スポンサーサイト
一定期間更新がないため広告を表示しています
- 2023.01.12 Thursday
- -
- -
- -
- -
- by スポンサードリンク
JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
出典:IMdb
「アイリッシュマン」
原題:The Irishman
監督:マーティン・スコセッシ
原作:チャールズ・ブラント
「I Heard You Paint House」
キャスト:ロバート・デ・ニーロ
アル・パチーノ
ジョー・ペシ
ハーヴェイ・カイテル
全米トラック運転手組合のリーダー、
ジミー・ホッファの用心棒となったフランクは、
マフィアのボス、ラッセルにも仕え、着実に仕事を
こなしていく。しかし国内情勢は変化し、ホッファの
目に余る行動にラッセルはある仕事をフランクに
命じるのだった。
<お勧め星>☆☆☆半 3人の名優の競演だけでも
見ごたえがあります。
人は年を取らないと時間の速さに気づかない
何がすごいって登場人物の若返り技術です。
特殊メイクはテニスボールを顔にくっつけるような
ものだと監督は言い切り、あくまでもCG技術を駆使し、
さらに俳優自身の動き、仕草、姿勢で年齢を表現した
ものがまさにパーフェクトなのです。
出典:IMDb
ジ・アイリッシュマンことフランク・シーラン役を演じるのは、
ロバート・デ・ニーロ。そのフランクが老人ホームで自らの
生涯を振り返る形式でストーリーが進むんでいきます。
出典:IMDb
フランクが一介のトラック運転手だった時にひょんなことから
知り合ったマフィア「ブファリーノ家」のボス、ラッセル。
ラッセル役は大変小柄ながら、声と鋭い視線で威圧感を発揮
するジョー・ペシ。
ラッセルと知り合ったフランクは彼の信頼を得て
全米トラック運転手組合のリーダー、ジミー・ホッファの
用心棒になるのです。このジミー役がアル・パチーノ。
出典:IMDb
「チームスターズ」と呼ばれる組合は、大統領選を左右する
ほどの力を持っており、同時にマフィアとも強くつながって
います。序盤にその組合に歯向かったということから、
タクシー協会を標的にして妨害工作を繰り広げるシーンは
映画の中でも派手ないくつかのシーンに含まれるほどです。
出典:IMDb
というか、暗殺や爆発シーンはあるものの手際よく進むので、
ドンパチの連続とは全く思えないません。あくまでも男臭い
マフィアやそのファミリーの人間模様が中心です。
フランクがラッセルの命令でこなしていく任務が
「ペンキを塗る仕事」=「暗殺」で、呼び出し→ワンテンポ
(トイレに行く素振りなど)→銃声→武器をいつもの川にポイ、
これまたテンポよく行われていきます。
登場人物が姿を現した途端、その上に名前とその死にざまが
クレジットで表されるのはちょっと面白い。アイルランド系の
ホッファとイタリア系のトニー・プロの諍いと並行して、
大統領選やケネディ大統領暗殺、それによる支持者への司法の
扱いの変化なども映り、ケネディってやっぱりこういうつながりが
濃かったんだとなぜか納得してしまうのです。
トニー・プロ役はスティーヴン・グレアム。「イタ公」という
言葉は英語で何と言っていたのでしょう。
(これは知らなくてもいい言葉)
フランクとラッセルの食事シーンが全く同じ構図で序盤と終盤に
映ります。その姿の差にも必ず笑いが出てしまうはずです。
光陰矢の如しかなあ。
そしてフランク自身の家族の問題に、彼が気付くために、これほど
までの時間を要するのかとも半ば呆れてしまいます。それが通用
する時代は少なくとも現代ではないのでしょうね。
冒頭の老人ホームのシーンの長回しカットや、幾度となく同じ交
差点を上から映すシーンなどを見ると、監督のこだわりが素人の
わたしにも感じられました。
「あれはやりすぎた」とラッセルにいまさら言われましても...ねえ。
JUGEMテーマ:香港映画
出典:IMDb
「香港製造 メイド・イン・ホンコン」
4Kレストア・デジタルリマスター版
監督:フルーツ・チャン
1997年 香港映画 108分 PG12
キャスト:サム・リー
ネイキー・イム
ウェンダース・リー
エイミー・タム
チャウは中学を落第し、そのままウィンという男の
もとで借金の取り立てをしている。ある時取り立てに
行った先の娘ペンと出会い、一目で気に入ってしまうが
彼女は重い腎臓病を患っていた。
一方チャウが可愛がっている知的障がいのあるロンは、
投身自殺の現場に居合わせてしまい、そこから遺書を2通
持ち帰るのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆ ほとばしるようなエネルギーは
若さの象徴であるもののその先に希望が見えない閉塞感も
覚えます。
不安定な時代に生きる若者
<ネタバレしています>
フルーツ・チャン監督「香港返還三部作」の一作目で、
「花火降る」「リトル・チュン」と続いています。
1997年製作のこの映画を20周年記念として、
4Kレストア・デジタルリマスター版として公開されました。
主人公のチョンチャウは「中秋」と書き、暦の上で中秋に
たまたま生まれたからその名前になっただけと本人が吐き
捨てるように言います。父親は若い愛人のもとに去り、母親は
コンビニでわずかなお金を稼いでいるのみ。
その上チャウは、中学を落第し、そのまま学校に戻らず、
ウィンという男の手下として借金の取り立てを行っているの
です。チャウ自身は「ウィンは他のチンピラとは違う」と
信じているけれど、少し考えれば、ウィンのコマの1つに
すぎないと気づくはずなんですよね。そこまで考えられない
幼稚さと、目先の金が必要な貧困が重なっているわけです。
チャウの体にはぜい肉はほとんどなく、幼さの残る顔の額から
噴き出す汗には、彼の体にたまっているエネルギーがどこかで
発散できるのを待っているかのように映ります。映画内で何度も
白いブリーフを洗うシーンがあるのもそれを象徴する一つでも
あります。
チャウは、知的障がいがありいじめられているロンをとても
可愛がり、彼が窮地に陥るとすかさず助けに行くという勇敢さも
持ち合わせています。口から出る言葉は下品で叱るようなもの
ばかりでも彼の本心は優しく、愛に飢えていることが実感できる
のです。誰かを愛することで誰かに愛されたいという思い。
出典:IMDb
そんな時借金の取り立てに行った家の娘ペンと出会います。
この子が写真では全然可愛いく思えないのに、映画で見ると
とてもチャーミングなんです。ロンは鼻血を出すし、チャウは
一目ぼれしてしまいます。
チャウの家にしてもペンの家にしても貧しい人々が暮らす狭い
アパートで、時折窓から見える高層ビル群とは無縁であることが
わかります。頑張ったらあのビル群で働いたり、大きな屋敷に
暮らせるという夢が叶うことは限りなくゼロに近いのです。
出典:IMDb
そしてロンは、サンという女子高生の投身自殺現場に居合わせて
しまいます。そこから2通の遺書を持ち帰ってから、チャウの
様子が変わり始めるのです。と本人が語っているけれど、どこが
どう変わったのかあまりわからなくて、サンが夢に出てくると
いうことばかり映り、ペンも好きだけれど、あの若さで「死」を
選んだサンの気持ちを知りたくてたまらなくなったということ
でしょうか。
サンは両親から愛されていたのに「死」を選んだ。ペンは母親に
愛されているのに「死」が目前に迫っている。一方、ロンは家族から
絶縁されていて、大けがをしても誰も病院に来ないし、チャウは
喧嘩しつつも慕ってた母親にも捨てられてしまう。愛されていない
のに「死」とは無縁の位置に立っています。しかしロンもチャウも
貧しく未来への「希望」などが持てないという立場は同じです。
出典:IMDb
入院していたペンが病院を抜け出し、ロン、チャウでサンのお墓を
探しに行くシーンは、音楽も素晴らしく、また高台にある墓から
見下ろす香港の街が、いつもは見上げているのと真逆で、まさに爽快
な思いにさせてくれます。
「大人は無責任」とチャウに言い放った少年は実父の腕を切り落として
いました。無責任であるけれど、求めるものを手に入れる術を考える
力を持っているのが大人であり、若者は限られた方法でしか力が
発揮できません。その未熟さゆえに大人に利用され切り捨てられて
いくのです。
出典:IMDb
大人は大陸人のよう、若者は香港人のように感じるのは、今の
香港の情勢を重ね合わせてしまうからかもしれません。
この映画は5人のスタッフで撮影されたそうで、中国では
「体制に反対するようだ」と上映禁止になったそうです。
映画のラストに映るサンが両親にあてた遺書には、ペンが文を
書き足し、さらにチャウが拙い文を書き足しています。その内容を
読むと、映画の最後に流れる
「世界は君たちのもの、そして私たちのもの。しかし最終的には
君たちのものだ。君たち若者は気力旺盛で、活気にあふれている。
まるで朝8時の太陽のようだ。私たちの希望を君たちに託したい」
という毛沢東の言葉と現実との距離の大きさに思わずため息が
漏れてしまいました。
JUGEMテーマ:邦画
出典:IMDb
「狐狼の血」
監督:白石和彌
原作:柚月裕子
2018年 日本映画 126分 R15+
キャスト:役所広司
松坂桃李
真木よう子
滝藤賢一
竹野内豊
ピエール瀧
石橋蓮司
江口洋介
中村倫也
広島、呉原市内で、尾谷組と五十子会系加古村組の
抗争が始まろうとしている時、所轄の署に新米刑事
日岡が赴任する。彼はベテラン刑事大上と金融会社員
失踪事件を捜査し始めるが...。
<お勧め星>☆☆☆☆ イケメンばかりが罵声、怒号を
飛ばし、懐かしい東映仁侠映画の再来を感じます。
「正義」は誰のため
監督は「凶悪」(2013)
「日本で一番悪い奴ら」(2016)
「彼女がその名前を知らない鳥たち」(2017)の
白石和彌。「凶悪」では、背筋がゾクゾクするほどの
恐怖を感じさせる人間の姿を徹底的に描き続けていました。
山田孝之より、ピエール瀧より、リリー・フランキーが、
どうしようもなく「悪」なんです。あの細くて優しそうな
眼は「万引き家族」(2018)では万引きする時の
ズル賢そうな眼にも変わるし、同居する子供を見つめる時の
愛情のこもったものにも変わるし、スケベそうなものにも
変わります。なんて変幻自在なんだろう。
「彼女がその名前を知らない鳥たち」では、とにかく
蒼井優さんの演技のふり幅の大きさに驚かされました。いや、
いつも驚いてます。ラスト付近は原作を読んでいなかったので、
まさに「あっ」。
さて、この「狐狼の血」は波が岩にあたって白く砕ける映像
から「東映」のロゴが浮き上がります。懐かしい東映仁侠映画
の再来を思わせますね。とはいえ、ホラーもスプラッターも
サスペンスもだいたい平気なのに、「ムカデ人間」だって、
まあ普通に見られるのに、邦画の任侠物はどうも触手が伸びず
「アウトレイジ」シリーズでようやくその壁を克服した
ヘタレです。なのに、冒頭から豚小屋のシーン。
そもそも豚コレラ発生のニュースを耳にしながら、豚の肛門だの
うんちだの大アップで見せられるなんていやいや。
時代は、昭和63年。中盤、右翼団体の事務所のテレビ映像に、
昭和天皇のご病状がテロップで流れ続けています。まさに昭和が
終わろうとしていた時代なのです。
場所は広島県呉原市。尾谷組のシマに新興の五十子会系加古村組が
入り込んできたことから抗争の火種がぽつぽつわき始めている。
そんな時、所轄の警察の第二課にひよっこ刑事日岡が配属される
わけです。
出典:you tube
日岡がコンビを組むのは、ベテランで破天荒な刑事大上。
役所広司がギラギラした演技を見せるのは「渇き」(2014)
以来でしょうか。汗がギトギト光っています。そしてスケベです。
暴力団はもちろんワルぞろいだけれど、それを取り締まる二課の
メンバーも、同じくらい悪いんです。今でも組事務所への
家宅捜索に入るニュースを見ると、
「はて?どちらが組の方ですか?」
といつも思ってしまいます。
出典:you tube
竹野内豊、江口洋介に加え、今回目に留まったのは中村倫也の
イケメンぶり♡
キレイなお顔の人がキレると怖いですよ。
もちろんピエール瀧は、相変わらずの存在感を見せています。
キレイなお顔を言えば日岡役の松坂桃李だって負けていません。
中盤辺りまでは、大上刑事に反発し、自分の理想を追求しようと
します。その顔は序盤にボコボコになってるけど。
そしてまさに血で血を洗う争いに中で「正義」への疑惑がわくん
ですね。ルール通りに職務を果たすことで「安全」を守れるのか。
その「正義」は誰にとってのものなのか。
「アウトレイジ」では遠目にしか映らなかった、首がほぼ切れる
シーンは、今回は日本刀で、ゆっくり、じっくり見せていきます。
この男子トイレの個室内のカットは、前後左右から映せるように、
その都度壁を外していったという。それだからこそものすごく
インパクトの大きな映像になっています。
よくできている映画だし、真木よう子のクラブのママ役も似合って
いたし、伏線もうまく回収されていたけれど、やはり二回は見たく
ない映画ですね。
「ブラック・スキャンダル」
原題:Black Macs
監督:スコット・クーパー
2015年 アメリカ映画 123分 R15+
キャスト:ジョニー・デップ
ジョエル・エドガートン
ベネディクト・カンバーバッチ
ロリー・コクレイン
ケヴィン・ベーコン
1970年代の南ボストン。アイルランド系マフィア
のジミーは、同じ地区出身のFBI捜査官コノリーから
イタリア系マフィアを排除するため、協定を結ぶ話を
持ちかけられる...。
<お勧め星>☆☆☆☆ すごく面白かった。ただ同じ
名前の人や顔が似た人がいて、人物を覚えるのに苦労
しました。
ジョニー・デップの役作りは本当に圧倒されます。映画
内の薄毛は、特殊メイクだそうですが、右の前歯が変色
しているところまで、本人に似せています。できれば
人物相関図を片手に見たいところですが、それは映画が
終わってから、幾度となくチェックしてカバーしました。
始まりはFBI捜査官と取引するために、ジミーこと
ジェームズ・”ホワイティ”・バルジャーの手下が証言を
するところからです。その男はケヴィン。
そして時はさかのぼり、1975年のケヴィンに変わり
ます。彼はジミーの店の用心棒として立っており、店の
前でもめ事を起こすのです。最初から暴力の応酬で、
使う言葉には必ずfuckがついている。まさにマフィアの
世界です。
さて南ボストンは、サウシーと呼ばれ、アイルランド系
マフィアの縄張りであったものの、イタリアン・マフィア
としのぎを削っていたらしい。ジミーは「仲間同士の
忠誠心」を何よりも大事にし、裏切りは絶対に許さない
男だったのです。そのあたりは序盤にバンバン裏切り者を
射殺するシーンからも伺えます。
彼と親しいのは、同じサウシー出身でFBI捜査官ジョン・コノリー
で、この役を演じるのは「エクソダス:神と王」(2014)
などのジョエル・エドガートン。彼はFBI内で手柄をあげるため
ジミーを利用しようと考えるわけです。
このコネリーの上司役でちょっと老けちゃったケヴィン・ベーコン
が出演しているのはうれしい限り。不良や悪役から一皮むけた
感じがします。彼の向かって右手にいるのがジョン・モリスと
いい、「誘拐の掟」(2014)のデヴィッド・ハーバーが
演じていますが、実はコノリーもファーストネームがジョンなので
まず戸惑います。一応字幕では使い分けてあったけれど、ラスト
付近にはどっちのジョンだろうと思ってしまうこともありました。
で、コノリーは、イタリアンマフィア、アンジュロファミリーを
潰すために、ジミーに情報屋をするように持ち掛けるわけです。
もちろん見返りは、ジミー一味「ウィンター・ヒル・ギャング」
の悪事には目をつぶるというもので、これによってジミーたちは
どんどん勢力を拡大していきます。この話に乗る前に、実は
ジミーは同士のミッキーをアンジュロファミリーに射殺されて
おり、その報復も兼ねて話に乗るのです。時代を感じさせる
バカでかい車の窓を手でくるくる開けて、そこから発砲すると、
相手の頭を確実に撃ち抜き、血しぶきがウィンドーガラスに
飛び散るシーンは何度見ても怖い。
一方でジミーの弟ウィリアムことビリーは、上院議員をしており、
母親の家での食事風景を見ると、本当に微笑ましく感じられるのです。
ベネディクト・カンバーバッチはちょっと太ったかな。仲間、特に
血縁の絆は強く、中盤でのアイルランドの祭り「セント・
パトリックス・デイ」での兄弟の目配せは、それを痛切に感じさせ
るのです。
しかし、ジミーの息子が突然の病で亡くなり、妻も彼のもとを去り、
さらには最愛の母が亡くなると、ジミーの人間不信は強まり、その
残虐性も強まっていくのです。どんどん規模を広げていったジミー
のその後の姿は、コノリーの焦燥感と交互に映り、栄枯盛衰を感じ
させます。しかしラストのクレジットで流れた登場人物の現在を
見ると、「忠誠心」を持ち続けたのは誰かがよくわかります。
色恋を一切排除した、まさに男の映画でした。