーストラリア映画 109分

キャスト:ジュリア・オーモンド

     アンガーリー・ライス

     レイチェル・テイラー

     アリソン・マクギアー

 

1959年シドニー。グッズ百貨店はクリスマスシーズンを

控え準備に大忙しである。華やかな婦人服売り場にはリサと

いうアルバイト職員が配属され、先輩のフェイとパティと

共に接客を始めるが、一筋縄ではいかない客に失敗続き。

しかし売り場のリーダーのマグダはそんな彼女に「一点物の商品」

の扱い方を丁寧に教えるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 立場や出身国の異なる女性たちが夢を

かなえていく姿が楽しく描かれています。


夢は女優か小説家か詩人かその全部か


インターネットで買い物をするなどということが頭の片隅にも

なかった時代、百貨店は人々の夢やあこがれがぎっしり詰まった

場所でした。この映画は1959年のシドニー、グッズ百貨店の

女性販売員の出勤風景から始まります。出勤してきた女性たちは

更衣室で黒色の制服らしきものに着替えます。ストッキングを

はき替え、メイクを直していざ持ち場へと向かうのです。

 

しあわせの百貨店へようこそ
出典:IMDb

 

百貨店のクリスマスシーズンは繫忙期で、それに向けて臨時で

雇われたのがメガネをかけたダサい少女リサです。職場のリーダー

であるマグダはヨーロッパからの移民であり、他の女店員から陰口を
言われているものの、ヨーロッパ仕込みのファッションセンスは

ぴか一。それに対し、オーストラリアで生まれ育ったリサの教育係で

あるフェイとパティは「避難民に気をつけて」などとささやきます。

 

しあわせの百貨店へようこそ
出典:IMDb

 

オーストラリアは18世紀にはイギリスの植民地政策下にあり、本国や

アイルランドの犯罪者の刑務所として使われていましたが、1901年

連邦政府として独立し、キャンベラが首都決められました。

(日本からの海外旅行ではほとんどパックに入っていないかも)

ところがイギリスへの忠誠から第一世界大戦、第二次世界大戦、

さらには朝鮮戦争、ベトナム戦争と参戦し、多くの人民の命が失われた

ため、1950年代〜60年代は移民政策へと舵を切ったのです。

マグダはスロべニア人、彼女の夫ステファンはボスニア人、そしてのちに

登場する彼らの友人ルディはハンガリー人といずれも本国の内戦や動乱

から逃れ、この国へ亡命してきた身の上です。

 

しあわせの百貨店へようこそ
出典:IMDb

 

一方臨時雇いのリサは当時の典型的な中流家庭に育ち、大そう成績が

よく大学進学を目指しているものの、「女に学問はいらない」という

父と専業主婦で娘をいつまでも子ども扱いする母の一人娘なのです。

マグダの家では夫が料理をするという話を聞いた父が

「ほう、俺はそれならパブで酒を飲む方がいい」などと言います。

家にいたら目の前に食事が運ばれ、テレビ番組は自分の好きな競馬

中継のみ見るいう男性なのです。でも母もそれを苦にしません。

 

しあわせの百貨店へようこそ
出典:IMDb

 

パティは労働者の夫フランクがいるのですが、子供ができないことを

悩んでいます。しかし自分の体に異常がないことがわかり、

「ご主人の検査も」と言われると、即座に断るのです。リサの母親に

言わせると「結婚したら子供ができるものよ」だそうです。
そしてフェイは、恋人募集中なのですが、元の職場(ダンサー)の

友人が紹介してくれる相手は、しょっぱなから彼女の体にべたべた

触る男ばかりで、もう理想の相手に巡り合えないんじゃないかと
落ち込んでいます。

 

しあわせの百貨店へようこそ
出典:IMDb

 

3人の私生活を見せた後で、映るのがマグダの優雅な生活で、

夫ステファンと豪華な家に住み、友人を招いてはパーティーを楽しんで

います。彼女は、今の職場を足掛かりにヨーロッパ仕込みの

ファッションをオーストラリアに広めるお店を持つという夢があります。

この対比でわかるように、その土地から出たことがない人々の視野の

狭さは、その人たちが持っていたであろう能力を埋もれさせてしまって

いることを本人にも他人にも気づかせません。したがってリサのように

若い世代への期待が高まります。
クリスマスの日、プレゼント開けると、リサの母の手作りのピンクの

フリフリドレスが入っているんですね。

「だってピンクが好きだったでしょう?フリルも好きだったじゃない」

それはいつのリサのことなのか。

母は、彼女が百貨店でいろいろなファッションを知り、接客するうえで

多くのことを学んだことに気づけないのです。でも母はリサを束縛する

わけではなく、彼女がいつかは自分の手から離れていくこと寂しく

思っているだけで、それがもうすぐそばにあることに敢えて目を

向けないようにしているのかもしれません。
パティーの夫フランクは、ある日突然失踪し、彼女は暗い表情で売り場に

立ちます。逆にフェイはオーストラリア人女性と交際したいという

マグダの友人ルディと映画デートをして、ヨーロッパ映画に涙を流し

続けるのです。彼女は音楽も映画も本も美術も何も知らず、生活のために

働いてきました。したがってオーストラリア人男性しか知り合う機会が

なかったのです。二人が山にデートに行くシーンはオーストラリアの

大自然を堪能できます。彼女の短パン姿も可愛いです。
ここまで順調に来たので何か一波乱あるのかとずっと心配して

いましたが、特に波乱もなく「みんな来ては去って行くデパート売り場」

と売り場の上司カートライトと支配人レイダーが語る通り幸せへの

通過点としての百貨店の売り場が描かれていました。
カートライトさんのクリスマスは年老いた母親と二人きり、レイダーは

未婚らしく甥や姪とひっそり過ごすというのも対照的です。
最後にリサが将来の夢を聞かれ「女優か小説家か詩人かその全部か」と

答える姿は、若い世代のほとばしるようなパワーを感じるものでした。

将来、なんでもできると思っていた年頃が懐かしいです。

 

 

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ストリート・オーケストラ

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JUGEMテーマ:洋画

 

ストリートオーケストラ

出典:IMDb

 

「ストリート・オーケストラ」

原題:The Vidin Teacher

         TUDO QUE APRENDEMOS JUNTOS

監督:セルジオ・マチャド

2015年 ブラジル映画 103分 PG12

キャスト:ラザロ・ハーモス

     カイケ・ジェズース

     サンドラ・コルベローニ

 

ブラジル、サンパウロで交響楽団のオーディションに

不合格となったラエルチは、生活費のためにスラム地区の

NGOが運営する学校で楽器の演奏を指導することになる。

しかし彼らは楽器の構え方どころか座って指導を受ける

ことすらできない生徒がほとんどで...。


<お勧め星>☆☆☆半 音楽が人の心に及ぼす力を実感

できるけれど、劣悪な環境はどうやったら変えられるのかと

最後に思ってしまいます。


自分にも価値がある


ブラジルは貧富の差が激しく、国民の60%が国民平均所得の

半分未満と言われています。その中でファベーラと呼ばれる

いわゆるスラム街が国内のいたるところに点在し、この写真の

ように豪華なホテルの裏側が無秩序に並んだ貧困層が住む家

(そう呼べるのでしょうか)がひしめき合っているのです。

 

ストリート・オーケストラ
出典:IMDb

 

さて主人公のラエルチは幼い頃からの英才教育のおかげで

「神童」と呼ばれるほどのバイオリンの演奏能力を持っている

のですが、サンパウロ州交響楽団の入団オーディションの

最終選考でなぜか弾けなくなってしまい不合格となるのです。

どうやら彼の家も貧しいもようで、彼がバイオリンの演奏で

稼いだお金を仕送りする約束になっているらしい。だから

不合格になったなどと口が裂けても言えないのです。とはいえ

カルテットを組んでいた仲間にイラつき、一人が抜けてしまうし、

バイオリン指導の職探しも全く見つからず、遂に家賃滞納の

督促状まで届きます。

 

ストリートオーケストラ
出典:youtube

 

背に腹は代えられないということで、前に話をもらっていた

ファベーラでNGOが運営する学校の生徒たちにバイオリンを

教える仕事を選択します。安月給だけれど、とりあえずのお金が

欲しいだけの話です。ラエルチの住んでいるアパートもそれほど

きれいではありませんが、彼が向かったファベーラは、もう

危険な香りがプンプン立ち込めています。

いや、本当に危険なんですよ。ちょっとググってもらえばその

画像やニュースがいくつでも見られるはずです。

 

ストリートオーケストラ
出典:youtube

 

そのど真ん中に位置する学校で彼は生徒たちに楽器の演奏を

教えるのですが、まず、彼らは

「人の話を聞けません」

「座っていられません」

「喧嘩を始めます」

「差別言葉を平気で言います」
「授業中にスナックを買いに行きます」(これに関しては注意

したことで逆にラエルチが脅されます)

「そもそも楽譜が読めません」
という悲惨な状況なのです。しかしそれらはこの生徒たちの

置かれた環境のせいであり、土曜日にも練習をするという提案には、

多くの生徒が反発するのです。
「土曜日はおやじの仕事を手伝うんだ」
「弟たちの世話をする日なの」
その中で女子生徒が

「でも音楽をやっていると自分にも価値があると思えてくるの」
と言って泣き始めます。彼らは家で「子供」として愛情を注がれて

いる者はほとんどいないし、そもそも親のいない子供も多くいる

のです。

 

ストリートオーケストラ
出典:IMDb

 

一方生徒の中でも熱心に指導を受けるサムエルは、ラエルチに

褒められ、さらに練習しようと考えますが、家では父親の仕事を

手伝う必要があります。それも父親が、息子や、娘をこの

ファベーラから抜け出すために金を稼がなければならないと思って

いるからなのです。サムエルにはVRという親友がいますが、

この子はまさにギャングの手下で、クレジットカード詐欺に手を

染めています。そんなことが日常であるのがこの地区なのでしょう。
サムエルのバイオリンとVRのウクレレ?の協奏はとても楽しく

明るい音楽を聞かせてくれて、二人が最も生き生きして見える瞬間

です。
ところが、幸運にもラエルチには再びオーディションを受ける

チャンスが巡ってくるのです。それが幸運なのはラエルチやその

仲間たちで、生徒、特にサムエルにとっては納得のできるものでは

ありません。
さらにVRとサムエルがバイクの乗っている時に検問に引っかかって

しまいます。「止まれ」というサムエルにVRは「盗難車なんだ」

と言って猛スピードで逃走するんです。ファベーラは道路という

ものが整備されているはずもないので、小道に入ってしまえば逃げ

通せると思ったのでしょう。しかし警官たちに背後から発砲される

のです。検問から逃走したとしても丸腰で明らかに少年とわかる人へ

警察は躊躇なく発砲するんですよ。これがこの国の現実なのです。

「ブラジル 消えゆく民主主義」(2019)に描かれているように、

ルーラ(人気者)→ジルマ(初の女性大統領)→ボルソナーロ(極右)

にいたるブラジル民主主義の混乱によってこの国の腐敗は進み、

政府が国をコントロールできなくなっています。したがって貧困層の

住むファベーラなどは警察への憎悪が強く、ギャングが治安を握って

いる状態になっているわけです。

 

ストリートオーケストラ

出典:IMDb

 

終盤、警察隊とファベーラの住民が対峙するシーンがありますが、

偽の警官隊と言い聞かせてもエキストラとして参加したファベーラ

の住民の怒りは収まらず、監督が何度止めに入ってもコントロールが

きかず、何人かの警察役の人が怪我をしたそうです。

(The Asahi Shinbun Globe+ 2016.8.19版より)

あの怒りに満ちた表情こそ彼らの真実の思いが詰まっているのです。
この映画は実際に存在する「エリオポリス交響楽団」に基づく話で、

音楽を通して自らの存在を主張できることを示した素晴らしい内容

でした。ただ、楽譜の読めない子があんなに急にうまく演奏できる

ようになるのだろうか、とか、ラエルチは、試用期間で練習を

休めないはずなのに、なぜ指導に来れたのかなどちょっと疑問が

残ります。
それでもファベーラで行われる演奏会のシーンは胸が震えるほど

感動的なものでした。そして最後にラエルチに初舞台を見に来る

VRたちはVRのクレカでチケットを購入するというシーンもついて

います。つまり現実は何も変わっていないということなのです。

 

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スキャンダル

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JUGEMテーマ:洋画

 

スキャンダル

出典:IMDb

 

「スキャンダル」

原題:Bombshell

監督:ジェイ・ローチ

2019年 アメリカ=カナダ映画 108分

キャスト:シャーリーズ・セロン

     ニコール・キッドマン

     マーゴット・ロビー

     ジョン・リスゴー

 

2016年、保守系ケーブル局FOXニュースの元人気

キャスター、グレッツェンは、会長のロジャーを相手

取りセクシャルハラスメント訴訟を起こす。現在看板

キャスターであるメーガンは、戦いを望む相手に巻き

込まれない姿勢を保つ続けるが、同時に自分の軌跡を

思い出し動揺する。一方、野心家のケイラは、ロジャーと

面会する機会を得て、自分の意欲的な姿勢をアピールするが...。


<お勧め星>☆☆☆半 ここまでリアルに実在するテレビ局を

描いていることに驚きつつ、何も変わっていないことに愕然

とします。


公平とバランス


映画内でFOXニュースの会長ロジャー・エイルズが

新人キャスターのケイラに「忠誠心を見せろ」というシーンが

あります。この忠誠心というのは、まさに

For What? For Whom?

に尽きるのです。この会社はあなた個人のものではないし、

そもそもマードックという経営者が存在し、その下でロジャーが

働いている構図のはずなのです。しかしFOXニュースを立ち上げ、

ここまで大きくしたのはひとえにロジャーの功績であり、彼の

テレビ界での力は巨大なものになっていました。
映画は大統領選挙の討論会でトランプに対し、かつて女性への

セクハラをした事実を質問し、彼の怒りを買ってしまう

FOXニュースの看板キャスターでメーガン・ケリーの姿から

始まります。

 

スキャンダル
出典:IMDb

 

この役はシャーリーズ・セロンが演じており、カズ・ヒロに

よる特殊メイクで、実在のメーガンとうり二つになって

います。そのようにした意味は、この事件が示談金を

支払うことで終結し、以後この事件については守秘する

という誓約があったことで、闇に葬られてしまうこと

への大きな抵抗だと言われています。しかしこれが

例えば日本の民放局の話だったら、絶対に公にならない

だろうし、そもそも事件として扱われないんだろうと

確信してしまうのが怖いです。数年前にある局のお天気

お姉さんが、その局の複数の幹部と密会していたことが

スクープされ、お姉さんは即座に画面から姿を消した
ことがありました。その時に抱いた大きな違和感は

「なぜ彼女だけ責められるのか」ということです。

少し前に見た「リチャード・ジュエル」では、地方新聞の

実在した女性記者が、FBI捜査官から情報を得るために、

いわゆる「枕営業」をするシーンが出てきました。それは

実際にはなかったことだと女性の夫も新聞社も抗議している

のに、それをわざわざ映画内で描き、その行動が大騒動の

きっかけになってしまったという誠にひどい演出で、

今思い出しても頭に血が上ります。その女性がすでに故人で

あり、抗議の声を上げられない上に、製作側は「創作した

内容だから」で終わらせているのは許せません。
ということで本年見た映画の中でダントツ低評価にしています。

(個人の感想です)

 

スキャンダル
出典:IMDb

 

さて、メーガンの前に看板キャスターだったグレッツェン役は

ニコール・キッドマンが演じていますが、これまた映画内で

「自分らしくあれ」とノーメイクでテレビに出るシーンが

あります。本当にすっぴんに見えるんですが、実は綿密に

メイクしてあるという優れもの。彼女がなぜノーメイクで出演

したかは、FOXニュースでは、女性のルックスを大そう気に

するからなのです。能力以前に見た目が大事なのです。
ロジャーが言う「脚を出せ」「スカート履け」が絶対条件で、

その局の女性スタッフはみなスカート姿であり、キャスターは

金髪、ボディのくっきり出る衣装、高いハイヒールを履いて

いるのです。
ニュースにこんなものは不要と思うけれど、ケーブル局の

カルト的な人気を保つためには、視聴者が望むニュースを

視聴者が求める姿で放送しないいけないわけです。それは

フェイクであるか否かは関係がなく、見たくない人は他の局を

選択するわけだから、ある意味自由と言えば自由な姿勢です。

しかし中盤に局内の全通信、セクハラなどを訴えるための

ホットラインはすべてロジャーに監視されているという事実を

メーガンが語るのを聞くと、そこで働く人々はまさに操り人形の

1つに過ぎないように思えてくるのです。つまり機嫌を損ねたら

仕事がなくなる、意見を言ったら降格される、またそれによって
退職に追い込まれたとしても、FOXにいたということで他では

雇ってもらえなくなるなど大きな恐怖と隣り合わせというわけ

です。

この保守系の局で働いている人が全て共和党支持者かというと

そうでもなく、ケイラの隣に座っているジェスはクローゼット

民主党(自宅の壁にヒラリーのポスターを張っている)だし、

同性愛者であることを隠しています。そうまでしても仕事が

欲しいわけです。

 

スキャンダル
出典:IMDb

 

ところが新人で野心家のケイラは、ロジャーに挨拶をして、

キャスターの座を狙うのですが、そこでおぞましいセクハラ行為

に遭ってしまいます。このロジャーにとってはそれが今まで

当然のことだったし、それによって仕事を与えてやっていた、

ぐらいの感覚なんだろうな。つまり後釜はいくらでもいるから、

スポンサーやお偉い人たちと上手く付き合える都合のいい女性を

求めていたんだろうな。
そしてグレッツェンは遂に会社を解雇されます。しかしそれは

周到に準備していたもので、彼女はロジャーに対し、セクハラ

訴訟を起こすのです。ところがロジャーにセクハラを受けた

被害者はなかなか名乗り出ません。

FOXニュースを立ち上げる前に被害を受けた6人の女性の証言

以外は、かん口令がひかれ、誰一人として名乗り出ないのです。

ロジャーの主張がまことに見苦しい。

 

スキャンダル
出典:IMDb

 

「女は嘘つき」

「政治利用にセクハラを使っている」

「軽口をたたいただけ」
こういう時に最も敵になりうるのが女性であり、ロジャーの妻は

「この人は悪気はないのよ」とかばうし、FOXニュース社内では

チーム・ロジャーが作られて、彼を守ろうとする女性たちが

現れます。
「グレッツェンには見方がいなかった。彼女は嫌われていた。」

そんな風に言われ、誰も支持しないと思っていたら、遂にメーガンが

行動を起こします。それはジェスからケイラがロジャーにセクハラを
受けたことを知れされ、自分と全く同じ境遇であることに気づいた

からでしょうか。いや、そんな優しさではなく、自分らしく生きる

ことへの誇りを感じたからだと思っています。こんな権力を傘にした
無能な男ではなく、自分で道は切り開けると確信したからだと思います。

その直後にすれ違った局の男性カメラマンに挨拶をしても無視される

んですね。そしてすぐに家族とのハグが待っています。
つまり周りに気を使って皆に好かれようとすることより、自分の家族

こそが自分を一番に考えてくれるということを示唆していると

感じます。
大昔から「優秀な女性」は存在しているのに、活躍できる場は少なく、

強さだけをアピールする男性を盛り上げることができる女性こそ、

この世に必要だと思う人たちが多くいるのは本当に残念です。
ラストシーンは、ロジャー一人が去っても何も変わらないことを

意味していて、戦いはまだ続いていくんだと思いました。

 

 

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レッド・ファミリー

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レッドファミリー

出典:IMDb

 

「レッド・ファミリー」

原題:RED FAMILY

監督:イ・ジュヒョン

製作総指揮、脚本:キム・ギドク

2013年 韓国映画 99分

キャスト:キム・ユミ

     チョン・ウ

     ソン・ビョンホ

     パク・ソヨン

 

北朝鮮工作員4人が疑似家族としてある一軒家に

住み始める。任務は脱北者の暗殺であり、彼らは

指示通りその任務を遂行していく。しかし夫婦喧嘩

してばかりの隣家の家族と次第に親しくなり、

ある日一緒に食事をすることになるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 これが2013年製作で、

今もおそらく少しも変わっていないであろう現実を

知り愕然とします。


一緒に暮らすのが本当の家族


祖父と夫妻と一人娘というごく普通の一家が

イムジンガン食堂で食事をしようとしています。

イムジンガンって「イムジン河」で歌われている場所

ですよね。フォーククルセダーズの歌うその歌は、

歌詞も曲も郷愁を誘うもので、その歌を巡る騒動も含め、

胸に残り続ける内容です。

で、娘のミンジは撮影禁止区域でのんきに写真を撮って

いたり、別の席で家族喧嘩をしている一家と違って、
年長者を敬い、妻は夫を敬い、楽し気に食事を口に

運ぶのです。そして車を運転中の祖父は突然事故を

起こしてしまい、その事故の写真を、今度は妻が撮影

するのです。もちろん撮影禁止区域であり、すかさず

駆け寄る軍人に「事故の様子を撮ってるだけよ!」と

怒ります。「ん?」なんかおかしいぞ。

 

レッドファミリー
出典:IMDb

 

レッドファミリー

出典:IMDb

 

その理由は、彼らが住み始めた一軒家に入った途端に判明

します。妻であるはずのスンヘが義父であるミョンシク、

夫であるジェホン、娘であるミンジに命令口調で指示を飛ばす

のです。つまり彼らは家族を装った北朝鮮の工作員であり、

スンヘが班長で、これから何かの任務を遂行していくために、

ここに引っ越してきたのです。静かに食事をしていると、

隣家から大きな喧嘩の声が聞こえてきます。こちらは

「北にいる時にはこんな豪華なものを食べられなかった」

とメソメソしているのに、隣家はあろうことか食事のメニューが

気に入らないという理由らしい。それについて

「資本主義の腐敗一家」とスンヘは言い、他の3人もそれに

納得します。彼らは祖国に家族を残しており、その家族を

思いつつ、国家に忠誠を誓って何年も韓国で工作活動をして

いるわけです。それもいつか家族と幸せな暮らしができる

だろうと信じ、この資本主義にどっぷりつかり堕落した韓国の

人々を軽蔑しています。いや憎んでいると言った方が正しい

かもしれない。
ところがある暗殺任務でスンヘが乳児を殺せないんですよ。

脱北した人々は暗殺の対象であり、それは老若男女問わず粛清

されていきます。誰がターゲットになるかは、韓国内で町工場を

営んでいる風の男の指示によるらしい。(通称野ウサギ)

その男も韓国人の恋人がおり、果たして何年この仕事を続け

ているのだろうと思ってしまいます。その任務を完ぺきに

遂行したのは部下のミンジであり、「愛する家族のために
指示に従わないことは死活問題だ」と語ります。これらの

出来事は逐一上層部に報告されますが、それだけで終わる

はずがありません。この家自体が盗聴されているのです。

よくアメリカのCIAのエージェントが身分を偽り他国がスパイ

活動をする映画を見かけますが、彼らのこんな風に盗聴されて

いるのでしょうか。
さて夫婦げんかの絶えない隣家とも次第に仲良くなっていき、

ミョンシクはおばあさん、ミンジは一人息子のチャンスと

結構親しくなっていきます。チャンスは同級生にじめられ、

金を奪われているところをミンジに見つかり、可愛い顔の

ミンジがテキパキぶん殴って彼を救うのです。そうか、

工作員は銃の扱いだけでなく、武術にも長けていないと

いけないんだな。
そして隣家のおばあさんの誕生日会に、偽物一家4人は

呼ばれます。すぐに言い争う隣家の夫婦とそれを止める息子や

おばあさんの姿を見て、彼らは故郷に残した家族への思いは

一気に強まるんですね。いやそれはずっと持っていたことだと

思います。それを隠して、いつかは家族一緒に暮らせると考え、

国からの指示の任務を遂行しているのに、隣家では、普通に

一緒に暮らしています。喧嘩すらできない、子供の成長すら

見られない、誕生日を祝うこともできない、それがいかに

おかしなことであるか気づいてしまうのです。

 

レッドファミリー
出典:IMDb

 

ミンジの誕生日には隣家の4人が突然やって来ます。急いで

金日成や金正恩等の写真を外し、普通を装う4人ですが、

食事中に北朝鮮の話になった途端、全く意見が分かれてしまい

ます。ソフトながら金正恩を崇める偽家族と、明確に蔑む

隣家の人々。その中でミンジとチャンスは「南北統一」こそが

最終目標だと語るのです。かつては1つの国だったのに、大国の

代理戦争のような形で南北に分断されました。(代理戦争という

言葉は韓国国内では「親北」と思われ、映画内で隣家の夫が

言うように「アカ」になるようです。)若い二人の考えこそ未来

への希望を象徴しています。

またこの食事風景を見ていると、理念、国境、思想は飾りに

過ぎず、個人レベルでの交流はいくらでも進めることができる

ようにも感じます。そんなに甘いものではないことは、この後の

映像で分かってしまいますが。
さらにジェホンの妻子が脱北に失敗し、捕まったということを

スンヘは知らされます。脱北失敗=死を意味することを知って

いるスンヘは、なんとか彼の妻子を守るために独断で任務を

行います。工作員は家族を装っていても、個人的な思いで

接してはならないという基本をすっ飛ばしてしまったんですね。

つまり班長であるスンヘ自ら、偽家族への愛情を抱いてしまった

のです。

この独断で行った任務により、彼らは大変な窮地に追い込まれ

ます。いつも任務を指示する町工場の男にスンヘはボコボコに

殴られてしまうのです。こいつ、韓国女性に食事などの世話を

受けていて、さらに妊娠までさせているんですよ。
こいつはいけなかったな。彼にも北に残した家族がいるかも

しれません。
「わたしたちは人間らしくない。時計の部品と同じ。」スンヘは

語ります。義父役のミョンシクは、末期のガンに冒されているのに、

20年以上も家族に会えず、そしておそらく会えないまま寿命を
終えようとしています。
全てをチャラにするという任務は隣家を皆殺しにするというもの

でした。翌日楽しそうにキャンプに向かう隣家の家族と、めっちゃ

暗い偽家族は対照的です。しかし夜のキャンプファイヤーで歌った
「アリラン」はオリンピックやアジア大会などの国際ゲームで

南北合同行進のときなどに流れることもあるように、南北の垣根を

越えてどちらでも歌われています。それを歌いながら、偽家族は

涙を流すし、隣家の家族は「いい歌だなあ」と言います。
これがどうして現実のものにならないのでしょう。同じ言葉を話し、

同じ民族であり、元は1つの国であったのに、なぜ分断が続くの

でしょう。
現実に引き戻されたシーンの後でラストに映るミンジは、あれは

チャンスの願望だったんだろうな。ミンジのおかげで殴り返す

ことができる人間になれたんだろうな。

 

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青いパパイヤの香り

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青いパパイヤの香り

出典:IMDb

 

「青いパパイヤの香り」

原題:L'odeur de la Papaye verte

監督:トラン・アン・ユン

1993年 フランス=ベトナム映画 104分

キャスト:トラン・ヌー・イェン・ケー

     リュ・マン・サン

     グエン・アン・ホア

     クエン・チー・タン・トゥラ

 

1951年、ベトナム、サイゴン。資産家の家に奉公し

始めた10歳のムイは、先輩の使用人に従って、料理、

掃除、洗濯などを覚えていく。ムイに亡くなった娘を

重ねる夫人に可愛がられる一方で、ムイが可愛がるアリに

ロウを垂らす次男や、しばしばいたずらをする三男など

に邪魔されながら一日中働きづめである。そして一家の

主がなくなって10年が経ち、ムイはこの家の長男の

親友で資産家のクェンの家に奉公に出されるのだった。


<お勧め星>☆☆☆半 目と耳で静かに楽しむ映画です。

そしてそれが象徴するものを想像するのも楽しいです。


青いパパイヤ


1951年のベトナムというとちょうどフランスに対する

独立戦争(第一次インドシナ戦争)の真っ最中ですが、

映画内でそれを感じさせるのは、日没後「外出禁止令」の

サイレンが鳴ることぐらいです。
10歳のムイはベトナムの片田舎からサイゴンの資産家の

家に奉公にやって来ます。冒頭に家を奉公先を探すシーンで、

彼女がもしかしたら文字が読めないのではないか?という

ことを示唆するカットがありました。それはラスト付近に

繋がっているとは全く気づきません。
さて、到着した先の家は緑豊かな広い庭を持ったお屋敷で、

資産家夫妻と息子が3人、主人の母親が暮らしています。

ムイは先輩使用人に、とても親切に仕事を教わるし、夫人

には亡くした娘と同じ年頃ということで大そうかわいがって

もらうのです。

「おしん」とは大違い。

 

青いパパイヤの香り
出典:youtube

 

この映画はフランス国内でセットを作り、ベトナムの家を

再現したそうですが、常に聞こえる鳥の声や青々と茂った

パパイヤの葉、そしてパパイヤをもいだ茎から静かに垂れる

白い樹液などが大アップで映り、ムイのうなじや額に常に

にじむ汗とともに、自然と共存する人々の姿が描かれます。

庭にはヤモリやカエルが山ほどいるんですよ。そしてムイは

そのどれも大事にします。アリが食べ物を運んでいくこと

すらも優しいまなざしで見つめます。ところがこの家の

次男は、そのアリの列にロウを垂らし、アリが死んでいくのを

見つめているのです。また三男は、ムイの気をひきたいのか、

彼女の仕事の邪魔をし、必ず最後にオナラをしていくという

悪ガキそのもの。それでもムイは少しも動じないのです。
さて、一日中何もせず、楽器を演奏しているこの家の主人は、

どうやら家出癖があるらしく、前回の家出の最中に娘トーが

病気になり、戻ってきた翌日亡くなったという悲しい出来事

以来、ずっとこの調子らしい。奥様が代わりに布地を売って

生活費を稼いでいるのです。ところが、この主人が家の金や

貴金属を持って家出をしてしまい、彼らの状況は一気に悪く

なります。いや、それでも映像は暗いものが映るわけでは

ありません。前と変わらず、カエルや鳥の声が聞こえる庭で、

ムイはコオロギを見つけ、虫かごに入れて飼い始めます。

彼女は生きているものすべてを大切にしているのです。
とはいえ、この家の家計が苦しくなったことを物語るのは、

先輩奉公人がムイに

「おかずが少なかったら味を濃くするんだよ」

と言う時です。さらに祖母は、奥様に

「お前が無口だから、夫が外に女を作るんだよ。お前は夫を

不幸にする悪い嫁だよ」

などと言い、それを聞いていた次男は涙を流します。

ああ、意地悪姑はここに存在していたのか。
ムイは青いパパイヤの実を細く切り、食事用に用意しますが、

彼女は、さらにパパイヤを二つ割にし、中にぎっしり詰まった

白い種を見つめます。(この物ぶつぶつ、ちょっと気色悪い)
そんな時、前にチラリと見かけて長男の親友クェンが家にやって

くると聞き、ムイは大喜びします。もちろんその気持ちを外に

出すわけではなく、ちょっとおめかしして、ちょっと

お澄ましして食事を運んでいくのです。クェンは全然気にも

留めていないと思うけれど。
せっせと働くムイは、ある日奥様のお気に入りの骨董の壺を

割ってしまします。

「この壺はあたしたちのお給金では到底買えないものだよ」

なんて先輩奉公人に言われるけれど、奥様は優しく許して

くれます。その優しさにムイはつい涙をこぼすのです。

この壺は実は対になっていて、これが割れたことは、この家の

夫妻の片方がいなくなることを意味していると理解するのは、

この後、再び家に戻ってきた主人が倒れたまま帰らぬ人と

なった時です。この時だって、手に奥様の宝石を握っていた

から、多分ほかの女のところに行くためにちょっと立ち寄った

だけなんだろうな。
さて、10年経ち、ムイは20歳のぴちぴちレディに成長します。

相変わらずアリの行進を見つめているムイに対し、チュンの嫁は

「生活も苦しいから大富豪のクェンの家に奉公に行かせましょう」
と夫に進言します。ムイにとっては奉公先が変わるだけのこと

ですが、この家の奥様は、今や、例の意地悪姑のいた屋根裏の

ような部屋に追いやられており、ムイは彼女のことだけが心残りの

様子です。
奥様も同じで、やや不自由な体を動かしてムイに、トーが着る

はずだった赤いアオザイとネックレスをプレゼントします。奥様は

長男の嫁よりムイの方がずっと可愛いんだよね。
そしてやけに近代的な内装のクェンの家では、作曲家になった

彼が奏でるピアノの音色が響き渡っています。キャピキャピの

フィアンセもいるみたい。ムイは相変わらず、仏様のような笑みを

浮かべえて家事をこなしていくのです。でも脱ぎ捨ててあった

フィアンセの靴を履いてみようとするけれど、それは

思いとどまり、逆に磨き上げたクェンの靴に足を入れるのです。

これはムイがずーっとクェンを思い続けていたことの証でしょうか。

そして身の丈を知って行動しているという証でしょうか。

 

青いパパイヤの香り
出典:youtube

 

ある日、急にムイは奥様にもらったアオザイを着、ネックレスを

つけ、フィアンセがベッドの忘れていった口紅をそーっと

塗ります。唇が大写しになり、真っ赤な紅で染まっていくのが

なんともなまめかしいです。
それがクェンに見つかってしまうのですが、彼は特に何でも

なかったかのようにやり過ごします。しかし彼の奏でるピアノの

音色や彼が描きためている絵が、大きな心の変化を物語って

いるのです。(多分)
最後に再び青いパパイヤの種がうつります。これが本当に

気色悪いんですが、前に映った時と今回とはムイの立場が全く

変わっています。それでも黄色のアオザイ姿の彼女はまるで

仏様のような笑顔を浮かべます。
全編にわたって、青々とした植物や、降り注ぐ雨粒、カエル、

コオロギ、鳥の姿とそれらが放つ、音や声が、とても気持ちの

いいもので、蚊帳や蚊取り線香など懐かしい小道具も上手く

使われていて穏やかな気持ちにさせてくれる映画でした。

 

 

 

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ベトナムを懐う

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ベトナムを懐う

出典:IMDb

 

「ベトナムを懐う」

原題:Hello Vietnam/Da co hoai lang

監督:ヌエン・クワン・ユン

2017年 ベトナム映画 88分

キャスト:ホアイ・リン

     ゴック・ヒエップ

     デイン・ヒウ

 

1995年、ニューヨーク。トゥーは老人ホームを

抜け出し、ニューヨークの自宅に戻ってくる。彼は

妻ウットの大切な命日を忍ぶために戻ってきたのだが、

そこにいた孫娘タムはBFの誕生日祝いをしようと

している。プイライバシーを主張するタムと伝統的な

家族観を押し付けるトゥーとは全く話がかみ合わず、

トゥーの友人ナムを呼ぶのだったが..。


<お勧め星>☆☆☆半 育った環境で同じ民族であっても

価値観が全く異なることを知りつつ、その原因を知る

と悲しくてやりきれなくなります。


故郷に帰りたい気持ち


この映画は前半と後半で全く雰囲気が変わります。前半の

コメディ調に慣れていると、トゥーの息子グエンが登場

する後半のシリアスな内容であっという間に涙がこぼれます。

それは不意に訪れるのです。
1995年ニューヨーク、タムがBFのハリーとイチャコラ

ベタベタしているところに、突然ノックもなしに祖父の

トゥーが入ってきます。
「ノックくらいしてよ」
「自分の家だからいらんだろう」
「プライバシーの侵害よ」
「家族に秘密は作らないもんだ」

 

ベトナムを懐う
出典:IMDb

 

ベトナムを懐う

出典:IMDb

 

全くかみ合わない会話をする二人は、血のつながりがある

ものの、1か月前にニューヨークにやってきたトゥーと

アメリカ生まれのアメリカ育ちのタムでは、言葉だって、

ベトナム語しか話せないトゥーとバイリンガルでありながら、

英語で会話をするタムでは、そもそも価値観が全く異なり

ます。トゥーは公園の鴨を捕まえてきて料理しようとして

いるし、老人ホームには内緒で抜け出してきたこともバレて

しまいます。タムはすぐに電話を持って「警察を呼ぶ」と

言うんです。

アメリカだと家の中の出来事であっても警察が介入して

くるんですよね。児童虐待やDVであれば、とても良い方法

だと思うけれど、すべてがそれでうまくいくわけではないなあ。

と思うのは日本的な価値観だからでしょうか。

 

ベトナムを懐う
出典:IMDb

 

トゥーは故郷の親友で同じくニューヨークにいるナムに電話を

掛けます。実はナムも同じ老人ホームに入っているのですが、

彼も一時帰宅しているのです。この電話1本でもトゥーを

からかうナムが「うひゃひゃひゃ」と笑い転げたりして、

彼らが実は強くつながっていることを感じさせます。
祖母の命日とBFの誕生日。

顔も知らない祖母<目の前のBF

であることはタムとっては当たり前のことです。しかし

トゥーはベトナム式の供養をしなければ妻に申し訳ないと

考えるのです。そしてナムが到着すると、故郷のかつての

景色を描いたシーツを広げ、タムには内緒で供養を始めます。

絵に描かれているのは、二人がかつて遊んだ川、あぜ道を

走り抜けた行った数々の田んぼ、池、そして二人が
大好きだったウットの可愛い姿です。

 

ベトナムを懐う

出典:IMDb

 

この明るい日差しとどこまでも広がるのどかな田園風景は

ベトナム戦争前の時期ですね。彼らはウットをめぐって

あれこれ争うわけです。しかし村一番の金持ちのナムと

かなり貧しい家庭らしいトゥーではどう考えてもナムに

軍配が上がります。ナムの親が求婚しに来たことをトゥーに

告げるウットの悲しそうな顔もまた可愛いのなんのって。

トゥーは貧しかったけれど、回想シーンではかなりイケメン

だし、まず歌が上手いのです。ミュージシャンが私生活が

だらしなくても、その作る歌や声が素晴らしければ帳消しに

なった時代があったのと同じですね、いや違う。
ナムはウットの本心を知り、「進学する」という口実で

身を引きます。ナムいい奴じゃん。

ここからベトナムでの新婚生活やわが子ができたこと、また

おそらくは戦争に向かうであろうトゥーを見送るウットの姿が

走馬灯のように映るのです。そして死の床についているウット

の最後の言葉も思い出します。
ところが法要など知るはずもないタムは、勝手にケーキを

使ったり、部屋で線香を焚いたことに大激怒するんですよ。

この家になぜタムの母親がいないのかの理由が、その口から

語られます。また無料だと思っていた老人ホームは実は

高級有料老人ホームで、ナムさんと同じ場所で暮らすために

グエンが掛け持ちの仕事をして入居料を払っていることまで

知らされます。
そもそもタムは1か月前に急に家にやって来た祖父に血の

つながりを感じるどころか恐怖を抱いていたのです。勝手に

部屋に入ってきて布団を掛けなおすなどという行為は

「親愛」ではなく「恐怖」ととらえられるのですね。

「プライバシー」の範囲が難しい。
トゥーがナムと家を出て行った後に、父グエンが戻ってきます。

グエンの日記をトゥーは読み、それもタムにプライバシーの

侵害と言われていましたが、その中に重要なことが書かれて

いたのです。
1975年、ベトナム戦争が終結すると、ベトナムは

社会主義体制となり、多くの人々が国を離れました。彼らは

「ボートピープル」となって海を漂い、運が良ければ亡命でき、

不運にも命を落とすものも多かったのです。そのボートピープル

だった時に、グエンが犯した「裏切り行為」を彼はずっと

引きずっていたのです。それは彼のせいではないし、身重の妻と

自分の命を救うための必然的な行為だったけれど、彼は

そのことで「故郷」への恐怖を抱き続けていたわけです。同胞を

裏切ったことは国を裏切ったことと同じではないか。そもそも

国を捨ててきたこと自体裏切り行為ではないかと。
一方雪が降りしきる中、ナムはトゥーと酒&ドラッグを楽しむ

ためにビルの屋上に上ります。

「雪がやんだらお前のSが見える」←ちょっとこの意味が

わかりませんでした。そして歌が上手いトゥーに対抗するために

こっそり練習していたナムが口ずさむ故郷の歌は、なんとも

明るく、極寒の街にいるとは思えなくなります。
ベトナム人のトゥー、ベトナムからアメリカに渡ったグエン、

アメリカ育ちのタム。この3人のルーツはやはりベトナムに

あり、そこを訪ねる姿が映るラストはまばゆいほど輝いて

見えました。

 

 

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ベスト・オブ・エネミーズ〜価値ある闘い〜

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JUGEMテーマ:洋画

 

ベストオブエネミーズ

出典:IMDb

 

「ベスト・オブ・エネミーズ〜価値ある闘い〜」

原題:The Best of Enemies

監督:ロビン・ビッセル

2019年 アメリカ映画 133分

キャスト:サム・ロックウェル

     タラジ・P・ヘンソン

     ウェス・ベントリー

     アン・ヘッシュ

 

1970年代のノースカロライナ州、ダーラム。黒人の

通う学校が火事で焼け、勉強する場を失った黒人の

保護者から、白人の通う学校への編入案が出される。

しかし白人側の強い抵抗に遭い、廃案になりかけるが、
全米黒人地位向上委員会の支持を得て、黒人と白人で

「10日間のシャレット」という話し合いの機会を設ける

ことになるのだった。黒人代表の活動家アンは白人代表で

KKKの支部長であるエリスと対立しながらシャレットを

進めていくが...。


<お勧め星>☆☆☆半 タイムリーに見た映画だけれど、

これが半世紀前のアメリカの出来事ということに愕然と

します。


孤独からの解放は差別だった


KKKといえば多くの人が例の目の部分だけ穴をあけた白い

袋を被り、たいまつを持って儀式を行う姿や極端な

人種差別思想の集団というイメージを思い浮かべると思います。

今、全米各地で起こっている白人警官による黒人暴行死への

抗議デモでも、6月8日にはバージニア州で一人の男が車で

突入する事件を起こしました。その男はKKKに所属していたと

いう報道があります。
KKKはKu Klux Klan といい、プロテスタントのアングロ

サクソン人(WASP)つまり北方系白人のみが神に選ばれた

優先人種であるという思想で、現在は
白人至上主義
反共主義
反ユダヤ主義
反イスラム主義
反同性愛
ネオナチズム
を掲げています。

冒頭に1971年当時の団体の入団式が映りますが、ちょっと

日本でいう反社会勢力の集まりと似た雰囲気があります。ここの

支部長がサム・ロックウェル演じるC・P・エリスです。
そして次に黒人の活動家アン・アトウォーターが、黒人の住宅

環境についての市会議員への要望に訪れるシーンに変わるのです。

ろくに話も聞かない白人議員と対等に張り合おうとするアンは、

正義感が強く、そしてお節介屋さんでもあるようです。

 

ベストオブエネミーズ
出典:IMDb

 

そして黒人の子供たちが通う(アンの娘も)イーストエンドの

学校が火事で焼けてしまい、その教育の場を設けるために、白人の

子供たちが通うダーラムに編入させようという話が持ち上がります。
この話し合いの最中に驚くべき事実が分かるんですが、黒人の

子供は教科書が白人の子供より1年下のものを使用させられて

いるのです。

「黒人が隣に座ったらこわい」

「黒人は能力が劣っている」
などすべて無知から来る発想なのです。無知というより知ろうと

しない、知る気持ちすら持たないという無関心かもしれません。
結局黒人は焼け残った校舎で交代で通学し勉強することになります。

その話し合いを見ていたのが「全米黒人地位向上委員会」NAACPで

「公立学校への人種統合要望」を市に提出するのです。
KKK所属の市会議員は大慌てで、事態を収束させようと

ビル・リディックという黒人を呼び「10日間のシャレット」

(人種間の話し合い)を実施することになります。

 

ベストオブエネミーズ

出典:IMDb

 

これには白人、黒人の代表が出席し、問題点を掲げたうえで、

解決策を模索し、最終的に公平な人選による12人の投票で、

3分の2を占めたものを採択していくという流れになります。
しかしエリスは、そもそもガソリンスタンドでガソリンを白人に

しか売らない男です。町の人に黒人であるアンやビルと話して

いる姿すら見られたくないのです。この狭量な人物に対し、

アンは攻撃的ではあるけれど、人々に公平に接しています。

 

ベストオブエネミーズ

出典:IMDb

 

とはいえ、話し合いの後にゴスペルを歌うこと(アフリカ発祥の

音楽)を認める代わりにKKKの衣装やチラシを置くことを許可

するというのはかなり極端ではないでしょうか。
それでも話し合いは続き、その間にエリスには、知的障がいの

あるラリーという息子がいることが分かってきます。また

エリスの妻は極端な差別思想の夫に対して反感を持っており、

そのせいで町の人口の半数を占める黒人の客が来ず、生活が

苦しいことを訴えます。もちろん却下。
しかしラリーが突然相部屋になって、パニックを起こしたとき、

アンがその顔の広さで、彼を個室に入れる交渉をするのです。

なんとなくアンとエリスは心が通じ合い始めたと思うけれど、

問題はそんなに簡単ではありません。

「シャレット」で評決をする人のうちリベラルな白人評決員

への嫌がらせが始まるのです。こんなことはいくらでもあったん

でしょうね。道を歩いていても唾をかけられ、すれ違う時には

黒人が道を譲らなければ暴行を受けた時代です。
ラスト付近は思いがけない展開となります。そしてエンドロールで

実際の人物が映ると、C・P・エリスって男の中の男

(この表現はいけないかな)じゃない!と実感します。
恐怖で支配することは、相手に怒りのエネルギーを蓄積させ、

それがいずれ爆発するのだと思わないといけません。そして

「強い白人」に憧れることが最も愚かであると気づいてほしい。

それも有色人種が「強い白人」に憧れるなんてすっとこどっこいも

甚だしいと思うばかりです。エリスのベルトにはいつも銃が

つけてあったし、車にもライフルが入っていたじゃない。ただ

肌が白いだけで他に何の強さもないからではないでしょうか。それを

認めるのは西部劇に憧れる能天気な時代遅れの頭と言わせてもらう。

映画の中で一生憧れていたらいいと思います。

 

 

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赤の涙

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赤の涙

出典:IMDb

 

「赤の涙」

原題:Migas de pan/Breadcrumbs

監督:マネナ・ロドリゲス

2016年 ウルグアイ映画 109分

キャスト:セシリア・ロス

     ジマスティナ・ブストス

     キケ・フェルナンデス

 

1975年、軍事政権下のウルグアイで反政府グループの

一員として活動するリリアナは、突然軍によって拘束、

監禁される。彼女も含め拘束された男女は昼夜を問わず

拷問、暴行を受け、家族との面会もできぬまま9か月後

刑務所に移送される。しかしリリアナの一人息子ディエゴの

親権は夫カルロスに渡ってしまい、彼女は出所後も息子に

再会できないままブラジルに渡るのだった。


<お勧め星>☆☆☆ 当時に事実を知る映画としては重要

ですが、説明不足な部分が多いです。


警察国家体制の恐怖


南米ウルグアイでは、1973年〜84年まで軍事政権下に

置かれ、軍と警察を合わせて10万人の治安組織要員と市民

社会に10万人の密告者が存在したそうです。1982年の

人口が296万人なのでおよそ1割が監視する側の人間という

異常な警察国家体制だったわけです。そのため国民の17%

ほどが他国に移住していきました。
そんな時代を経て2010年、ウルグアイ、モンテビデオで

一人の青年の結婚式がとり行われます。母親らしき女性は

なぜか息子の親戚に無視され、さらには聖体拝領する神父に

さえ無視されます。
え〜、教会の神父さんって分け隔てないんじゃないの〜!
そして彼女は同じ年代の男女が集う場所で、和やかに過ごす

シーンに変わります。この彼女はリリアナ。

 

赤の涙
出典:IMDb

 

時は遡り、1975年、ウルグアイ、モンテビデオで、反政府

活動を送る若者が映ります。リリアナは1歳になる息子を実母

に預けてその活動に参加しているのです。リリアナの家も彼女の

夫カルロスもかなり裕福であり、当時富の恩恵にあずかっていた

側の人間です。したがって社会主義革命軍に参加するリリアナの

行動自体が許せるはずもないのです。おまけに息子は実母に

預けたままだし。
リリアナがこの活動に入ったきっかけは全く説明されません。

ただ人民を抑圧する軍事政権への強い不満を抱いていて、それを

行動に起こしていたことはわかるのです。しかしある晩、突然

アジトが軍に急襲され、翌日、私服の軍人たちにリリアナは誘拐

されてしまいます。彼女が連れていかれたのは、14番兵舎と

呼ばれる場所で、そこには多くの仲間が監禁されており、全裸に

され、昼夜を問わず焼き鏝をあてられる拷問やレイプなどを受け

続けることになるのです。日本版ジャケットはその時に恐怖に

おびえるリリアナの姿をそのまま使っていて、センセーショナルな

文句も書かれていますが、拷問などの時に大音量で流される能天気な

ラテン音楽にかき消されるかのように、映像としてはそのまま映る

ことはありません。

 

赤の涙
出典:IMDb

 

そして9か月後に突然刑務所に移送されるのです。刑務所内も

威張った女性看守の姿は目につくものの、特に目を覆うような

シーンはありません。時々訪れて威張り散らかしていく将校の

いやらしい言葉だけが心に残ります。つまりかなり単調であり、

親権がカルロスに渡ったことを知ったリリアナがそれほど

ショックを受けていなかったり、独房に入れられてもそこで

黙々と運動する彼女の姿しか見えなかったりとかなり中途半端な

描き方になっているのです。
そして1982年にリリアナは出所しますが、ディエゴに会う

ことができず、失意のままブラジルに渡るのです。したがって

冒頭の結婚式までディエゴに会うことがなかったということなの

です。
1988年に軍事政権下で人権侵害に関わった軍人及びテロ活動

構成員が恩赦を受けました。このどっちもいっしょくたに恩赦と

いうものが正しいのかどうか私にはわかりません。
しかしリリアナ達は2010年に、平和維持軍が少年に暴行し、

それを動画にアップしているのを見て、やはり軍事政権下の自分

たちが受けた非道な行為を告発するべく行動を起こすのです。

それを理解しない息子夫婦の言葉より、「孫のために行動したい」

というリリアナの言葉は、彼女の意志の強さを物語っていると思う

のですが、最後がどうも理解しづらいというか、あんな急に仲良く

なれるものなのかと少し驚いてしまいました。
ただ、何かの権力を盾に人を貶める行為を働く人間はいつの時代

にも存在し、その罪を追及されないまま、逆に相手をさらに貶める

行為、発言を行うこと人が多く、それがいかにその人間の価値を

下げていくかいい加減に気付けよと思うばかりです。

 

 

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イカルイト

4

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イカルイト

出典:IMDb

 

「イカルイト」

原題:Iqualuit

監督:ペノワ・ピロン

2016年 カナダ映画 102分

キャスト:マリ=ジョゼ・クローズ

     フランソワ・パピノー

     ナター・アンガラアク

     セバスチャン・フーパドー

 

カナダのイカルイトに単身で赴任している夫ジルが

事故で大けがを負った知らせを聞き、妻カルメンが

オタワからやって来る。しかしジルはそのまま

亡くなり、彼女は夫の死について調べ始めるのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆ 極北という言葉がそのまま当て

はまる場所での人と人のつながり方を静かに描いています。


朝か夜かわからない


原題も邦題もカナダ、ヌナプト準州にある地名です。

もちろん初めて聞く名前なので位置を調べてみるとこの辺り。

 

イカルイト

出典:World-backage

 

映画内のジルの妻カルメンが仕事をしているオタワからは

飛行機で約3時間のフライトだそうです。
(World-backageより)
そしてもう一つ映画内の季節が「夏」なので「白夜」なのです。

「こんな時間に呼び出してごめんなさい」という時間が

深夜2時と言われても、バーの外に出ると外は昼間のような

明るさなのでピンときません。
したがって現地の人々が話すように「いつも通り過ごす」ことが

体内時計を正しく保つ秘訣と言えるでしょう。
冒頭にアザラシを捕まえ、ボートの乗って得意そうに戻って

くる1人の若者が映ります。彼はダニーと言い、帰宅すると

一家は大喜びで、そのアザラシを生で食していくのです。これが

イヌイットの食文化で、自然との共生をしてきたことが伺えます。

 

イカルイト
出典:IMDb

 

一方で、この地域の港で荷下ろし作業を行っている会社のボスが

ジルという白人で、先ほどのダニーの父親ノアとは親しく

付き合っているものの、他の家族とはどうも微妙な距離感を

覚えます。それでも勧められたアザラシの肝臓を生で食べて

いきます。

 

イカルイト

出典:IMDb

 

さらにそこの家にいたアニという幼児を連れた娘には金を

せびられるのです。この辺りの人物関係は、序盤は全く謎で、

ジルは何かノア一家に弱みを握られているか、負い目がある

のかと思ってしまいます。
そしてジルが大けがを負い、オタワから妻カルメンがやって

来るのです。寒々しい景色の中、カルメンはジルの同僚ビクター

に連れられ病院へと向かいます。吐く息は白くなる時もあり、

この地域では夏でさえも決して暖かくないことに気づきます。

そりゃ北極が近いんだから当たり前か。
カルメンはジルと毎日電話で話していたけれど、自分の仕事も

あり、今までにここに来たことがなく、したがって、ジルが

どういう生活をしていたのか初めて知ることになるのです。

彼女が驚きなのか好奇心なのか不思議な表情を浮かべている

ことに気づくと、毎日電話で会話をしていても、ある一定の

距離が開いていたと思わずにいられません。
ジルが亡くなり、カルメンはオタワで検視を受ける夫と一緒に

帰るはずが、やはり現地に残るのです。それは夫の死が「事故」

なのかはっきりしていないからで、警察でも

「ここでは大して捜査をしない」
と言われたことから、自分の力で真相をつかもうと考えたのです。

ジルの家にあったたくさんの石の彫刻は何を意味するのでしょうか。
この地域に元々住んでいた人々は、貧しく、日雇いの仕事か石の

彫刻を観光客に販売して生計を立てていることを知るシーンも

あります。昔ながらのイヌイットの狩猟生活は、現代では通用

しなくなっているのです。
それは逆に現地の人々が、外からやってきた金持ちの白人に対して、

憧れと同時に憎しみを抱く要素にもなります。

 

イカルイト
出典:IMDb

 

また例の金をせびったアニとジルの関係を知った時カルメンは、

ノアに怒りをぶつけるのです。しかしノアはあくまでも表情を

変えず、平穏と静寂がある場所へと彼女を連れていきます。

そこには大自然が広がり、川で魚を釣り、それをそのまま

食べるという行為ができるある意味、人間社会のややこしさを

すべて忘れることができる場所でもあったのです。

そしてそこをジルも好いていたと言う。
この極北の地で、周囲の仲間とは全く違う立場ゆえに、心を

割って話す相手がほとんどいない孤独というものを、カルメンは

そこで初めて知るのです。

 

イカルイト

出典:IMDb

 

冒頭とラストに流れるハミングと息遣いは、緩やかに流れる川を

進むボートと重なり、人間本来の進み方を感じることができたよう

にも思います。

 

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ジェニーの記憶

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ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

「ジェニーの記憶」

原題:The Tale

監督:ジェニファー・フォックス

2018年 アメリカ=ドイツ 117分 R18+

キャスト:エリザベス・デビッキ

     ローラ・ダーン

     ジェイソン・リッター

     チェルシー・オルデン

 

マーティンと婚約中のジェニファーのもとに母から

電話がかかる。それは彼女が少女時代に書いた物語の

ことで、乗馬を習っていたミセスGとコーチのビルとの

間にあった出来事を問いただすものだった。
ジェニファーは当時の関係者を訪ねながら自らの記憶を

たどっていくが...。


<お勧め星>☆☆☆ 記憶は美しいものだけ残り、事実と

かけ離れていくことがあるのですね。それは思い出したく

ないのか、忘れてしまったのかどちらだろう。


わたしは被害者じゃない


「事実は1つ、真実は人の数だけある」とよく言われますが、

それは「記憶」も同じことで、1つの事実に対しての記憶は、

それを体験した本人、周りにいた人々、噂を聞いた人々など

によっていくつもの姿に変わっていくのだと思います。
「あなたは小学校の時にどうしてわたしに冷たかったの?」
と言われたことがありますが、わたしにはその子に冷たくした

記憶はなく、すぐに先生に告げ口する子というイメージしか

ありませんでした。逆に自分こそよく仲間外れにされたものだ

と被害者のつもりでいたことに驚きます。

いったいどれが事実なんだろう。今となってはまさに藪の中です。

 

ジェニーの記憶
出典:IMDb

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

この映画のヒロイン、ジェニファーは親の勧めで馬術を習い

始めるのですが、それを本人は15歳くらいの時、と思い

込んでいたのに、実母から「13歳だった」と指摘されると、

記憶の中の自分があっという間に幼くなります。この映像は

大そう衝撃的で、自分の記憶のあいまいさを痛感させられる

のです。
実母がジェニファーに連絡してきたのは、当時彼女が書いて

いた物語や、馬術を習っていたミセスG、ランニングコーチの

ビルからの手紙、写真などを見て、その時に「何かがあった」

と確信したからなのです。
ジェニファーはそこから、当時の知り合いの人々に再会する

ために行動を開始します。
13歳のジェニファーとが現在のジェニファーがかわるがわる

映り、時折、互いにその行為を質問し合うという手法も取られます。
当時一緒に馬術を習っていたのは、ベッキーとフラニーという

年上の少女で、彼女たちからは、当時の記憶を丁寧に説明して

もらえるのに、ミセスGは、なぜか話をそらします。

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

若い頃のミセスGを演じるのがエリザベス・デビッキで、なんと

美しいことでしょう。身長190cmかつスタイル抜群の上、

ブロンドの髪がカールしたショートヘアは、思わず息をのむほど

です。それが今はただの老女になっていて、その面影が一切

ないことに月日の経過はあまりに残酷であると思ってしまう。
さらにランニングコーチだったビルとは一切連絡が取れません。

その頃には、13歳のジェニファーに彼らが何をしたかが鮮明に

蘇ってきているのです。5人の弟妹を持ち、仕事が忙しい両親は、

ジェニファーの気持ちを汲み取ることはなく、彼らの価値観を

押し付け、自由を奪い、束縛する毎日でした。そんな生活から

解き放たれるのが馬術の訓練の日で、ある時から宿泊することに

なるのです。このシーンは本当に気持ちが悪い。ビルの言葉の

1つ1つが、何も知らない子供をだますのにうってつけのもの

ばかりなのです。そしてジェニファー自身も、

「自分は選ばれた」

「自分は特別だった」と信じ、
「被害者じゃない」と思い続けてきたのです。
それが記憶を塗り替えた一番の要因であり、自分自身はとっくに

気づいていたし、なぜ乗馬訓練をやめたのかも、その理由であった

ことを思い出します。

 

ジェニーの記憶

出典:IMDb

 

大学で教鞭をとり、ドキュメンタリー作家として成功をしている

彼女が、自分の身に起きていた事実から目を背けていたのです。
この映画は監督自身の体験を自ら映像化したもので、当事者の

告発という意味では大変の意義のあることだと思うし、勇気ある

行動だと思います。映画内のリアルなシーンは大人が代役を務めたと
クレジットが出るほどの行為を受けた事実は、一生心の傷として

残るはずなのに、それを美しくすり替えて「素敵な出来事」と思い

込ませていた。そうしなければ彼女は耐えられなかったんじゃない

でしょうか。そうするしかなかった彼女に対してミセスGやビルの

行為やそれらを黙認した人々は永遠に糾弾されるべきですね。

 

 

 

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