ロスト・ストレイト
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出典:IMDb
「ロスト・ストレイト」
原題:Tangeye Abu Ghurayb/The Lost Strait
監督:パラム・ダヴァコリ
2018年 イラン映画 93分 R15+
キャスト:アミル・ジャジディ
ジャバド・エザティ
イラン革命防衛隊第27師団は休暇に入った途端、
イラク軍の侵攻を知らされ急遽援軍に向かう。
アマル大隊の一員カリールたちは乏しい軍備と食糧の
まま激しい戦闘に巻き込まれていくのだった。
<お勧め星>☆☆☆ イラン視線で描かれた
イラン・イラク戦争ながら、戦争の不毛さを強く感じ
させます。
戦争は武器商人のためのもの
1988年7月12日、イラン革命防衛隊第27師団の
カリール、アジーズ、マジード、ハッサンが川辺で
くつろいでいるシーンから始まります。アジーズと
カリールが何を話しているか賭けたり、家の修理のための
借金の話や、アジーズが娘のためにイヤリングを買った
ことなどたわいもないことを言っていると、イラク軍の
国境越えの報告が入るのです。なぜか彼らは人参ジュースを
注文していて、それを一気に飲み干すと基地へと戻って
いきます。
出典:IMDb
なぜに人参ジュース?そして人参が山ほど置いてあったこと
から、常に飲んでいるのが人参ジュースだろうと伺えるのです。
と思って調べてみるとイランの人参ジュースは世界でも有名で
とてもおいしいらしい。アイスクリームが入っているものも
あるようです。人参フロートジュースかなあ。
イラク軍が国境を越え、化学兵器を使用し一般人まで犠牲に
なっているという悲惨な報告は、彼らが前線に向かうときに
すれ違う、負傷兵や避難民の姿を見てそれがそのまま事実で
あると物語っているのです。
のどかなシーンがのどかすぎただけにここから始まる熾烈な状況は、
ただ流れていく映像を見続けるしかありません。
出典:IMDb
出典:IMDb
容赦ない銃弾、砲撃、空爆でアジーズはあっという間に命を
落とします。昨日「娘へのイヤリングを買った」と言っていた
あのアジーズは二度と娘に会うことはないのです。
それが戦争の非情さです。
出典:IMDb
父親が戦争での負傷で寝たきりになっているアリは、まだ
あどけなさの残る少年であり、初めての出兵(これは無理
やり頼んだと思う)なので、「前線」というものを見たこと
がありません。勢いよくカメラを持ち、戦争を記録に残すと
言い放っていた彼が、爆風で耳鳴りが止まらなくなり、
目の前に現れる死体や負傷兵の山に、次第に言葉を失って
いきます。「戦争」というものを実際に見た者でなければ、
軽々しくそれを言葉にできるはずもないと思うのです。
しかしカリールたちは、激しい攻撃を受けると、まず「アリ」
の安否を確認します。勝手についてきてガスマスクすら
付けられず、銃を撃ったこともない少年を何とか守ろうと
するのです。
前線に向かってからの激しい戦闘シーンは、一瞬たりとも気を
許すことはできず、それに加え、「渇き」が襲い掛かるのです。
海峡を守るために砂漠地帯で戦闘を繰り広げるこの部隊は、
援軍も物資の補充もないまま戦うしかありません。それが
「祖国のため」の「殉教」であるのです。
「昨日の今頃のこと」を語り合うとき大爆風を受けますが、
直前の会話は
「人参ジュースを半分しか飲めなかった」
「アジーズが娘のイヤリングを買っていた」。
とてもたわいもないことなのです。
そして「イラク軍後退」と司令部の無線が流れますが、それが
なんと現場の状況とかけ離れたものであるか、これこそ戦争の
現実であると思うのです。



- 2019.10.01 Tuesday
- 戦争映画★★★
- 16:55
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- by マープル