150ミリグラム ある女医の告発

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JUGEMテーマ:洋画

 

150ミリグラム ある女医の告発

 

「150ミリグラム ある女医の告発」

原題:La file de Brest

監督:エマニュエル・ベルコ

2016年 フランス映画 128分

キャスト:シエ・バベット・クヌッセン

     ブノワ・マジメル

     シャルロット・レンメル

 

フランスの大手製薬会社セルヴィエ社が販売する

メディアトールを処方された患者の多くが心臓弁膜症

を発症することに疑問を抱いた医師イレーヌ。彼女は

データを示し、医薬品安全庁にその危険性を主張するが

受け入れてもらえず...。


<お勧め星>☆☆☆半 完全な実話ベースなので地味では

ありますが、丁寧に作られています。


全ては患者のために


製薬会社というのは身内に社員でもいないと、薬の箱の

裏に名前が書いてあるとか、テレビCMで見かけるとか、

医師の処方された薬のパッケージに名前がある程度しか

イメージがわきません。MRと呼ばれる製薬会社の担当者が

かかりつけ医に営業をかけているシーンは幾度となく

見かけたし、かつて務めていたクリニックの院長室には、

何やら素晴らしいい贈り物が並んでいました。お中元、

お歳暮でいただいた食べ物を「みんなでわけてください」

と言うので「先生、そのエルメスのグラスをくれませんか?」

と軽く尋ねたらこれまた軽くいや完ぺきに無視されました。
多分製薬会社や医療機器会社からの贈り物だったんだろうなあ。

MRの給与水準は高くて、30歳代で年収1000万を超える人

も多いと聞きます。もちろん成果主義だから、休日接待、

医師や病院との良い関係つくりも必要なんでしょうね。
ただこれだけの高水準の給与をもたらす製薬会社は莫大な

利益を得ていることは確かで、人間は誰でも病気になるし、

病気になれば薬に頼る、だから薬というものは絶対に必要だし、

市場に出ているものは、十分な治験を経て安全であると確認

されているという考えが根底にあるのです。(いや普段は

そこまで深く考えないか)その製薬会社が30年以上も心臓病

の引き起こす危険性のある薬を販売していたとしたら?

その危険を示すデータが隠されていたとしたら?

取り締まるべき官庁と癒着していたら?

この映画はそんな薬の危険性を訴えた一人の女性医師の闘いを

描いた実話なのです。

 

150ミリグラム ある女医の告発
 

フランスの田舎で呼吸器科医をしているイレーヌは、

「メディアトール」という糖尿病患者のために処方された薬を

服用した患者が心臓弁膜症を発症し、亡くなる人も出ている

ことに注目するのです。糖尿病患者は欧米ではほぼ肥満体で

あり、この薬を飲むと「痩せる」ということで大変人気がある。

つまり「やせ薬」として使用されていたんですね。なので

患者もイレーヌが「危険」と言って処方を中止すると、太って

しまうから不満に思うわけです。さらにイレーヌが勤務する

病院での少ないサンプルで証拠を示してもフランス医薬品安全庁

では全く相手にされないのです。「手順」が大事なんです。

お役所仕事ってやーね、全く。
イレーヌは調査部のアントワーヌのチームとデータを極秘で

積み上げていくのですが、このアントワーヌがまことに心が弱い。

アントワーヌ役は「太陽のめざめ」(2016)の

ブノワ・マジメル。この人急にお腹が出てしまったような感じ。

ちょっと同一人物に見えませんでした。

 

150ミリグラム ある女医の告発
 

さて邦題の副題に「ある女医の告発」とあるのがとても気に

なったのですが、映画を見ていると「女性」ということで逆に

しがらみがなく、全てをかけて患者を守ろうという立場に

なれたのかもしれません。映画内でも権威に真正面から立ち

向かうのは、イレーヌ、彼女を最初から支える異端の

学者カトリーヌ、フロールという博士課程の学生、終盤登場

するフィガロ紙の記者と女性ばかりなんです。逆に助成金

打ち切りに怯えるアントワーヌ、「サンタ」と称する

内部告発者などは男性という構図。いやこれは実話だから

こうだったんだよね。「女医」などという名前の雰囲気とは

程遠い勝ち気で弁のたつイレーヌも幾度となく行く手を阻まれ、
医師免許はく奪の危機に瀕すると、初めて「恐怖」というものを

実感するのです。弱音を吐いたのはこのシーンだけだったかな。

それを支えたのは夫をはじめとする家族の存在で、最も信用

できて最も頼りになる存在があったことは彼女にとって最大の

武器だったと思います。そして今なお薬による被害者を救済

するために活動しているのをエンドロールの字幕で知ると、

彼女は真の意味で「強い女性」だと実感します。

 

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サラエヴォの銃声

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JUGEMテーマ:洋画

 

サラエヴォの銃声

 

「サラエヴォの銃声」

原題:Smrt u Sarajevu

監督:ダニス・タノビッチ

2016年 フランス=ボスニア・ヘルツェゴビナ映画 

85分

キャスト:ジャック・ウェバー

     スネジャナ・ビドビッチ

     イスディン・バイロビッチ

     ベドラナ・セクナン

     ムハメド・ハジョビッチ

 

サラエヴォ事件から100年の記念式典が開催される

会場のホテルヨーロッパには要人が訪れ始める。

しかしホテルの従業員は賃金の未払いに対するストライキ

をその当日に計画していた。


<お勧め星>☆☆☆ この監督ならではの静かでかつメ

ッセージ性の強い内容です。


銃声がもたらしたもの


監督は「鉄くず拾いの物語」(2013)

「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」(2014)の

ダニス・タノビッチ。「鉄くず拾いの物語」では、

実際の出来事を当事者が再現した「ドキュドラマ」方式で、

ボスニアに暮らし、政府から何の保護も受けていない

「ロマ族」の一家の暮らしを淡々と描いていました。
また「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」では、

多国籍企業に立ち向かった勇敢な一人の男性の姿を、

地味ながら丁寧に映しています。どちらの映画においても

戦争や社会構造が変化しても何も変わらず、取り残された

ままの人々の存在を世間に知らしめる役割を果たしている

気がします。
そんな監督が製作した「サラエヴォの銃声」は、2014年

6月28日というサラエヴォ事件から100年経ったことへ

の記念式典が開催されるホテルでの様子を様々な視点から

見せていくのです。
「サラエヴォ事件」・・・第一次世界大戦の引き金になった

事件として世界史で習いましたよね。

1914年オーストリアの皇太子夫妻がサラエヴォで暗殺

された事件です。この背景は習った当時は深く考えず、

なんせ受験用の世界史用語集の☆5つだから絶対に年号と

名前と事件の概要を丸暗記する、という程度の勉強であり、

実は当時はオーストリア=ハンガリー帝国だったこととか、

サラエヴォが当時はオーストリア=ハンガリー領だったこと、

またその日がセルビア人にとっては遡ることオスマン帝国の

時代、セルビア軍が敗北した「コソボの戦い」の日だった

ことなど深い意味を考えることもなかったのです。
なので少しこの辺りを調べてから鑑賞した方がいいと読んで、

ほんの少しだけメモを取って鑑賞すると、映画内で語られる

いくつかの事件や出来事の意味が、これまたほんの少しだけ

わかるというもの。西洋の火薬庫と呼ばれたバルカン半島の

歴史は本当に多くの血が流され物が破壊され、ジェノサイドも

行われていたことを知ると言葉を失います。

 

サラエヴォの銃声
 

映画はこの式典が開かれるホテルの屋上で、サラエヴォ事件

について歴史学者などにインタビューするレポーターの姿と、

準備に追われるホテルが実は資金繰りが悪化していて、給与が

2か月未払いのため従業員がストライキを計画している姿、

さらにそれを無視してあれこれ手配する支配人オメル、従順な

フロント係ラミヤなどの姿が混在して映ります。

 

サラエヴォの銃声

 

サラエヴォの銃声

 

屋上ではサラエヴォ事件の真犯人プリンツィプがテロリストか

否か、またオーストリアの皇太子が犠牲者か占領者かと激しく

語る学者や若者がいるのに、階下では、とにかくこの式典を

終了させ、資金を得て銀行への支払いを終えたい支配人、

コツコツとヒールの音を響かせ颯爽と動き回るラニヤ、要人の

護衛にあたる男(なぜかドラッグ中毒だし、嫁からの電話に

イラついている)、労働者の権利を訴える従業員たちなどが

いるわけで、この相いれない内容がどこで結びつくかと言うと、

それはやはり「銃声」なのです。しかしその銃声で世界が

一気に大戦へと向かった100年前とは異なり、これで何かが

変わったのだろうか。いや何も変わらない。変わるために

必要なことすら分からなくなっているのではないかという

事実を突きつけられるのがラストの静寂でした。
やはりこの監督の映画は素晴らしい。もっと勉強しないといけない。

 

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ある天文学者の恋文

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JUGEMテーマ:洋画

 

ある天文学者の恋文

 

「ある天文学者の恋文」

原題:La corrispondenza

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

2016年 イタリア映画 122分

キャスト:ジェレミー・アイアンズ

     オルガ・キュリレンコ

     シャウナ・マクドナルド

     パオロ・カラブレージ

     アンナ・サバ

 

天文学者のエドは教え子のエイミーと深く愛し

合って6年。ある日出張に行っているはずの

エドの訃報を聞いたエイミーは、同時に受け

取った彼からのメールに混乱してしまうのだった。


<お勧め星>☆☆☆半  大人の恋愛。美しい景色と

音楽がうまくマッチしています。


今見えている星はどのくらい前に存在

していたのか


音楽がどこまでも静かで心地よく、主演の

オルガ・キュリレンコの美しさに目を奪われるのですが、

映画内で頻繁に使われるスマホが、マナーモードに

なっておらず、観劇中、講義中、図書館内などありと

あらゆる場所で起きな着信音を鳴らします。またボタンの

タッチ音を消していないのもとても気になります。

(これは普通に文句です)

 

ある天文学者の恋文
 

天文学者のエド役は「リスボンに誘われて」(2012)の

ジェレミー・アイアンズ。初老の紳士という雰囲気で、

星を研究しているせいかとてもロマンチストなのです。

口から発する言葉の1つ1つが深い意味を持ち、それで

いて全く気障に感じられません。逆に超魅力的でもあります。
彼の恋人は大学院生エイミーで、教え子に手をつけちゃった

いけない先生なのでどうやら秘密の仲らしい。イチャイチャ

していても欧米の男女だと様になるのはなぜだろう。これが

日本人で、いいおっさんと若いお姉さんなら、絶対に

怪しまれるにちがいない。間違いない。
いつものように逢瀬を楽しみ、エディンバラに出張したはずの

エドの死が信じられないのは当たり前。だって、さっき彼から

エイミー宛てに動画付きのメールが届いたばかりなのよ。

日付だってほら!

 

ある天文学者の恋文
 

この映画では「犬」「枯葉」を使い、エドの命が消えたことを

象徴しつつ、メール、skype、ビデオレターなど現実的な道具

を用いて、2人のつながりを描いています。ここがとても

対照的な手法だと思います。彼は本当に亡くなったのか、という

疑問が、亡くなったのになぜ、彼女の行動を見越したような

メールや手紙が届くのかというミステリアスな展開へと

変わります。そしてそこには宇宙空間のように広く深い愛情を

もってエイミーに接してきたエドの考え抜いた行動が見えて

くるのです。
但し少し冗長に感じたのは、エイミーがなぜ危険なスタント

(カミカゼと言っていましたが使いたくない)のバイトをして

いる理由で、それが実母との深い溝に起因していたとしても

納得のいくものではありませんでした。
エドに腹を立て、彼との連絡を絶つメールを送信した後の

エイミーの自暴自棄な姿すらもエドは見越してたのがすごい。

「10人のエドがキミを見ている」に表されるような意味の

深い言葉の数々が映画のあちこちに散りばめられ、それを後

から知るという醍醐味も感じます。
もっと早く出会わなかったことともっと長く月日を過ごせなかった

ことが「永遠の命」を得られなかった理由だ、なんて後ろ向き

のエドが語る映像見たら泣かずにいられますか。なぜ後ろ向きか

というと、彼の病が重く、もはや前向きの姿を見せられなかった

んだろうなと思うともっと泣ける。
エドの病が星状細胞腫であり、それは星雲と同じ形であるのも

皮肉な話でした。エドとの人生銀河が崩壊したとしても、エイミー

はまだいくつもの選択肢があるわけで希望のさすラストも気に

入っています。

 

ある天文学者の恋文
 

イタリアの美しい風景、街並みが大人のラブストーリーによく

マッチしていました。

 

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獣は月夜に夢を見る

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

獣は月夜に夢を見る

 

「獣は月夜に夢を見る」

原題:Nar dyrene drommer

監督:ヨナス・アレクサンダー・アーンビー

2014年 デンマーク=フランス映画 85分 R15+

キャスト:ソニア・ズー

     ラース・ミケルセン

     ソニア・リクター

     ヤーコブ・オフテブロ

 

デンマークの海岸沿いの村に住むマリーは、父と病気の

母の3人暮らし。母の病気について一切語らず、村人は

何かにおびえている。そんなマリーの体にある変化が

起き始めるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆ 幻想的な景色の中と対照的な

人々の静かな恐怖、そして一途な愛を感じます。


獣は誰の心にもいる


どうしても比べてしまうのはスウェーデン映画

「僕のエリ 200歳の少女」(2008)です。原題は

「正しき者を招き入れよ」というものなのに、バッチリ

ネタバレ全開の邦題になっていて、もう〜バカバカバカと

言うしかない。2010年には「モールス」という題名の

クロエ・グレース=モレッツ主演映画としてハリウッドで

リメイクされています。これは明らかにオリジナルが格段

上をいくもので、「キャリー」もそうだけれど、クロエ

ちゃんに繊細で内気な子を演じさせるのはかなり無理があると

思う。「キック・アス」のイメージだもの。
ストーリーもやはりあの手の内容はヨーロッパが舞台でない

とピンときません。
さらに同じような内容ではもう一つ、シアーシャ・ローナン

主演の「ビザンチウム」(2010)があり、ストーリーは

全然異なりますが、孤独の中に「親子愛」「男女愛」を感じる

美しい映画でした。

 

獣は月夜に夢を見る
 

今回主役マリーを演じるのは、今作がデビューとなるソニア・ズー。

透き通るような色白の肌と金髪が北欧の少女のイメージにピッタリ

です。そういえば他に若い女性は登場しなかったな。

 

獣は月夜に夢を見る
 

舞台はデンマークの海岸沿いの小さな村。この景色が美しいと

見えるか、荒涼として見えるか、その時々によって表情を変える

ものの、静かな悲しみをたたえているように思えてしまうのは

映画の内容からだけでしょうか。マリーは父と病気の母との3人

暮らしなのです。父トール役はマッツ・ミケルセン

の兄ラース・ミケルセンで、どこか疲弊したような表情をいつも

浮かべています。しかしどこまでも優しい心を持っているのが

冒頭からわかるのです。この母が何の病気で介助なしには生活が

できないのか、父は語らず、村人もその話に触れたがらない。

なんとなく想像できるんですが、なぜ医者が来て注射をしていく

のか、それに気づくと、トールの深い愛情を感じてしまいます。
そしてマリーは自分の体に少しずつ変化が起きていることに気づく

のです。これが劇的なものではなく、ほんの少しずつ。

さらにダニエルと恋に落ち、ラブシーンでは、背中に、腕に、

そして瞳に変化が起きます。感情が高まると一気に変化してしまう

わけです。

 

獣は月夜に夢を見る

 

獣は月夜に夢を見る

 

でもダニエルは少しも気にしません。そう、この表情は

トールが母に向けるものとほとんど変わりがないと気づか

されます。とはいえ、曇り空が続き、大きな変化もない村では、

村人の心にたまっていくのは、小さな怒りや悲しみや憎しみの

1つ1つで、持って行き場のないその気持ちを、どこへ

向けるのか、おのずと知れたことなのです。
この北欧の暗い一面を芸術としてノルディック・ノワールという

ジャンルがあるそうで、ミステリー、ホラーでありながら、

しんしんと心に染み込む切なさを感じる映画でした。

 

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ミス・シェパードをお手本に

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JUGEMテーマ:洋画

 

ミス・シェパードをお手本に

 

「ミス・シェパードをお手本に」

原題:The Lady in the Van

監督:ニコラス・ハイトナー

原作:アラン・ベネット

2015年 イギリス映画 103分

キャスト:マギー・スミス

     アレックス・ジェニングス

     ジム・ブロードベント

     フランシス・デ・ラ・トゥーア

 

ロンドン北部のカムデンタウン。劇作家ベネットが

引っ越してくると、そこにはオンボロのバンで

路上生活するミス・シェパードがいた。町の人々の

行為に対し憎まれ口ばかり返す彼女は、やがて

ベネットの家の前に車を置き始めるのだが...。


<お勧め星>☆☆☆ マギー・スミスの演技力を堪能しました。


公正さと寛容さ、貧しき人々への優しさ


劇作家アラン・ベネットが実際に自宅の前で車上生活を

していたミス・シェパードを回想して書いた原作の映画化

です。この作品は先に監督ニコラス・ハイトナー、主演

マギー・スミスで1999年に舞台化されており、ラジオ

ドラマを経て映画製作に至ったとのこと。このコンビは

変わっていないので、もうマギー・スミスの定番作品の

ようになっています。

 

ミス・シェパードをお手本に
 

ミス・シェパードは、偏屈で怒りっぽく、人に厳しく、常軌を

逸しており、無礼でそして臭いのです。なんせお風呂に

入らないし、車内の袋の用を足しているから当たり前のこと

ですね。映画の中ではいつもは気高い英国夫人を演じる

マギー・スミスが、スクリーンから臭いが立ち込めそうな

いでたちで現れます。
ただなぜ彼女がそのような境遇に至ったのかは、冒頭の自動車

事故映像と後半にベネットが独自に調査を始めたことから知る

のみで、彼女の口からはほとんど語られません。さらになぜ

カムデンタウンの住民が、このミス・シェパードを邪険に

扱わないのかという疑問に対し、

「自らが富を築いたことへの罪滅ぼし」とナレーターも務める

ベネットが言います。行政がとても貧しい人々の面倒を見るべきだ

と考える人々が9割を占めているイギリスならではのことで

しょうか。いやこの調査は2007年のものだから、現在は

明らかに減少していると思う。
映画内のミス・シェパードは、実に憎らしい。せっかく「梨」を

分け与えようとしても「それは腹に悪い」と言うし、子供の歌声

すらも「騒音」と言ってのけるのです。ただピアノの音色に

だけは過剰に反応する。そこに隠されたのは...。

 

ミス・シェパードをお手本に
 

ベネットは離れて暮らす実母を題材に作品を書いており、

その母は認知症が進んでいるのです。それでいて母を施設に

入れ、赤の他人のミス・シェパードを庭に住まわし、結局の

ところ後見人のような扱いを受けても、大きな反論はしません。

そこにはどこかミステリアスなミス・シェパードへの好奇心が

働いて、彼女と共存することで自分のための作品を作り上げて

いくことができると思ったのかもしれません。とはいえ、老女を

庭に招き入れることは、確実に老いていく彼女の「下の世話」を

手助けすることになるわけで、実際にはどうだったんだろうと

無粋な勘繰りをしてしまいます。

 

ミス・シェパードをお手本に

 

ミス・シェパードの少しずつわかってきた素性があまりに

ドラマティックであり、高潔であるがゆえに、他人と協調

することができなかったのだと見終わって感じました。

3か月家の前を貸すはずが実際は15年も居座ることになる

とはお互いに思わなかっただろうし、その間にある種の

親近感も生まれたんだろうなあ。よくわからなけど。

 

 

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T2 トレインスポッティング

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JUGEMテーマ:洋画

 

トレインスポッティング2

 

「T2 トレインスポッティング」

原題:T2 Trainspotting

監督:ダニー・ボイル

2017年 イギリス映画 117分 R15+

キャスト:ユアン・マクレガー

     ユエン・ブレムナー

     ジョニー・リー・ミラー

     ロバート・カーライル

     ケリー・マクドナルド

 

20年前麻薬の売買で得た大金を持ち逃げしたレントンは

故郷のエディンバラに戻ってくる。そこではまさに自殺を

図ろうとしていたスパッドや彼を憎み続けるサイモンが

待っており、彼らは再び一儲けしようと計画するが...。


<お勧め星>☆☆☆半 映像と音楽がかっこいいんです。

20年たっても色あせない雰囲気が大好き。


チャンスと裏切り そして Chose Life

 

トレインスポッティング2

 

前作をすっかり忘れていて、そうかヘロインに溺れる若者は

5人だったことに気づくのは、レントンとスパッドとサイモンが、

トミーの供養に訪れるシーンを見た時。ちょいちょいかつての

シーンが入り込むので、忘れていた内容を思い出させてくれる、

20年前は若かったけれど、今はちょっと人の名前が

出てこなくって...とお悩みの方にはとても優しい作り方です。
そしてかつては「若気の至り」で済まされ、「未来」が開けて

いたはずのレントンたちも、今は「明日の生活」を切実に考える

世代になっているのです。そこを痛感すると本当にイタタタタ。
それでもスタイリッシュな映像(とにかく走る走る)と音楽で、

まるであの時代に戻ったような気分になるから不思議です。


レントン→子供ができず離婚し、無職の上、冠動脈の手術を

受けたばかり

ラリった画像はやはりこんな感じ

 

トレインスポッティング2
 

サイモン→妻子とは10年前にあったきりで、今はオランダ人

ベロニカを使って恐喝で金を稼ぐ

 

トレインスポッティング2
 

スパッド→ヘロイン中毒から抜けられず、妻子とは別れて暮らす

 

トレインスポッティング2
 

そして残る一人が冒頭に登場するベグビー。彼だけ刑務所暮らし

なのに、ちゃんと妻子が待っている家があるのです。
何と言う皮肉でしょう。
結局4人はあの頃から少しも変わっておらず、下流を下っていく

人生なのだと実感するけれど、それを見て気分は暗くならないのは

なぜだろう。

 

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ティエリー・トグルドーの憂鬱

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ティエリー・トグルドーの憂鬱

 

「ティエリー・トグルドーの憂鬱」

原題:La loi du marche

監督:ステファヌ・ブリゼ

2015年 フランス映画 97分

キャスト:バンサン・ランドン

     イブ・オリィ

     カリーヌ・ドゥ・ミルベック

     マチュー・シャレール

 

会社を不当解雇され、休職中のティエリーは、1年半

経っても仕事が決まらず、ローンの返済に追われる始末。

彼は障がいのある息子と妻との生活のために新しい仕事を

見つけ、何とか勤務を開始するが...。

 

<お勧め星>☆☆☆ 主人公の憂鬱さがあらゆるシーンから

伝わります。

 

主役のティエリー役は「友よ、さらばと言おう」(2014)

などで安定の演技を見せ、この映画で第68回カンヌ国際映画祭

コンペティション部門で男優賞を獲得しています。全身から

哀愁が漂うのよね。

 

〇見どころ

ティエリーの憂鬱の原因はエンジニアとして長年勤務していた

会社から不当に解雇されたことから始まっているのですが、

51歳の男性の求職の難しさは日本のそれと変わらない厳しい

ものなのです。彼の憂鬱は

.魯蹇璽錙璽の紹介で研修を受けたものの、経験がなく不採用

→その研修期間はなんだったんだ!

不当解雇への裁判を起こすという仲間からの圧力

→その間に仕事がなくてどうやってローンを払うんだ!

6箙圓陵算餬犬らアパルトマンの売却を勧められる

→あと5年でローン完済だ、唯一の財産と主張すると、「生命保険」

を勧めてくる銀行員のデリカシーのなさ!(ノルマなんだろうね)

で笋蠅暴个靴織肇譟璽蕁璽魯Ε垢稜磴ぜ蠅値引き交渉してくる

→一旦納得しただろう?

ヌ明椶離肇譟璽縫鵐阿如彼をぼろくそけなす他の求職者たち

→人の振り見て我が振り直せ!

 

ティエリー・トグルドーの憂鬱

 

他にも憂鬱の種はたくさんありますが、彼が唯一心から笑うのは、

愛する家族の待つ家なのです。

 

ティエリー・トグルドーの憂鬱

 

障がいのある息子マチューをかいがいしく世話をする姿には、

日頃の憂鬱な表情はみじんも見られません。また妻も夫に対し、

何も求めようとせず、とにかく穏やかに彼を受け入れてくれる。

これが彼の心のよりどころなのでしょうね。

しかし、やっと見つけた仕事がスーパーの警備係であり、そこでも

不条理な状況が広がっているのです。

 

ティエリー・トグルドーの憂鬱

 

そこは実際に見て感じてほしいです。フランスにおける移民排斥の

声が高まるのは、根本的にこういうことなのでしょう。弱者が弱者を

痛めつけるような世の中を誰が望んだのか。

 

●惜しいところ

朝から見ると暗くなります。いい映画ですけどね。

 

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疑惑のチャンピオン

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JUGEMテーマ:洋画

 

疑惑のチャンピオン

 

「疑惑のチャンピオン」

原題:The Program

監督:スティーブン・フリアーズ

2015年 イギリス=フランス映画 103分

キャスト:ベン・フォスター

     クリス・オダウド

     ギョーム・カネ

     ジェシー・プレモンス

     ダスティン・ホフマン

 

アメリカ人のランスは、癌を克服し、ツール・ド・フランス

7連覇を達成する。しかしそこには、彼のチームに長年

行われたドーピングがあったのだった...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 とてもシリアスな内容で、スポーツを

取り巻く様々な業種の人々への問題点も投げかけています。

 

そもそも自転車競技になじみがないので、「エース」をゴール

まで安全に、そして世話をしつつ進ませる「アシスト」も含めて

チームであるということを初めて知りました。一応団体競技

なのですが、あくまでも「エース」の勝利が絶対なのです。

 

〇見どころ

ツール・ド・フランスは23日かけて距離3300km、

高低差2000km以上の中で行われる伝統のある自転車レース。

 

疑惑のチャンピオン

 

映画内ではシーンにぴったりの音楽が流れ、気分が高揚します。

ストーリーは、才能がありつつも若年性の癌となり、それを

克服してツール・ド・フランス7連覇を達成していくランスの

姿と、彼の走りに疑問を持ち疑惑を追及し続ける記者ウォルシュの

姿を対比させながら映ります。

 

疑惑のチャンピオン

 

疑惑のチャンピオン

 

疑惑のチャンピオン

 

自身が克服した癌に苦しむ患者への支援を前面に出されたら、

少々の疑惑など、「英雄」への誹謗中傷に過ぎないと感じさせる

シーンが幾度となく描かれ、スポーツにおける勝利の意味を

考えさせられるものになっています。なんせスポーツ選手は

「金のなる木」であり、勝てば多くのスポンサーがつき、

選手のみならず取り巻く人々が潤うわけです。

スポーツ選手=清廉潔白&夢の象徴

という構図は、一般の人が描いた幻想にすぎず、実際はもっと

ドロドロしていて、もっと修羅場のある世界なのでしょう。

ランスは、最初から疑惑を抱かれていたのに、それを容認

してきた「ツールの深い沈黙」にも大きな罪があるというわけです。

 

●惜しいところ

ドキュメンタリー調に徹したために、ランスの生い立ちや私生活、

またその後の姿が全く描かれず見る側に放り投げてしまっている

のが惜しいです。

 

ラスト付近の水に飛び込むシーンと、自転車で坂を上っていく

シーンの映像は、彼が「なんのために生きるのか」を考え始めた

ことの象徴なのかしらね。ママチャリすら上手にこげないわたしに

とっては、あんな細いタイヤの自転車は絶対に乗れないと思う

次第です。

 

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母よ、

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JUGEMテーマ:洋画

 

母よ、

 

「母よ、」

原題:Mia Madre

監督:ナンニ・モレッティ

2015年 イタリア=フランス映画 107分

キャスト:ナンニ・モレッティ

     マルゲリータ・ブイ

     ジョン・タトゥーロ

     ジュリア・ラッツァリーニ

 

新作映画撮影に没頭する女性監督マルゲリータは

私生活では、病気の母の介護と恋人との別れ、そして

娘の教育問題など悩みが尽きない。そんな母の病状が

思わしくなく余命が短いことを告げられると彼女は

大きく動揺し...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 監督自身の思いを反映させた

ストーリーには共感を呼ぶシーンが多いです。

 

〇見どころ

監督のナンニ・モレッティが、ヒロインで女性監督

マルゲリータの兄ジョバンニ役で出演しています。

 

母よ、

 

ストーリーは、このマルゲリータを取り巻く問題、つまり

深く愛する母親の病状の悪化、恋人との別れ、別れた夫との

一人娘リディアの進路、監督業としてのこだわりなど様々な

ものが一挙に押し寄せ、元気だった頃の母親との思い出が、

まるでマルゲリータの頭の中をそのまま投影しているかの

ように映し出されていくのです。そして母の危険な状況を

思うと我に返る。これは身内を亡くした人なら経験のある

ことかもしれません。生きている人間から生気が抜けていく

のが手に取るように感じられます。それが具体的にどういう

ものかは、それを感じた人しかわからない。

 

母よ、

 

アメリカから呼んだ主役のバリー役は、ジョン・タトゥーロ。

彼のイタリア語の発音すら癪に触ってたまらないマルゲリータ。

 

母よ、

 

夫とは別れたものの娘リディアを通じて交流はあるのです。

母親であり、娘であり、監督であるという重荷が、周囲への

配慮に欠ける行動を起こさせるのかもしれません。元恋人が

「君は注意深そうで身勝手だ。不満の塊なんだ」なんて言葉を

吐くほど、マルゲリータの行動は目に余るものもあります。

映画内で最も心を打たれたのは、病が重くなった母に

マルゲリータが「何を考えてるの?」とたずねた時の答えです。

「明日のことよ」

明日があるマルゲリータがそれを考えず、明日が来ないかも

しれない母がそれを考えるという矛盾。そこには「希望」を

見出すことができるのです。

 

●惜しいところ

実は冒頭に別れを告げた恋人ヴィットリオと兄ジョバンニが

同一人物だと、映画の中盤頃まで思っていたので、ストーリーに

入り込むのが遅れました。全くトホホだわ。

 

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グランドフィナーレ

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JUGEMテーマ:洋画

 

グランドフィナーレ

 

「グランドフィナーレ」

原題:Youth

監督:パオロ・ソレンティーノ

2015年 イタリア=スイス=フランス=イギリス映画 

124分 R15+

キャスト:マイケル・ケイン

     ハーベイ・カイテル

     レイチェル・ワイズ

     ポール・ダノ

     ジェーン・フォンダ

作曲家フレッドは、女王陛下からの演奏依頼を断り、

親友で映画監督ミックと高級リゾートホテルで過ごしている。

彼はある理由から、名曲「シンプルソング」の指揮を断り

続けてきたが...。

 

<お勧め星>☆☆☆半 映画全体が抒情詩のような雰囲気です。

 

〇見どころ

名作曲家フレッド・バリンジャー役のマイケル・ケインの

英国紳士らしい気品と、彼の親友で名監督ミック・ボイル役の

ハーベイ・カイテルの味わい深いルックスが、人生の終盤を

迎えた男たちの姿をそのまま表しています。

 

グランドフィナーレ

 

オープニングから女性シンガーのしっとりした歌が聞こえ、

高級リゾートホテルで、健康チェックを受け、おいしい食事をし、

ゆったりスパなどにつかった上、オイルマッサージを受ける。

まさに極楽のような(極楽を知らないけれど)生活を送る2人

なのですが、いまだ監督業に燃えるミックと、女王陛下からの

招待すら頑なに拒むフレッドの姿が対照的です。それはなぜ

なのか。

 

グランドフィナーレ

 

またフレッドの娘レナ役はレイチェル・ワイズ。彼女だけでなく

ミス・ユニバースの女性の超絶美しい裸体にもくぎ付け。その姿に

見とれる2人の老人には、まだ前途有望だと思えてしまう。

 

グランドフィナーレ

 

そしてミックの次回監督作品の主演女優ブレンダ役は、あの

ジェーン・フォンダです。彼女の口から放たれる厳しい言葉は

愛情に満ちているからこそ辛い。そのシーンから始まって、

ラストの「シンプル・ソング」の美しい歌声につながるストーリー

は感動を呼ぶこと間違いなしです。

 

●惜しいところ

中盤までかなり眠かった。

 

そうそうリゾート地でものすごく太った男性がいると思ったら、

世界のマラドーナ本人でした。

 

 

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