グランドフィナーレ

5

JUGEMテーマ:洋画

 

グランドフィナーレ

 

「グランドフィナーレ」

原題:Youth

監督:パオロ・ソレンティーノ

2015年 イタリア=スイス=フランス=イギリス映画 

124分 R15+

キャスト:マイケル・ケイン

     ハーベイ・カイテル

     レイチェル・ワイズ

     ポール・ダノ

     ジェーン・フォンダ

作曲家フレッドは、女王陛下からの演奏依頼を断り、

親友で映画監督ミックと高級リゾートホテルで過ごしている。

彼はある理由から、名曲「シンプルソング」の指揮を断り

続けてきたが...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 映画全体が抒情詩のような雰囲気です。

 

〇見どころ

名作曲家フレッド・バリンジャー役のマイケル・ケインの

英国紳士らしい気品と、彼の親友で名監督ミック・ボイル役の

ハーベイ・カイテルの味わい深いルックスが、人生の終盤を

迎えた男たちの姿をそのまま表しています。

 

グランドフィナーレ

 

オープニングから女性シンガーのしっとりした歌が聞こえ、

高級リゾートホテルで、健康チェックを受け、おいしい食事をし、

ゆったりスパなどにつかった上、オイルマッサージを受ける。

まさに極楽のような(極楽を知らないけれど)生活を送る2人

なのですが、いまだ監督業に燃えるミックと、女王陛下からの

招待すら頑なに拒むフレッドの姿が対照的です。それはなぜ

なのか。

 

グランドフィナーレ

 

またフレッドの娘レナ役はレイチェル・ワイズ。彼女だけでなく

ミス・ユニバースの女性の超絶美しい裸体にもくぎ付け。その姿に

見とれる2人の老人には、まだ前途有望だと思えてしまう。

 

グランドフィナーレ

 

そしてミックの次回監督作品の主演女優ブレンダ役は、あの

ジェーン・フォンダです。彼女の口から放たれる厳しい言葉は

愛情に満ちているからこそ辛い。そのシーンから始まって、

ラストの「シンプル・ソング」の美しい歌声につながるストーリー

は感動を呼ぶこと間違いなしです。

 

●惜しいところ

中盤までかなり眠かった。

 

そうそうリゾート地でものすごく太った男性がいると思ったら、

世界のマラドーナ本人でした。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち

5

JUGEMテーマ:洋画

 

アイヒマンショー

 

「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」

原題:The Eichmann Show

監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ

2015年 イギリス映画 96分

キャスト:マーティン・フリーマン

     アンソニー・ラパリア

     レベッカ・フロント

 

ナチスドイツでホロコーストを指揮したアイヒマンが

敗戦から15年でアルゼンチンで拘束、イスラエルで

裁判を受けることになる。イスラエルのTVプロデューサー、

ミルトンは、アメリカからカメラマン、レオを呼び、

一流のチームでその裁判をテレビ放送しようと考えるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 なかなかよくできた映画です。

 

監督は「アンコール!!」(2012)の

ポール・アンドリュー・ウィリアムズ。この映画は、

アイヒマン裁判を全世界に放送しようと計画した人々の姿を

記録映像と撮影映像をうまく組み合わせて作られています。

 

アイヒマンショー

 

〇見どころ

イスラエルのTVプロデューサー、ミルトンに呼ばれた、

アメリカ国内で吹き荒れる赤狩りの嵐で仕事がないレオと

いう一流のカメラマンのそれぞれの私生活を少しずつ描きながら、

核心のアイヒマン裁判撮影までの苦労、そして実際の裁判時の

苦悩、葛藤などが次々に映し出されます。テレビ報道はある程度の

見立てがあるわけで、レオがアイヒマンに求めるリアクションが

一切得られないことへの焦燥感が強く伝わります。報道する側が

ほしい映像が事実は異なっていても、それが撮れたら、世間に

公開するんだろうな。このあたりも丁寧に見せてくれます。

 

アイヒマンショー

 

●惜しいところ

この実際の写真からもわかるように、アイヒマン裁判は、結果ありきの

ショーであり、新国家を進むイスラエルの国家のユダヤ人のために

行われた見世物なのです。そこに一切触れないのはやや一方的かな。

それは見た人が考えることなのかもしれません。

 

とはいえ、ファシズムはどこにでも存在する。誰もがファシストに

なりうる。理性の喪失が狂気への道。全て納得できる言葉であり、

「顔のないヒトラーたち」(2014)でも同じようなメッセージが

伝えられました。それでも同じ道を進もうとする人々がいるのを、

理性ある者が全力で止めるべきなのでしょう。

 

アイヒマンショー

 

レオの宿泊したホテルの女主人の腕にも番号がありました。過去を

語ろうとする口を封じてはいけないのです。いつまでも過去の

負の遺産にとらわれてはいけない?いやそれを語ることで正しい道を

進めるのです。

 

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


1001グラム ハカリしれない愛のこと

2

JUGEMテーマ:洋画

 

1001グラム

 

「1001グラム ハカリしれない愛のこと」

原題:1001 Grams

監督:ベント・ハーメル

2014年 ノルウェー=ドイツ=フランス映画 

91分 PG12

キャスト:アーネ・ダール・トルプ

     ローラン・ストーケル

     スタイン・ビンゲ

     ヒルデグリン・リーセ

 

離婚話が進行中のマリエは、病に倒れた父に代わって

ノルウェーのキログラム原器を持ってパリ国際セミナー

へ向かう。現地で知り合ったパイと楽しい時間を過ごすが、

帰国した彼女は自動車事故を起こし、原器を破損させた上、

父が亡くなってしまう。

 

<お勧め星>☆☆☆ とても単調だけれど、時々クスリと

笑えるシーンや絶妙なセリフに引き込まれます。

 

〇見どころ

中盤、心臓病で入院した父アーネストが「魂は21g」と言い、

その父の遺灰を測りにかけると、最初1022gだった数字が、

少しずつ減っていき、1001gになるのは、とても粋なシーン

です。

 

1001グラム

 

1001グラム

 

ノルウェー国立計量研究所に一緒に勤務する父とマリエの毎日の

喫煙時での会話や、パリへ向かう際の空港の手荷物検査員との

やり取り、これは3回出てくるけれど、3回ともバージョンが

違っていて楽しいです。またノルウェー国内では青っぽい映像

なのに、パリに向かうとパーッと明るくなり、それがマリエの

心の内を描いているように思えてくるから不思議。

 

1001グラム

 

各国の代表がキログラム原器を持って集合写真を撮影するのも、

なぜか笑えてしまうのです。とても大事な原器だけれど、それが

原因で国際紛争になるとか、それは違うとか不毛な話もおかしい。

 

●惜しいところ

かなり単調な映画なので、眠くないときに見ないと必ず眠ると思う。

 

「人生の一番の重荷は背負うものがないこと」アーンストは言います。

そっかー。何かを背負っている時の方が人生を軽く生きていけると

いうものなのだろう。

 

1001グラム

 

このシーンの2人の会話はHだけれど、すっごくおかしいです。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 

 


ブラックボード 戦火を生きて

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ブラックボード

 

「ブラックボード 戦火を生きて」

原題:En mau fais qu'ilte plait

監督:クリスチャン・カリオン

2015年 フランス=ベルギー映画 114分

キャスト:アウグスト・ディール

     オリビエ・グルメ

     マティルド・セニエ

     アリス・イザース

 

1939年反ナチス主義者のハンスは、息子マックスを

連れ、ドイツからフランスの小さな町に逃げてくる。

ベルギー人と偽り農園で働くハンスはある晩、逮捕

投獄され、ドイツ軍の空襲で脱出できた時には、

マックス達は全て町から消えていた。

 

<お勧め星>☆☆☆半 美しい音楽と明るい陽射しの中

戦争の不条理さと、人間の正しい在り方を示しています。

 

〇見どころ

ブラックボード=黒板は、父ハンスが逮捕され、その後

ドイツ軍の侵攻から逃れて南に向かう町民と共に行動する

マックスに、先生スザンヌが、自分の安否と行き先を

書いておくように教えた場所です。

 

ブラックボード

 

のどかなフランスの田舎町に突然立ち込めるドイツ軍の侵攻。

自分の生まれた場所を捨てる決意がいかほどにつらいか、

明るい映像からは想像できないほどの重いものだったことでしょう。

 

ブラックボード

 

それでも町民の安全を考え南に向かうと決めた時、人々は

ポールの考えに従います。ポール役は「サンドラの週末」

(2015)などで渋い演技が光るオリビエ・グルメ。

 

ブラックボード

 

先回りして他の集団がドイツ兵に惨殺されている姿を見つけた

先生スザンヌは、「違う道を行こう」と主張し、子供たちに

自分の方に目を向けさせようとします。その姿がとても健気

なんです。

 

ブラックボード

 

また中盤、刑務所が空爆を受け、脱出したハンスとイギリス

敗残兵パーシー、そして持っていくワインを選んでいて逃げ

遅れた町民アルベールが、それぞれの言葉で話し、乾杯する姿は

本当に自然であり、戦時下であっても個々の人間のつながりは

切れることはないと実感します。ハンスが英語、ドイツ語、

フランス語すべて流ちょうに話せる要因もあったけれど。

 

●惜しいところ

終盤はややご都合主義な面も見られましたが、全体的に違和感の

ない映画です。

 

途中ポールたちが立ち寄った町のフランス人店主は、同胞に

対してすらも、慈悲を示しません。一方ドイツ人であっても

反体制派であれば受け入れるイギリス人、フランス人の寛容さが

対照的に描かれていました。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


リチャードの秘密

5

JUGEMテーマ:洋画

 

リチャードの秘密

 

「リチャードの秘密」

原題:What Richard Did

監督:レニー・アブラハムソン

2012年 アイルランド映画 88分

キャスト:ジャック・レイナー

     ラース・ミケルセン

     ロレイン・ピルキントン

     サム・キーリー

 

ゴールデンボーイと言われるほど、皆の人気者で

ラグビー部のエースのリチャードは、友人コナーの

恋人ララを奪ってしまう。そして数日後のパーティーで

2人は口論となり、リチャードを殴ったコナーを友人が

殴り返してしまう...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 主人公の心の動きが丁寧に

描かれています。

 

ネタバレしたかも

 

 

「ルーム ROOM」(2015)の

レニー・アブラハムソン監督が2012年に製作した映画です。

アイルランドの寒々しい街並みや自然が、モノクロ写真の

ように美しく映し出され、静かなBGMがそれにとても似合って

いてゆっくり楽しむことができます。カメラの焦点を巧みに

変えることで、誰が今ストーリーの真ん中にいるのか印象

付けています。リチャードの父役はマッツ・ミケルセンの

兄ラース・ミケルセン。

 

リチャードの秘密

 

〇見どころ

まるでドキュメンタリーのように感じられる映像は、登場人物

への感情移入が容易にできるようになっています。全てにおいて

恵まれていたリチャードが、自らの罪の重さに慟哭するシーンは、

彼の張り裂けんばかりの心の苦しさを映し、見ていると辛い。

しかし、最後にリチャードが頭を蹴ったことで亡くなったと思われる

コナーの葬儀で、彼の母親が

「あんなにたくさん人がいたのに、なぜ沈黙するの?」と悲痛な

訴えをするシーンも辛い。「正義」を告白することには、莫大な

エネルギーを必要とするし、その代償も限りなく大きいのです。

 

リチャードの秘密

 

リチャードの秘密

 

多分リチャードは大甘坊主なんでしょうが、運動ができ、

友人も多く、恋人もできて最高潮だった日々が、まるで砂の城の

ように崩れ去り、罪の意識も加わって、どん底に落ちてしまう

姿が、とてもうまく描かれていきます。

 

●惜しいところ

ラストを見る限り、結局なんの行動も起こさないということ

ですね。それでよし、とは決して言いたくないのが本音です。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


ピュア 純潔

4

JUGEMテーマ:洋画

 

ピュア

 

「ピュア 純潔」

原題:Pure/Till det som ar vackert

監督:リサ・ラングセット

2009年 スウェーデン映画 97分

キャスト:アリシア・ヴィカンダー

     サムエル・フルーレル

     ジョセフィーヌ・バウアー

     マルティン・ヴァルストロム

 

アル中の母を持つカタリナは、荒んだ生活から抜け出し、

新しい人生を切り開こうとしている。彼女はひょんな

ことからコンサートホールの受付に仮採用され、指揮者の

アダムと親しくなるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ 音楽をきっかけに大きく変わっていく

女性の姿が強く逞しく描かれています。

 

「エクス・マキナ」「リリーのすべて」(2015)の

アリシア・ヴィカンダーの初主演作映画です。「リリーのすべて」

では、夫の途方もない夢の手伝いをする強い妻を熱演し、

アカデミー賞助演女優賞を獲得しました。

 

〇見どころ

カタリナの生活環境、アル中の母を持ち、SNSで知り合った

不特定多数の男性に体を売る過去、そして今はマチアスという

恋人と暮らしている姿が一気に映され、なんでこの子は不機嫌

なんだろう、と思ってしまう。

 

ピュア

 

モーツァルトが自分の生活を変えたと言い、音楽をひたすら

聴くものの、この底辺の生活から抜け出せない苛立ちが映像

から伝わってきます。そしてコンサートホールの受付に仮採用

され、アダムという指揮者とも気が合ってしまう。

 

ピュア

 

ピュア

 

見ている側はアダムの「遊び」の過ぎないとわかっていても

カタリナの生き生きした表情を見ると、彼女がこれで再出発

できたような気持ちになります。このあたりのアリシアの演技が

素晴らしいです。しかしアダムに「軽やかな恋」と言われ、

職も追われた時、カタリナはせめて仕事だけは返してほしいと

願うのは当然のことなのです。そしてカタリナはどう行動するか。

「勇気は未来を切り開く」その言葉があっというような展開を

意味するとは、予想できませんでした。

 

●惜しいところ

おいおいこれでいいのかい、と思うようなラストでしたが、

カタリナがこれから自分に自信を持ち、強く逞しく生きて

行くのだろうと実感します。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ


愛の囚人

3

JUGEMテーマ:洋画

 

愛の囚人

 

「愛の囚人」

原題:Sarancha

監督:イゴール・バラノフ

2014年 ロシア映画 124分 R15+

キャスト:ポリーナ・アンドレバ

     ピョートル・フョードロフ

     ドミトリー・シェフチェンコ

     エカテリーナ・ボルガバ

 

ある夏、別荘の修理の訪れた作業員アルテムは、

美しい令嬢レーラと恋に落ちる。しかし夏が

終わり、彼女がモスクワに戻った後、アルテムは

彼女の後を追いかけるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ 前半の官能的な雰囲気に加え、

後半はサスペンス要素が加わり、美しい音楽と映像で

目を楽しませます。

 

 

少しネタバレ

 

映画が面白くなるのは中盤以降であり、そこに至る

まで60分はかかるでしょうか。ひと夏の恋→別れ→再会

→別れ...この繰り返しはかなり単調であり、文才があると

自負するアルテムの才能は、ほとんど活用されません。

それでもロシア映画にしては珍しい官能的なシーンの

連続で、まるでフランス映画を見ているようです。

富豪のヴァーリャの別荘を修理の訪れた作業員マラートと

アルテムは、セクシービキニの令嬢レイラに目を奪われます。

 

愛の囚人

 

特にアルテムはぞっこんになり、土砂降りの雨の中で2人は

愛を交わすのです。凄い雨なんだけど、どんなに濡れても平気。

だって愛があるから。(という感じ)

レイラにしてみたら「運命の恋」と思っても、こんな田舎の

作業員とは不釣り合いであり、母親に諭されモスクワに戻るの

です。それから多分3年ぐらい経ってからアルテムがモスクワ

を訪れ、彼女と再会するんだけれど、田舎者で少し文才がある

程度なので、仕事はなく、超ボンビーな暮らし。それをレーラの

元恋人イゴールが彼女の頼みを聞いて仕事を与えるくだりは、

ちょっとわかりづらいです。イゴールって結構な年齢だけれど、

独身でレーラを狙っていたはずなのに、なぜに?

 

愛の囚人

 

そして大して仕事ができるようにも思えないのに、大きな部屋を

買い、レーラにプロポーズした途端、彼女の父親が逮捕され、

金策のためレーラは、やはりイゴールの元へ行くし、アルテムは

金持ちの年増女ナターシャと結婚。おおジェットコースターの

ように速い展開なので、全然感情移入できません。

ところが、ここから急にサスペンスタッチに変わるのです。この

後半が面白いので、前半の冗長な部分を削ってしまえば、もっと

上質なサスペンス映画に仕上がったのでしょうが、まああれも

これも入れたかったんだね。

アル中のナターシャは酒で、避妊を怒ったイゴールは薪で、

見ごたえのある殺人シーンが映ります。そしてクルーザーで遺体遺棄

なんて「太陽がいっぱい」のようです。あの映画とはまた異なる

不幸なラストが待っているわけですが、アルテムの文才が彼の命を

奪う原因を作ったということがここで生かされます。ここだけかい!

ラストにあることを告げられたレイラが、なんとなく微笑んだように

見えたのは、気のせいでしょうか。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 

 


妹の体温

4

JUGEMテーマ:洋画

 

妹の体温

 

「妹の体温」

原題:De nermeste

監督:アンネ・セウィツキー

2015年 ノルウェー映画 102分 R15+

キャスト:アイネ・マリー・ウィルマン

     シーモン・J・ベリエル

     アネッケ・ボン・デル・リッペ

 

バレエ講師のシャルロッテは、親友マルテや

その兄で恋人ダグたちに囲まれ幸せな生活を

送っている。しかし彼女には異父兄ヘンリックが

おり、彼女は彼の暮らしぶりをうらやましく思うが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ かなりきわどい内容なのですが、

ヒロインの胸の内が静かに伝わります。

 

この映画の英題は「Homesick」だそうで、確かにその

通りの内容であれば、禁断の愛もなぜか雪が解けるように

受け入れられてしまいます。

冒頭、カウンセリングを受けるシャルロッテが映ります。

彼女は母の最近の思い出を思い出せず、欲しいものは

「自分を受け入れてくれる人」と言ったかなあ。そんな

ようなことを口にしたと思う。

じゃあ彼女は家庭に恵まれない孤独な人間かというと、

バレエ教室の講師として、子供たちに慕われ、親友マルテに

家族として受け入れてもらい、彼女の兄ダグは恋人なのです。

 

妹の体温

 

では、なぜ彼女はカウンセリングを受けているのかとか、

突然バレエ教室に現れた異父兄ヘンリックに

「家の周りをうろつくな」

と言われるのかとか、マルテの結婚式で彼女が夫からもらった

代々受け継がれてきたペンダントを盗んだのか、など色々謎が

浮かび上がって来ます。そしていくつかの事実から、彼女が

屈託なく笑っているのは、表面上の姿であり、心の中に深い闇が

あることがわかってくるのです。母親がいないか、疎遠なのかと

思うと、元気な母親がいるし、彼女と不仲でもない。ただ、母は

自分のことしか頭になく、アル中で入院中の父の前でも自分の

キャリアの話ばかりするわけです。さらに父はシャルロッテを

求めることもなく、さっさと帰ってしまった母の名を呼ぶ。彼女

には自分を受け入れてくれる「家族」というものが存在しないと

わかってきます。マルテが家族として付き合ってくれていたけれど、

彼女も夫を持ち、新しい家族を作ってしまった。それがあの悪戯に

つながったのかしら。

 

妹の体温

 

そしてヘンリックは離婚をきっかけにシャルロッテと深い関係に

なってしまうのです。ヘンリックは母親に捨てられ、新たな家庭

で生まれたシャルロッテが憎くてたまらなかったし、シャルロッテ

は、自分のことしか頭にない母に振り回され続け、家族の愛に

飢えていたわけで、この2人はあっという間に時間を共有してしまう

のです。

ダグがシャルロッテの携帯を盗み見した時、彼女からヘンリックに

送信したメールには「わたしの中に入って来て」とありました。

それは文字通りのものではなく、シャルロッテの心の中に入ってきて

ほしいという意味も込められていたのではないでしょうか。

北欧ならではの曇った空から降り続ける雪や、白く見える息などが

印象に残る映像になっています。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 

 


フレンチアルプスで起きたこと

4

JUGEMテーマ:洋画

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

「フレンチアルプスで起きたこと」

原題:Turist

監督:リューベン・オストルンド

2014年 スウェーデン=デンマーク=フランス

=ノルウェー映画 118分

キャスト:ヨハネス・バー・クンケ

     リサ・ロブン・コングスリ

     クリストファー・ヒビュー

     クララ・ベッテルグレン

     ビンセント・ベッテルグレン

 

トマスとエバは子供2人とバカンスでフレンチアルプス

を訪れる。しかし2日目の昼食中、目の前で起きた雪崩

を見て自分だけ一目散に逃げたトマスに対し、エバは

不信感を募らせるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆半 結構深いストーリーなんです。

美しいアルプスとヴィヴァルディの音楽が皮肉めいて

います。

 

 

<ネタバレしています>

 

 

スウェーデンからフレンチアルプスへバカンスに訪れた

一家は、2日目のランチの最中に、雪崩に巻き込まれそう

になるのですが、この一家の主トマスが、多分日頃から

仕事のできる人間として、会社でも家庭でも敬われる存在

だったのでしょう。目の前に雪崩が迫って来ても

「あれは大丈夫」

なんて、のん気に構えているのです。頻繁に爆発を起こして

人口雪崩を誘うことで、美しいゲレンデを作っているのは

確かなのでそうかもしれないけれど、いやもうそこまで雪が

来てますって。真っ白な雪粒が晴れると、そこにいたはずの

トマスは手袋と携帯を持って1人で逃げています。エバは

娘ヴェラと息子ハリーを守って何とか危機を切り抜けたのに...。

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

ここで「怖くて逃げたんだ。ごめん。」と言えない男のプライド

が辛いです。一方納得のいかないエバは、ずっとネチネチと彼を

責め続けます。エバは日頃の鬱憤を晴らすかのように、彼に「非」

を認めさせようとするわけです。時には家族を置いて浮気バカンス

に来ている女性に打ち明けたり、友人カップルに当時の動画を

見せたりします。

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

そんな行為をしているうちに夫婦の心の溝は深まり、それにいち

早く気づいた子供たちはトマスに「ママと別れないで」と

言われる始末。楽しいバカンスはどうなるのかしら。

毎日美しい雪山の朝日や夜の景色を映し、ヴィバルディの

「四季 夏」という場違いな音楽が流れます。そして1日目は4人で

歯磨きをしていたのに、日を追うごとにこの光景が変わっていく。

日常を忘れるために訪れたバカンスが、こんなにも辛いものになる

なんてね。

そして4日目、部屋のキーをなくしたトマスは、途方に暮れていると

そこにエバが現れ、彼は遂においおい泣き始めます。

 

フレンチアルプスで起きたこと

 

「自分に失望した」

彼はとっさに逃げてしまったことを一番悔いていたはずなのです。

おいおい泣くトマスは部屋に入っても大泣きし、子供も加わって泣く。

「もう仕方ないわねえ」とあきれたように抱きしめるのがエバ。

しかし千載一遇のチャンスが最終日に訪れます。吹雪の中、山を下り

始めた一家のうち最後を滑っていたエバが姿が見えなくなり、助けを

求める声がします。ここでトマス一挙にポイントアップ!!

雪の中からエバをお姫様抱っこして登場したトマスの神々しいこと。

初日のように意気揚々と帰路に着く一家の乗ったバスの運転手が

とても運転が下手で、それに怒るエバの一言でバスの乗客はバスを

下車し、とぼとぼ山道を下り始めるのです。すごい道なのよ。

いろは坂も真っ青。バスは一人客を乗せたまま走り去るんだけれど、

その客は浮気バカンス女。歩く乗客も勢いで降りたものの、本当は

乗っていても大丈夫だったと思っているはずです。特にトマスは、

他の客の勧めた煙草を吸い、息子に「パパは煙草を吸ったっけ?」

と不思議がられます。吸わなきゃやってられないんだよ。

「エバ、君は騒ぎ過ぎなんだよ」と言いたいけれど、口が裂けても

言えないトマスは、ただ歩き続けるわけです。

「男らしさ」という漠然とした概念への皮肉でもある気がします。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 


グランド・セントラル

5

JUGEMテーマ:洋画

 

グランド・セントラル

 

「グランド・セントラル」

原題:Grand Central

監督:レベッカ・ズロトブスキ

2013年 フランス=オーストラリア映画 94分

キャスト:タハール・ラヒム

     レア・セドゥー

     オリビエ・グルメ

     ドゥニ・メンーシェ

 

原発で働くギャリーは、上司トニの婚約者カロルと

関係を持ってしまう。しかし彼はある事故で大量被ばくし、

仕事と彼女のために線量計の偽装申告を続けるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ 甘い恋愛映画と思っていたら全然

違いました。

 

線量計の針がふれる音と響き渡るサイレン。1回のサイレン

は演習、2回は注意、3回は...と説明するカロルの後ろで7回

のサイレンが鳴ります。放射能被ばく事故発生なのです。

原題の「Grand Cetral」は「中央駅」と「大型発電所」を

かけているとのこと。もちろん撮影に稼働中の原発を使える

はずもないので、実際はウィーン郊外にある使われていない

原発で行われたそうです。「ダイ・ハード/ラスト・デイ」

(2013)のようなふざけた扱いではなく、放射能の怖さを映像で

明確に伝えてくれます。映画内で作業員が作業終了後、防護服

を脱ぎ、シャワーを浴びながら、必死で石鹸を使って体を洗う

のです。それでも落ちない量の被ばくをしてしまうと、女性で

あっても髪の毛を刈られてしまう。

主人公のギャリーは、なにか過去を持つ男で、親族からも

疎まれているらしい。そして手っ取り早く金になる原発作業員

に採用され、意気揚々としているのが序盤です。酒を飲み、

仲間とゲームに興じ、ロデオマシーンをなんなく乗りこなし

喝采を浴びます。

 

グランド・セントラル

 

映画内で常に稼働を続ける原子炉の姿が常に映り続け、彼らが

この得体のしれないもので仕事を得、金を稼ぎ、体を蝕まれて

いく事実の象徴と感じるのは映画の中盤くらいからでしょうか。

 

グランド・セントラル

 

ギャリーの上司トニの婚約者であるカロルが、なぜギャリーを

誘惑したのか、そして関係を持ち続けたのかがわかるのは、

彼女が妊娠を医師に告げられた時、医師が

「トニは子供を作れない体ね」と言ったことからです。カロルは

トニを愛していたけれど、子供という確かな「存在」が欲しかった

のかもしれません。ノーブラで水着のようなボディスーツの上に

ホットパンツをはいたレア・セドゥーは、小悪魔という印象が

ぴったりです。

そしてギャリーはトニの危険を救うために大量の被ばくをして

しまうのです。原発作業員はいわば「使い捨て」であり、線量が

ある量を越せば、その時点でそこの原発では働けなくなってしまう。

ギャリーは「仕事」と「愛」の両方を失わないために、線量計の

過少申告を始めるわけです。一方で同じ作業員の境遇も描かれ、

ここで仕事を求めることは、ここにしか居場所がない者ばかりで

あるとわかって来ます。

 

グランド・セントラル

 

ギャリーの偽申告はバレ、カロルはトニと結婚し、彼は原発を

去ろうとするのですが、その彼の後を追って来てしがみつく

カロルの言葉は「怖いの」。ここにいる人々がじわじわと汚染

されていく日常への恐怖を物語るかのように、またサイレンが

鳴り響くのです。

映画の終盤に落とした赤いリンゴが湧水を転がるシーンがあった

けれど、最近見たDVDで同じようなシーンがあったな。

「昔々、アナトリアで」(2011)だと気づいたけれど、特に関係ないか。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  人気ブログランキングへ

 



カレンダー

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>

ブログ村

今日のわんこ

powered by 撮影スタジオ.jp

Amazon

遊びにきてくれてありがとう!

カウンター

お天気

最新記事

categories

過去の記事

コメントありがとうございます!

トラックバックありがとうございます!

recommend

お友達

ミス・マープルについて

書いた記事数:2589 最後に更新した日:2017/04/30

あの映画を探そう!

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM