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    • 2023.01.12 Thursday
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    ロスト・ドーター

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      JUGEMテーマ:洋画

       

      ロスト・ドーター

      出典:IMDb

       

      「ロスト・ドーター」

      原題:E STATA LA MAHO DI DIO/The Lost Daughter

      監督:マギー・グレンホール

      原作:エレナ・フェッランテ

      2021年 ギリシャ=アメリカ映画 121分

      キャスト:オリヴィア・コールマン

           ジェシー・バックリー

           エド・ハリス

           ピーター・サースガード

       

      ギリシャの海辺の町に一人でバカンスに来た大学教授

      レダは、一族で訪れ大騒ぎを始める人々の中の1人の

      母娘から目が離せなくなる。娘の世話に手を焼き、

      自分の時間を欲している彼女の姿に、レダはかつての

      自分を重ね合わせてしまう。折しもその娘エレーナが

      姿を消し、一緒に捜索したレダが彼女を見つけるが、

      とっさにエレーナの持っていた人形を持ち帰ってしまう...。


      <お勧め星>☆☆☆半 レダの気持ちが理解できる人と

      できない人によって好みが分かれる映画。


      母性=46時中子供のそばにいること

      ではない


      冒頭は夜の海に腹あたりから血を流した女性が一人

      よろよろと歩いていく姿です。彼女は波打ち際で倒れて

      しまいます。このサスペンスタッチの始まり方は、映画

      全体に漂う雰囲気にとても似ていて、ヒロイン、レダの

      心にどこか歪みがあることを感じさせ続けます。

       

      ロスト・ドーター
      出典:IMDb

       

      レダ役は「ファーザー」(2020)で認知症が進んでいく

      実父に対し、ある時はイラついた、ある時は愛しそうな、

      ある時は悲し気な、さらに情けなさそうな表情を見せるという

      豊かな演技を見せてくれたオリヴィア・コールマン。

       

      ロスト・ドーター

      出典:IMDb

       

      そして時折入り込む回想シーンで、彼女の若い頃を演じるのが

      「クーリエ:最高機密の運び屋」(2020)で主人公の妻を

      演じたジェシー・バックリーです。彼女もレダのものすごく

      複雑な胸の内を好演しています。

       

      ロスト・ドーター
      出典:IMDb

       

      一方、せっかくゆっくりバカンスを楽しもうとしているのに、

      一族総出でビーチにやって来て大騒ぎを始める人々の中の若い

      母親ニーナ役は、やけに色っぽいと思ったら

      「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」(2015)
      のダコダ・ジョンソン。あの映画は3作目まで公開されたけれど、

      1作目でずっこけたものの2作目まで見ちゃったなあ。

      3作目はさすがにパスしました。
      レダは、性格が歪んでいるのがよくわかるのが、子連れ一家が

      「少しパラソルを移動してほしい」

      と言ってきた時に

      「わたしはここがいいの」

      と頑なに動かないところです。もちろん彼女の言い分もよく

      わかります。しかしそれに対し、一家の男性陣は酷い言葉を

      投げかけるわけですよ。この映画は女性監督が製作している

      だけあって、女性中心の視点で終始描かれています。逆に言うと

      男性の胸中がわかりづらいというか、浅くしか描かれていません。

      感じ悪い大家族の男性陣やレダが滞在しているロッジの管理人や

      ビーチのバイトのウィルの本音はこちらで推し量るしかないのです。
      明らかに幼い娘エレーナがまとわりつくことにイラついている

      若い母ニーナの姿を見ながら、レダはかつての自分を思い出す

      のです。

      何をしていてもすぐに割り込んでくる娘たち、ビアンカとマーサ。
      特に上のビアンカは癇癪持ちなのか強情なのか、自分の言い分が

      通るまで譲りません。それを認めて自分の時間を全て娘たちの

      成長の注ぐことが「母性」なのか?という問いかけをしている

      かのようです。
      さて現実に戻ると、ある日ビーチでニーナの娘エレーナが姿を

      消すのです。人々は総出でその行方を捜します。そしてレダが

      彼女を見つけ、ニーナに手渡すのです。この事件が起こるまでに、

      レダの周囲では不吉な出来事がいくつか起きています。
      1、部屋に置いてあった果物がどれも腐っている。
      2、深夜、枕元に瀕死の蝉が止まっている。
      3、ビーチから戻る途中、大きな松ぼっくりが落下し、レダの

      背中にあざを作る。
      そしてレダはエレーナを見つけた時に彼女が大事にしている人形を

      こっそり持ち去ってしまうのです。この行為の意味は何だったのか。
      レダの過去の映像を見ているうちに、彼女は若くして結婚し、

      娘二人をもうけたものの、自分の学問を究めたかったし、それが

      認められると、さらに上を目指したくなっていく姿がわかって

      きます。
      元夫ジョンは、彼女を認めつつ、子育ては彼女に任せる部分が

      多く、さらにレダの母はどうも学歴水準が低く、彼女はそれを

      反面教師にして自分を磨いてきたことが伺えるのです。子育てと

      自分の夢と夫との関係は、同時に起こった時に何を優先するか、

      人それぞれなのではないかと感じます。これが逆の立場で、

      ジョンが何よりも自分の夢を優先していたとしても、誰も非難

      しないし、レダはただ家庭を守って(この言葉は嫌い)良き母、

      良き妻でいれば、周囲から認められます。
      バカンスを楽しむレダには、バイトのウィルや管理人ライルと

      何となく何かが起きそうな雰囲気が漂ってきます。特にライル

      とは境遇も似ているし、一夜の出来事があってもおかしくない

      のに何も起きません。すべてが見ている側の予想を裏切って

      いきます。ライルはレダの部屋に置いてあった例の人形を

      見つけても、なぜ何も言わなかったのか。

      またレダもまるで彼に見せるかのようにそれを置きっぱなしに

      していたのはなぜか。疑問ばかり積み重なっていくのです。
      そして人形にはなんと賞金までつけられ、ビラが大量に貼られて

      います。この人形はもしかしたら、自分がかつて娘たちを夫の

      もとに残してきたことへの後悔の象徴なのかもしれません。

      だから人形を綺麗にし、自分のもののように扱いたかった。
      レダの回想シーンは全て頷けるものではないけれど、すべてが

      非難されるものでもありません。
      そしてラスト付近は冒頭に戻ります。あの夜が明けたシーンは

      現実か否か判断が付きませんが、レダがずっと心の奥に抱えて

      きた闇は、娘たちにとっては実はもう過ぎ去った一瞬の出来事に

      すぎないと実感するのです。それぞれの人生においての通過点に

      過ぎなかったと。
      レダが映画内で「わたしには母性がないの」と言うシーン

      があります。そもそも「母性」って誰が判断するのでしょう。
      オリヴィア・コールマンの演技がとても素晴らしかったです。

       

       

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      パーフェクト・バディ 最後の約束

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        JUGEMテーマ:韓国映画全般

         

        パーフェクト・バディ

        出典:IMDb

         

        「パーフェクト・バディ 最後の約束」

        原題:Man of Men

        監督:ヨンス

        2018年 韓国映画 117分

        キャスト:ソル・ギョルグ

             チョ・ジヌン

             ホ・ジュノ

             チン・ソンギュ

         

        チンピラのヨンギは暴力事件を起こし150時間の

        社会奉仕を命じられる。彼が行った先は事故で

        全身麻痺になった法律事務所長ジャンスが収容されて

        いる施設で、ヨンギは彼の世話をすることになる。
        余命2ヶ月のジャンスから高額の死亡保険金の受取人に

        なることを代わりに、ヨンギは彼のしたいことの手伝い

        を開始するのだった。しかしヨンギ自身、会社の金を

        つぎ込んだ株で大損してしまい...。


        <お勧め星>☆☆☆半 フランス映画「最強の二人」を

        思い出しますが、ラストシーンは秀逸です。


        煙草の煙でも何でもためずに吐け


        予告編やあらすじから「最強のふたり」(2011)を

        想像してしまうのですが、いやいやこの映画にはもっと

        違う要素が含まれているのです。設定は大金持ちで

        全身麻痺の男性を介護する貧しい男性までは似ています。

        しかしその大金持ちの(この映画では大手法律事務所経営)

        男性が全身麻痺になった原因、そしてチンピラ男が

        チンピラになった生い立ちが全く異なるものなのです。

         

        パーフェクト・バディ
        出典:youtube

         

        大手法律事務所を経営するハン・ジャンス役は

        「オアシス」(2002)「殺人者の記憶法」(2017)

        などもう数えきれないほどの名作に出演しているソル・ギョルグ。

        そしてチンピラ、官・ヨンギ役は「最後まで行く」(2014)

        「お嬢さん」(2016)などこれまたよく見かける

        チョ・ジヌンです。
        冒頭にある会社の会合が開かれており、正装した男性の中に

        チンピラ風情の男二人が入っていきます。この一人がヨンギで、

        なんと自分の後輩が会社の代表になるという話を聞き、ちょっと

        唖然茫然。
        一方ハン・ジャンスが代表の法律事務所では、体が不自由に

        なり、余命がわずかとなっているハンの代わりに弁護士が

        代表権を主張しているシーンが映ります。どっちも何やら

        問題が起きそうな予感です。
        そしてヨンギは自分の経営するカラオケボックスに他の組の

        奴らがいるということで、そこへ乱入し、フルボッコにして

        しまい、一気に投獄、執行猶予付きの判決を受けるのです。

        それには150時間の社会奉仕活動がセットです。
        実はヨンギには医大を目指す弟ジョンギがおり、兄とは

        違って賢い弟に「暴力」「株」はやめるように言われている

        ものの、一攫千金を狙うヨンギは聞く耳を持ちません。

        それについてはジャンスと親しくなった頃、互いの身の上を

        話すシーンがあり、その理由が韓国の貧困層の典型例のよう

        でかなり同情してしまうのです。貧困層からのし上がるのは

        真っ当な方法では限りなく難しいとも感じます。
        さて全然やる気のないヨンギはジャンスの入っている施設に

        奉仕活動に来るわけですが、全く彼に寄り添おうとしない

        どころか、礼儀のかけらもないのです。しかし散歩中に

        ジャンスに

        「自分の余命は2か月、病死なら12億ウォン、事故死なら

        27億ウォンの保険金が入り、その受取人にする」

        と聞いて、ヨンギは急にやる気になります。それも極めて露骨に

        やる気になるので、今まで周りが自分の機嫌取りばかりだった

        ジャンスはかなり新鮮に感じてしまうみたい。

        「やりたいことをして死にたい」

        というジャンスのしたいことリストを1つずつ叶えていきます。
        野球場でアウェイのチームを応援したり(ヨンギが必死で止める)、

        プールで泳ぐ姿を見せたり(のさばるチンピラをチンピラの

        ヨンギが追い払う)、意図せずして刺青を掘ったり

        (本物(チンペイ)という文字)、ド派手なペアルックを着たり、

        クラブにも障がい者差別を訴えて優先的に入って行って大騒ぎを

        したり。フェラーリの運転もどきは、ヨンギが運転するトラック

        の荷台でフェラーリに乗るジャンスです。

         

        パーフェクト・バディ
        出典:IMDb

         

        しかしヨンギには世話になっている会長がおり、そこの会社を

        任せられているものの、株に投資して大損を被ってしまうのです。

        これを後輩ギテに知られ、ヨンギは大ピンチに陥りいます。
        またジャンスには「死ぬ前に会うべき人」がいて、そこには

        彼が負った大けが家族を失った原因の自動車事故が絡んできます。

        その理由は彼の依頼人のためには黒いものも白くさせてしまう

        強引な弁護手法にありました。
        お互いの心の奥に隠していたつらい過去を吐露した時、二人は

        強く繋がるのです。釜山大橋をショッピングカートにジャンスを

        乗せ、車のクラクションなど気にせず、それを押し続けるヨンギの

        顔はジャンス同様に喜色満面です。
        ラストが本当に粋な映像で、ラスト前のカットはよくあるもの

        ですが、香典返しがヨットというのはジャンスは最後までかっこ

        よかったな。ラスト前のカットに映ったメルセデスベンツの

        クラッシクカーはメルセデスベンツ 190SL(1955-1963)

        でしょうか。

         

        パーフェクト・バディ

         

         

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        SKIN/スキン

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          JUGEMテーマ:洋画

           

          スキン

          出典:IMDb

           

          「SKIN/スキン」

          原題:Skin

          監督:ガイ・ナティブ

          2019年 アメリカ映画 118分 R18+

          キャスト:ジェイミー・ベル

               ダニエル・マクドナルド

               ビル・キャンプ

               ルイーザ・クラウズ

               ヴェラ・ファーミガ

           

          白人至上主義の過激派グループに所属するブライオンは、

          グループが参加したフェスティバルでジュリーという

          女性と出会う。それをきっかけにブライオンは、グループと

          距離を置こうと考え始めるが、リーダーのフレッドたちの

          執拗な嫌がらせが始まる。またグループを脱会するために

          その手助けをする団体に連絡を取ることはFBIに仲間の情報を

          与える必要があるのだった...。


          <お勧め星>☆☆☆半 白人至上主義に洗脳していく過程と

          そこからの転向の難しさがリアルに描かれています。


          怒りと暴力の連鎖を止める


          この映画と同時にNetflixで配信された2018年の

          ショートフィルム「SKIN」は本作の主人公ブライオンが脱会を

          決意するきっかけとなった女性ジュリーが出演しています。

          本作で「こいつの元夫はKKKに所属していた。そしてFBIに

          情報を売ったんだ」と語るシーンがあることから、前日談の

          ように思われます。20分ほどのフィルムですが、これは

          ジュリーがなぜ白人至上主義者から距離を起き始めたのかが

          よくわかる内容です。まさに「肌の色」だけで判断することの

          危険性を物語っています。

           

          スキン
          出典:IMDb

           

          さて冒頭に出てくるのは2009年、オハイオ州、コロンバス

          での白人至上主義者のデモの姿で、そのヘイトなシュプレ

          ヒコールを警官隊は黙認し、逆に対峙している黒人集団を威嚇

          するような行為を見せています。そして黒人少年が白人の

          集団に暴行されるのです。

           

          スキン
          出典:IMDb

           

          この映像の一方で、タトゥーだらけの白人男性がタトゥー除去の

          レーザー手術を受けている姿が映ります。レーザーで表面を

          焼いていくのはわずかな部位でも痛いし、特に顔はものすごく

          痛いらしい。あんなにタトゥーだらけだったら拷問に近いんじゃ

          ないかしら。入れるのは割と気軽にできるけれど、いざ完全に

          除去しようとするとかなりの苦痛を伴うはず。恐らくその痛みが、

          更生への決意に繋がるんだろうけれど。いや、更生しようとする

          決意が強いからこそ、その痛みに耐えられるんだろうな。
          ジェイミー・ベル演じるブライオン、通称バブズは、フレッド、

          シャーリーン率いる白人至上主義過激派グループの幹部なのです。

          映画の中盤にその集団のスカウトの方法が出てきます。身寄りの

          ないホームレスの白人少年に、寝床と食事を与えることを提案し、

          それに応じると疑似家族のように生活をしていくのです。

          そして少年をその思想にどっぷり浸からせます。ブライオンも

          全く同じ境遇であり、両親代わりがフレッドとシャーリーン

          だったのです。
          しかしブライオンは、白人至上主義グループが参加する

          フェスティバルで歌を歌ったジュリーと娘3人に対し、失礼な

          態度を示した参加者に怒るのです。この理由はちょっ理解

          しづらかったのですが、差別主義者でありつつ、最低限のマナー

          すら持ち合わせない人々への怒りだったのでしょうか。力を

          誇示するために暴力的な態度を取り続けることへの疲労の蓄積

          だったのでしょうか。

           

          スキン
          出典:IMDb

           

          そのジュリーはデジレー、シエラ、イギーという3人の娘を

          抱えつつ、定職がないようで、家賃を滞納しています。典型的な

          プアホワイトと言えます。そして例のフェスティバルで

          ブライオンに教えてもらった彼のタトゥー店へ向かうのです。

          そのまま二人は同居を開始し、娘3人とも一緒に過ごし始めると、

          ブライオンは「本当の家族」というものの存在を感じたらしい。

          とはいえ、差別主義を嫌うジュリーに対し、育ててもらった

          恩義からフレッドとの連絡も欠かすことはできません。
          そんな時フレッドの呼び出しで、彼は仲間とともに中東系移民が

          潜むモスクの焼き討ちに向かうのです。

          「こいつらはテロリストだ!」

          中東系=テロリストという解釈は、普通の教育を受けてなかった
          人々にはとてもわかりやすい構図で、アフガニスタンから米軍が

          撤退した後、再び政権を握ったタリバン=悪の根源=テロリスト

          と考えるのと同じです。その経緯をしっかり調べたら、簡単に

          解釈できるはずもないのです。分断の構図を作ることは強固な

          仲間意識を築けるけれど、それが間違っていることに気づけない、

          または危険な方向に向かわせる最も簡単な手法だと思っています。
          ブライオンは、ジュリーと結婚し、仲間との連絡を絶とうと

          しますが、そこにフレッドたちが押しかけ、始めはソフトな威嚇、

          そして次第に過激な銃撃行為を始めるのです。そしてブライオン

          自身の命と前の焼き討ちで生き残った中東系の人々の命を引き換え

          にしようとします。ヘイトの上限はないし、そもそも彼らは何に

          怒ってそこまで過激な暴力に走るのでしょう。

          本当にたまたま白人に生まれ、教育を受ける機会がなく、定職に

          就けず、貧しい暮らしをするしかないという劣等感が、有色人種

          へのヘイトに繋がっているのでしょうか。劣等感は何かを攻撃

          することで軽減されていくのも確かです。でもそれは根本的に
          何の解決にもなっていないことに気づけないんだろうな。

          結局ブライオンはジュリーに見捨てられ(何度も見捨てられて

          いるけれど今度は決定的)心の底から後悔し、自らを変えようと

          決意するわけです。これが例のタトゥー除去手術に繋がります。

          なんと600日以上かけての治療です。タトゥーを入れるのは

          ほんのわずかな時間でできるのに、それを除去するのがいかに

          苦痛と時間を伴うか克明に描かれています。
          怒りと暴力は白人、有色人種、どちらの間でも連鎖するし、

          それを止めるきっかけは本当に難しい。ただ権力がある一定方向に

          向いてしまった時、ターゲットになった人種(かつてはユダヤ人)

          を壊滅させていく思想がはびこる恐怖を感じてしまうのです。

           

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          プリジョネイロ

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            JUGEMテーマ:洋画

             

            プリジョネイロ

            出典:IMDb

             

            「プリジョネイロ」

            原題:7Prisioneiros

            監督:アレクサンドル・モラット

            2021年 ブラジル映画 94分

            キャスト:クリスチャン・マリェイロス

                 ロドリゴ・サントロ

             

            ブラジルの田舎町で母や姉妹と貧しく暮らす

            マテウスは、母に楽な暮らしをさせようと、同郷の

            仲間と共にサンパウロで新しい仕事に就くことになる。

            しかし職場のボス、ルカにIDを奪われ、彼らは劣悪な

            環境の元、金属の仕分けの重労働を課せられる。彼ら

            は人身売買組織によって金で買われた奴隷の身だった

            のだ。


            <お勧め星>☆☆☆半 貧困から抜け出すために何を

            犠牲にするのか胸が傷みます。


            自由の目的

             

             

             

            ネタバレしています


            ブラジルのカタンドゥバという田舎町で、重労働をして

            家族を養っている年老いた母と優しい姉妹に囲まれた

            マテウスが映ります。

             

            プリジョネイロ

            出典:IMDb

             

            彼はこれからサンパウロで住み込みの仕事に就くことになって

            いるのです。同じ町のサムエル、イザクなどと4人で迎えの

            トラックに乗り込んだマテウスは、外の景色が大都会に

            変わっていくのを物珍しそうに眺めます。

            ところが、彼らが到着すると、手配してくれたジルソンは

            仕事先のボス、ルカに金をもらうととっとと帰ってしまうの

            です。さらにルカにはIDを奪われ、鍵付きの牢屋のような

            場所に寝かされ、翌日から廃品の中の銅線出しや車の部品の

            仕分けなど重労働課せられます。

             

            プリジョネイロ

            出典:IMDb

             

            食事はわずかなもので、シャワーは許されず、賃金も未払いの

            まま。それについて問いただしたマテウスに対し、ルカは

            「家族に前金を払った。食費、下宿代、生活費を抜くと借金

            だけが残っている。それを返すために必死に働け」と言われる

            のです。つまり彼らは騙され人身売買組織によって奴隷のような

            扱いを受けることを意図せずに選択してしまったわけです。

             

            プリジョネイロ
            出典:IMDb

             

            ここから脱走しよう。しかしそれはルカの銃によって脅され、

            さらに次の計画で逃亡を図ったものの、逃げ出せた一人も何と

            現地警察によって拘束されて戻ってきます。つまり警察までも

            仲間であることがわかります。この警察は本当の警官なのか

            地域警察なのかわかりかねますが、軍事政権が長く続いた

            ブラジルでは犯罪の発生率がかなり高く、警察に対する国民の

            信頼も薄く、地域警察が治安対策を担っていると言います。

            その地域警察が完全にクリーンなものであるかどうかは、

            はなはだ疑問なのです。
            さらにルカは「何か問題を起こせば、故郷の家族に危険が迫る」

            とまで脅すのです。逃亡計画でヘマをした仲間に対しイザクが

            切りつけると、その埋め合わせにマテウス達3人が残業を

            しなければなりません。
            もはや蟻地獄ののような状況で、イザクの言う通り、暴力的に

            ここから抜け出すのか、マテウスのいう通り、交渉でここから

            抜け出すのか、二者択一しか方法はないように思えます。

            サムエルには母と結婚したばかりのジュリアがいて、彼は二人の

            ために金を稼いで故郷に戻りたい一心でマテウスに賛成します。
            拘束されている4人のギラギラした瞳に疲労と絶望が漂い、

            汗まみれでシャワーすら浴びることができない体からは体臭が

            臭ってくるかのように映されています。
            ところがマテウスはある時、ルカに仕事量を増やす提案をし、

            さらに一人だけ仕事が早いことから、彼の信頼を少しずつ得て

            いくのです。しかしそれは他の3人との距離が空いてしまうこと

            を意味します。
            またルカに連れて行かれたある倉庫には、南米の国から

            マテウス達同様に騙されて連れてこられた男たちが拘束されて

            います。彼らのような貧しい人々を言葉巧みに誘い、奴隷労働

            させるシステムができあがっているわけです。これは東南アジア

            で漁船に乗り込まされる貧しい人々の存在と同じで、使えるだけ

            使い、反抗したり使えなくなったら処分をし、新しい労働力を

            補充するという極めて残酷なものと同じです。
            さて、ルカに気に入られたマテウスは、仲間を裏切ることは

            できないものの、ルカの境遇が結局はマテウスと同じで、

            親兄弟に楽をさせるために、つまり金のために汚れた仕事を

            してきたことがわかります。
            「自由の目的はなんだ?」

            とルカに尋ねられた時にマテウスは、このまま自由の身に

            なったところで、今までの貧困から抜け出すことは不可能だと

            いう現実を知ります。しかしそれは同じ境遇である仲間を

            切り捨てることを意味し、彼は悩むのです。悩みつつ、ルカの

            母親たちの笑顔を見ると、腰を傷めているのに重労働する

            しかない自分の母親を重ねてしまいます。

            いくらでもルカを裏切るチャンスはありました。ただ仲間たちと

            ここから抜け出せたところで何も得るものはないのです。
            ラスト付近でルカは議員候補の豪邸にマテウスと向います。

            そこで議員候補ビアンキはルカを見出した人物で、彼も同じ

            境遇だったとわかります。マテウスは結局生き残ることを

            選択するんです。
            最後に仕事場を出る時、仲間たちが彼に向けた怒り、憎しみに

            満ちた眼差しを、彼は車の中で外の景色を見ながら深く考ます。
            そうそうサンパウロの街中に張り巡らされている電線は、

            自分たちが仕分けしたあの銅線であるけれど、誰もそのことに

            気づかないのは、マテウスのような境遇の人々をきらびやかな

            ビル街を歩く人たちは絶対に気づくことはないし、知ろうとも

            しないだろうと感じました。あんなにたくさん電線が張り巡らされ

            明るい光をともしているのに。

             

             

             

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            死ぬほどあなたを愛してる

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              JUGEMテーマ:洋画

               

              死ぬほどあなたを愛してる

              出典:IMDb

               

              「死ぬほどあなたを愛してる」

              原題:Love You to Death

              2019年 アメリカ 87分

              キャスト:マーシャ・ゲイ・ハーデン

                   エミリー・スケッグス

                   ケイト・ドノヴァン

               

              17歳のエズメは小児白血病を患い、母カミールの献身的な

              介護を受けて日々の生活を送っている。向かいのデニースの

              誘いでゲーム仲間が集うイベントに出かけたエズメはそこで

              母とはぐれ、何者かによって襲われてしまう。その後も家に

              何者かが侵入する出来事が起こり、カミールは警察に相談し

              銃をも購入するのだったが..。


              <お勧め星>☆☆☆ 前半と後半のストーリーが全く立場

              から描かれており、誰が病気だったのかを知ると愕然と

              します。


              お互いがすべて


              冒頭、2013年、11月、ミズーリ州で駆け付けた警官隊が

              1軒の家に入り込むと、家具や調度品、車いすが倒れ、奥に

              血まみれの腕が見えます。ここで何かが起きたのです。
              そして遡ることその年の8月、エズメは17歳の誕生日を

              祝ってもらいます。その場にいるのは向かいの夫妻とカミールの

              友人でしょうか。エズメは小児白血病のため、髪の毛は抜け落ち、

              自力歩行もできないため車椅子での生活を送っているのです。

              カミールは娘第一主義で、四六時中彼女のそばを離れませんし、

              彼女をひとりで外出させることもありません。気になるのは、

              カミールがやけに怠惰な体型をしており、何も仕事をせず、

              ただエズメの世話を焼いているだけでどうやって生活しているか

              ということです。
              また主治医であるホリーが退職し、違うドクターになった途端、

              カロリンは娘への接触を極端に嫌い始めるのです。それは

              アフリカ系の男性だからかと思っていましたが、後半にその

              理由が分かります。
              ゲーム仲間の集うイベントで突然姿を消し、何者かに襲われて?

              いたエズメを見つけ、カロリンは、自分の腕時計を銃を購入します。

              彼女が言うように元夫トラヴィスが勝手に娘に近づこうとして

              いるのか、また体が不自由な娘を弄ぼうとする誰かが存在するのか、

              それはエズメから見た同じ日々のことから紐解けてくるのです。
              エズメは本名をカロリンというものの、カミールの一存で「エズメ」

              と呼ばせ、実は...。

               

               


              ネタバレ

               


              実はエズメは全く白血病ではなく、自由に歩き回れるし、薬も不要

              なのです。ところがカミールの指示で、病気をアピールし、公的な

              扶助や支援を受け、またカミール自身への注目を集めているのです。
              幼かったエズメも成長すると反抗するようになるし、また医師も

              治療が不要と診断します。すると二人は住んでいたルイジアナ州

              からミズーリ州に引っ越すわけです。ふくよかになっている胸を

              さらしのようなもので締め上げ、幼く見えるような服装をさせ、

              伊達メガネをかけさせ、車いすで街を移動すれば、どこでも誰か

              手を差し伸べます。その好意を利用し、二人ははほぼ快適に生活を

              送れるわけです。
              しかし誕生日プレゼントとしてもらったコンピュータによって

              facebookをし、ゲームを始めると、エズメは一気にその世界を知って

              しまいます。父からのメールも見てしまう。これってカミールが
              口にしていることと全く異なる内容じゃないかとエズメは気づく

              のです。

              またゲームで知り合ったスコットという男性と例のイベントで

              待ち合わせ、それがバレると彼女は母にぶたれ、車いすに拘束
              されてしまいます。

              なんか「ミザリー」っぽい。

              カミールがエズメに何かを言い聞かせる時の表情が本当に怖いの

              です。

              「お互いがすべてよ」

              と何度も言い、それで洗脳していたとしてもエズメの成長には

              勝てません。そして遂に事件が起こるのです。
              エズメが本当にスコットを好きだったのかどうかわかりません。

              父からの学費も何に消えたのかすべてカミールが管理し、学校に

              さえ行かせてもらえなかったエズメは実は21歳だとわかるのが
              警察に捕まってからというところがますます怖い。あのままで

              いたら、彼女は永遠に未成年のままだったのかもしれません。
              それでも母と離れた後で「母が恋しい」と思わず漏らすエズメは、

              やはりカミールを愛していたのでしょう。またカミールもエズメを

              愛していたけれど、それはあまりにゆがんだ愛情に基づく物

              だったと気づかされます。
              代理ミュンヒハウゼン症候群による児童虐待はアメリカで数多く

              存在するという字幕が出ます。「注目、支援」を受けたいという

              歪んだ欲望が一人の子供の人生を台無しにしていることに

              気づかない大人がたくさんいるということでしょう。またそれを

              使ってフードスタンプや住居の提供を受けるという甘い汁を

              吸いたい気持ちもあるのかもしれません。
              「死ぬほどあなたを愛してる」という原題、邦題がまさにぴったりの

              映画でした。

               

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              ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実

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                JUGEMテーマ:洋画

                 

                ラスト・フル・メジャー

                出典:youtube

                 

                「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」

                原題:The Last Full Measure

                監督:トッド・ロビンソン

                2019年 アメリカ映画 116分

                キャスト:セバスチャン・スタン

                     サミュエル・L・ジャクソン

                     ライナス・ローチ

                     アリソン・スドル

                     エド・ハリス

                     ピーター・フォンダ

                 

                ベトナム戦争が泥沼化していた1966年4月、

                ベトコンに囲まれ危機的状況に陥っていたアメリカ軍

                歩兵部隊に、ヘリから一等空兵ピッツェンバーガーが

                降下し、負傷兵の救助に当たり始める。何十人もの

                兵士を救った上で戦死した彼に名誉勲章を与えてほしい

                とタリー元曹長は国防総省を訪れるが、その申請は

                32年間却下され続けていた。空軍省のホフマンは

                とりあえず証言集めを開始するが...。


                <お勧め星>☆☆☆ すごくモヤモヤした内容。

                アメリカ人なら感動するのかなあ。


                戦争の傷跡はどちらにも残る


                ベトナム戦争を描いた映画は幾つもあります。わたしが

                見ているものだけでも「ディア・ハンター」(1978)

                「地獄の黙示録」(1979)

                「ランボー」(1984)

                「プラトーン」(1986)
                「ハンバーガー・ヒル」(1987)

                などがあげられ、最近では

                「ザ・ファイブ・ブラッズ」(2020)

                が印象に残る内容でした。
                今作はベトナム戦争帰還兵が、戦地で自分の立場も顧みず

                負傷兵の治療、救助にあたり、自ら命を落とした

                ピッツェンバーガーという一等空兵に「名誉勲章」を与えて

                ほしいと奔走する内容です。

                 

                ラスト・フル・メジャー
                出典:IMDb

                 

                ラスト・フル・メジャー

                出典:IMDb

                 

                それは本当によくあるパターンで、戦争で過酷な状況から

                PTSDに苦しむ帰還兵の姿が切れ切れに映され、一方で

                ベトナム戦争時には生まれていない国防省に勤務する

                ハフマンという役人の姿が、現在と戦時中の状況が

                バラバラに目の前に登場し、それがラストにはみんなが

                拍手して願いを叶えられた、万歳!なんです。
                俳優陣は国防総省の役人ハフマン役がセバスチャン・スタン、

                帰還兵はサミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダ、

                ウィリアム・ハートなど豪華な顔ぶれで、肝心の

                ピッツェンバーガーの父親役にはクリストファー・プラマーが

                起用されています。

                 

                ラスト・フル・メジャー
                出典:IMDb

                 

                ピッツェンバーガーがなぜ名誉勲章をもらえなかったのかは、

                その作戦自体に理由があったようですが、そもそも下士官が

                その勲章をもらえるのはほんの一握りであり、

                ピッツェンバーガーがいかに戦地で同胞のために働いた

                としても、そこまで仲間が切望する理由が今一つわかりません。

                さらに、戦争と言うのはそもそも敵味方に分かれ、人を

                殺し合う場であって、そこで与えられた任務は味方のために

                動くことです。「ハクソー・リッジ」(2016)の主役は

                「良心的志願兵」でした。武器を持たず戦争に志願し、

                そして戦地で同胞の命を救えば、それは称えられることなの

                でしょうか。
                戦争には相手があります。ピッツェンバーガーが作戦の犠牲と

                なって命を落としかけている同胞を、本来なら上空にいれば

                いいのに、地上に降りて彼らの命を救ったとしても、その間

                に敵(ベトコン)は数多く命を落としています。勲章を願う

                帰還兵たちは、自分の心の傷をピッツェンバーガーを称える

                ことで癒そうとしていたのではないのでしょうか。

                 

                ラスト・フル・メジャー
                出典:youtube

                 

                ハフマンが序盤、帰還兵たちと接する時に苦労しますが、

                それも深くは描かれません。そもそも「戦争に行かせた責任」

                を追及するべきではなかったのかと思います。これだけの

                キャストを使ってこの程度の内容だったので、涙は全く

                こぼれませんでした。

                 

                 

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                戦場のメロディ

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                  JUGEMテーマ:韓国映画全般

                   

                  戦場のメロディ

                  出典:youtube

                   

                  「戦場のメロディ」

                  原題:Thinking of My Older Brother

                  監督:イ・ハン

                  2016年 韓国映画 124分

                  キャスト:イム・シウン

                       コ・アソン

                       パク・スヨン

                       イ・ヒジュン

                       タン・ジュンサン

                   

                  朝鮮戦争中の1952年、サンヨル少尉は戦争孤児の

                  世話を任せられる。彼は孤児院のジュミ院長とともに

                  合唱団結成を考えるが、国防軍と人民軍に翻弄された

                  過去を持つドング、スニ兄妹はチンピラの手下として

                  働いており、合唱団入隊後も彼の指図に従っていた...。


                  <お勧め星>☆☆☆半 とてもいい映画と思うのですが、

                  泣きのシーンの連続はかえって興ざめしてしまいます。


                  大切なものは星になった


                  1945年8月15日に終戦を迎えた朝鮮半島は、北部を

                  攻略していたソ連と日本統治を受け継いだアメリカの南部

                  における軍政とで分断が進み、1950年6月25日

                  朝鮮戦争が勃発します。そして1951年、8月、戦地で

                  北側(人民軍)の猛攻を受けて部隊が全滅するサンヨル

                  中隊長のシーンに変わります。戦闘員は北も南も少年まで

                  が含まれており、まさに総動員での戦いだったことが
                  伺われるのです。

                  朝鮮戦争を描いた映画の中で特に印象に残っているのは

                  「トンマッコルへようこそ」(2005)

                  「高地線」(2011)

                  「スウィング・キッズ」(2018)でどれもこの戦争の

                  不条理さを物語るものです。元々一つの国であり同じ民族で

                  あった人々が、戦争の結果、大国の思惑によって分断され、

                  それぞれが憎しみ合い、けん制し合うという姿を見ると、

                  力のない国は駒のように扱われるのだと実感します。
                  そして北と南の境界線付近の村では、イデオロギー云々など

                  理解するはずもなく、国防軍が来ればその旗を振り、人民軍

                  が来ればまた違う旗を振るというような光景が見られたのです。

                  その中でドングとスニ兄妹の父親は、スニが歌った人民軍の

                  歌のせいで「アカ」と認定され、さらに同じ村の青年を

                  人民軍に売ったことで(密告制度があったのかなあ)村人

                  から集団リンチを受けて命を落としてしまいます。彼らは

                  既に母親を亡くしているので身寄りのない子供かつその村には

                  いられなくなってしまったのです。

                  彼らのように直接親が戦死したのではない者も含めて当時

                  戦争孤児は10万人いたと言われ、釜山には兵舎のそばに

                  孤児院が作られていました。そこに赴任したのが最初に

                  戦っていたサンヨルで、同じ隊で唯一生き残ったチョ上士

                  にも再会できます。孤児院の院長は海外の大学まで出たのに、

                  敢えて子供たちに奉仕したいと願い出たちょっと可愛い

                  パク・ジュミ。

                  何か起こりそう。いえ起こりません。
                  一口に孤児と言っても孤児院に収容されている者たちばかり

                  ではなく、釜山のような都会には、チンピラのような男の

                  指示で盗みを働いたり、売れない花を売ったりする孤児も

                  いたのです。そのチンピラは戦争で片手を無くしたため、

                  軍の幹部も強いことが言えず、悪事を働いても見てみぬふり

                  です。その中にドングとスニがいるんですね。

                  ここに至るまでどのような過酷な状況だったのか想像でき

                  ないほど薄汚れています。
                  さて音楽に長けていたスンヨルは孤児たちで合唱団を結成

                  しようと考えます。それには例のチンピラの手足となって

                  いる孤児たちも含めたいのです。ところが孤児院にいる

                  チュンシクはドング、スニの父に兄を売られた経験を持ち、

                  「あいつらはアカだ」

                  と言うのです。このチュンシクは「愛の不時着」

                  「ムーブ・トゥ・ヘブン」のタン・ジュンサンですよ。

                  わお!あの人子役から演技が秀逸だったのね。
                  サンヨルはこの戦争で戦う前に妹を殺された身の上、ジェミは

                  本当は親に会いたくてしかたがない、また孤児院の子供の中

                  には、サンヨルやジェミを親と慕う者もいます。みなが

                  決して恵まれた身の上ではないのです。したがって喧嘩を

                  するドングとチュンシクに「歌で対決」をさせ、

                  「すべて大人がしたことで、お前たちには無関係だ」

                  と諭します。スニが歌を歌ったのも、何軍なのか理解せず、
                  父を助けたくて歌っただけなのです。(それが原因で父は

                  リンチされたわけですが)後半は合唱団の活動も上手くいき、

                  チンピラもサンヨルの人柄を知って心を入れ替え、何も

                  かも順調かと思ったら落とし穴がありました。
                  もちろん戦地への慰問ですから何があっても仕方がないの

                  です。ただそのシーンが長すぎて、へそ曲がりなので涙が

                  引っ込んでしまいました。
                  1953年、7月、遂に休戦協定が結ばれます。そして

                  「ソルリン合唱団」の明るい歌声が人々の心を癒していく

                  シーンがラストです。その歌声はスニの言う通り、空の星

                  となって彼らを常に見ていてくれる亡き人々にもとどいた

                  ことでしょうね。

                  う〜ん、「スウィング・キッズ」のラストには叶わないな。

                   

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                  THE CAVE ザ・ケイブ サッカー少年救出までの18日間

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                    JUGEMテーマ:洋画

                     

                    the cave

                    出典:IMDb

                     

                    「THE CAVE ザ・ケイブ サッカー少年救出

                    までの18日間」

                    原題:The Cave

                    監督:トム・ウィーラー

                    2019年 タイ映画 104分

                    キャスト:ジム・ウォーニー

                         ロン・スムーレンバーグ

                         ケリー・B・ジョーンズ

                     

                    2018年6月23日、タイのタムルアン洞窟で地元の

                    サッカーチームの少年とコーチ13人が、雷雨による

                    浸水により遭難してしまう。事故を知ったタイ当局は

                    自国の軍に加え、米軍、イギリス軍、中国NGOなどに

                    よる救助作戦が練られたが、活動は困難を極める。雨期前

                    に彼らを救出するため世界中から集まった洞窟ダイバーが

                    決死の活動を開始するが...。


                    <お勧め星>☆☆☆半 救出作業の複雑さが多く描かれ

                    洞窟内の様子はあまり見られませんが、決死の作業だった

                    ことが伝わってきます。


                    僧侶たちの祈り


                    2018年に実際に起きたこの事故は日本国内でも大きく

                    報道されたので記憶に新しいです。そして少年たちがどこに

                    いるのか、生存しているのか、生存が確認できた後、

                    どのような方法で救出するのか、毎日気がかりでした。

                    6月23日に遭難してから、彼らの生存が確認できたのが

                    7月2日です。その際に映された少年たちの動画では、

                    毛布にくるまりながらも笑ってピースをしており、本当に

                    良かったと思ったのを覚えています。
                    さて、この映画はこの事故を描いているのですが、少年たちの

                    動向よりも救出する側の動きが中心で、鉱山で起きた大規模な

                    落盤事故からの救出劇「チリ33人 希望の軌跡」(2015)

                    とはかなり異なっています。
                    冒頭サッカーを楽しむ少年たちが、練習終了とともにコーチの

                    掛け声で「洞窟に行こう!」となります。なぜ洞窟に行くこと

                    になったのかはわかりません。メンバーの誕生日祝いをする

                    ためだったという報道も本人たちからは否定されているよう

                    です。そして洞窟に入ると、外の天気は一気に悪くなり雷雨と

                    なってしまうのです。このタムルアン洞窟のある国立公園の

                    レンジャー部隊が見回りに行くと洞窟の入り口に置きっぱなし

                    なっている何台もの自転車と何足もの運動靴を見つけ、この

                    洞窟の中に少年たちが入り込み、豪雨による増水で出られなく

                    なっていることがわかります。
                    大量の雨水が容赦なく洞窟内に入り込み、中では少年たちが

                    コーチの指示に従い、高い場所へと移動していきます。
                    一方洞窟の外の村、ノーンオーンでは協力者を募り、さらに

                    タイ国軍はアメリカ軍にも支援を要請し、高名な僧侶ブンチュム氏

                    が少年たちを救う祈りをするために訪れます。
                    3日目、洞窟内では「のどが渇いた」とコーチに訴える少年に

                    対し、コーチは岩を伝わって落ちてくる地下水を飲むように

                    言うのです。彼らは食べ物や飲み物は持っていなかっただろうし、

                    持っていたとしても洞窟内を移動した際に、余分な荷物は捨てて

                    きたことと考えられます。ではどうやって飢えをしのいだの

                    でしょうか。ここはわかりません。
                    そして洞窟内の水を抜くためポンプ製造会社に連絡がいくのです。

                    しかしこの会社の人が現地に入ろうにも許可がないと言われます。

                    また洞窟ダイヴ専門家である中国のNGOも現地で参加しようと
                    しますが、タイ軍の管轄かつ外国人は潜れないと拒否されるの

                    です。

                    これが一気に外国人受け入れに変わっていく過程が良く理解

                    できなかったけれど、終盤には彼らが大活躍します。もちろん

                    ポンプ会社の人が持ち込んだ大量のポンプの有効活用されるし、

                    最後には英雄扱いです。
                    また、ポンプによって大量に排出された地下水で地元の貧しい

                    農家の稲作はすべてダメになりますが、それでも人々は補償金を

                    受け取らず、それを少年たちの救出作業に使ってほしいと言います。
                    これは事実だったそうで、子供たちの命を救うために、外国と

                    地元民が一致団結して行動した結果が無事生還できることを

                    導いたのだと感じるのです。

                     

                    the cave
                    出典:IMDb

                     

                    とはいえ実際の救出作業はかなり過酷であり、元タイ海兵隊員が

                    1名命を落とします。そして世界中の洞窟ダイバーがタイに

                    集結する中、イギリスのジム・ウォーニーも現地入りするのです。

                    何人か実際の人が演じているうちの1人で、それだからこそ、

                    泥水の中の呼吸やマスクを取った時に疲れた姿などはまさに

                    リアルそのものです。

                     

                    the cave
                    出典:IMDb

                     

                    洞窟の中にできているいくつもの空間に機材を運び、そこから

                    連携して一番奥にいる少年たちの救出作業を行うのですが、

                    その方法が

                    「少年たちに陽圧マスクをつけさせ、鎮静剤を打って移動させる」
                    というものでした。確か少年たちの中に数人が泳げなったという

                    話も聞いています。またチリの落盤事故救出のように上から穴を

                    掘ろうにも、位置の特定が難しく、さらに掘削が困難だったとの

                    こと。
                    2018年、7月18日、作戦が決行され、一人ずつ少年が

                    助け出され、救急車に乗せられた後、ヘリで病院へと搬送されて

                    いきます。結構淡々とした映画なのですが、この辺りで少し目頭が

                    熱くなりました。ドキュメンタリーに近いからこそ感動したのだと

                    思います。余分な人間模様を入れこまず、事故そのものと救出劇

                    を描くことに徹したことでとても心を打つ内容になっています。
                    救出後少年11人とコーチは仏教の儀式に従って「功徳を積もう」

                    と修行していたそうです。(1名はキリスト教徒のため参加せず)

                    (AFP BB Newsより)
                    一番心に残ったのは、地下水で一面水浸しになった水田を見て

                    「稲は来年もできる。しかし子供の命は1つ」と言った村人の

                    言葉です。

                     

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                    エイブのキッチンストーリー

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                      JUGEMテーマ:洋画

                       

                      エイブのキッチンストーリー

                      出典:IMDb

                       

                      「エイブのキッチンストーリー」

                      原題:Abe

                      監督:フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ

                      2019年 アメリカ=ブラジル映画 85分 PG12

                      キャスト:ダグマーラ・ドミンスク

                           マーク・マーゴリス

                           ノア・シュナップ

                           アリアン・モーイエド

                       

                      ニューヨーク、ブルックリンに住む12歳のエイブは、

                      パレスチナ系移民のの父とイスラエル系移民のの母を

                      持つ少年である。彼は料理が大好きで、自ら作った

                      ものをインスタグラムに投稿するのが唯一の楽しみで

                      ある。日ごろから民族的な問題で仲の悪い父方母方の

                      家族のために、彼は両方をフュージョンさせた料理を

                      作ろうと、ネットで知ったブラジル料理人チコの店に

                      向かうが..。


                      <お勧め星>☆☆☆☆ エイブの一途な思いをこめた

                      料理で家族間の対立を解消していく姿が気持ちよく

                      描かれています。


                      料理は国境を超える


                      パレスチナとイスラエルの紛争が再び激化し、休戦協定

                      が結ばれたとはいえ、いまだ砲弾の飛び交うこの時期に、

                      とてもタイムリーな映画を見ました。
                      ブルックリンに住むエイブは「アブラハムと呼ぶ人も

                      いれば、イブラヒムと呼ぶ人もいるし、アヴィと呼ぶ人

                      もいる。でも僕はエイブと呼んでほしい」と語る通り、

                      パレスチナ系移民の父とイスラエル系移民の母との間に

                      生まれた子供なのです。

                       

                      エイブのキッチンストーリー

                      出典:IMDb

                       

                      友人はネット上にしかおらず、食べ物大好き、料理大好きの

                      エイブは、自分で料理をしてはそれを写真に撮り、

                      インスタグラムにあげて、そこでの反応を見るのがたった

                      一つの楽しみなのです。

                       

                      エイブのキッチンストーリー
                      出典:IMDb

                       

                      冒頭に彼の誕生日パーティーが映りますが、そこに集まった

                      父方(パレスチナ)の家族と母方(イスラエル)の家族が、

                      チクチクと嫌味を言い合い、しまいには口げんかに発展して

                      いく様子は、もう日常茶飯事のことなのでしょう。同じ料理を

                      作っても、その材料が「ひよこ豆」であるか「そら豆」で

                      あるかでさえもめる原因になるのです。
                      しかしエイブは実はどちらも選びたい、つまりどちらも好き

                      なのです。だからユダヤ教の成人式にも出たいし、イスラム教の

                      ラマダンも体験したい。どっちもじゃダメですか?

                       

                      エイブのキッチンストーリー
                      出典:IMDb

                       

                      両親までも民族間の問題から喧嘩になり、エイブは一人で家を

                      出ます。彼は国籍にとらわれない料理を検索し、ブラジル料理

                      の屋台を出しているチコという人の元に向かうのです。そこ

                      では中南米やアフリカの人も働いており、「子供など働かせると

                      強制送還になる」などと囁くところを聞くと、もしかしたら

                      不法滞在者もいるのかもしれません。しかしエイブはそんなこと

                      に気づくこともなく、自分の料理をチコに見せるのですが、

                      「これはフュージョンじゃなく、コンフュージョンだな」と

                      言われる始末。それでも手伝いに来ていいと言われ、両親が

                      勝手に決めた料理サマーキャンプをさぼって、そちらに行く

                      のです。

                      この料理サマーキャンプが、「包丁は使ってはいけない」

                      「きれいな色に飾りましょう」などとエイブにしてみたら、

                      まるでお遊びに過ぎないものです。こんなことを僕は

                      したいんじゃないんだ。
                      しかし来る日も来る日もチコの元では、汚れ物洗いとゴミ出しの

                      日々です。ここで投げ出すかと思ったのですが、エイブの料理

                      好きは本物で、彼は心の底から料理をすることが好きだし、

                      この料理を使って家族を和解させようと考えているのがわかって

                      きます。
                      さて、エイブは時々、父方や母方の祖父母の家に遊びに

                      行きます。そこで母方の祖父に「セム語」というものの存在を

                      聞かされるのです。ずっと敵対関係にあると思われている

                      ユダヤ人とアラブ人も元々はセム族であったという事実を

                      知ると、エイブは「味を合わせて楽しい味を作る」という意欲に

                      ますます燃え始めます。
                      とはいえ、ユダヤ教の成人式に出席して、気分がすぐれない

                      のは「ラマダン中だから」と言ってしまうので周りの人々を

                      驚かせます。彼にしてみたら、どちらも自分のルーツであり、

                      どちらかを選択する必要性を感じなかったのでしょう。
                      料理サマーキャンプを装って通うチコのもとで、エイブは

                      この間までキャッサバの皮むきに励んでいたのに、これからは

                      まかない料理を任せてくれると言われます。これにはエイブは

                      大喜びで、パレスチナ人の祖母が下味をつけたラム肉を使って

                      タコスを作ります。これがまた大好評なのです。

                      そして遂にチコの店のエプロンをもらいます。ルンルンルンと

                      料理サマーキャンプの場所まで向かうとそこには両親がおり、

                      今までここに通っていなかったこと、チコの店で仕事をして

                      いたことなどがバレ、スマホとipadを没収されてしまいます。

                      この両親はエイブについて何もわかっていないし、わかろう

                      ともしない、それが一人息子への愛情だとしても、一方的な

                      ものでしかないと感じます。
                      さらにこの件で結局夫婦の仲も悪化するのです。どうやら

                      別居を決めた両親に対し、エイブは「なぜ?」と尋ねますが、

                      母からは「少し離れてみるだけよ」との答えです。

                      それを聞いたエイブは家族を再び結びつける作戦として

                      「エイブのセム感謝祭」

                      というパーティーを企画します。
                      それはパレスチナ料理とユダヤ料理、アラブ料理と中東料理

                      などすべてをフュージョンさせたもので、これをみんなで

                      食べて仲良くなろうと考えたわけです。
                      しかし集まった祖父母たちは、いつも通りチクチクと嫌味の

                      言い合いにあり、パレスチナとイスラエルの争いが食卓を

                      挟んで始まり、サマーキャンプをさぼってチコの店に行って

                      いたことが親のしつけによるものだの、最終的には民族の

                      対立論争が起きてしまうのです。もうエイブの存在はみんな

                      すっかり忘れています。エイブは解凍していた七面鳥を

                      オーブンに入れたまま、家を飛び出していきます。エイブが

                      いないことに気づいたのは、その七面鳥の焦げる臭いがした

                      からで、そこから全員がエイブを捜し始めます。エイブが

                      一人で一生懸命作った料理は、誰も手を付けないまま、

                      テーブルに乗っていて、それを口にし始めるのは、みんなが

                      興奮から覚めて、お互いをいたわり始めた時なのです。互いを

                      責め合っているうちは、どこにも着地点を見つけられない

                      けれど、一旦落ち着いて考えると、何が大事なのかわかって

                      くるはず。
                      そしてエイブが戻って来た時流し台にあふれるお皿や器は

                      どれも汚れているけれど、中身はすべてみんなのお腹に入って

                      います。人は美しくなる前に汚くなるのかも、と言うエイブの

                      言葉が胸に響きます。汚れたものは洗い流せば綺麗になるの

                      です。
                      ラストはとても気分がよく、短い映画ながら、争いごとを

                      解決するのは結構単純なことなんじゃないのかと希望を

                      持たせるものでした。

                       

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                      漂うがごとく

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                        JUGEMテーマ:洋画

                         

                        漂うがごとく

                        出典:IMDb

                         

                        「漂うがごとく」

                        原題:Choi voi/Adrift

                        監督:ブイ・タク・チュエン

                        2009年 ベトナム映画 106分

                        キャスト:ドー・ハイ・イエン

                             リン・ダン・ファン

                             ジョニー・グエン

                             グエン・ズイ・コア

                         

                        ベトナム、ハノイ。通訳兼ガイドとして働く

                        ズエンは、知り合って3か月のタクシー運転手

                        ハイと結婚する。そして体調がすぐれず結婚式に

                        参加できなかった友人カムの元を訪れ、トーと

                        いう男性の元に手紙を届けるように頼まれる。

                        そこでトーに無理やり押し倒されたズエンは、

                        親離れできないハイとは全く違う彼の魅力の虜に

                        なってしまう...。


                        <お勧め星>☆☆☆ じめじめした空気の中で題名

                        通り漂う4人の男女の姿が描かれています。


                        瞳がさまよい、空っぽな感じ


                        結婚祝いのパーティーが開かれている賑やかな店で、

                        そこの女店主とお運びさんをしている娘の会話が耳に

                        入ります。
                        「絶対に酔いつぶれて吐くね」
                        「介抱はわたしがする。結婚したからといっても

                        わたしの息子だからね」

                         

                        漂うがごとく
                        出典:IMDb

                         

                        タクシー運転手をしているハイは年上のズエンと結婚した

                        ばかりで、2階では花婿を待つウエディングドレス姿の彼女

                        がいるのです。そっと背中のファスナーを外し...。しかし

                        そこにやって来たのは酔いつぶれたハイを担いでいる男たち

                        とその世話をしようとするハイの母親で、ズエンの存在は

                        全く無視されています。この状況からわかるようにハイは、

                        母親に溺愛されており、彼自身もまだ親離れできていない

                        模様。

                         

                        漂うがごとく
                        出典:IMDb

                         

                        そしてシーンは変わり、ズエンは病気のため式に参列

                        できなかった友人カムの家を訪れます。小説家らしいカムは

                        まだ体調がすぐれず、母親から「香草蒸し風呂」を準備し

                        てもらい、それを利用します。
                        これは香草の入ったお湯から出る湯気を体に当てるもので、

                        お湯の入った壺と一緒に布にくるまり、その中で汗を流すと

                        体にいいらしい。終盤にはこの「香草蒸し風呂」にズエンと

                        カムが一緒に入ります。その時の微妙な距離感と息遣いと

                        バックに流れる歌がなんとも艶めかしい感じを醸し出して

                        います。
                        そしてカムの依頼で彼女が会うはずだったトーという男性に

                        手紙を託されるのです。このトーは訪れたズエンを突然押し

                        倒しキスをします。

                        え?なんで?と思うほど突然の出来事に、その意味すらも
                        わかりません。その後訪れたスキンヘッドの女性が

                        「いつもの手口ね」というところを見ると、どうやらトーは、

                        奔放というか女たらしというか、よく言えば自由人なの

                        でしょう。
                        自宅に戻ってシャワーを浴びるズエンが

                        「ねえ、タオルを取って」

                        と声を掛けると、何度言ってもタオルは届かず、突然タオル

                        のみシャワーカーテンに掛けられます。こっそりのぞくと

                        案の定、ハイの母親が彼の世話に来ています。ハイはいくつ

                        なのかわかりませんが、いわゆるマザコンで、もしかした

                        ら性的不能者ではないかと思われるシーンが何か所か見られる

                        のです。したがってズエンにとってはいろいろな面で満た

                        されない心を持ち続け、それがカムに伝わります。またカムは

                        トーと知り合いであるけれど、男女の仲というわけでもなく

                        (そういうこともあったのかもしれない)、彼よりもズエン

                        に心を奪われていることが伺えます。
                        ハイのマザコンぶりは目に余るほどで、サッカーボールを

                        取ろうとして木から落ち、お尻の大きな青あざを作っても、

                        ズエンが薬を塗るのは嫌で、母親には身を投げ出して介抱して

                        もらうのです。
                        またズエンがハイのために肉まんを買って帰ると

                        「かあさんが作った大好物の魚汁を飲んできたからいらない」

                        と言います。その時にさっと肉まんを下げるズエンの気持ちは、

                        次の会話

                        「出張が入ったの」
                        に繋がるのです。その出張は、トーと一緒に観光客を案内する

                        もので、明らかに「何かが起こる」という予感しかありません。

                        それを

                        「行きなよ」

                        と半分眠りながら勧めるハイは、ズエンの出張は
                        「独り寝ができるからうれしい」と階下の少女に言う程度で、

                        なぜ結婚したのか、それも知り合って3か月で結婚した理由が

                        全くわからないのです。これ、最後まで分かりません。
                        ただズエンが出張先でトーと何かが起きた時、ハノイにいる

                        ハイは精力剤を購入しています。彼なりに努力しようとして

                        いたのでしょうか。また、「何か」が起きたらしいけれど、

                        それはその直前に、ズエンのネグリジェをハサミで裂いていく

                        トーの指と、ズエンが放つ吐息のみで表され、翌日には違う

                        ドレスに身を包んでいるズエンで伺い知るのみで、もしか

                        したら何もなかったのかも?いやそれはない。
                        だって深夜にカムに電話し

                        「カムにもらったネグリジェが破れちゃった」

                        とズエンは消え入るような声で話しているもの。
                        ハイは階下の娘が父親にへそくりを取られ、それが元で大げんか

                        になったのを救います。そして自宅に招き入れると、その娘は

                        憧れのシャワーに目を奪われるのです。ハイが話が合うのは、

                        この年齢の少女のように思えます。
                        そして出張先で起きたある事件。しかしそれを経ても表情の

                        変わらないトーと彼に惹かれ続けるズエンは、ハノイに戻って

                        きます。すると自宅の風呂場では階下の娘がお湯につかって

                        いるのです。
                        ズエンはカムの家に行き、二人で香草蒸し風呂に入り、それから

                        トーの元に向かい階段で彼に身を任せ、さらには大洪水の道路を

                        走るカムのタクシーの後部座席に座っています。

                        すべてがいつ起きたのかどういうつながり方をしているのか、

                        それぞれの人々の気持ちはどう移り変わったのか、まさに漂うが

                        ごとく、不思議な世界に包まれていきます。
                        タクシー、バイク、自転車、歩く人であふれかえるハノイの街と、

                        雨、風呂、シャワー、湖、海という水分が、人々の汗と重なり、

                        満たされない心を持つ人々の乾いた部分を少しずつ潤していく

                        ような風景にも感じました。

                         

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