スポンサーサイト
一定期間更新がないため広告を表示しています
- 2023.01.12 Thursday
- -
- -
- -
- -
- by スポンサードリンク
JUGEMテーマ:SF映画 一般
出典:IMDb
「TENET テネット」
原題:Tenet
監督:クリストファー・ノーラン
2020年 アメリカ=イギリス映画 150分
キャスト:ジョン・デヴィッド・ワシントン
ロバート・パティンソン
エリザベス・デビッキ
アーロン・テイラー=ジョンソン
クレマンス・ポエジー
男は何かの「テスト」に合格し、ある任務を与えられる。
それは時間を逆行させる武器による「第三次世界大戦」
を防ぐことだった。キーワードは「テネット」。男は相棒
ニールと共にその武器を扱う商人へ近づいて行くが...。
<お勧め星>☆☆☆☆ わかったようでわからないけれど、
スリルとアクションとストーリーに一気に心を奪われ
ました。
無知は我々の武器
クリストファー・ノーラン監督作品は結構な数見ているの
ですが、
「インセプション」(2010)
「インターステラー」(2014)
は後から必死で考えても理解できない部分がありました。
そして今作もそれに近いものがあります。それでも150分
を一気に見られてしまうという魅力のある映画です。
冒頭にキエフ国立オペラハウスに突然武装集団が侵入します。
ここでまずいろいろ疑問がわきますが、二つわかったことは、
「おかしな武器」つまり銃弾が逆行する銃を使う集団がいる
ことと「黄昏に生きる」「宵に友なし」という合言葉を交わす
メンバーがいることです。そしてシーンは変わりCIA?の
メンバーらしき2人の男がロシア人から拷問を受けています。
一人の黒人男性は、もう一人が手渡した「自殺ピル」を飲み
(いやその前に歯を抜かれています)自殺を図るのです。
男が目を覚ますと、「テストに合格した」と告げられ、彼は
ある任務を与えられます。それは「TENET」という
キーワードを駆使して第三次世界大戦を阻止するという壮大な
任務で、まず彼は驚くべき光景を目にするのです。
第三次世界大戦は、SF映画でよく見られるようにその後に
荒廃し、汚染された地球が残る核戦争かと思いきや、そこで
使われる武器は「時間を逆行させる」というもの。
通常の兵器はその使用によって未来を変えてしまいますが、
この武器を使うと過去を変えてしまうというのです。過去が
変われば未来の世界も変わるし、もしかしたら消し去る
こともできるという極めて恐ろしいものです。
これこそ究極の兵器なんだろうな。この辺りまでは頭がついて
行っています。
出典:youtube
そして男には突然「ニール」という相棒が出現します。その
相棒とインドで待ち合わせ、武器商人サンジェイン・シンの
家に侵入します。この侵入方法がミッションインポッシブル
とは正反対のアナログな感じでいいです。監督自身が
「007シリーズのファン」と公言しているだけあり、ビルに
張り付くことができる手袋を使うなどというものではなく、
普通にロープをひっかけ、ビルをヒョーイヒョーイと伝わって
上っていき、危険を感じたら、そのロープを使って降下し
逃げるというもの。SF映画であるけれど、かなりこだわりの
ある作り方だと感じます。
そして「時間を逆行させる武器」をロシア人でイギリス在住の
アンドレイ・セイターという男が扱っているらしいという話を
聞き、彼らはその妻キャットに接近することを計画するのです。
なんせアンドレイは大金持ちかつ自前の用心棒だらけに囲まれて
いるし、直接会うことが不可能に近いという理由から、絵画の
鑑定士をしているキャットを利用しようとするのは、まあ
よくわかる。
出典:youtube
このキャット役のエリザベス・デビッキがものすごーく綺麗
なんです。調べたら自分が見た映画にあれこれ出演しているのに、
これっぽちも記憶に残っていません。おかしい、こんなに綺麗
なのに。身長は191cmでスタイル抜群、頭が小さく9頭身
美人と言っても過言ではないほどです。
キャットとアンドレイは実は不仲であり、それも利用したわけ
です。ところがキャットと話している店に、なんだかとても
悪そうなメンツが集まって来ます。キャットはアンドレイの
執拗な束縛を受けており、妻の不貞を疑ったアンドレイが
よこした殺し屋軍団のようです。でもめっちゃ強い男は、調理場で
大格闘の末、彼らを叩きのめすのです。
この自分何者?そう、この男が何者であるかは、最後まで
分かりません。(最後に分かる?)
キャットが教えたオスロの空港にあるフリーポートという
アンドレイの貴重品庫を彼らはめざします。このフリーポートは
タックスヘイブンの倉庫であり、世界中の大金持ちが自家用
ジェット機で空港に降り立ち、そのまま貴重品を保管できると
いうものらしい。庶民がちみちみ税関申告書など書いているのとは
レベルの違う話です。この倉庫にあるキャットが贋作家に
描かせ、それを知っていて高額でアンドレイが落札したゴヤの絵を
処分して、彼女をアンドレイの脅迫から解放しようと計画するの
です。ここでも航空機を使い、緻密な計画を立てて倉庫突撃の
準備をし実行します。その下見の過程と実行時が交互に映るので、
なるほどこういう風にできたのかと納得。(まだついて行けます)
ところがそこに既に銃撃の跡があるガラスが現れます。
「これは今から起こるんだ」 は?
そして突然回転ドアからガスマスク姿の二人の男が現れるのです。
そして銃撃が始まります。ニールは
「この二人は同一人物だ。1人が逆行している」 は?
(いや、まだついて行っている気がします)
一方めちゃくちゃ何か起こりそうなアレクセイからの誘いで
ボート競走に参加し、キャットのボートとその男は海の上を駆け
抜けます。ところがキャットが怒りのあまりアレクセイを海に
突き落としてしまうんです。それをなぜか救うのが例の男です。
この理由は後でよーく考えるとわかってきます。しかし
アレクセイのヨットに何かが運び込まれるのを見ていたその男は
ボディガードに見つかり、拘束されてしまうし、アレクセイを
殺そうとしたキャットも拘束されます。この後の金塊輸送車を
前後左右からがっちり取り囲み、最終的に「プルトニウム241」
を例の男が奪い出すシーンは見事な映像で、もうね、意味が
十分分かっていなくてもワクワクドキドキしてくるのです。
そもそも「プルトニウム241」を皆が回収したがるのは、
それが未来の科学者が開発した時間を逆行させる「アルゴリズム」
の9つの部品のうちの1つなわけで、アレクセイはどうしても
それが欲しいと思っています。それはなぜか?
また例の男はそもそもCIAだったのか?高速道路を走行中に突然
アウディのSUVがバック走行してきます。そこに乗っているのは
アレクセイだし、銃撃戦の中で逆行している人物がいたり、赤い
画面と青い画面で同じ人物が同時にガラス越しに登場しているのに、
話すことが全く違っていたりと、この辺りからそろそろ頭が
ついて行かなくなってきます。それでも飽きないんですよ。
アレクセイに撃たれてしまったキャットの怪我は重く、例の男は
ニールにあるプランを持ち掛けます。それはとても危険だし、
いろいろ注意点もあるのだけれど、そのプランを実行し始めると、
前半の謎がスラスラ解けてきます。(えっへん)
ニールがなぜ例の男の飲み物の好みを初対面から知っていたのか。
それはラスト付近に見つけたニールのバックパックについて
いるキーチェーンの存在に注目しましょう。
実は2回見てしまい、そのおかげでわからない部分が少し解明
できた気がしています。でもネタバレしている人の説明を読んでも、
やっぱりややこしくてわからないところがあります。
でもお勧め映画です。
JUGEMテーマ:SF映画 一般
出典:IMDb
「オクジャ/okja」
原題:Okja
監督:ポン・ジュノ
2017年 韓国=アメリカ映画 120分 R15+
キャスト:ティルダ・スウィントン
ポール・ダノ
アン・ソヒョン
ピョン・ヒボン
スティーブン・ユアン
韓国の山奥に暮らすミジャはオクジャと呼ぶ巨大な豚の
世話をしながら日々も生活を送っている。しかしかつて
スーパーピッグを誕生させたミランド社によって、
オクジャは連れ去られてしまい、ミジャは単身その後を
追うのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆ これは大画面で見たい映画です。
ストーリーは文句なし。
金の豚は役に立つ
監督はポン・ジュノ。今年のカンヌ国際映画祭パルムドール
受賞作「パラサイト」を手掛けたそれはそれは有名な方です。
同じ韓国人監督でもキム・ギドク監督は「鬼才」と呼ばれ、
もやもや〜とした内容が多く、ヨーロッパでの評価が高いの
ですが、個人的には「毎回、暗い」と思っています。
「魚と寝る女」(2000)「受取人不明」(2001)
「春夏秋冬そして春」(2003)どれも暗い上に眠い。
「嘆きのピエタ」2012)「殺されたミンジュ」(2014)
「The NET 網に囚われた男」(2016)もやっぱり暗い。
暗すぎる。
それに引き換えポン・ジュノ監督は「殺人の追憶」(2003)
「グエムルー漢江の怪物ー」(2006)「母なる証明」
(2009)「スノーピアサー」(2013)ととりあえず理解
しやすいし、動きのある映像を提供してくれます。時折笑いも
含めつつ、ストーリーの骨太さとメッセージ性の強さも感じる
のです。
今作はグエムル同様にCGで表現されたオクジャが登場します。
スーパーピッグという10年前にミランドグループが遺伝子操作
で誕生させたいわば「でかい豚」26匹のうちの1匹です。
世界の食糧難を解消し、その部位を全て食べることができるうえ、
排せつ物が最小限であるという画期的な豚の排せつ物は、序盤に
ミジャと森で戯れている時は、大そう可愛い物体のように
思えますが、中盤に追手に向かってポンポン放たれると、やっぱり
「ウンチ」だなと実感します。当たり前か。
さらにこのオクジャが全く可愛いくないのです。豚というより
巨大なカバであり、ムチムチしたからだと象の雄たけびのような声、
本物の豚のような瞳...きっとアニメにしたら愛嬌があった
でしょうに、実写になると「トトロ」のようにはいかないのです。
出典:IMDb
それでも森の中で、ミジャと狩りをしたり、ふざけたり、彼女を
腹の上にのせて昼寝をする姿などを目にすると、
「やばい〜」←可愛いの意味で。
ストーリーは予想通り、オクジャを引き取りに来たミランド社と
ミジャの攻防が始まるものの、そこにALF(動物解放戦線)という
非暴力のテロ集団の手助けが加わり、アクション映画さながら
シーンも展開されます。
出典:IMDb
ミランド社のトラックに積み込まれたオクジャを救うべく
ミジャがそのトラックの屋根にしがみつくと、何ということか、
いくつもの橋げたが登場し、体を伏せてギリでかわすという
ハラハラシーンのあとでトンネル内でのオクジャとミジャの
再会は涙なしには見られません。オヨヨ。「オクジャー」と叫ぶと
オクジャがミジャに向かって猛突進するのです。そこに車が
何台あろうとも、トラックがあろうとも全部ぶっ飛ばして向かい
ます。そしてオクジャの耳をめくって何かをささやくと、
オクジャはとても静かになるんです。なんて言ってるんだろう。
出典:IMDb
ところがミジャを救ってくれたはずのALFの本当の目的と
ミランドグループ社長ルーシーの指示で、事態はどんどん変化して
いくのです。ルーシーはとにかく「目立つ」「儲ける」の2本柱に
執着しており、この役を演じるのがティルダ・スウィントン。
出典:IMDb
そうえいば「スノーピアサー」でもかなりイカれた役を演じて
いました。
山奥で、都会のことは何一つ知らず、人間の欲望も知らず、物の
流通のしくみも知らなかったミジャが、欲にまみれた大人に翻弄
されるというありきたりな流れの中で、日頃私たちが口にしている
「肉」がどういう過程を経てで出回ってくるのかが終盤にしっかり
映っています。
「いのちの食べ方」(2005)はそれをドキュメンタリーとして
何の感情も込めずに描いていました。しかし今作は多くの感情が
入り込んでいます。そしてなにがしかの生き物を口にしている身で、
ヒステリックに動物愛護を訴えることのエゴも感じてしまうのです。
さらにミランド社の最終目的は「金儲け」であるけれど、その仕事の
おかげで安くておいしい肉を世界中の多くの人々が口にできていると
いうことは「完全悪」と断定できない理由の一つだと思うのです。
隠蔽された事実は許されませんが。
だからといって毎回「ありがたくいただきます」ということを
忘れないようにしよう、などとありきたりなことは言いたくない。
オクジャとミジャが強い愛情で結ばれた姿に純粋に感動しようと
思います。
ミランド社のジョニー博士役のジェイク・ギレンホールの動きや
しゃべりが本当におかしいので、ティルダ・スウィントンと比較
しながら見るのも楽しいです。
※余談ながらブログを開設して10年と30日。この記事が3000件目
になりました。自分の記録にと思って書いていますが、読んでくださって
ありがとうございます。
JUGEMテーマ:SF映画 一般
出典:IMDb
「バード・ボックス」
原題:Bird Box
監督:スサンネ・ビア
2018年 アメリカ映画 124分
キャスト:サンドラ・ブロック
トレバンテ・ローズ
ジャッキー・ウィーバー
ローサ・サラザール
臨月を迎えているマロリーは、生まれてくる
子供を養子に出すことを考えている。そんな時
欧州の集団自殺が世界に広がり、街は大混乱に陥る。
必死で駆け込んだ1軒の家で彼女はほかの男女と
ともにサヴァイヴァル生活を開始するが...。
<お勧め星>☆☆☆☆ 布越しに感じる光と、耳に
入ってくる音や移動する木の葉で恐怖を体感できます。
愛情は人を弱くするし強くもする
近年見た映画で同じような作品があったなあとメモを
見返すと、
「ドント・ブリーズ」(2016)息をしたら終わり
ー20年に一度の恐怖の作品と言われ、劇場鑑賞したら、
あっと驚く展開にまさにあっと驚き、さらには闇と音が
効果的に使われており、心臓が止まりそうでした。
(それほどでもない)
そして「クワイエット・プレイス」(2018)
音を立てたら終わりー超えても超えても襲い掛かる恐怖
との戦いで母の強さを実感しました。これは割といい
お話にもなっていたんですよね。
さらには「ライト/オフ」(2016)電気を消すと
それが来るーこの映画は電気、つまり光を利用し、それが
消えた時に訪れる闇との対比をものすごく上手に活かして、
それはそれは恐怖に満ちた映像を繰り出してきます。
個人的にはこの映画が最も怖かったですね。今も夜一人で
見る気持ちは起きません。
さてNetflixオリジナル映画「バード・ボックス」は
『目を開けたら終わり』なんです。バード・ボックス=鳥の箱。
目を開けたらどうやら危険が迫るらしいと思っていると、
映像は現在のサンドラ・ブロック演じるマロリーと男女の
幼い子供になり、マロリーがものすごく怖い顔で
「目隠しは外さない、見たら死ぬのよ!」
とこれから始まる川下りについて説明をしているのです。
そして5年前、マロリーが大きなお腹で絵を描いている姿に
変わります。マロリーは周囲とは一切接触を持たず、
ジェシカという妹とだけ交流があるらしい。全く似ていないが
妹なんだな。定期健診で訪れた病院での女性の異変から始まり、
街中が次第に混乱に満ち、遂にはジェシカも「それ」を
見てしまうのです。
出典:IMDb
「それ」は何かわかりませんが、「それ」を見ると瞳が変わり、
自死願望が起きるらしい。マロリーを救おうとして家に招き
入れた女性も「それ」を見て、悲惨な最期を遂げます。
この辺りに無駄な映像はなく、また逃げ込んだ家の中での
パニック状態の人々の姿もリアルに伝わります。この家の隣人で
マロリーを救おうとした女性の父親ダグラス役は
ジョン・マルコヴィッチ。彼も含めて逃げ込んだ人々が大変
個性的で、名前は覚えられませんが誰がいるかはすぐに頭に
入ります。彼らは人種も年齢も職業もバラバラであり、この
家の中が小さな世界を象徴しているかのようです。
「アニマル・キングダム」(2010)のジャッキー・ウィーバーも
いましたね。
そこからこの家にいる人々のサヴァイヴァル生活が開始される
のです。とにかく外を見てはいけない。外に出るときは目隠しを
するか目をつぶるかしないと「それ」を見ると、瞳が変貌し、
様々な方法で死を選んでしまうらしい。「らしい」が多いのは
「それ」が何かわからないからです。わからないからこそ、
じゃあいったい「何を」見たんだ?という疑問を持ち続ける
ことができます。
出典:IMDb
子供2人を連れて川下りを開始するマロリーの姿は、5年前の
その家の人々の姿と交互に描かれ、最終的に冒頭のシーンで
つながるのです。「ゼロ・グラヴィティ」(2013)の時の
ようにサンドラ・ブロックがとても強い女性を演じます。
しかしその強さは冒頭は極めて自己中心的なものとして描かれて
いました。それがどのように変貌していくか。とにもかくにも
子役がずるいほどに可愛いのです。そして2人の子供を名前では
なく「ボーイ」「ガール」とマロリーは呼びます。
生き残るために希望を捨てるか、実現の有無にかかわらず将来の
夢や希望を持たせるか。それはどちらも間違っていないし、
同じことなのかもしれません。登場人物のセリフに「はっ」と
思うようなものが多く、脚本の秀逸さを実感します。そして脚本の
エリック・ハイセラーは「ライト/オフ」「メッセージ」(2016)
も携わっていたと知り納得。
川下りのシーンで急流での見張りが必要になったとき、2人の
子供のうち1人を選べなくなっていたのを見て、映像的に初めて
彼女の心の大きな変化を感じました。
ちなみに「小鳥」は「それ」が近づくと大騒ぎをするもので、
サヴァイヴァル生活中に物資調達のため仲間と訪れたスーパーに
たまたまいたものです。それも含めてすべてに意味がある気がします。
JUGEMテーマ:SF映画 一般
「メッセージ」
原題:Arrival
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
2016年 アメリカ映画 116分
キャスト:エイミー・アダムス
ジェレミー・レナー
フォレスト・ウィテカー
マイケル・スタールバーグ
マーク・オブライエン
ある日、全世界に12隻の謎の宇宙船が出現する。
言語学者のバンクスは物理学者のドネリーと共に
軍の要請で、船内にいる宇宙人との対話を試みるが、
彼らが発する言語らしきものは極めて難解なもので
あり...。
<お勧め星>☆☆☆☆ 見終わってからゆっくり
考えると心の底から感動する映画です。
言語と時間
監督は「プリズナーズ」(2013)「ボーダーライン」
(2015)そして「ブレードランナー2049」
(2017)のドゥニ・ビルヌーブ。「プリズナーズ」
では、ヒュー・ジャックマン演じる父親が、誘拐された
娘を助けるため、あらゆる手段を用いて行動する姿に
ハラハラしながら、ラストに響き渡るホイッスルの音が
効果的に使われていました。「ボーダーライン」は一言で
言うと巨悪を倒すためには悪を用いるのも仕方なしと
いうところでしょうか。その「悪」の大きさの区別は
誰がどういう立場で行うか極めてあやふやなものである
ことが、ただただ空しく感じられました。
ベニチオ・デル・トロの存在感がすごかったなあ。
そして巷で好評の「ブレードランナー2049」のみ
未見です。
さて、この映画は、見終わるとまず覚えるのは「時間」と
いうものへの「違和感」です。原作はテッド・チャンと
いう方が書いた「あなたの人生の物語」。この題名から
わかるように、内容が単なる宇宙船が出現したという
SFではないのです。
しかしあの宇宙船の形は何なんだろう。監督自身が
「「ばかうけ」に影響を受けたものだ」
と公開直前に語ったのは素晴らしいジョークですね。
また映画内に登場する宇宙人の姿は、顔のないタコのようで、
急に触手が伸び、墨のようなものを出して「文字」らしき
ものを描く。この発想は斬新です。
「われわれはうちゅうじんだ」などと喉にを叩きながら
言葉を発するのが宇宙人と思っているあなた、間違って
いますよ。
そしてこの「文字」らしきものを読み解くのが、言語学者
バンクスと物理学者ドネリーなわけですが、この宇宙船が
全世界に12隻同時に出現したことから、それぞれの国で
対応が異なるのは当然のこと。映画内では一応中盤までは
情報を共有して協力し合うのです。ところが「地球征服」
が目的ではないかという脅威が根底にある人々が多いことは
確かなことで、その協力体制が崩れてしまうと俄然スリルに
満ちてきます。とはいえ時折、いや冒頭から映っていた
バンクスの娘の誕生から死までのシーンは何の意味を持つの
でしょうか。
SF映像に気を取られて、宇宙船の内部やその目的を知ろうと
悩んでいると、そのことをうっかり忘れてしまうのです。
それが一挙に回収されるのがラスト10分くらいでしょうか。
バンクスが宇宙人の言語を理解する際、彼らの文字は
「表意文字」で、思考は話す言語で形成されると言った時を
思い出しましょう。そして彼らがバンクスに残した
メッセージ(世界のあちこちで宇宙人をコンタクトを
試みた人々にも残ったのだろうか)を知ると、この映画の構成が
ものすごく良くできていると実感するんです。そんなのありか!
アガサ・クリスティーの「スタイルズ荘の怪事件」「カーテン」
のように2度と使えない手法だと、ちょっと憤慨しつつ、
その数倍も感動してしまうのです。
「パッセンジャーズ」(2016)などを見ないでこちらを
先に鑑賞すべきでした。
JUGEMテーマ:SF映画 一般
「ゴースト・イン・ザ・シェル」
原題:Ghost in the Shell
監督:ルパート・サンダース
2017年 アメリカ映画 107分
キャスト:スカーレット・ヨハンソン
ビルウ・アスベック
ビートたけし
ジュリエット・ビノシュ
マイケル・カルメン・ピット
かつてテロで脳以外を失い、全身が義体の
キリアン少佐は、公安9課とサイバーテロリスト
を追っている。しかし時折入り込む記憶の断片と
テロリストの残した言葉から自分自身が別の記憶
を植え付けられたのではないかと疑い始め...。
<お勧め星>☆☆☆☆ あら、面白いじゃないですか。
自分は何者で何をすべきか
コミックは一切読まないし、押井守監督のSFアニメ
「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」も未見どころか
その存在すらも知らなかったので、このハリウッド
実写映画版は、SF映画単品として鑑賞できました。
見終わってレビューを読むと、やはり原作コミックの
ファンの方々の不評を買っています。その点前知識が
ないのでストレスフリーで目に入るものだけを楽しむ
ことができました。
近未来の日本だか香港だかどこの国かわからない世界観は
「ブレードランナー」(1982)のそれを基調としている
のが丸わかりです。やはりあの映画はすごいんだよね。
ただ乗り物、つまり車やバイク、また銃などにそれほど
アイデアをかけていないのか、ややショボい。終盤に
登場する多脚戦車も出し惜しんでようやく出てきたと
思ったら大して活躍しません。斬新な姿でもなかったな。
それでもスカーレット・ヨハンソン演じるキリアン少佐の
ムチムチのボディがなんとも魅力的。まるで何も着ていない
かのように見えるボディスーツは体型がはっきりわかり、
変なかつら(日本人を意識したのか黒髪のもの)をやめて
思い切ってスキンヘッドにすればいいのにと思ってしまう。
予備知識がないので、序盤の展開が少しわかりづらかった
ですが、総理(一切登場せず)、公安9課、
ハンカ・ロボティクス社の関係が分かってくると極めて単純な
構図が出来上がります。そうか冒頭のあの芸者ロボットは
そういう目的に使われていたのね、なんて後付けでわかる
からちょっと残念でした。面白い顔のロボットでしたねえ。
9課の課長荒巻役はビートたけしで、セリフが棒読みなのが
気になっていたら、それは終盤の、襲撃への抵抗シーンで
解消です。そうよ、やはりたけしさんは「アウトレイジ」の
世界なのよ。
ハリウッドから見た日本(だと思う)のイメージは、こんな
ものだろうし特に気にしません。日本人がちゃんと日本語を
話していただけで十分です。そういえば空がいつも曇って
いるか晩なのは何か気候変動を描いていたのかしらん。
一番好きなシーンは、キリアンが他のロボットの脳にダイブ
する光景で、あれは3Dで見たら美しかったし、そしてスリルが
あっただろうなあと思います。スカーレット・ヨハンソンの
アクションもしっかり見られたし、思わぬところで桃井かおり
さん登場。近未来も「笛吹ケトル」健在なのね。よかった、
家にもあるから取っておこうっと。
単純な終わり方なので気楽に見られる映画です。
JUGEMテーマ:SF映画 一般
「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」
原題:Invasion of the Body Snatchers
1956年 アメリカ映画 80分
監督:ドン・シーゲル
キャスト:ケヴィン・マッカーシー
ダナ・ウィンター
キャロリン・ジョーンズ
サンタ・ミラの医師マイルズは、元恋人ベッキーの
従妹が「伯父は別人だ」と訴えるのを聞き、「心の
問題だ」と諭す。しかしその後も身内の変化を訴える
町民が相次ぎ、彼はその町民の変化に気づいていく。
<お勧め星>☆☆☆☆ 発想が素晴らしく、それを当時
の技術で見事に描いており、じわじわ恐怖を感じます。
ネタバレしています。
「SF/ボディ・スナッチャー」「ボディ・スナッチャーズ」
「インベージョン」とリメイクを繰り返されたSF映画の
オリジナル作品です。リメイク版で見たのは「インベージョン」
のみで、ニコール・キッドマンの美しさにほれぼれしつつ、
大方のストーリーはわかっているのですが、年代や主人公の
設定が異なると、こうも雰囲気が違うのだと実感します。
モノクロ特有の影を使った恐怖の演出は、CGよりも優れていて
製作側の努力を感じ、あの年代によく作れたなと思ってしまう。
「インベージョン」鑑賞後、オリジナルを見たくなり、探し
ましたが、レンタルは2、3、4作目のみで、セルDVDでようやく
購入できました。1、2か月のうちに価格が下がっていましたよ。
ストーリーは、サンタ・ミラという小さな街の人々が少しずつ
別人に変わっていったことを、一人逃げ出したマイルズが回想する
という形で映し出されていきます。
マイルズは離婚したばかりだし、運のいいことに元恋人で
イギリス人のベッキーも離婚した身。ベッキーさんきれいです。彼が
ある時学会から戻ってくると、なんか街の様子がおかしい。怯えた
少年は「母は別人だ」と言うし、ベッキーの従妹も「伯父が別人」と
言うのです。とはいえ、見た感じも記憶も傷跡もすべて同じだから、
それは「心の問題」と片づけていたのですが、友人ジャックの家で
奇妙なものを見せられます。
ここははっきり映らなかったけれど、人間もどきの物体で、なんだか
ジャックに似ているから怖い。これが瞬きする瞬間はぞぞーっと
しますよ。
「宇宙種子」といわれるこの鞘の中で、泡ぶくになって何かが
変化していくんです。それは眠っている町民の脳波をそのまま写し
取るということで、つまり自分がもう一人でき、それは全く同じ姿
かたちをしているけれど、唯一ないのが「感情」なのです。
1950年代前半、アメリカ国内で起きていた「赤狩り」への批判とも
受け取れるし、共産主義者になることは「没個性」になる、つまり
意思をなくすということを非難しているとも受け取れます。終盤、
町民がこぞってマイルズを追いかけるシーンも怖いです。
「眠っちゃダメ」眠ると、違う自分が出来上がるけれど、体は2つに
なるから、もう1体はどうするんだろうね。効果音もワンパターン
でしたが、とても上手く使われています。
「オッデセイ」
原題:Martian
監督:リドリー・スコット
2015年 アメリカ映画 142分
キャスト:マット・デイモン
ジェスカ・チャスティン
クリステン・ウィグ
ジェフ・ダニエルズ
マイケル・ペーニャ
火星を探査中のヘルメス号は、猛烈な嵐に遭い、メンバー
の1人、マークが行方不明となる。他のメンバーもNASA
も彼の死を確信し、地球への帰還を開始するが、実は彼は
奇跡的にも生きていたのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆ 少し長めの映画ですが、ラスト付近
のスリリングな映像、そして懐かし音楽も含め面白かった。
<ネタバレしないように書いているつもり>
「キャスト・アウェイ」+「アポロ13号」のストーリーと
語る人もいる通り、そんな感じの映画です。火星の取り残さ
れたマット・デイモン演じるマークが、植物学者としての知恵
を絞っていかに生き延び、地球との交信をいかにして可能に
していくかが、シリアスなだけではなく、コミカルな映像も
含めて描かれています。そういえばマット・デイモンは
「インターステラー」(2014)でも違う惑星に取り残され
て、インチキをして迎えの宇宙船を呼び寄せていたようなこと
を思い出しました。
今回、個人的に最も楽しめたのは、ジェシカ・チャスティン
演じるヘルメス号の船長メリッサが、火星に置いて行った
音楽がディスコミュージックだったこと。おお、懐かしい。
そのメロディになぜか体が反応するのに、世代の異なる
マークにとっては「クソ」なんだって!
火星にたった一人取り残されたマークが、いかに水、空気、
電気そして食物を確保していくか、つまりハブに残された
ものでは、次回の探査船がやってくる4年後までは到底
尽きてしまうわけで、その研究の様子がテンポよく描かれて
いきます。とはいえ細かな説明は全然理解できなかったけれど。
成功すれば失敗、そして再び成功する。その繰り返しも決して
飽きることなく見続けられます。
NASAと交信できるようになるのか、またその方法は?そこも
興味深いです。
火星でのシーンはどこで撮影したかと思ったら、ヨルダンの
ワディ・ラムという砂岩と花崗岩でできた広大な谷で撮影された
とのこと。でも火星の雰囲気が(本物を見ていないけど)出ていた
なあ。ちなみに火星の重力は、地球の40%の大きさだそうですが、
監督は敢えて、それを表現しなかったそうです。だからマークは
宇宙服を着て普通に船外活動しています。
火星と地上との映像がほとんどで、宇宙空間での映像はそれほど
ありませんが、それゆえにラスト付近の宇宙での映像は、まさに
スリルに満ちていてハラハラドキドキものでした。
これは絶対に3D映像を見ることをお勧めします。