運命は踊る

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JUGEMテーマ:洋画

 

運命は踊る

出典:IMDb

 

「運命は踊る」

原題:Foxtrot

監督:サミュエル・マオス

2017年 イスラエル=ドイツ=フランス

=スイス映画 113分

キャスト:リオル・アシュケナージ

     サラ・アドラー

     ヨナタン・シライ

     ゲフェン・バルカイ

     デケル・アディン

 

ミハエルとダフナのもとに息子ヨナタン戦死の知らせが

届く。悲嘆にくれるダフナと軍の指示で葬儀の準備をする

ミハエルだったが、さらにそこへ戦死が誤りだったことが

伝えられる。彼は喜ぶ妻とは逆に息子を即刻呼び戻すことを

要求するのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 前半と後半で全く雰囲気が変わり

ますが、登場人物の胸の内が丁寧に描かれていくのが分かり

ます。


どこへ行こうと同じ場所に戻る


原題「Foxtrot」は映画内でヨナタンが説明するように、

社交ダンスの1つであり、そのステップが、前、前、右、

後、後、左と進むというもので、この通りに動くと結局は

元の位置に戻るというもの。
このダンスは前半のミハエルの母が入居する施設で老人たちが

スローに踊り、中盤、検問所にいるヨナタンが、かなり現代風に

アレンジして踊っています。

 

運命は踊る

出典:IMDb

 

そしてステップの意味することが最後にハッと理解できるのです。
始まりは、ミハエルとダフナの住む家に、息子ヨナタンの戦死の

知らせを持ってくる兵士の姿からです。何のBGMもなく、ただ

玄関ブザーの音、ドアの開閉の音、犬の泣き声のみが聞こえます。

気を失ったダフナと茫然とするミハエルが映り続け、ミハエルの

姿を真上から映し、彼の喪失感の大きさを描いていきます。心は

冷え切り、無意識に動いているだけかのようです。
そして全て軍に仕切られ、葬儀の段取りも進んでいくと、ミハエルは

軍が派遣したラビ(ユダヤ教の指導者)に「棺の中身を見せろ。」

「棺の中身は何だ。」と強く問うのです。受け止めきれない喪失感は
やがて怒りに変わるし、ようやく納得しかけたところに、今度は

「戦死は別人」という知らせが届きます。

 

運命は踊る
出典:IMDb

 

「もうたくさんだ」一人で抱え込み、人前で涙を流すことはなく、

トイレで声を殺して泣くだけが唯一の救いだったミハエルは、

この知らせに怒りまくるのです。

 

運命は踊る

出典:IMDb

 

逆にダフナは「生きていたからよかったじゃない」と明るい

表情を浮かべています。彼女は鎮静剤を打たれて眠っていた

ので、その間のミハエルの苦しみは見ていません。だからミハエルが

「即刻連れ戻せ」と主張することに理解できないのだなと思って

いたけれど、そこにはもっと深い胸の内があったことを知るのは、

本当に映画の終わり付近です。

 

運命は踊る
出典:IMDb

 

一方、ヨナタンのいる北部の検問所は、ラクダが通行するような

のどかな場所です。寝場所は、日に日に傾いていくコンテナの

中であり、その傾きを調べるために毎日缶を転がすのが少しだけ

おかしい。

 

運命は踊る
出典:IMDb

 

「何と戦っているのか」そもそも「戦争をしているのか」すら

実感できない状況で、彼らは毎日1台くらい通行する車を検問して

いきます。何もない場所で、起きるはずのないことが起きるのが

戦争なのだと痛感するのは、検問する時の兵士の態度が、明らかに

支配する側そのものだからかな。さっきまで無駄話をしていたのに、

無表情になり、車に乗った人物に冷酷に命令をするのみ。そこに
人間性のかけらも見られません。こんなにも変わるものなの

でしょうか。

そしてそこに存在する「正義」は、個人のものではなく「軍」の

判断によるものが全てです。
ミハエルの聖書の話は、彼が前半、なぜあのように強く振舞った

のかを全て象徴しているもので、実際は強くないことを、ダフネだけ

でなく、子供たちすらも知っており、気づかれていることを

知らなかったのはミハエル自身だけだったというのは皮肉なもの

でした。
幸せな時は、その瞬間には感じなくて、後から気づく

ーこれは幾度経験しても失敗してしまうものなのでしょうね。

だから未来へと希望を持ち続けることが、自分の罪を帳消しに

するものだと信じてしまうのです。
それは全く正しい事ではあり、乗り越えるためのチャンスは幾度

でもあると思いたいです。

 

 

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ロープ 戦場の生命線

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ロープ

出典:IMDb

 

「ロープ 地上の生命線」

原題:A Perfect Day

監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア

2015年 スペイン映画 106分

キャスト:ベニチオ・デル・トロ

     ティム・ロビンス

     オルガ・キュリレンコ

     メラニー・ティエリー

     フェジャ・ストゥカン

 

1995年、バルカン半島で「国境なき水と衛生監視団」

は住民の水源である井戸に投げ込まれた死体を引き上げて

いた。しかしそのロープは切れてしまい、彼らは地雷が

置かれている危険な道路を車で走り、ロープを探すことに

なるのだったが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ のどかな雰囲気を漂わせながら、

実は重いテーマを扱っており、それがかなり違った角度

から描かれています。


今だけを見て進むだけ


水は人間が生活していくうえで必要不可欠なものであり、

砂漠地帯や山岳地帯ではその水を求めて何時間もかけて

歩いていくという現実があります。その水源が井戸で

あったとき、もしも紛争が起きて敵味方に分かれたら、

その井戸を使えなくする行為を考えつくのは当然なのかも

しれません。しかしそれは敵が行ったとは限らず、

もしかしたら水を有料で販売して商売をしようと考える

不届きものの行為かもしれない。この映画では井戸に死体が

投げ込まれ、それを引き上げるためのロープがあと少しの

ところで切れてしまったため、ロープを求めてひたすら

車で移動する「国境なき水と衛生監視団」のある1日が

描かれているのです。

 

ロープ
出典:IMDb

 

この団体の現場のリーダーはベニチオ・デル・トロ演じる

マンブルゥ。「ボーダーライン」(2015)の眼光鋭い男

とは打って変わって、心は優しいけれど、女にはだらしない

男です。

 

ロープ
出典:IMDb

 

相棒のビーを演じるのは「ミスティック・リバー」(2005)

のティム・ロビンス。それにフランス人ソフィーと現地通訳

ダミールが2台の車で行動していくのです。
場所はバルカン半島のどこか。時は1995年。映画内で

「ボスニア」というセリフがあったことから、セルビア人が

ボスニアからの独立を目指して戦争を繰り返した

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争直後のその地域を描いていると

思われます。「平和協定」がNATO主導のもとに締結され、

国連軍が駐留していても「国際紛争中でなければ行動しない」し、

「地雷があれば除去に向かう」というあくまでも杓子定規な
考え方は現場で通用するはずもない。それは誰でもわかること

だけれど、さらに深く考えると、「国境なき水と衛生監視団」

が住民のために活動をしている、武器は持っていないとアピール

したところで、所詮彼らは「外国人」=「よそもの」なのです。

地元民にすると「外国人は戦争とともに来る」と考えられ、

無償の好意だとしてもそれが必ずしも受け入れられるわけでは

ないのです。したがって切れたロープの代わりを購入するために、

危険を冒して町に向かっても、目の前に山ほど置かれたロープを

販売してもらえません。
たかがロープ、されどロープ。

ロープがなければ井戸の死体は引き上げられないし、そのロープを

入手するために、地雷や武装組織を避けながら移動しなければ

ならないのです。さらに死体は腐敗するので24時間以内に

引き上げないといけないというタイムリミットもあるわけです。

この死体がものすごく太った男?で、その太った理由を話す

マンブルゥとビーの会話がかなり間抜けな内容になっています。

 

ロープ
出典:IMDb

 

実際はかなりヘビーな内容で、地元の子供ニコラがボールを

取られているのを止めに入ると、そのいじめている年長の少年は、

マンブルゥに銃を向けます。子供すら銃を持って武装している

のです。また地元の検問所には捕虜と思しき人々がバスに

乗せられていくのをこの目で見るのです。彼らの行く末は

言わなくてもわかっています。それが紛争地域の現実なのです。
と、どんどん暗くなりそうでハラハラしてきた内容の中に突然

入りこむコミカルなシーンには必ず笑わせられます。新しい女性が

加わったと聞いて覗きに行くとそこにいるのは、かつてマンブルゥと
関係があったカティヤがいるのです。この役は「007 慰めの報酬」

(2008)のオルガ・キュリレンコ。カティヤと付き合った

ものの実はマンブルゥには恋人がおり、それが後にカティヤにばれて、
彼女から恋人サラに二人の関係をバラされてしまうという修羅場が

あったらしい。

修羅場だよな、絶対に。
ロープがあるにはあったものの、それは猛犬をつないだもの

だったり、その犬には鎮静剤が一切効かず、全く別の場所で見つけた

ロープを使うことを決意するものの、それはこの紛争の悲惨さを

リアルに伝えるものであったりと、緊張の糸が緩んだり、強まったり

の繰り返しです。さらにようやく死体の引き上げを再開すると...。
あらゆることが不条理で、机上の論理を振りかざす権力への抵抗も

許されず、また地元民の理解も得られず、それでも彼らは活動を

し続けるしかない。かつて多くの人々の生活の場であった場所が

瓦礫の山と変わっていて、人々は二度と同じ場所に集まることはな

いだろうとしても、過去は振り返らず、そして未来も期待せず、

今、この時を見て進むことが彼らの唯一出来ることなのだと

実感します。

 

ロープ
出典:IMDb

 

最後に乾いた大地に降り注ぐ雨は、その地に住む人々を同じように

濡らし、そして潤いをもたらしていく。しかし彼らは今から

壊れた難民キャンプの便所を直しに行くのだ、と聞くと、この雨は
恵みの雨でありつつ、皮肉な雨でもあると思えて、また少し笑って

しまいました。雨が降る直前に

「これで雨が降ったら便所があふれてえらいことになる!」と

言ったばかりなのです。どうなっているんだろう。

紛争地域の一日を切り取って、静かに反戦のメッセージを伝える

秀逸な作品です。

 

 

 

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スリーピング・ボイス 沈黙の叫び

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スリーピング・ボイス

 

「スリーピング・ボイス 沈黙の叫び」

原題:La voz dor mida

監督:ベニト・サンブラノ

2011年 スペイン映画 123分

キャスト:インマ・クエスタ

     マリア・レオン

     マルク・クロテット

     ダニエル・オルキン

 

1939年、スペイン内戦終結後、フランコ独裁政権

へと変わり、敗者となった共和派の人々は次々に投獄

されていく。マドリードの女性刑務所に姉オルテンシアが

収監されているペピは、身重の姉を気づかい必死で面会を

続けるが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 戦いは憎しみと悲劇を生むばかり。

その中で女性たちの強い姿を見ることができます。


希望は持つもの、生きるために。


スペイン内戦は1936年から1939年まで人民戦線

(共和派、ソ連、メキシコなどが支援)とフランコ将軍を

中心とした反乱軍(ナショナリスト派、フランス、ドイツ、

イタリアなどが支持)の間に起きたもので、結果的に反乱軍が

勝利をおさめ、フランコ独裁政権が誕生したのです。しかし

まず内戦時に、反宗教的であった人民戦線軍と古来カトリック、

キリスト教を支持した反乱軍とでは政治的な信条の違いだけ

でなく、宗教的にも対立し、身内、友人、隣人までもが

敵味方に分かれ、双方多くの人々が犠牲になりました。

その結果、独裁政権誕生後は、共和派の戦闘員のみならず、
その恋人、妻、知り合いというだけで、国家反逆罪の罪を

着せられ、激しい弾圧を加えられたのです。これがこの

映画におけるマドリードの女性刑務所の存在であり、その

環境の劣悪ぶりだけでなく、不条理な裁判、無慈悲な処刑の

執行まで描かれます。銃弾の響く音で、幾人処刑されたの

かわかり、それを聞きながら恐怖に怯える女性たちの姿。
同じ国民であっても、敵味方に分かれて戦い、さらには

勝者側が敗者に激しい弾圧を加える構図は、今なお世界の

あちこちで起きている気がしてなりません。
この映画は特に「女性」の視線で描かれており、差別や

偏見を恐れて沈黙していた生き残った女性へのインタビュー

から書かれた小説を基に、自国で製作するのに6年の月日が

かかったということです。
冒頭いかつい女看守が靴音を立てて囚人房へ近づいてきて、

名前を次々に読み上げます。それが何を意味するのか、

泣き叫ぶ女性たちを見ると推測できますが、映画ではその後の

姿も映し続けます。

 

スリーピング・ボイス
 

この中の囚人オルテンシアは、夫フェリペが共和派の戦闘員で

あり、その結果拘束され、他の人々同様に茶番のような裁判を

受けて死刑を宣告されます。口答えすれば容赦なく平手打ちが

飛ぶのです。それは神に仕える身の神父、シスターすらも同じで、

ここまで冷酷になれるのかと驚くばかりです。

 

スリーピング・ボイス
 

またオルテンシアは身重であり、故郷から妹ペピがマドリードを

訪れ、彼女と面会を続けるために、ある家でメイドとして働き

始めます。しかしその家の主人の一族は軍の幹部で、妻は内戦で

共和派によって家族を殺されていました。しかしペピも同じ

内戦で反乱軍によって家族を殺害されています。またこの家の

主人フェルナンドはどうやら共和派らしく、そのせいで医師免許を

はく奪され、会計士をしているらしい。誰もみな内戦で身内を

亡くしたり、職を奪われたりしていた時代なのです。この複雑な

人間関係の中で、ペピはフェリペの仲間のパウリーノと出会い、

恋に落ちます。

 

スリーピング・ボイス

 

一度目はペピが答えなかった質問も月日が過ぎた後に、逆に

ペピから「あの質問をして」とせがみます。このシーンが

何とも言えず、普通なら甘ったるく感じる恋なんだけれど、

この映画をだらけさせるものではなく、ペピの意志の強さを

実感するものになっているのです。

しかしそんな時間はごくわずかで、やはり無事に出産した

オルテンシアの死刑執行の時期が近づきます。
「兄さんは仲間とフランスに無事に旅立ったわよ!」
ペピが必死で涙をこらえながら面会した姉に伝えるシーンでは

不覚にも涙がこぼれました。ペピ役のマリア・レオンはこの

映画でゴヤ女優賞を獲得したとのこと。他のシーンも含め納得の

演技です。
内戦もその後も起こるべきではなかった。

これは戦争というものすべてに当てはまることだと思います。

慈悲深い女看守の姿が印象的でした。

 

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ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

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ウィストン・チャーチル

 

「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから

世界を救った男」

原題:Darkest Hour

監督:ジョー・ライト

2017年 イギリス映画 125分

キャスト:ゲイリー・オールドマン

     クリスティン・スコット・トーマス

     リリー・ジェームズ

     ベン・メンデルスゾーン

 

1940年5月、第二次世界大戦初期、ヨーロッパで

勢力を拡大していたナチスドイツは、フランスへ侵攻

を開始し、イギリスをも脅威にさらし始める。時の

首相となったチャーチルは徹底抗戦を訴えるが、戦況

は悪化の一途をたどるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 125分があっという間で大変

見ごたえがある映画です。


never!!


1940年代、ベルギー、オランダへ侵攻すると見せかけ、

実はフランスへ総攻撃を仕掛けたヒトラー率いるナチス

ドイツ。イギリス国内では、戦時対策への失敗から

チェンバレン首相に非難が集中し、野党は連立内閣を

組むことと引き換えに首相の辞任を要求するのです。

冒頭に繰り広げられる首相への攻撃はかなり激しく、次の

首相は戦争内閣であり、とりあえず野党の協力を得られる

人物ということでチャーチルが就任します。実はかつて

海軍大臣だったチャーチルは第一次世界大戦での失敗、また

彼と対立するものの国王と親しいハリファックスは、

かつてインド総督に就いており、インド独立に反対して

いたチャーチルと激しく対立したという因縁を持っていた

のです。したがってこの戦争内閣で失敗しても全てチャーチル

の責任にして次はハリファクッスで、という国王の思いも

あった模様。ちなみに国王ジョージ6世は「英国王のスピーチ」

(2010)で吃音に悩んでいたことが描かれていたように、

この映画でもやや言葉がもつれるシーンが見られます。

そうだ、お兄さんのエドワード8世は、「王位をかけた恋」

と言われた2度の離婚歴のあるアメリカ人シンプソン夫人と

結婚するために、王位を弟に譲ったんだったわ。

 

ウィストン/チャーチル
 

チャーチルを演じるのはゲイリー・オールドマンで、完全に

チャーチル本人に似せたメイキャップを施した日本人

メイクアーチストの腕前は素晴らしく、たるんだ頬や薄い

頭髪などは本物そっくりです。もちろんゲイリー自身も話し方、

立ち居振る舞い、表情1つをとっても全てチャーチルと

同じようになされていて、どちらもアカデミー賞を受賞した

のは納得。写真をググってみても本当に似ています。
監督は

「プライドと偏見」(2005)

「つぐない」(2007)などのジョー・ライト。

「つぐない」は中でも一押しの映画です。そんなことで

つぐないにはならないんだよ!と思わせる内容が美しい

映像と音楽と共に映し出されていました。どちらも

主演のキーラ・ナイトレイは、これまたわたしの大好きな

女優さんです。
さて空爆と戦車でフランスに侵攻するドイツ軍は、

フランスの同盟国であるイギリス軍にも多大な被害を

及ぼしており、フランス内でカレーとダンケルクに

追いつめられていたのです。この名前は聞き覚えがある

はず。そうクリストファー・ノーラン監督の

「ダンケルク」(2017)

ですね。あちらは、ダンケルクの海岸まで追い詰められた

兵士と救助に向かう小さな船の人々などを描いていましたが、
こちらはダンケルクの兵士を救うための作戦「ダイナモ作戦」

の計画から遂行までがチャーチル視点で描かれます。ただ

どちらもカレーに追いつめられた兵士には援軍が来なかった

という事実を見せられ、戦争の作戦における優先順位と

いうものを実感させられるのです。チャーチルからの

電報を読み、茫然と空を見上げる司令官。そして高い空

から落とされていく爆弾が赤く地表を染めていく。幾つの

命が失われたのでしょうか。
しかし映画はその戦いではなく、ナチスドイツの侵攻を

いかに食い止めるかを話し合うイギリスの戦争内閣の姿を

映すのです。イタリアのムッソリーニを仲介にヒトラーと

和平条約を結ぶことで自国民の犠牲を減らそうと考える

ハリファックスと徹底抗戦を訴えるチャーチル。火花が

バチバチ飛びます。前に書いたような因縁もあるので、終盤の

言い争いに熱を帯びるのは当たり前のことなのです。
とても嫌な男に感じられるハリファックスも実は国のために

悪いことを言っているのではなく、その時に何が一番得策

だったのか後から判断するのは簡単、たまたまチャーチルの

策が成功したに過ぎないのかもしれません。

 

ウィストン・チャーチル
 

常に緊張を強いられ、朝昼晩とお酒をたしなむチャーチルが

心を許せるのが、妻であり「ブタちゃん」と言ってねぎらって

くれる。この緩さが何とも言えません。

 

ウィストン・チャーチル
 

また秘書ミス・レイトン役のリリー・ジェームズの毅然と

した姿もとても魅力的です。
「言葉を武器に変える」これは演説の力を意味しているのだと

思います。迷い、恐怖、絶望などを吹き飛ばすような言葉は、

ただ力強いだけでなく、実があり信念のある言葉、綺麗ごと

を並び立てるのではなく、嘘偽りなくさらけ出したうえで、

構築された言葉、そんな言葉こそ聞く側の心に響き、潜在的

な力を呼び覚ますのではないかと思うのです。

 

 

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ローズの秘密の頁

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ローズの秘密の頁

 

「ローズの秘密の頁」

原題:the Secret Scripture

監督:ジム・シェリダン

2018年 アイルランド映画 108分

キャスト:ルーニー・マーラ

     バネッサ・レッドグレーブ

     エリック・バナ

     ジャック・レナー

     テオ・ジェームズ

 

アイルランド西部の町で取り壊される予定の

精神病院の患者の転院が始まっていた。グリーン

医師はその中のローズという患者の再評価を行うが、

彼女がしたとされる赤ん坊殺しについて疑問を

持ち始める...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 愛が強すぎた?いや強すぎる

愛などない。愛の強さを測る尺度も存在しないと思う。


愛を込めて見たものは真実


映画を見ていて先が全く読めないものは、ものすごく

ワクワクするけれど、予定調和の世界にとどまった場合、

だいたい「ま、普通だね」か

「ちっ、見るほどでもなかったね」と思ってしまうことが

多いです。それはサスペンス要素が含まれた映画の場合

特に感じられるのですが、この映画は後者であるにも

かかわらず、わたしの心の琴線に触れてしまったような

気がします。
映画の根底には、アイルランドという国の宗教、カトリックが

大多数を占めていることと、その戒律の厳しさ、そして

1940年代の田舎町での女性差別の状況、さらには

第二次世界大戦におけるアイルランド国内での対立と様々な

ものがあり、ここはやや複雑すぎると感じます。

冒頭、取り壊し予定の精神病院に入院しているローズが

映ります。

「わたしは赤ん坊を殺していない」

と聖書に書き続けたローズの若い頃はルーニー・マーラ、

年老いてからはバネッサ・レッドグレーブが演じ、
その演技力で、ストーリーのほころびも全く気になりません。
アイルランドで未婚の女性が妊娠した際、身内の恥として

強制的に収容させた施設の存在は

「マグダレンの祈り」(2002)

で描かれていました。厳しいカトリックの教えにより、教会が

運営するマグダレン・ホームに収容し、矯正と称して重労働を

課し、生まれた子供は3年後に養子に出されてしまう。

彼女たちの身の上を知ると胸が痛くなりました。
さて、この映画でも戦禍を逃れて叔母の住む田舎町にやって

来たローズの窮屈すぎるほどの日常が描かれていきます。

だいたい、突然都会から移住してきた若くてきれいな娘が

いれば、憧れと嫉妬と好奇心の的になるのは当然のこと

かもしれません。あ、これ、今でも田舎であるよね。

噂好きな人々が、狭い世界で噂だけで一日を終える社会が

存在し、それが楽しくて仕方ないという人たちっているんです。
他に楽しみがないから仕方ないとは言わせない。他に楽しみを

探しなさい。そうすればもっと人生が楽しくなるからね!

 

ローズの秘密の頁
 

ローズの若い頃の話と現在グリーン医師の聞き取りでわかって

来る内容が少しずつ重なり合っていきます。この時に映る

アイルランドの重苦しい雲とその下に広がるのどかな田園風景や

冷たそうな海、さらにはレトロな車や建物は、BGMとして

流れる美しい音楽と共に目を楽しませます。特にローズが

ピアノで奏でる「月光」は、かつてマイケルのために弾いた

ことを思い出しているのを強く感じられるほど、ゆっくりと

静かに心に響くのです。

 

ローズの秘密の頁
 

ローズは田舎町の神父ゴーントにも気にいられ、町の男たち

にも気にいられ、それが「遊び女」のように噂されてしまい、

結局森の中に追いやられるのです。そこで英国空軍の

パイロットであるマイケルと再会するのはかなり出来過ぎた話

だし、マイケルが、町では「敵」とみなされていた「英国軍」

に入隊したこと、そもそも禁酒ホテルが存在する町で酒屋を

営んでいたことなど、もう幾重にもはりめぐらされた
ロミオとジュリエットの世界。そこで2人がギリギリまで純愛を

貫くのも、もどかしいからこそ愛おしい。

 

ローズの秘密の頁

 

そしてもうわかっていたけれど、例の赤ん坊はマイケルの子供

なんですよね。その後、ローズが強制的に収容された

聖マラギ精神病院での仕打ちは目を背けたくなるほどでした。

これが切れ切れに入り込み、今のローズの頭の中でも鮮烈な

恐怖としてよみがえることが伺えるのです。
ローズが赤ん坊を殺したのかどうかは、薄々わかってきます。

とにかく何のひねりもなく、そこに到達していくのも逆に

すんなり受け入れらるのはなぜだろう。
考え直すと焦点がややボケ気味のような気もします。しかし

40年という月日を一挙に取り戻す瞬間のローズの仕草には

心を打たれるはずです。

 

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つぐない

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つぐない

 

「つぐない」

原題:Atonement

監督:ジョー・ライト

原作:イアン・マキューアン「贖罪」

2007年 イギリス映画 130分

キャスト:キーラ・ナイトレイ

     シアーシャ・ローナン

     ロモーラ・ガライ

     ヴァネッサ・レッドグレイヴ

 

1935年、イングランド。官僚の娘ブライオニーは

小説家を夢見る多感な13歳。彼女は使用人の息子

ロビーに思いを寄せていたが、ある日姉セシーリアと

ロビーの関係に疑念を抱き、決定的な瞬間を目撃して

しまう。その後従妹ローラの暴行未遂事件が起き、

彼女は「犯人はロビー」と嘘の証言をするのだった...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 幼さゆえの過ちが、決して

許されることのない結果を招いてしまったとしか言えません。


Come back to me


タイプライターの音が鳴り響き、きびきび屋敷を歩く

ブライオニーが映ります。この役はまだあどけない

シアーシャ・ローナン。

 

つぐない

 

わたしの大好きな映画「ブルックリン」(2015)では

すっかり大人の女性を演じていましたが、抜けるような白い

肌と繊細そうな瞳はそのまま残っています。ブライオニーは

小説家を目指しているようで、一人戯曲を書き続けているの

です。
映画はブライオニーとセシーリアの視点で、序盤同じ出来事が

それぞれ描かれ、ブライオニーの幼さゆえの誤解と嫉妬が事件の

伏線として敷かれていくのです。セシーリアと使用人ロビーが

同じケンブリッジ大学に通った間柄なのに、なぜぎくしゃく

しているのか。この揺れ動く感情をキーラ・ナイトレイが

気品ある演技で見せてくれます。もちろんイケメン、

ジェームズ・マカヴォイ演じるロビーの笑う、怒る、嘆く、

戸惑う、様々な表情が豊かであり、絶対に二人は結ばれて

ほしい!と願ってしまうのです。

 

つぐない
 

2人がこっそりテーブルの下で手をつなぐシーンは、本当に

このまま時間が止まればいいと思ってしまう。昔、貴乃花と

宮沢りえが婚約会見した時に、二人はテーブルの下で手を

つないでいると語ったけれど、好きで好きでたまらない感情が、

あの一点に集約されていると思うのです。
そして従兄の双子が家出をし、全員で捜索していると、双子の

姉ローラが誰かに襲われかけてしまう。ここでブライオニーは

「犯人はロビー」と断言するわけです。その前の出来事から

絶対にそう言うと思っていたけれど、その証言がどんな結果を

招くか、13歳の少女にわかるはずもなく、しかしそれは限り

なく残酷で、決して許されることのない事態に向かうきっかけ

になるのです。
中盤以降は、家を出て看護師になったセシーリアと進学せず

姉と同じ看護師を目指すブライオニーが映り、その一方で刑務所

からそのまま入隊したロビーの姿が描かれます。束の間の休暇に

セシーリアと再会したロビーは、彼女が乗るべきバスを待つとき

「バスが来ないといい」と呟くけれど、バスはすぐに来てしまう。

 

つぐない

 

そのバスが角を曲がるまで走って追いかけるロビーの姿を見ると

胸が痛くなります。バスが来るのが早すぎるって..。

 

つぐない
 

成長し、すべてを理解できたブライオニーの「つぐない」は

どうあるべきだったのか。いや自分ではどうしようもない運命が

あるのです。時代があるのです。戦争があるのです。

 

つぐない
 

彼女が書く最後の小説の中で、セシーリアとロビーが失ったもの

「幸せな日々」を取り戻すことが、ブライオニーができるせめて

もの「つぐない」だったのですね。本当に切ない映画でした。
そして衣装、音楽、景色が全て美しく、それが引き裂かれるのが、

あの嘘を起点としていることを実感します。

 

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夜明けの祈り

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JUGEMテーマ:洋画

 

夜明けの祈り

 

「夜明けの祈り」

原題:Les innocentes

監督:アンヌ・フォンテーヌ

2016年 フランス=ポーランド映画 115分

キャスト:ルー・ドゥ・ラージュ

     アガタ・ブゼク

     アガタ・クレジャ

     バンサン・マケーニュ

 

1945年12月、ソ連占領下のポーランドで1人の

修道女が、フランス赤十字の医師マチルドに助けを

求める。修道院では臨月の修道女が苦しんでおり、

彼女は帝王切開で出産を成功させるが、ここには

他にも妊娠した修道女がおり..。


<お勧め星>☆☆☆☆ 強い信仰心と現実のはざまで

揺れ動く人々の姿と使命感のみで動く女性を描いています。


絶望からの希望


映画を見て本当に良かったと思えるのは、普段味わえない

スリルやアクションシーンを体感できることや、個人の

好みだけれどドキドキハラハラする非現実の世界に入り

込めることなどと共に、歴史の教科書では決して取り

上げられることのない戦争の惨禍を知ることができること

です。もちろん、それを知ったときに衝撃は大きいけれど、

知らないままでいるよりも、知って、次にこの国のニュースが

報道された時に、そうか、この国には過去にこんな出来事が

あったのだと思い出し、今起きていることと何か関連が

あるのではないかと想像することができるのです。
この映画のヒロイン、フランス人医師マチルドは

マドレーヌ・ポーリアックという実在の人物であり、彼女の

医師としての倫理観、使命感に燃えた行動のすべてを描いて

います。彼女は無神論者だったようで、信仰心の厚い修道女

たちの姿とは真逆で、仕事が終われば、酒も飲むし、

同僚医師サミュエルと一夜を過ごすなど、それなりにストレスを

発散しています。

 

夜明けの祈り

 

負傷兵の手当てをするポーランドにおけるフランス人という

立場でなければ、ごく普通の若い女性の生活を送ったに

過ぎなかったでしょう。いやそこには第二次世界大戦という

大きな戦争がありました。そこでのフランス人の状況も幾つか

の映画で見たことがあります。

 

夜明けの祈り
 

美しい讃美歌を歌う修道女の声の後ろで、何か悲鳴が聞こえて

きます。それは何なのか。そして1人の修道女が町へ向かい、

ソ連人とポーランド人以外の医師を捜すのです。なぜ自国の

医師ではだめなのか。

 

夜明けの祈り

 

夜明けの祈り
 

マチルドが向かった修道院でなぜか臨月の修道女が苦しんで

います。男子禁制、神の花嫁であるはずの修道女がなぜこの

状況に置かれているのか。ここには第二次大戦後、ポーランドで

起きた悲劇が横たわっているのです。
ドイツ軍撤退後に侵攻してきたソ連軍兵士たちが、この修道院に

3度にわたって侵入し、修道女たちを次々にレイプしていき、

それによって数人の修道女が妊娠してしまったのです。

「貞節を守る」ことが彼女たちの教えの1つであり、守れなかった

ことは「罰」となり、それは「祈り」で神に赦しを求めるしかない

という。「受難は神の思し召し」。いやいやそれでも日に日に

お腹は大きくなるわけで、マチルドは検問しているソ連軍兵士の

目をかいくぐって修道院に向かうのです。最初はフランス

赤十字の任務にないから命令違反なのかと思いましたが、マチルド

自身もソ連兵に襲われかけるシーンもあったことや修道院が

ポーランド軍に家宅捜索を受けるシーンなどから、マチルドに

危害を加えるのは1つの要因だけではないと認識できるのです。
マチルドは何度も修道院に通い、また呼びだされ、次々と

赤ちゃんを取り上げていきますが、出産を喜ぶ修道女ばかり

ではなく、また、生まれた赤ん坊はすぐにシスターが養子に

出してしまう。ここは終盤にからくりがわかり、本当に悲しい

思いを抱きます。信仰のために取った行動が正しいか否か、

それは神に委ねたと言いつつ、実は自らの修道院の体面を守る

ためだけではなかったのかと。
戦争は敵味方に分かれ、戦い、多くの命を奪い、多くの物を

破壊するだけでなく、戦争が終結しても、数多くの爪痕を

残していきます。それは形としていつまでも存在し、時間や

賠償金、また信仰心だけでは解決できるものではないのです。
映画内でシスター・マリアが

「信仰は24時間の疑問と1分の希望」

と言うのも少しだけ理解できたような気がしました。
ただこのような事件が現在も紛争地帯で起きていることを

知っているだけに、なぜ世界は変われないのかと無力感

にも襲われるのです。

 

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サーミの血

4

JUGEMテーマ:洋画

 

サーミの血

 

「サーミの血」

原題:Sameblod

監督:アマンダ・ケンネル

2016年 スウェーデン=デンマーク=ノルウェー映画 

108分

キャスト:レーネ=セシリア=スパルロク

     ミーア=エリーカ・スパルロク

     マイ=ドリス・リヒピ

     ユリウス・フレイシャンデル

 

1930年代、スウェーデン北部の山岳地帯に暮らす

サーミ人のエレは寄宿学校から高校への進学を希望

するも、教師にその資格がないと言われてしまう。

彼女は日頃から受けている様々な差別と偏見から逃れる

ため、パーティーで出会ったニクラスの元に向かうが...。


<お勧め星>☆☆☆☆ 全く知らない事実をまた映画で

見ることができました。


悪意のない差別こそ憎むべき存在


映画は全てヒロインのサーミ人、エレ・マリヤ視線で

描かれています。ラップランドという地名はイコール、

トナカイのイメージがあるのに、サーミ人という民族や

ヨイクという彼らが歌う歌は全く知りませんでした。

調べてみると「ラップランド」というのは「辺境」の地を

意味する蔑称であり、サーミ、サーメと彼らは自称して

いるそうです。この民族衣装はとても美しく山岳地帯に

映えるのです。
 

サーミの血
 

この映画での1930年代のサーミ人は、まさしく、

スウェーデン人とは別物と扱われており、生活の場はテント

なので当然なのですが、学校もサーミ人専用の寄宿学校で宿舎

から毎日ぞろぞろ集団で登校する姿が映ります。彼らは民族衣装を

まとっており、その文化を守るように半ば強制されつつ、

言語はスウェーデン語を話せと言われる。登校時には、

好奇心の目で見られ、「臭い、不潔」という言葉をかけられる

のです。
それは冒頭に老いたエレが(クリスティーナと名乗っている)

宿泊したホテルで、現在もスウェーデン人が

「トナカイ飼いは自然を大切にするのかと思ったら、森の中を

バイクで大騒ぎするのよ」
と語る話からも、今なおスウェーデン人の心の奥には

サーミ人への差別があることを知り、とても複雑な表情を

浮かべるのが印象的です。自分自身も

「あの人たちは汚いのよ」

と息子に語っています。

 

サーミの血
 

そんな彼女の少女時代の回想シーンで、彼女がそのように強く

思った原因が次々に明らかにされていきます。

 

サーミの血

 

標本のように身体測定をされ、全裸の写真を撮影されるのは、

彼らがサーミ人を同じ人間と思っていない証拠でもあるのです。
窓からスウェーデン人がのぞいているのがわかっているのに、

14歳の少女に全裸を強要するのはどう考えも酷すぎる。ただ

当時の研究では、サーミ人の脳はスウェーデン人より小さく、

文明に向いていないと報告されていたらしい。つまり原始人扱い

だったわけです。
エレは高校へ行きたい、恋もしたい、都会で生活したい、と

様々な夢を、とてつもなく強い意志で叶えていくわけですが、

その過程は一切描かれません。それは見る者がいくらでも想像

できる範囲のことだからなのです。

 

サーミの血
 

ニクラスと結婚するはずもないし、大体あのチャラ男はいか

にも都会人という感じで、ちょっと違う味の女子と楽しんだ

くらいにしか考えていなかったと思う。もちろんエレも彼に

恋したわけではなく、恋することを体験する相手として彼を

選んだに過ぎないのでしょう。最も辛く感じたのは、ニクラス

の誕生日会で、民俗学を学んでいるという女子学生がエレに

「ヨイクを歌って。本物を聞いたことがないのよ」
とおねだりするシーンで、それが全く悪意のない行為だからこそ

許しがたい屈辱を与えるのだと痛感しました。
サーミ人として伝統を守り、姉の分までトナカイの世話をして

一生を終えた妹ニェンナと全てを捨てスウェーデン人として

生活をすることを選んだエレとは、かつてはあれほどまでに

仲が良かったのだ、そして同じ苦痛を味わっていたのだという

ことに思いを馳せた時、エレは自分が失ったものの大きさに

気づいたように思います。エンドロールに流れるヨイクは、

本当に牧歌的でのどかな雰囲気を醸し出しています。

 

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灼熱

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灼熱

 

「灼熱」

原題:Zvizdan

監督:ダリボル・マタニッチ

2015年 クロアチア=スロベニア=セルビア映画 

123分 R15+

キャスト:ティノナ・ラゾビッチ

     ゴーラン・マルコビッチ

     ニベス・イバンコビッチ

     ダド・チョーシッチ

 

1991年クロアチア人とセルビア人の対立が深まる中、

アドリア海に近い村でクロアチア人のイヴァンとセルビア人

のイェレナは、2人で街へ逃げようと計画していた。

しかしイェレナの兄によって彼女は連れ戻されてしまう...。


<お勧め星>☆☆☆☆


愛は普遍的なもの


私個人から見ると、クロアチアとセルビアという国はイタリア

の東辺りにあって..くらいにしか印象がないのですが、

クロアチア人とセルビア人がたびたび対立してきたことは、

歴史や近年のニュースなどで知ることができています。
それでも遠い国、というイメージしか持てないのです。
映画のストーリーは三部作で、それぞれ民族紛争を背景に

して、ある若い男女のカップルの姿を描いていきます。

 

灼熱
 

まず1991年、イェレナ(セルビア人)とイヴァン

(クロアチア人)。恋人同士だった2人は、激しさを増す

民族対立を避けて街へ向かおうとするものの、イェレナの

兄サーシャによって阻止されてしまう。完全に非暴力で

トランペットを吹き続けるイヴァンの姿は強く心に残ります。

太陽が真上にあり、日差しがさんさんと降り注ぐ中での悲劇。

 

灼熱
 

次は2001年、クロアチア紛争後、復興に取り組む政府も

セルビア人に対しては消極的であり、ゾルカとナタシャ母娘は、

すっかり破壊された自宅へ戻って来るのです。荒廃した街並みや

銃撃、爆発の跡がその凄まじい戦禍を物語ります。そして家の

修理に訪れるのがアンテ。セルビア人である母娘は兄を

クロアチア人に、クロアチア人であるアンテは、父をセルビア人に

それぞれ殺害されており、紛争は終結したとはいえ、互いの胸の

中にくすぶり続ける憎しみは決して消えることがないのは、

ナタシャの態度で一目瞭然なのです。しかしどちらが悪いと

一方的に責めることで何かが解決するのだろうか。修理が終わる日、

アンテとナタシャは関係を持つのですが、ナタシャは

「これで終わりよ」と冷たく言い放ちます。紛争がなければ、恋を

したかもしれない、いや紛争がなければ出会うこともなかったのか。

沈んでいく夕陽が草原を赤く染めていきます。

 

灼熱
 

時を経て2011年。平和を取り戻したクロアチア国内で、

久しぶりに故郷に戻ってきたルカは、民族の違いで母親に

引き離されたかつての恋人マリヤの家を訪れるのです。平和を

取り戻したとはいえ、人々の心の中に差別が残っていることは、
2人が引き離された現実から知ることができます。さらに彼ら

には子供がおり、一度は拒絶したルカをマリヤは受け入れるかの

ごとく玄関扉を開けたまま、家の中に去っていくのです。
つまり小さなレベルでの和解が進んでいくことを意味し、それが

民族の対立を和らげていくのだと意味しているような気がしました。
三部作の男女はいずれも同じ俳優、女優が演じており、時代や

環境が異なっても、変わらずに存在するのは「愛」だと、とても

単純なことですが、大切なことを訴えます。但し2人がかなり

印象的なルックスなので、一目で同一人物だとわかり、敢えて

そういう設定にした監督の思いをどうとらえたらいいのか悩んで

しまいました。また必ず登場する黒い犬と海。

 

灼熱

 

すべてを見ているのが犬であり、海は誰もを同じように包み込み、

浮かばせ、潜らせる。第三部では、朝陽が昇るシーンが見られる

ことで、この長い対立にも夜明けが来ていることを意味していた

ような気がします。
「政治も過激な国家主義もけっして勝者はいないが、人間の

本質に備わる愛の力はすべてに勝る」監督自身の言葉です。

心に深く刻みたいと思います。

 

 

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未来を花束にして

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JUGEMテーマ:洋画

 

未来を花束にして

 

「未来を花束にして」

原題:Suffragette

監督:サラ・ガブロン

2015年 イギリス映画 106分

キャスト:キャリー・マリガン

     ヘレナ・ボナム=カーター

     ブレンダン・グリーソン

     アンヌ=マリー・ダフ

     メリル・ストリープ

 

1912年、ロンドンで洗濯女として働くモードは、

街で女性参政権要求の抗議行動をする婦人たちを目に

する。そして彼女は友人の代わりに公聴会で証言する

ことになるのだが、それをきっかけに彼女自身も活動に

賛同していくのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ とても多くの思いを抱きながら

見続けました。とにかく多くの人に見てほしい映画です。


他の生き方の存在


「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての

息子たちは胸に刻むべきだ」というメリル・ストリープの

言葉がこの映画の予告編の最後に流れていました。映画の

あらすじは女性の参政権がなかった20世紀初頭のイギリス

で巻き起こっていた女性たちによるその権利獲得運動のある

部分を見せているのです。

 

未来を花束にして
 

女性解放運動といえば1972年に日本で結成された中ピ連を

思い出す人はもうそれほどいないかもしれません。しかも

その活動期間は短く、マスコミの取り上げ方やまた団体の活動

自体も女性たちから多くの賛同を得ることはなかったと記憶

しています。
それではなく、根本的な女性の権利の主張、参政権、投票権、

親権などを男性と同様に求める活動をしていたのが

エメリン・パンクハーストという活動家で、彼女の思想に同調

した女性たちがイギリスの各地でデモやビラ配りなどを行って

いたのです。

 

未来を花束にして
 

ヒロインのモード役はキャリー・マリガン。実に多彩な演技の

できる女優さんで、この映画でも序盤は、現実を受け入れ、

それに何の疑問も持たず、流されるように日々の生活を送って

いく無口な女性から、後半には、権利獲得のために闘い、

自分たちの主義を主張する強い女性へと変わっているのは

まるで別人のようです。活動をリードする薬剤師イーディス役は

ヘレナ・ボナム・カーター。彼女の演技も見逃せません。
洗濯女として働くモードは、母親もその仕事についていて、父親

はいない。そして夫もその洗濯工場で働いているのです。どうやら

工場長が彼女の幼い頃、性的虐待をしていたことをほのめかす

シーンがあり、それで彼女を優遇するという極めて不条理な環境

にも耐えている?いや不条理と思っていないのかもしれません。
男性より長く働き、賃金は安く、けがや病気が多い劣悪な環境で

あっても、彼女にはそこで働く人生以外、外の世界を知るきっかけ

もなかったのです。そこに一筋の光を差し込むのが、街でたまたま

見かけた女性参政権獲得運動の活動家の姿です。そしてこれも

たまたま公聴会で証言することになり、それが参加者の賛同を得ると
彼女は自分が認められたことで少しの自信と、今の生活への少しの

疑問を持ち始めます。

 

未来を花束にして

 

とはいえ、その後参加したデモで、警官に暴行され、拘束される

ことが重なると、遂には家を追い出され、一人息子のジョージは

養子に出されてしまう。
ここは泣けます。

「あなたのママはモード・ワッツよ。いつか会いに来てね」

「レ・ミゼラブル」でコゼットを思い泣くフォンテーヌを見ても

泣けなかったのに、ここは泣けます。なぜだろう。どちらも

同じくらい不条理なのに。
彼女たちが非合法な手段で活動することを余儀なくされたのは、

あらゆる門戸が閉ざされてしまったことと、聞く耳を持たない

社会に対しての大きな反発だったと考えます。活動に目を向け

させようと爆破事件を起こしても新聞すら取り上げず、彼女たちの

訴えを知るものは増えず、さらに逮捕投獄者が増えるばかり。

そして命を懸けて行動するメアリーによって、ようやく世界の

目が彼女たちの活動に向けられるのです。
命が幾つ奪われれば、重要な権利を獲得できるのでしょうか。

その権利を決して粗末に扱ってはいけないのです。
イギリスでは1918年に30歳以上の女性に参政権が認められ、

1925年に母親の親権が、そして1928年に男女平等の

参政権が認められました。日本では、1925年に25歳以上の

男性の参政権、そして男女平等の参政権は1945年ポツダム宣言

によって認められたのだということを心に深く留めておきたいと

思います。本当にたくさんのことを考える映画でしたが、

100年以上たった今、根本的な考え方が変わったのか、そこも

考えてしまいました。

 

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