ドリーム

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JUGEMテーマ:洋画

 

ドリーム

 

「ドリーム」

原題:Hidden Figures

監督:セオドア・メルフィ

2016年 アメリカ映画 127分

キャスト:タラジ・P・ヘンソン

     オクタビア・スペンサー

     ジャネール・モネイ

     ケビン・コスナー

     キルステン・ダンスト

 

1961年NASAに勤務するキャサリン、メアリー、

ドロシーは、女性でありかつ黒人であることから、

いくつもの差別を受けながらもそれぞれの夢を

かなえていく..。


<お勧め星>☆☆☆半 夢に向かって自分の力で未

来を切り開いていく姿がとても清々しい。


偏見を持っていないという思い込み


この映画の舞台となった時代が東西冷戦真っただ中の

1961年。そしてアメリカ国内でまだ白人と黒人の

分離政策が行われていたバージニア州での様子です。

このようにリアルに有色人種を差別していた時代を

見るのは本当に辛いですが、その差別が今は一切

なくなったかというとそんなはずもなく、「差別主義者

ではない」と言い切っていながら心の内ではそのもの

ズバリであるという白人の姿は「ゲット・アウト」

(2017)でとても不穏に描かれていて、空恐ろしく

なりました。

 

ドリーム
 

ドロシー役のオクタビア・スペンサーは「ヘルプ〜心が

つなぐストーリー〜」(2011)でも1960年代の

黒人女性を演じ、そこでは白人家庭でメイドとして働く

女性たちの権利を静かに主張する、穏やかなそして芯の

強い姿を見せていました。

 

ドリーム

 

そして冒頭に飛び級するほど賢い少女が映りますが、その

キャサリンの後の再婚相手ジムは「ムーンライト」(2016)

のマハーシャラ・アリ。さらにNASAでの計算係の

上司ミッチェル役はキルステン・ダンスト、そして責任者

ハリソン役はケビン・コスナーと豪華な顔ぶれです。
幾つもの苦労話をそれぞれの立場から映します。たとえば、

ドロシーがどんなに年数を積んで仕事をしても昇進は

できません。それどころか臨時採用のままなのです。

 

ドリーム

 

またメアリーも自分の能力のいかせる部署への転属は、

不可能な条件を克服するしかない、つまり不可能なのです。

さらにどんなに未知の数式を正しく計算できてもキャサリンは、

「検算係」にすぎない。これらの不条理な姿をいくつもの

エピソードを組み込んでテンポよく映していきます。
ただ自分の権利を主張するだけではないのです。また大きな声で

反論するわけでもないのです。わたしの知り合いのアメリカ人

男性が地下鉄の中で見た光景では、大音量で音楽を聴きながら

ステップを踏んでいる黒人女性を注意した白人男性に対し、

その女性が激怒し、最後は「差別主義者」と言い放ったそうです。

このマナー1つをとっても白人が黒人に対し注意をすることの

難しさは今も大変デリケートな問題であるとも思うのです。

ちょうど公開中の「デトロイト」(2017)では黒人に対する

白人の恐怖感が大暴動へとつながった事件を扱っていますが、

現在もなお、いや今は一層そういう面が露呈してきた気がして

なりません。この映画では個人的にとても心に残ったのが

キルステン・ダンスト演じるミッチェルの役どころで、

「わたしは偏見を持っていないの」

と能力を見せ始めたドロシーに言うと、ドロシーが

「知っていますよ。あなたはそう思い込んでいるんです」と

言い返したときの、ミッチェルの表情が、なんともいえない

居心地の悪さを感じさせとてもうまく描かれていたと思います。
映画のテーマが困難を乗り越えて夢を実現していった実在の

女性たちの姿のため、メアリーの夫が人種差別撤廃の活動を

していたことや、実際のデモ、世間の流れなどはあまり

描かれず、やや物足りない部分もありましたが、逆に焦点が

ぼけなくてよかったのかもしれません。60年代のファッション

や車も楽しめるもので、時折入り込む音楽も軽快で楽しいものでした。

 

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汚れたミルク

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JUGEMテーマ:洋画

 

汚れたミルク

 

「汚れたミルク」

原題:Tigers

監督:ダニス・タノヴィッチ

2014年 フランス=インド=イギリス映画 

90分

キャスト:イムラン・ハシュミ

     ギータンジャリ

     ダニー・ヒューストン

     カーリド・アブラッター

     アディル・フセイン

 

多国籍企業で働くパキスタン人アヤンは、彼が

医療関係者に営業販売した粉ミルクにより、命を

落とす乳児が急増しているいることを知る。彼は

職を辞めその企業相手に訴えを起こそうとするが..。


<お勧め星>☆☆☆半 多国籍企業に歯向かった一人

の勇敢な男性の姿が静かに描かれています。


正義を覆い隠す権力


監督は「鉄くず拾いの物語」(2013)の

ダニス・タノヴィッチ。ボスニア・ヘルツェゴヴィナに

住むロマ族の女性が一家に保険証がないために診療を

断られ、夫が一人奔走する姿を描いていました。

ラストまで苦難の連続で見終わっても何も解決できて

いないじゃないかという思いに駆られたものです。

社会構造の変化で取り残された弱者を彼らの視点から

地味ながら丁寧に映しています。

 

汚れたミルク
 

この映画でも発展途上国であるパキスタンにおける

1人の多国籍企業のセールスマンにスポットを当て、

彼とその家族が貧しい生活から、一気にトップセールスマン

となり、富と自信を獲得する姿、そして真実を知った

ときの驚愕、その後の国家規模の相手との戦いの姿が、

それ自体をテレビのドキュメンタリー番組で放映しよう

としたドイツのスタッフと主人公アナンとのスカイプでの

会話を通して描いています。多国籍企業の名前は「ネスレ」

と出ているから、これを知らしめる目的もあったの

でしょう。番組の制作過程で匿名に変えられています。

 

汚れたミルク
 

原題の「Tigers」はネスレの営業担当責任者が

「虎のように吠えろ。君たちは虎だ!」と言ったところから

来ていると思います。アナンもtigerであったわけです。

日本でもMRは医師に薬を買ってもらうために、せっせと

営業していますよね。営業用の資金も会社から支給されて

いるはず。ここがパキスタンでは露骨な収賄が行われていた

と描かれ、それを知らせたアナンは誰にも相手にされなく

なるわけです。多国籍企業は国家にも多くの支援を行って

いるため、アナンは唯一の友人の医師ファイズと人権支援組織

からの力添えをもらうしかなくなるのです。冒頭は極彩色で

美しく感じられたアナンの家族の服装や(結婚式だから当然か)

表情が、彼の立場の変化と共に暗く、モノクロのような映像に

変わっていくのも心の内を暗示しているようです。
日本でも粉ミルクにヒ素が混入した事件がありましたが、

それではなく、母乳の出る母親にまで粉ミルクを推進した

医師、そしてインフラの不整備で不衛生な水で粉ミルクを

作る母親たちによってそれを飲んだ乳児が下痢を起こし

栄養失調となってどんどん亡くなっていくのです。この映像は

1990年代当時のもので、目をそむけたくなるような

赤ちゃんの姿が映ります。ここで問題なのは、同じような

事件が過去にも起きており、それを知っていながら貧しい

地域の人々にこの粉ミルクを勧めた多国籍企業の責任、

ひいてはそれで国が潤っている国家の責任でもあるのです。
ラストは今のアヤンの状況が字幕で流れますが、彼の行動で

何かが変わったのか、今世界のどこかに同じように取り

残された人々が多くいるのではないかと深く考えさせられる

内容でした。

 

 

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ハイエナ・ロード

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ハイエナ・ロード

 

「ハイエナ・ロード」

原題:Hyena Road

監督:ポール・グロス

2015年 カナダ映画 120分 R15+

キャスト:ロッシフ・サザーランド

     ポール・グロス

     クリスティーン・ホーン

     ナビル・エルーアハビ

 

アフガニスタンで復興道路建設の任務につく

カナダ軍の狙撃手ライアンは、タリバンの急襲を

受けたところを、謎の現地老人に保護される。彼は

「砂漠のライオン」と呼ばれる伝説の男であること

を知るが、その彼の孫娘が拉致されてしまう...。


<お勧め星>☆☆☆ 戦闘シーンはリアルであり、

また不毛な任務を強く印象づけます。


平和維持活動って何だ?


カナダ軍の全面協力を得た上、15億円という巨額の

費用を投じて製作されただけあり、戦闘シーンはまこと

にリアルです。「アメリカン・スナイパー」(2014)

のクリスと同じ狙撃手であるライアンが冒頭に、

爆弾を仕掛けた敵を狙撃するシーンはスコープ越しに

映る相手が何を置いたか現認した瞬間引き金がひかれ、

見事に頭に命中。

 

ハイエナ・ロード

 

まるでシューティングゲームを見ているような錯覚を

覚えてしまいます。しかしその後、道路のくぼみが突然

爆発し、大人数のタリバンがライアンたちを急襲するのです。

ヒュンヒュン、ドカン、パンなどと様々な音と立ち込める

土煙がたたみかけるように画面いっぱいに映り、敵を監視

していた時の「静」から一気に「動」に変わります。

 

ハイエナ・ロード

 

ものすごくスリルがあるんです。そしてかろうじて逃げ込んだ

村で、謎の老人が助けの手を差し出します。この老人の瞳は

左右で色が異なるのです。かつて「砂漠のライオン」と呼ばれた

伝説の戦士であるこの男は、ソ連軍と戦った時に幾度も負傷

しても不死身の体で立ち向かったという。ソ連軍と戦い、

そして今は様々な敵の脅威にさらされている。この地の複雑な

歴史を思い知らされます。
カナダ軍はあくまでも復興活動に参加しているという建前が

あるのですが、それは「ある戦争」(2015)でのデンマーク軍

同様「平和」を維持するため「敵」を倒すことを求められる

わけです。なんともおかしな話ですが、それに参加せざるを

得ない。「平和」と「戦争」は同列に扱うべきものかどうかも

疑問に思ってしまうけれど、そこは頭の中にしまっておこう。
カナダ映画なのでその負傷兵や死亡した兵士の姿は、凄まじいもの

が映ります。でもこれこそが戦場の真の姿なのですよね。

(あ、戦闘地域ではないか)

 

ハイエナ・ロード
 

で、話はもう一つあって、ライアンは基地にいるジェニファーと

いう大尉と休暇中に恋愛を楽しんだらしい。そして彼女は妊娠

している...。それをライアンに伝えた時点で彼には死亡フラグが

たちましたね。この話は必要だったのかな。

 

ハイエナ・ロード
 

ライアンの友人であり、現場の指揮を執るピートとの意見の

対立も、その場の「正義」をとるか、カナダ軍の「大義」を

とるのかという、全く異なる次元のものであり、それを瞬時に

判断して現地の人々を犠牲にしていくのが正当な行為なのかと

痛感します。やはりこの手の映画は見終わって気分が良くなる

ものではないですね。

 

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ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

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ミス・ペレグリン

 

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」

原題:Miss Peregrine's Home for Peculiar Children

監督:ティム・バートン

2016年 アメリカ映画 127分

キャスト:エバ・グリーン

     エイサ・バターフィールド

     サミュエル・L・ジャクソン

     ルバート・エベレット

 

ジェイクは内気で友人のいない孤独な少年。彼と大の

仲良しの祖父エイブが両目を繰りぬかれ

「ミス・ペレグリンに会え」と言い残して亡くなった

ことから精神科医の治療を受けることになる。ジェイクは

精神科医の勧めもあり、ミス・ペレグリンがいるという

ケルン島を訪れるが..。


<お勧め星>☆☆☆半 少しわかりづらい部分もあった

けれど、個性あふれる登場人物と不思議な世界観を楽しめ

ました。


孤独な少年の成長


原題にpeculiar childrenとあるように、ミス・ペレグリンが

施設で世話をする子供たちは特殊な能力を持っているのです。

超能力を発揮して地球を守る「ファンタスティック・フォー」

(2005)とは全く異なり、普通に暮らしたいけれど、その

能力ゆえ世間から離れて暮らさざるを得ないという

悲しい身の上の子供たち...かと思ったら全くそんな風には

見えません。

 

ミス・ペレグリン

 

さらに子供たちは12人いて、それぞれ区別するのに大変か

と思ったら、ものすごく特殊な能力なのでラストにはしっかり

判別ができるようになっています。子供でもない男女たちも

ミス・ペレグリンにかかると9歳の対応になるらしい。衣食住

ルール通りに生活させられています。
さて、本題はジェイクがなぜミス・ペレグリンに会わなければ

ならなかったのかということで、そこには認知症と言われていた

祖父エイブの存在があるのです。幼いころから夢物語を聞かされ

続け、それが「え?嘘じゃね?」と学校で笑われてから、

ジェイクは大好きな祖父の話を信用しなくなっていていた時、

いや、信用しなくなってからだいぶ経ってから、祖父が突然

殺害される。それも彼の眼の前で両目を繰りぬかれた状態で

息絶えていったのです。「ミス・ペレグリンに会え」が最後の

言葉で、何回読んでも「クレぺリン」と思っていたこのややこしい

名前の持ち主は誰か。両親はジェイクが心的外傷後ストレス障害

にあると考え、精神科医にかかり、彼女の勧めでミス・ペレグリン

のいるとされるケルン島へ向かうのです。映画内でミス・ペレグリン

が語るように、この特殊能力は、代々ではなく隔世遺伝することが

多いらしく、どうやらジェイクのお父ちゃんにはなかった模様。
そしてなぜ祖父が倒れていた場所にいた怪物をジェイクしか

見えなかったのか、ということの意味が次第に分かってくるのです。
ケルン島でのミス・ペレグリンの施設は1943年のナチスの

空爆で破壊されており、その無残な姿を見ても、後に「ループ」を

使って時間を戻すシーンを見ると、少しも恐怖を感じません。

 

ミス・ペレグリン

 

原作はシリアスかつ残虐なシーンもあったそうですが、

ティム・バートン監督によって全く違うものに姿を変えました。

 

ミス・ペレグリン
 

終盤のホローガストと呼ばれる怪物たち(異能者の目玉を

食べると元の人間に戻れるかもという邪悪な奴ら)とガイコツ

軍団の争いも、まるでショーを楽しんでいるかのように思えて

しまいます。

 

ミス・ペレグリン
 

バロンという永遠の命を欲したラスボス役は、

サミュエル・L・ジャクソンで、彼が持っていたのは、なりたい

人物になれるというもの。だからジェイクが2人現れちゃう。

ここは結構簡単に片付いてしまった感じもしますが、まあ、

勧善懲悪でいいかもしれません。
少し納得がいかないのはラストで、ジェイクは苦労して

2016年から1942年に戻るのですが、第二次世界大戦時に

東京にイギリスの船が停泊できたのか、それとジェイクが

いなくなった2016年は、元々ジェイクが存在しないことに

なったのか、失踪扱いになったのか、そこがわかりませでした。
まあ、気分の良いラストなので良しとします。音楽も良いです。

 

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リトル・ボーイ 小さなボクと戦争

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リトル・ボーイ

 

「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」

原題:Little Boy

監督:アレハンドロ・モンテベルデ

2015年 メキシコ=アメリカ映画 106分

キャスト:ジェイコブ・サルバーティ

     エミリー・ワトソン

     ケイリー=ヒロユキ・タガワ

     マイケル・ラパポート

 

第二次大戦中のアメリカ西海岸の小さな町に住む

8歳のペッパーは、背が低く周りから「リトル・ボーイ」

と呼ばれている。仲間にバカにされる彼の唯一の

相棒は父ジェームズだったが、その父が出征してしまう。


<お勧め星>☆☆☆ 父を思う息子の気持ちを描いたこと

考えると感動するはずなのにそれほどでもない。


邦題を考えろ


主人公の少年、ペッパーは、成長が遅く、背が低い

ことで周囲から「リトル・ボーイ」と呼ばれているのです。

 

リトル・ボーイ

 

実際にはよくありがちな大きな(ふとっっちょ)ガキ大将

からは差別的な言葉で呼ばれるのですが、そこを大人が

とがめるシーンがあって、やけに善意に満ちているなあと

思ってしまう。
ただ「リトル・ボーイ」自体が1945年広島に投下された

原子爆弾のコードネームであることを知っていると、当事国

である日本では絶対に使ってほしくなかった名称だと思うの

です。変な邦題をつけることが多いんだから「小さなボクと戦争」

で良くないかしら。
映画は背が低いため仲間からからかわれ続けるペッパーの姿

から始まるんです。彼は父親だけが「相棒」で、その彼の視点で

描かれていきます。だからあまり深く考えなくてもいいのかな
「Do you believe you can do this?」やれると思うか?という

マジシャンの言葉を引用し、父は息子に勇気と希望を与える

のですが、長男が扁平足のため入隊できず、代わりに父が入隊

します。これは強制だったのかなあ。

 

リトル・ボーイ
 

一方でこの町には「ハシモト」という日系人がおり、彼は

敵国の人間として町民の憎悪の対象になっているのです。

息子が戦死した人間には、何十年アメリカに住んでいようと

日本人は日本人であり、彼が殺したわけでもないのに怒りの

矛先が個人に変わってしまう。そんなことは今でもあちこち

の国で起きていること。

 

リトル・ボーイ
 

そこに登場するのがオリバー司祭であり、ペッパーにリストを

渡し、それを実行していけば彼の父が戻るだろうと諭すわけ

です。8歳の少年がクリアするには容易いことばかりですが、

それを行うことで彼の視野が広がっていくのも確かです。

ジャップ、ニップと差別的に呼ばれていた「ハシモト」にも

家族がいて、戦争のせいで音信不通になっていると言う話を

聞くと、幼いながら、寂しいのは自分だけではないと気づく

わけです。こんな蔑称で呼ばれることの屈辱を呼ぶ側も

呼ばれた側も肝に銘じないといけない。口が裂けても言う

もんじゃないと学校で教えてほしい。子どもの成長物語と

宗教感を絡めた話に加え、戦争もキーポイントになっているので、

どれも表面上をなぞっただけのように後半は特に顕著に感じら

れます。「原爆投下で戦争が終わる」→兵士が戻ってくると喜ぶ

町民を見て、母エマが「一つに街が消えたのよ」と悲しい顔を

します。

 

リトル・ボーイ

 

それだけで済ませてしまうことに、あのきのこ雲の映像で

一つで済ませてしまったことに、さらには

「リトル・ボーイのパワーだ」

とはしゃぐ人々の姿に感動など覚えるはずもないのです。

そういう映画ではないことはよくわかっているけれど。
映画的にはハッピーエンドですが、わたしの心は少しも

ハッピーにはなりませんでした。

 

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奇蹟がくれた数式

4

JUGEMテーマ:洋画

 

奇蹟がくれた数式

 

「奇蹟がくれた数式」

原題:The Man Who Knew Infinity

監督:マシュー・ブラウン

2015年 イギリス映画 108分

キャスト:デブ・パテル

     ジェレミー・アイアンズ

     デビカ・ビセ

     トビー・ジョーン

     ズスティーブン・フライ

 

1914年、インド人ラマヌジャンは、イギリスの

ケンブリッジ大学のハーディ教授に招かれイギリスへ

渡る。彼は天才的な数式を発見していくが、周囲の

目は冷たく、また本国に残してきた妻への思いも募る

のだった。


<お勧め星>☆☆☆半 伝記映画としてとても上手に

作られています。


数学ではなく数覚


数学についてラマヌジャンが妻にその楽しさを語る

シーンがあります。そこで彼は海岸の砂を手に取り砂の

粒でたとえ話をするのですが、数学オンチの私には

まったく理解できません。それは天才であったラマヌジャンが、

その数学に対し、深い愛情を感じ、そこに眠る無限の謎を

解き明かしていく喜びに取りつかれていたのだと思うのです。
高校時代、数学や物理が得意な生徒が幾人かいて、なぜ

その公式に結びつくのか、どうしたらその発想ができる

のか不思議でたまりませんでした。逆に彼らの中には、

国語の論述問題が苦手という人もいる。それが学問の世界

かもしれません。両方苦手でもスポーツだけはできます!

という子もいましたね。
主役のラマヌジャン役を演じるデブ・パテルは、

「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)

「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2011)

でもインド人として登場し、豊かな表情には大変好感が

持てました。
1914年、インド、マドラスで、学位のないラマヌジャンの

不遇な身の上から、ケンブリッジ大学に招聘されたものの、

「インド人」であるがゆえの差別、第一次世界大戦勃発に

よる学術部門での苦悩、またマドラスにおける実母の妻に

対する仕打ちなどが次々に映ります。
映画の中では「数学」について話をするシーンがあちこちに

映り、「博士と彼女のセオリー」(2014)のように

私生活に重きが置かれておらず、あくまでも数学者としての

ラマヌジャンの真摯な姿が全編に渡って流されます。病に

侵されたことも、その後の展開も出来る限り最小限の映像で

収めて、ラマヌジャンとハーディ教授、リトルウッド教授の

研究の姿を描き切ったことは、ポイントのズレがなく見られると

思います。またラマヌジャンによって、ハーディ教授自身も

「他人との関わり方」を身につけて行くのもわかるのです。

学者バカではやはり共同研究はできなし、他人の賛同を得る

ことも難しい。ラマヌジャンは無神論者のハーディ教授に自らの

発想は

「女神(ヒンドゥー教?)が毎朝枕元に数式を置いていく」と

語るのです。(マドラスは現在はチェンナイという名称)やはり

宗教に心のよりどころを持つと、逆境にも立ち向かえるのだろうか。

いやそこには才能というものがプラスされなければいけないな。

彼の死から一世紀を経て「ブラック・ホールの研究」に彼の

数式が役立っているということを知ると、やはり宇宙規模の

能力の持ち主だったのだと納得します。そしてその魅力に

取りつかれた者はいつの時代もその夢の中から抜け出せなく

なるのだろうなと勝手に考えています。

 

 

 

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ムーンライト

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ムーンライト

 

「ムーンライト」

原題:Moonlight

監督:バリー・ジェンキンス

2016年 アメリカ映画 111分 R15+

キャスト:トレバンテ・ローズ

     アンドレ・ホランド

     ジャネール・モネイ

     アシュトン・サンダース

     ジャハール・ジェローム

 

同級生にいじめられているシャロンは、麻薬の

売人フアンに救われる。しかし彼はシャロンの

母親に麻薬を売っている張本人だった。そして

自らがゲイであると気づいた頃、シャロンは

同級生のケヴィンの恋心を抱く...。


<お勧め星>☆☆☆ 静かに心にしみこむ映画です。


自分は何者なのか


ストーリーは、1.「リトル」シャロンの子供時代

2.「シャロン」シャロンの高校時代

3.「ブラック」シャロンが大人になった時 の3部構成に

分かれています。3人が演じ分けていますが、1と3の

シャロンの雰囲気がとても良く似ていて、あの小さな体も

鍛え上げればこのようになるのだろうとまさに実感するのです。

 

ムーンライト
 

いずれにせよ、内気で孤独かつ不幸な身の上であることは

ほとんど変化がなく、大人になったシャロンも心のより

どころがない空虚な瞳をしていることでそれを物語ります。
この映画では、特に光と音楽と色が巧妙に組み合わさっていて、

1でフアンが「月明かりの黒人の背中はブルーに見える」と

言った通り、ラストシーンでは子供時代のシャロンの背中が

月明かりに青みがかって浮かび上がります。

 

ムーンライト
 

子供時代麻薬中毒の母親のネグレクト、学校でのいじめに

あうシャロンは、フアンと出会うことで「父親」のような

存在を獲得するのですが、その存在は、母親の麻薬の売人で

あるということであっけなく理想から遠のきます。

 

ムーンライト
 

さらに高校時代、フアン亡き後、シャロンが逃げ込むのは

相変わらず、フアンの恋人だったテレサの家であり、彼女に

「愛と自信を持つこと」を諭されます。そして恋心を抱いて

いたケヴィンとの夢のような時間の後に訪れるある事件。

ここでもシャロンは自分の夢からあっけなく放り出されて

しまうのです。

 

ムーンライト
 

全てが不条理の連続であり、成長したシャロンが、フアンと

見間違うほどの麻薬の売人になっていたとしても何ら疑問は

抱きません。いかにも売人であるかを物語るかのような金歯、

ダイヤのピアス、バカでかい車、カーステレオの音楽。

それでいて彼の伏し目がちな姿は幼少期のそれと何ら変わり

がなく、彼の心の「孤独」をそのまま反映しているのです。
母親から電話には出なくても、ケヴィンからの電話にはすぐに

出る。シャロンの純粋さの現れでしょうか。
押し付ける愛は相手の重荷にしかならず、しかしながらそれに

答えるのも愛の形の1つであり、愛というものは無条件に

与えられるものではないのだと痛感する内容でした。
街灯、電車のガラスに映るぼやけた灯り、夜の闇に浮かび上がる

オレンジの光、青白い砂などカゲロウのように儚い存在に感じ、

逆に赤い光が見えると母親がピンクの壁紙をバックに登場するなど、

色使いでシャロンの心の内を描いているようでした。音楽も

シーンごとに効果的に使われていたと思います。
付け加えるならば、見る人を選ぶ映画であり、わたしは静かな

感動を覚えましたが2回は見たいとは思いません。

 

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あなた、その川を渡らないで

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あなた、その川を渡らないで

 

「あなた、その川を渡らないで」

原題:My Love,Don't Cross That River

監督:チン・モヨン

2013年 韓国映画 86分

キャスト:チョ・ビルマン

     カン・ゲヨル

 

結婚76年を迎える夫婦は、毎日お揃いの民族衣装を

着用し、手をつないで歩いている。しかし年齢と共に

おじいさんは、咳き込むことが多くなり、おばあさんは

膝の痛みに悩まされ始めるのだった。


<お勧め星>☆☆☆ いい映画だと思うけれど、好きに

なれない内容です。

 

あまりにも美しすぎる夫婦の絆

 

絶賛するレビューが多い中、極めて少数意見を書いて

みました。冒頭に雪の中で川に向かって泣くおばあさん。

これを見たらどういう展開かすぐにわかるじゃありませんか。
まさに2人は理想の夫婦なんです。庭の落ち葉を片付けながら、

葉っぱを掛け合って遊び始める。花を摘んでおばあさんに

渡すと、おばあさんはおじいさんの耳に花を飾り、しまいには

お互いに花を飾り合う。

 

あなた、その川を渡らないで

 

夜、トイレ(家の外にある)についてきてもらい、夫に外で

歌を歌ってもらう。雪が降れば雪で遊び2つの雪だるまを作る。

春には川で野菜を洗うおばあさんにおじいさんが水をかけ、

その後で家の庭で水の掛け合いをする。いくつものシーンで

夫婦が深い愛情で結ばれている姿が描かれるのです。
監督自身がこの夫婦がTV番組で紹介されたのを見て、

「凄い夫婦」と思い、映画にしたいと考えたとのこと。

 

あなた、その川を渡らないで

 

「色鮮やかなお揃いの民族衣装を着て町に出る老夫婦」と

して紹介され、実際にお会いすると2人の姿が素晴らしく、

15か月間、3人で過ごしたそうです。したがってドキュメンタリーに

近いものの、監督の思い入れから編集された部分もかなり

あるはずで、それをそのまま事実として観客に伝えるのは、

少し違和感を感じます。
「世界の果ての通学路」(2013)という映画でもかなりの

演出が見られましたが、そこには伝えたい強いメッセージが

受け取れました。この映画はどうか?

 

あなた、その川を渡らないで


最も人間味があったのが、おばあさんの誕生日会に一族が

そろったとき、両親への関わり方で息子と娘が喧嘩を始めた

シーンでした。それを止めもせず悲しそうに見つめる

おばあさんが大映しになるわけです。夫妻が歩んできた

道のりも全て感動するものばかりで、こんな理想な夫婦に

なりたいものだと伝えたいのでしょうか。
あまりにストレートすぎると、天邪鬼なわたしは、感情移入が

できなくなります。ドストレートな題名もいや。おばあさんの

その後を描かないのもいや。

 

 

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ギリー・ホプキンズ 不機嫌な日常

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ギリー・ホプキンズ

 

「ギリー・ホプキンズ 不機嫌な日常」

原題:The Great Gilly Hopkins

監督:スティーブン・ヘレク

2016年 アメリカ映画 98分

キャスト:ソフィー・ネリッセ

     キャシー・ベイツ

     ジュリア・スタイルズ

     ビル・コップス

     オクタビア・スペンサー

     グレン・クローズ

 

問題を起こしては里親の下を転々とするギリーが

トロッター家にやって来る。実母を慕い、反抗し続ける

ギリーを周囲の人間は深い愛情で受け止めるが、彼女が

ある計画を実行したことから、事態は変わっていく。

 

<お勧め星>☆☆☆ 家族の定義が多様化している欧米

ならではのストーリーです。

 

toughな人生も幸せ

 

WOWOW放送時の題名が「ギリー・ホプキンズ 不機嫌な日常」

で、ソフトリリース時は「ギリーは幸せになる」だそうです。

なんか陳腐な感じ。

ストーリーは、とてもありがちなもので、賢いけれど

反抗的なギリーが里親の家を転々とし、最後のチャンス

として送られた家で、理解ある里親や教師と知り合い、

本来の姿を取り戻すというもの。ヒロイン、ギリー役は

「やさしい本泥棒」(2013)のソフィー・ネリッセ。

 

ギリー・ホプキンズ

 

撮影当時17歳だったということもあって、映画内の年齢より

かなり大人びて見えます。前を走るアグネスと同級生に

見えないんだよね。しかしそれは些細なことで、この映画が

素晴らしいものに仕上がったのは、ひとえに豪華な脇を固める

俳優さんたちの演技だと思います。

今回の里親トロッター夫人役はキャシー・ベイツ。

 

ギリー・ホプキンズ

 

どうしても「ミザリー」(1990)の超怖い女性のイメージが

抜けないのよね。

 

ミザリー

 

あの映画以降、結構楽しいおばちゃま役や愛情深い母親役など

演じているのに、何かしでかしそうな雰囲気が離れません。

もちろんこの映画でも、大きな体と同じくらいに大きな心で

ギリーを受け入れ、人間としての善悪をきっちり教えていく

のです。

またギリーの担任教師ハリス役のオクタビア・スペンサーも

有色人種であることを揶揄したギリーに対し、それを逆手に

取った対応をしていくのです。

 

ギリー・ホプキンズ

 

この表情はマリア様みたいでしょう?

そして中盤から登場するギリーの祖母役はグレン・クローズ。

 

ギリー・ホプキンズ

 

グレン・クローズ

 

彼女もかつて「危険な情事」(1987)で怖ーい女性を

演じました。それが今では優しいおばあちゃまを演じるとは

時の流れを感じます。そうそう、ラスト付近に少しだけ登場する

ギリーの実母コートニー役は、ボーンシリーズの

ジュリア・スタイルズ。決して美人とは思わないけれど印象に

残る女優さんです。

ギリーは実はとても賢く、それは悪く言うと狡猾でもあって、

ある計画を実行したことが後半の展開に大きく変わってくるのです。

行動の結果を想像する力というものは、年齢に伴って広がるもので

(広がらない人もいるかもしれない)ギリーにはそれが不十分

だったのです。そして誰の力でも変えられない結果を招いてしまう。

じゃあその時どうするか。トロッター夫人の言葉が重いんですよ。

ありきたりの言葉だけれど、そのことを忘れてしまうことが多い。

ぜひ鑑賞して思い出してほしいです。

 

 

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マイ・プライベート・アイダホ

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JUGEMテーマ:洋画

 

マイ・プライベート・アイダホ

 

「マイ・プライベート・アイダホ」

原題:My Own Private Idaho

監督:ガス・ヴァン・サン

1991年 アメリカ映画105分 PG12

キャスト:リヴァー・フェニックス

     キアヌ・リーヴス

     ジェームズ・ルッソ

     ウィリアム・リチャード

 

ポートランドで男娼をして暮らすマイクは親友の

スコットと共に自らの母親を探す旅に出る。しかし

母親はイタリアに渡っており、彼らはイタリアへ

向かうのだったが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ 残酷で切ない青春映画です。

 

ボクの未来は変われるのか?

 

ナルコレプシー=発作的睡眠

 

マイ・プライベート・アイダホ

 

ストレスを感じると発作的に深い眠りに落ちてしまう、

という持病を持つマイク役は、撮影当時19歳の

リヴァー・フェニックス。そして彼の親友で市長を父に

持つ裕福な家庭に育ったものの親への反発から、マイク達

と行動を共にしているスコット役は、当時24歳の

キアヌ・リーヴス。本当に端正な顔立ちなんです。この後

激太りしたり、「ノック、ノック」(2015)でトホホな役

まで演じる俳優になるとは想像もできません。

マイクが今にも壊れそうなガラス細工のような美しさだと

すると、スコットはギリシャ彫刻のような存在感のある美しさと

いう感じです。

家庭的に恵まれず、男娼をしたり盗みを働いて生活している

マイクは、ボブというホームレスに誘われてこの道に入った

スコットを愛しているのです。

 

マイ・プライベート・アイダホ

 

彼がスコットに本心を打ち明けるシーンはまことに切ない。

マイクはホモセクシャルであるのに、スコットはそうでは

ないのだとお互いに知っているからこそ切ないのです。

 

マイ・プライベート・アイダホ

 

さらにマイクの母親探しの旅に向かったアイダホでは、

実兄ディックと話すとなぜかマイクは発作を起こします。

その理由をマイク本人はとっくに知っていた。

じゃあなぜ向かったのだろう?

そして実母がいると聞いたイタリアへ向かう2人ですが、

スコットは現地の女性カルミラと恋に落ちます。さらに

マイクの母は既にアメリカに帰ったという事実を突き

つけられた時、マイクは大泣きするんですよ。スコットの胸を

借りて大泣きするのに、スコットは「しばらく別行動しよう」

と語ります。しばらくじゃないことなんて誰だってわかります。

結局2人の境遇は全く違うものであり、マイクはどこまでも続く

アイダホの一本道のような人生を進み続けるしかない。

 

マイ・プライベート・アイダホ

 

他に選択肢はないのです。一方、スコットは単に若気の至りで

この期間を追終え、亡き父の遺産を相続し、政界への道を進む

かもしれない。あらゆる可能性を持っています。

それを知った後アイダホの路上で発作に襲われ、今度は一人で

倒れるマイクを見ると、23年という短い人生を終える

リヴァー・フェニックスの人生と重なり、とてつもなく胸が苦しく

なる映画でした。

 

 

 

 

 

 

 

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