グランド・ブダペスト・ホテル

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グランドブダペストホテル

「グランド・ブダペスト・ホテル」
原題:The Grand Budapest Hotel
監督:ウェス・アンダーソン
2013年 イギリス=ドイツ映画 100分
キャスト:レイフ・ファインズ
     トニー・レヴォロリ
     F・マーレイ・エイブラハム
     マチュー・アマルリック
     エイドリアン・ブロディ
     ウィレム・デフォー
     ジュード・ロウ

1985年、年老いた作家は、若い頃滞在した
グランド・ブダペスト・ホテルで出会った、そこの
オーナー、ムスタファー氏から聞いた話を語り始める。
ホテルの最初のコンシェルジェ、ムスタファー氏は
マダムDの遺産のうち有名な絵画を相続したことから
ある事件に巻き込まれていくのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆☆ 独特の世界観とおなじみの
色調が楽しくもあり、悲しさも表現した映画です。


ストーリーは実は恐ろしい事件ととても悲しいものなの
ですが、ウェス・アンダーソン監督のおとぎ話のような
色調の映像と軽やかな音楽、ウィットに富んだセリフで
全くそれを感じさせないものになっています。
始まりはある少女が、ある作家の彫像の前で、彼の小説
を持って立ち尽くすシーンです。時は遡り、1985年、
年老いた作家が、若い頃滞在した、あるホテルの様子を
語り始めます。そのグランド・ブダペスト・ホテルは
かつての賑わいはなく、朽ちた古いホテルになっていた
のですが、彼はそこでホテルのオーナー、ムスタファー氏
と話す機会が訪れるのです。

ここで登場するヨーロッパの東端にあるズブロフ共和国は
もちろん仮想の国です。しかしすべてがどこかに当てはまる
設定になっているのです。つまり1930年代の戦争の足音が
近づくヨーロッパの暗い時代を痛烈に皮肉っていると感じ
させます。それでいてストーリーはサスペンス調であり、
コミカルなもの。
ムスタファー氏の口からは、このホテルがにぎやかだった1932年
ホテルの最初のコンシェルジェ、ムッシュ・グスタヴ氏と
ロビー・ボーイ見習いのゼロがある事件に巻き込まれていく
話を時折涙を流しながら、ゆっくり、時系列がやや崩れながら
語るのです。


グランドブダペストホテル

グスタヴ氏が富豪のマダムDと楽しい夜を過ごした後、彼女は
突然死亡するのです。葬儀に向かうと、そこには多くの縁戚者
がいて、遺言状によりグスタヴ氏が有名な絵画を贈られることに
なると、孫のドミトリーが猛反発します。エイドリアン・ブロディ
がいつになく強い役。とはいえ、配下にウィレム・デフォー演じる
凄腕の殺し屋を抱えているから、まあ虎の威を借りる狐状態。


グランドブダペストホテル

そこからグスタヴ氏はマダムDの殺人犯として逮捕され、刑務所に
収監されるは、そこから脱獄するは、追っ手を振り切るために
山の上の教会へ行くは、そりで大滑走するは、などの大冒険を
ゼロと共に開始します。ゼロの恋物語も素敵。
全てがアニメのような作りで、それが美しく、また恐怖を和らげ
ているのです。実はドミトリーはとっても残酷。
そしてラスト付近は、ある国の戦争下の暴挙に対する痛烈な批判を
さらりと言ってのけ、作家の話も終わるのです。
とにかく悲しさと楽しさが共存する不思議な世界観を感じました。



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グッバイ、レーニン

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JUGEMテーマ:洋画

グッバイ、レーニン

「グッバイ、レーニン」
原題:Good Bye Lenin!
監督:ヴェルフガング・ベッカー
2003年 ドイツ映画 121分
キャスト:ダニエル・ブリュール
     カトリーン・ザース
     チュルパン・ハマートヴァ
     マリア・シモン

東ベルリンに暮らすアレックスは、父が西ドイツに
亡命した後、社会主義に傾倒した母と、離婚し子連れ
で居候する姉を持っている。しかし心臓発作で倒れた
母が8か月の昏睡状態から目覚めた時、ベルリンの壁は
崩壊していた。次のショックは命取りになると医師に
告げられたアレックスは以前と変わらない体制であるか
のように繕うのだったが...。

<お勧め星>☆☆☆☆☆ 最近見た映画ではダントツ1番。
コメディタッチでありながら様々なメッセージが伝わり
ます。


「オスタルギー」 聞きなれない言葉ですが、東西ドイツ
統一後に旧東側出身者の「昔だってそんなに悪くなかった」
という感情を表すそうです。映画内でも、東側だった老人が
幾度となくベルリンの壁の崩壊をボヤく言葉を発しています。
映画はややもすると重くなりがちな内容を、軽快に描き、
時にコミカルに時にしんみりといった緩急織り交ぜたストーリー
になっています。


グッバイ、レーニン

アレックス役は「ラッシュ/プライドと友情」(2013)で
ニキ・ラウダを演じたダニエル・ブリュール。まだ幼さの
残る若者の顔立ちです。彼の父ローベルトは、西ドイツへ
亡命し、残された母クリスティアーヌはその後急速に社会主義
に傾倒し、熱心な愛国主義者としての活動を開始します。それは
建国記念40周年には祝賀パーティーに呼ばれるほどの活躍ぶり
なのです。一方のアレックスは、子供の頃、ソユーズに乗って
宇宙に行ったイェーンにあこがれ、宇宙飛行士を目指すも、
10年後の今はしがないテレビの修理工。姉アリアネは子連れで
出戻ってきています。

そして建国40周年パレードの際、デモに参加したアレックスは
逮捕され、その姿を見た母は心臓発作で倒れてしまうのです。
そこから昏睡状態が8か月続き、その間にベルリンの壁は崩壊、
あっという間に東西の行き来が簡単にできるようになります。
この辺りは、実際の映像も含めてテンポよく描かれ、東側の
急速な変化が手に取るように伝わるのです。こんな変化に
ついていけたのは、きっとごくわずかな人々であり、価値観や
今まで信じていたものを一切否定することができなかった人も
いたはず。それでもアレックス達若者はあっという間に順応して
いくのです。社会主義の象徴だった「赤」がコカ・コーラの
「赤」に変わっていきます。

かつてデモで出会ったララが看護師として働いていていて、母の
担当だという偶然から、急速に接近していると、なんと母が奇跡的
に目を覚まします。しかし医師からは「次のショックは命取りに
なる」と宣告されてしまう。社会主義と再婚した母が現状を知った
らどうなることか。アレックスの奮闘が始まるのです。その行動は
極めてコミカルであり、骨董市で東ドイツ時代の物資を買ったり、
親友に偽のニュース映像を作らせたりします。


グッバイ、レーニン

ニュースでは西側の難民を東側が受け入れている、という内容に
なっているのですが、このアナウンサー役は親友であり、背広の
下はパンツ一丁という姿。
母が欲しがる東ドイツ時代のピクルスは既に存在せず、必死で
空き瓶を探し、中身を入れ替えるという涙ぐましい努力もします。
ここまで母に献身的なのは単なるマザコンか。いや、それは、
あまりに急速な西側思想の流入に戸惑い、格差を嘆いた東側の人々
の気持ちを代弁しているのではないでしょうか。

姉の娘ポーラにわざわざビニールのおむつをはかせる努力も空しく
ある時、奇跡的に歩けるようになった母が外で見たのは、壊れた
レーニン像がヘリコプターで運ばれていく姿です。


グッバイ、レーニン

それでもアレックスは偽のニュース映像を見せ続けます。そして
姉は西側出身のライナーという恋人の子供を妊娠してしまう。

「僕たち家族も統一した」
自虐的なアレックスの言葉が流れます。
そして家族全員で「統一ピクニック」に行った時、母の口から
聞かされた父ローベルトの真実。
母クリスティアーヌはいつの頃か真実に気づいていたのでは
ないでしょうか。それを息子に悟られまいと、気づかないふりを
して、偽のニュース映像を見続けていたのでは?
死の迫った母のために作られた最後のニュース映像は、真実とは
全く異なる内容でしたが、それこそ母のみならず、多くの人々が
理想と描いていたものだったと思います。


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ライフ・イズ・ビューティフル

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ライフイズビューティフル

「ライフ・イズ・ビューティフル」
原題:La Vita e Bella/Life is Beautiful
監督:ロベルト・ベニーニ
1998年 イタリア映画 117分
キャスト:ロベルト・ベニーニ
     ニコレッタ・ブラスキ
     ジョルジオ・カンタリーニ
     ジュスティーノ・デュラーノ

1939年、ユダヤ系イタリア人、グイドは、友人と
共に叔父の経営するホテルで働き始める。そして
彼は名家の娘ドーラと駆け落ち同然に結婚し、一人息子
ジョズエを授かるが、ナチス・ドイツによって収容所へ
送られてしまうのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆☆ ユダヤ人迫害の悲劇をユーモア
を混じえながら描いた秀逸な作品です。


冒頭から意味は字幕でしかわかりませんが、めちゃくちゃ
陽気な青年グイドとその友人フェルッチョの会話が続き、
イタリア人の底抜けに明るい面をこれでもかと見せつけます。
しかしこの陽気さが、この後の彼の人生に大きく影響して
くるのです。

1939年という年からすぐにわかるように、第2次世界大戦は
目の前に迫っており、ユダヤ系イタリア人であるグイドが、
仕事を求めて訪れた叔父の家も、暴徒によって攻撃され始めて
いるのです。
「無言も叫びだ」
叔父のこの言葉は重いです。
グイドのうるさいほど明るい口調も、次第に楽しく感じられ
るのは、その内容がウィットに富んでいるからでしょう。
駆け落ち同然に結婚したドーラと一人息子ジョズエと共に
小さな書店を営む彼の周りにもナチスの力が及んできます。


ライフイズビューティフル

突然呼び出され、列車に押し込められる時も
「列車に乗るんだ。うれしいだろう。行き先がわからないから
余計に楽しい。」
グイドは息子に言い続けます。
そして到着した収容所には、やせ細ったユダヤ人たちが、粗末な
部屋に押し込められているのです。家に帰りたい、おやつがほしい
と語る息子に、グイドは
「これはゲームだ。1000点獲ったら戦車で家に帰れるんだ。
おやつが欲しがったり、ママを恋しがったり、泣いたら減点、失格
してしまう。」
と言い聞かせると、息子は目を丸くしながら信じ込むのです。


ライフイズビューティフル

このジョズエ役の少年がとても可愛い。表情も豊かで、心を和ませ
てくれます。
グイドは笑いながら、心の底からこの子に生きてほしい。生きて
3人で暮らしたいと願っていたことでしょう。彼の考え付くアイデア
はその時々に合わせて、危険を回避したり、収容所内の妻への
自分と息子が生きているというメッセージを送ったりと、笑い泣き
のような気持ちを起こさせます。
そして終戦になった時にジョズエに

「もしパパが戻るのがすごく遅くても、隠れ続けないと1等になれない」
とグイドは言い、彼を箱に隠し、妻を捜すのです。
この姿も女装したり、壁に張り付いたりと、ユーモアに富んだもの
です。周りが静かになった時、箱から出てきたジョズエが見たのは
本物の戦車。でも出てきた兵士は英語を話します。でもジョズエは
「本当だ!」
と大喜びするのです。その直前の厳しい映像(音だけですが)を
覚えているだけにここは切ないです。
最後まで息子を守り抜いたグイドの大きな愛を感じる映画でした。


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コーラス

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コーラス

「コーラス」
原題:Les Choristes
監督:クリストフ・バラティエ
2004年 フランス映画 97分
キャスト:ジェラール・ジュニョ
     ジャン=バティスト・モニエ
     ジャック・ペラン
     フランソワ・ベルレアン

1949年、孤児や問題児を集めた「池の底」と呼ばれる
寄宿学校へマチューという音楽教師が赴任する。彼は生徒
に厳しく対応する校長らに戸惑いながら、音楽で生徒の
心をつかもうと考えるのだった。

<お勧め星>☆☆☆☆☆ 少年たちの美しい歌声と心が
ほっこりするラストに静かに感動しました。


映画内で問題児でありつつ美声の持ち主、モランジュ役を
演じたのは、実際にサン・マルク少年少女合唱団のソリスト
だった当時13歳のジャン=バティスト・モニエです。
まさしく美少年かつ天使の歌声の持ち主で3000名の中
から選ばれたとのこと。この声は絶対に聞いた方がいい。


コーラス

映画は指揮者である老人の元へこれまた1人の老人が訪ねて
くるところから始まります。


コーラス

「池の底」と呼ばれる、第二次世界大戦による孤児や問題児
を収容する寄宿学校で一緒に過ごした2人は、マチューという
舎監が書いた日記を読みながら、当時を思い出していくのです。
マチューは音楽家の夢に破れ、一介の音楽教師としてたまたま
この「池の底」へ赴任します。ここがまた問題児だらけの学校
であり、前任者は生徒に腕を切られたことで辞めたと話します。
この教師役を日本なら、熱血先生的な人物が演じるに決まって
いるのですが、このマチューはそんなタイプとは正反対の

小太りで中年、頭髪も薄くなった独身のおっさんです。もちろん
何かに熱くなることもなければ、暴力などふるうこともない。
それだからこそ、この映画の本題に感情移入できるのですよ。
赴任早々に用務員マクサンスは生徒のいたずらで大けがを負うし、
それに対して校長は厳罰主義で対処します。それは体罰、反省
部屋への監禁、1人掃除など。そういう形で抑圧された子供は
見えないところでそれを発散させるに決まっているのです。
マチューは生徒のいたずらに戸惑いながら、彼らがハミングする
声を聞いて、コーラスをやらせることを思い立つのです。
マチューは校長の嫌味にも特に反抗せず、ただ自分の教えたい
コーラスを毎日練習させます。どうしてもオンチな子は譜面台
だし、幼いペピノはメトロノーム係。その中で問題児でありながら
耳を疑うような美声の持ち主モランジュを発見するのです。
彼らがこのコーラスによって少しずつ人間性を取り戻していく姿
は気分がいいし、そのまま大感動シーンとならないところもいい。
ある事件から校長にクビを言い渡されたマチューは、生徒が誰も
見送ってくれないことに少しだけ落胆していると、彼の頭上には
ある物がどんどん飛来します。これは映画の中盤で使われた小道具
であり、うまく活用したなと感激。


コーラス

そしてバス停まで追いかけてきたのは...。
指揮者がペピノという名前であることがわかると、マチューの
ごく平凡な行為が、子供たちの未来を変えていったのだと気づか
され、再び感動します。


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アンコール

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アンコール

「アンコール」
原題:Song for Marion/Unfinished song
監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
2012年 イギリス映画 94分
キャスト:テレンス・スタンプ
     バレッサ・レッドグレーブ
     ジェマ・アータートン
     クリストファー・エクルストン

気難しいアーサーの妻マリオンは、周りの誰からも愛される
明るい女性である。彼女は老人たちの合唱団に参加していたが、
ある日ガンが再発し、余命が残りわずかであるとわかってしまう。
息子ともうまくいかないアーサーは、妻のために必死で世話を
するのだが...。

<お勧め星>☆☆☆☆☆ 文句なく素晴らしい映画です。涙が
自然と流れます。


主役のアーサー役は「アジャストメント」(2011)の
テレンス・スタンプ。そして彼の妻で、誰からも好かれる朗らかな
マリオン役はバネッサ・レッドグレーブです。彼女に関しては
政治的な活動の方が印象深く、知らないうちに老人になっていたな
という感じがしました。


アンコール

オープニングは楽しそうに公民館で合唱の練習をする老人たちと
それをよそに外でタバコを吸っている不機嫌そうなアーサーが
映ります。このアーサーは妻マリオンを心から愛し、彼女が日々の
生きがいとなっている生活を送っているのです。なんかこういう
老人っているよね。大した趣味もなく、心を許す相手は妻しか
いない。息子ジェームズに対しても辛辣な言葉しかかけられない
のです。その姿を孫娘にまで心配される始末。


アンコール

全てマリオンが取り持ち、この家族は成立してきたのです。
しかし彼女のガンが再発し、余命もわずかであるとわかってしまう。
マリオンは、残りわずかな期間を合唱に打ち込みたいと言い、雨の
中、彼女のために歌いに来てくれたメンバーを怒鳴り散らした夫に
「言うとおりにするまで口をきかない」
とだんまり戦術に入るのです。この辺りもガンコじいさんが負ける
姿が、コミカルに描かれ、こんな夫婦はどこにでもいそうだな、と
思います。

そしてマリオンの代わりに練習に行ったり、外で彼女を待つうちに
なぜかアーサーの口からも自然と歌がこぼれ始めるのです。歌って
すごい力を持っているんですね。
合唱団の先生エリザベス役は「アリス・クリードの失踪」の
ジェマ・アータートン。


アンコール

彼女の豊かな演技力も素晴らしいです。様々な表情が極めて自然に
演じられています。
そして合唱コンクールの予選大会で、マリオンがソロで歌う時、
まず涙がホロリ。なぜ彼女がソロなのか。それはもしも本大会に
行けたとしても、この世にいるかどうかわからないから。歌の歌詞
にも泣かされます。
シンディー・ローパーの「トゥルー・カラーズ」。

そこにいる誰もが感動し、アーサーも心を揺さぶられるのですが、
やはり素直になれないのです。ガンコおやじ、偏屈おやじ。
この涙シーンの前には、エアギターに興じ、終わった後、仲間に
助け起こされるメンバーや過激な歌詞のヒップホップで笑わせて
いるので余計に心に響くのです。
I don't want you to go,please.
アーサーが懇願しても、ある夜マリオンは旅立ちます。駆けつけた
息子がドア越しに聞く父親の慟哭は、本当に胸が締め付けられます。
マリオンの死後、一層息子との溝が深まったアーサーをエリザベス
が合唱に誘うのです。「Enjoy!」

息子に拒絶され続けても、素直になってみると、アーサー自身の
本当の心が自分でわかり始めます。
合唱コンクールでのアーサーのソロ曲はビリー・ジョエルの
「ララバイ」。これも涙が出ます。なかなか歌いだせなかった祖父
に声をかける孫娘。家族の力や友人の力、そして歌の力は素晴らしい
と感じます。ラストはうまくいきすぎた感もありますが、素直に
幸せな気分になれる映画です。


  


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さあ帰ろう、ペダルをこいで

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さあ帰ろう、ペダルをこいで

「さあ帰ろう、ペダルをこいで」
原題:sevetat e golyam i/spasenie de bne/otnsyakade
監督:ステファン・コマンダレフ
2008年   ブルガリア=ドイツ=ハンガリー=セルビア=スロベニア映画
        105分
キャスト:ミキ・マノイロビッチ
     カルロ・リューベック
     フリスト・ムタフチエフ
     アナ・パパドブル

サシコは父親の運転する車で事故に遭い、両親を亡くし、一人
生き残る。しかし彼は事故前の記憶を全て失い、面会に来た祖父
ダンさえ覚えていない。そんな孫を見て、ダンは記憶を取り戻す旅
と称して自転車旅行に連れ出すのだった。

さあ帰ろう、ペダルをこいで

最近見た映画の中では最も心に残る作品の一つです。
映画の序盤に何やらシリアスな表情の夫婦と陰気な息子の姿が
映ります。彼らは無言で1台の車に乗っているのです。
その前に1975年の一家の姿が映り、主人公サシコの誕生から、
祖父母、両親の紹介がさらっと描かれます。そして突然起きた自動車
事故でサシコだけが生き残るシーンになるのです。ここはいったいどこ
なのか、なぜ両親は憂鬱そうだったのか、それらは、サシコの幼少期、
両親の亡命前後の苦悩、現在の祖父とサシコの様子が、かわるがわる
映るうちに次第に理解できてきます。この描き方も「その先は?」と関心
をひきつけるものであり、全く飽きることがありません。
1975年、ブルガリアの田舎町で生まれたアレクサンダルことサシコは
サイコロ名人の祖父バン・ダンとお菓子作りが得意な祖母、そして落ち着き
のない父ヴァスコ、静かで穏やかな母ヤナの5人でつつましくも幸せに
暮らしていたのです。

さあ帰ろう、ペダルをこいで

ダンのバックギャモンの腕前は超一流で、金は賭けない名誉の戦いを
し続けていました。しかし共産党政権下の1983年、ダンの過去の行為や
娘婿ヴァスコの経歴詐称で、ヴァスコ、ヤナ、サシコはドイツへの亡命を
試みます。
「おじいちゃんと話したい時は、空の雲に話しかけるといい。」
ダンの言葉に頷くサシコ。しかし彼らにはイタリアの難民収容所での過酷な
生活が待っていました。それらも深く掘り下げすぎることなく、見る者に淡々と
訴えていきます。

さあ帰ろう、ペダルをこいで

ブルガリアといえば琴欧州、ヨーグルトぐらいしか知識のなかった私は
この映画で、この国がソ連の衛星国家であった時代の存在を知りました。
それはほんの30年ほど前のことなのです。そして今も決して裕福な国では
ないのです。
そして冒頭の陰気な親子3人は自動車事故に遭い、サシコだけ生き残ります。
ところが彼には事故前の記憶が一切ないのです。そこから面会に来た祖父と
タンデム自転車に乗って記憶を取り戻す旅に出かけることになります。
風力発電の風車が回り、どこまでも広がる真っ青な空、辺り一面緑の草原、
のどかな音楽やダンスと心のなごむものと接するうちに、サシコは記憶を
取り戻していきます。途中で、マリアという女性とも出会い、彼は再生した自分と
心を実感するのです。もちろんダンの後押しもあったのですが。

さあ帰ろう、ペダルをこいで

途中でダンはサシコを置いて列車でブルガリアへ戻っていきます。その後の
サシコのふっきれたような表情は、人生は自分で切り開くものであり、それは
「サイコロの振り方次第」
というダンの言葉をそのまま描いているようでした。
雨上がりの空に浮かぶ虹もうまく使われています。

<マープルの採点>
お勧め星   ☆☆☆☆☆


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明日は花散らしの雨らしい。今日はいい天気。

灼熱の魂

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灼熱の魂

「灼熱の魂」
原題:incedies
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
2010年   フランス=カナダ映画   131分
キャスト:ルブナ・アザバル
     メリッサ・デゾルモー=プーラン
     マキシム・ゴーデッド

中東出身の女性ナワルは、双子のジャンヌとシモンに謎の遺言と
2通の手紙を残して息を引き取る。彼らは各々存在すら知らなかった
父と兄を見つけるため、母の祖国へ向かうのだった。

灼熱の魂

原題名は「焼き尽くされた魂」。見終わるとその意味を実感します。
冒頭、まだ幼い少年達の髪の毛を兵士がバリカンで刈り上げるシーンが
映ります。少年の足元に落ちる髪の毛と、その暗い瞳には希望は見えません。

灼熱の魂

そして一人の少年の右足のかかとには3つのドットのタトゥがあるのです。
舞台は変わって、双子のジャンヌとシモンが公証人ジャン・ルベルから
彼らの母親ナワルの遺言を聞かされるシーンになります。その遺言は極めて
奇妙なもので、ジャンヌは父親を見つけ、シモンは兄を見つけ、各々1通の
手紙を手渡し、その後もう1通の手紙を開けた後、墓石にナワルの名前を
刻んでほしい、というものなのです。
「こんな遺言は無視して、ふつうに葬儀しようぜ。」
ドライなシモンは主張しますが、ジャンヌは今まで一切語られなかった母ナワル
の過去を調べるため、故郷レバノンへと渡るのです。2人はカナダ育ちで、ナワル
のことはほとんど知らなかったことに気づきます。母の過去に何があったのか。
そして父は生きているのか。
途中に入り込む、プールで突然表情を失う母ナワルの意味はラスト付近にわか
ります。
ナワルの過去のシーンとその軌跡を追うジャンヌが交互に映り、ナワルの過酷
と一言で片づけてはあまりにも簡単すぎる半生が少しずつ紐解かれていくのです。

灼熱の魂

母の故郷の村では、ジャンヌを歓迎してくれた婦人たちが、ナワルの写真を見た
途端に急に「帰ってくれ」と騒ぎ始まます。レバノンという国の宗教が入り乱れ、
大国に翻弄され続けた混乱と内戦の歴史、そしてそれによる人間の心の崩壊が
全て画面に映し出されていくのです。そこには目を背けたくなるような現実ばかり
が映っています。今なおこんな状況の国々はいくつも存在しているのです。

灼熱の魂

そしてジャンヌから
「次はあなたが兄を見つなさい。」
と託されたシモンは渋々現地に向かうのですが、そこで知った驚愕の事実。
「報復の連鎖は膨らみ続ける」
それはいつ断ち切られるのか。
「沈黙は守られ、そして約束は果たされた」
母のこの言葉に2人だけでなく見ている者も打ちのめされるはずです。

<マープルの採点>
お勧め星   ☆☆☆☆☆



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寒かったら厚着すればいい?いや、寒いものは寒い。

サラの鍵

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サラの鍵

「サラの鍵」
原題:Elle s'appelait Sarah
監督:ジル・パケ=ブランネール
2010年   フランス映画   111分
キャスト:クリスティン・スコット・トーマス
     メリュジーヌ・マヤンス
     ニエル・アレストラップ

1942年、パリに住むユダヤ人のサラは、両親とともにフランス警察によって
収容所へ連行される。その際、サラは、弟ミシェルを納戸に隠し、鍵をかけて
きた。一方2009年、ジュリアは、夫の祖母が所有するパリのアパートへ移り
住む過程で、過去の悲惨な事件について知るのだった。

サラの鍵

「黄色い星の子供たち」(2010)と同じ、ナチスによる「ヴェルディヴの悲劇」について
描いています。
1942年7月16日、ベッドの上でふざけ合うサラとミシェル姉弟。この無邪気な笑顔は
これ以降二度と見られなくなります。
その日、フランス警察によってパリ在住のユダヤ人が一斉検挙されます。サラと彼女
の両親もヴェルディヴにある冬期競技場に収容されてしまうのです。サラはミシェルを
納戸に隠し、「すぐに迎えに来るからね。」と鍵をかけて家を出ます。

サラの鍵

ヴェルディヴでの悲惨な状況は、おそらくこの映画の方がリアルに描いていると
思います。水、食料はなく、トイレもない不衛生な環境に、大量のユダヤ人がひしめき
合っているのです。

サラの鍵

一方、2009年、パリのマレ地区のアパートを訪れたジュリアは、夫ベルトランと
娘ゾーイで、この部屋に引っ越しをしようと考えています。ところがジャーナリスト
という仕事柄、かつてマレ地区のユダヤ人がヴェルディヴの悲劇に遭っていること
を知り、このアパートはもしかしたら...とその過去を探り始めるのです。
サラとジュリアのシーンが交互に映り、そして真実へと近づいていきます。
サラの瞳の奥にとてつもない悲しみを見て取ったサラの夫の言葉。それは弟
ミシェルを連れて出なかったこと、そして納戸に鍵をかけたこと、その後両親と
引き裂かれた収容所生活、そして一緒に脱走した友人の病死。

サラの鍵

これでもかというほどの悲しみを全て見てきた瞳だったのですね。

サラの鍵

45歳にして妊娠したジュリアとそれを喜ばない夫との確執も含めて、夫の家族が
隠してきた過去の事実が露呈していくと、サラについてもだんだんわかっていきます。
こんな悲劇は後世に語り継いでいかないといけません。
映画のラストは希望を持ったものとなっており、この映画に未来を託した気がしています。

<マープルの採点>
お勧め星   ☆☆☆☆☆



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今日は雨降り。少し涼しいくらい。

英国王のスピーチ

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    英国王のスピーチ

    「英国王のスピーチ」
    原題:the king's speech
    監督:トム・フーパー
    2010年   イギリス=オーストラリア映画  118分
    キャスト:コリン・ファース
         ジェフェリー・ラッシュ
         ヘレナ・ボナム=カーター
         ガイ・ピアーズ

    父ジョージ5世の後継者エドワード8世が、アメリカ人女性との結婚を望み、
    王位を捨てる。弟ヨーク公は、ジョージ6世として即位するのだが、彼には
    ひどい吃音症があり、国民の前で上手にスピーチできないのであった。

    英国王のスピーチ

    第83回アカデミー賞作品賞、主演男優賞、監督賞等を受賞しています。
    ウィキによると、30年以上前に脚本化されていたそうですが、ジョージ6世の
    王妃エリザベスが、自分の存命中は公にしてほしくないと許可を与えず、
    映画化されなかったそうです。
    幼い頃から、父であり、王であるジョージ5世の厳しいしつけを受け、ヨーク公
    アルバート王子は内向的かつ重い吃音症に悩まされていた。コリン・ファースが
    マイクを前に言葉がうまく発せられない彼の役を見事に演じています。
    悩み、嘆き、落胆し、怒る。そしてそんな彼を包み込む穏やかな妻エリザベス妃。
    この役は「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(2007)の
    ヘレナ・ボトム=カーター。瞳が大きく、どこかお茶目な印象を与えています。

    英国王のスピーチ

    一方、奔放な兄ディヴィッドは、2度の離婚歴のあるアメリカ人シンプソン夫人と
    交際し、結婚を望んでいるんです。ディヴィッド役は「ハート・ロッカー」(2008)の
    ガイ・ピアーズ。今回は女性にメロメロで国のことなど何とも思っていないいわゆる
    チャラい役どころです。まあ、王族とて人間。いろいろな性格を持って然りでしょう。

    英国王のスピーチ

    彼は父の死後、エドワード8世として即位したものの、夫人との結婚を選び、1年足らずで
    退位してしまいます。遂にアルバートはジョージ6世として即位することになるのです。
    時はヨーロッパに戦争の影が忍び寄る時期。ここでこそ
    王たるものの威厳→りっぱなスピーチ→国民の支持を得る
    の構図を生かしたいところなのです。それほどまでに重要なスピーチが、彼にとっては
    どうしても苦痛でしかないし、うまくできたためしがない。
    実はずっと前にオーストラリア人の言語聴覚専門者ライオネル・ローグの指導を受けて
    いたのですが、途中で放り出していたのです。

    英国王のスピーチ

    ローグ役は「ディボース・ショウ」(2003)のジェフェリー・ラッシュ。彼のひょうひょうとした
    演技は、常にイライラし、プライドをかざすアルバートと対照的です。ここがとてもうまく
    かみ合っています。
    ローグの指導の下、夫の腹に乗り、発声させたり、3人で踊りながら発声する。そんな型破りな
    治療は全て創作だそうですが、夫人の深い愛情が感じられるシーンでした。
    涙ではなく、しみじみと感動を呼ぶ映画でした。

    <マープルの採点>
    お勧め星   ☆☆☆☆☆


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    まことに爽やかです。犬の散歩も気持ちがいい!

    「瞳の奥の秘密」

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    瞳の奥の秘密

    「瞳の奥の秘密」
    原題:el secreto de sus ojos/ the secret in their eyes
    監督:ファン・ホセ・カンパネラ
    2009年   スペイン=アルゼンチン映画  129分
    キャスト:リカルド・ダリン
         ソレダ・ビジャミル
         パブロ・ラゴ

    裁判所を退職したベンハミンは、25年前に起きた
    新妻暴行殺人事件を元に小説を書くことを決意する。
    当時その事件を担当したベンハミンは、上司イレーネ
    らと共に犯人らしき人物の逮捕に至るのだが...。

    瞳の奥の秘密 瞳の奥の秘密

    静かなピアノとバイオリンの旋律が心地よいです。
    2009年アカデミー賞外国語映画賞を受賞しています。
    オープニング。大きなカバンを持って列車に乗り込む
    男性と彼を見送る女性。手と手を列車の窓越しに重ね
    合わせ、そして走り出す列車を追ってホームを駆ける
    女性が映ります。逆の立ち位置での別れのシーン、
    「旅情」を思い出しました。

    瞳の奥の秘密

    1974年6月21日にリリアナという新妻が暴行され、
    殺害される。その事件を担当したベンハミンは、アル中の
    事務職員パブロ、そして若い上司イレーネ判事補と共に
    犯人に近づいていく。

    瞳の奥の秘密

    そして25年後の2000年、ブエノスアイレスでベンハミンは、
    自分の中でわだかまりとして残っているこの事件を小説に
    しようと決意するのです。リカルド・ダリンの掘りの深い顔立ちは
    哀愁と実直さを見事に表現しています。
    現在と25年前が交互に映し出され、瞳の動きから真犯人を
    見つけ出す。瞳が数多くのことを物語っています。

    瞳の奥の秘密

    役者の老けさせ方はとても上手で、本当に25年たったように
    感じます。そして心の内が読み切れないもどかしさもまるで
    自分がその立場にいるような錯覚に陥るほどです。
    「過去に囚われ未来を失う」
    過去にケリをつけることで未来が開かれるのですね。それが
    何年たっていようとも。
    「扉を閉めて」
    何度も聞かれるこの言葉が胸にキュンときます。

    <マープルの採点>
    お勧め星   ☆☆☆☆☆
    グロ星    ☆
    ハラハラ星  ☆☆☆
    エロエロ星
    ダルダル星


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