人間の値打ち

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

人間の値打ち

 

「人間の値打ち」

原題:Il capitale umano

監督:パオロ・ビルツィ

2013年 イタリア=フランス映画 109分 

PG12

キャスト:バレリア・ブルーニ・テデスキ

     ファブリッツィオ・ベンティボリオ

     マティルデ・ジョリ

 

不動産業を営むディーノは、事実婚状態のロベルタ

と娘セレーナとの3人暮らし。彼はセレーナの交際

相手マッシの父親で投資ファンドで財を成している

ジョヴァンニに接近するが..。


<お勧め星>☆☆☆☆ いろいろな意味での「値打ち」

を考えさせられました。


人間の値打ちとは?


オープニングで何かの式典の片づけをするウェイターの

1人が、早めに仕事を切り上げ自転車で自宅に向かう

途中事故に遭います。彼の背中が闇に紛れていこうとする

その時、突然自動車のライトが前後に映り、そして彼を

崖下へと落下させるのです。
そして映画は4つの章に分かれ、この事故を巡る3人の

視点から描かれていきます。同じシーンであってもそこに

居合わせた3人が表情とは全く異なることを考えているのが

わかると、まことにおもしろい。
夕焼けを見て「明日は晴れてうれしいな」と思うか

「もう1日が暮れて寂しい」と思うか

「まだまだ夜は長いな」と思うようなものでしょうか。

(かなり違うな)

 

人間の値打ち
 

第1章ディーノ

不動産屋を営むものの、さらに儲けたくて娘セレーナの

交際相手マッシの父で投資ファンド会社を経営する

ジョヴァンニに近づく。そもそも彼は上流階級に憧れており、

それは娘を名門校に通わせていることからも伺えるのです。

彼がいかに卑しく俗物であるかは、いつもクチャクチャガムを

噛む姿や何とかジョヴァンニに取り入ろうとする姿から露骨に

わかり「さもしい」がぴったりの姿なのですが、彼にとっては

「金」こそ最も大事なものだと思っているのがよくわかります。

 

人間の値打ち
 

第2章

カルラ 裕福な夫ジョヴァンニを持ち何不自由ない生活を

しているものの、自分を認めてくれる人が誰もいない、

つまり自分というものが存在する価値を見出せないでいる

のです。この役を演じるバレリア・ブルーニ・テデスキは

「アスファルト」(2015)で、夜勤専門ナースを演じ、

退廃的な雰囲気を感じさせる姿を見せていましたが、この

映画でも満たされない心の持ち主を好演しています。声が

またこの役にぴったりなんです。ちょっとそこ、もっと

はっきり言ってごらん!と言いたくなるような感じ。彼女に

とって大切なのは「自分の存在価値」を認めてもらうこと。

 

人間の値打ち
 

第3章 セレーナ

この章で冒頭の事故の真相が明らかになります。誰が悪いと

一概に決められないけれど、誰がその車を運転していたかが

わかるわけです。なぜ運転していたのか。そこにはセレーナは

あの卑しい父親とは異なり、純粋な心の持ち主で、マッシなんて

アホとはとっくに別れていたんですよね。彼女が本当に恋した

のは、生まれも育ちも貧しいけれど、他人を思いやり、そのため

には罪をも被る優しく繊細な心の持ち主ルカ。ルカのセラピーを

しているのがセレーナの父と事実婚状態にある心療内科医ロベルタ

というつながり方です。セレーナにとっては「愛」こそが一番大事。
この3者の胸の内を描きつつ、第4章に入り、事故をめぐって

3者がどのように行動するか丁寧に描かれます。

もうね、ディーノなんて最低のクズなんですよ。それでも彼に

とって最優先すべきことは「金」。ここまで堕ちたくないもんだ

とあきれてしまう。一方でセレーナを演じたマティルデ・ジョリ

はこの映画がデビュー作で2000人以上の中から選ばれたとの

こと。彼女の初々しくも体当たりの演技を是非見てほしいです。
人にとって「値打ち」というものを何に求めるか、おそらくは

各々異なっていると思うけれど、少なくとも何が

「価値のあるものか」を等しく感じる人たちと過ごしたいと実感

する内容でした。

 

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わたしは、ダニエル・ブレイク

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JUGEMテーマ:洋画

 

わたしは、ダニエル・ブレイク

 

「わたしは、ダニエル・ブレイク」

原題:I,Daniel Blake

2016年 イギリス映画 100分

キャスト:デイブ・ジョーンズ

     ヘイリー・スクワイアーズ

     ディラン・フィリップ・マキアナン

     ブリアナ・シャン

     ケイト・ラッター

 

心臓病で医師から仕事を止められたダニエルは、

支援手当支給を申請するが却下されてしまう。

そして求職者手当申請のために訪れた役所で、職員

とトラブルになっているケイティというシングル

マザーと知り合うのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 一番に守るべきは国民の福祉

ではないかと実感させられる秀逸な映画です。


人間としての尊厳


ケン・ローチ監督の映画は大好きです。「天使の分け前」

(2013)では登場人物が少しだけ幸せになる姿を笑い

あり涙ありで描き、「ジミー、野を駆ける伝説」(2015)

では1930年代のアイルランドを舞台にしたジミーの

活動が美しい風景と共に描かれていました。どの映画も

心に大きな余韻を残します。「麦の穂を揺らす風」(2006)

に続き、カンヌ国際映画祭パルムドールを獲得したこの映画は、

ごく平凡な1人の初老の男性ダニエル・ブレイクが主人公です。

大工として40年真面目に働き、心を病んだ妻の介護を終えた

男が、心臓病で働くのを止められた時、国はどう救済の手を

差し伸べるのか。

 

わたしは、ダニエル・ブレイク

 

序盤から日本でもあるあると思う光景が見られます。わたし

も父が亡くなったとき、年金の手続きをした際、共済組合で

の電話では大変不快な思いをしました。年末28日だった

せいか、ろくに話を聞かず、送るものを読めばいいという

対応で、それが何なのか、いつ届くの、その後どうすれば

いいのかなどあれこれ問ううちに、「もうどうでもいい」

とまで思ったものです。いやしかしちゃんと手続しました

けどね。印鑑がすり減るほど押したわ、全く。
向こうからの電話待ち、部署のたらい回しなどは当たり前で、

ネットの使えないダニエルにネットで申請するしかないと

いう言葉を放つ職員に対しては、おいおいそれは無理だろう、

と言いたくなってしまう。結局緊縮財政になったときに一

番に削られるのが福祉予算であり、もちろんわずかな人々が

不正を働いているにせよ、絶対的に必要とする人々の困窮を

深める状況が加速していくわけです。

 

わたしは、ダニエル・ブレイク
 

同じ頃移民系女性で2人の子持ちのケイティも、少しのミスで

申請ができなくなり給付金がもらえなくなるのです。ここで

思い出すのは、実母が買ったものの使いこなせず解約しよう

としたらくらくスマホの件。歩くのがおぼつかないので

代理人として行くためにはネットでその用紙をダウンロード

せねばならず、実家にはプリンターがない。仕方なく片道

4時間かけてダウンロードした書類を持ってショップに行くと、

母親の携帯番号の8と6を書き間違えていたんです。もうさ、

6から8だからちょいと直せばいいと思ったんだけど、

それもだめ。名字の違う母親の印鑑を持っているはずもなく、

また実家に戻って訂正印を押して、翌日かなり待って申請

してようやく解約できたけれど、契約は簡単なのに解約は

とても面倒だと肌で感じました。
すっかり話は変わってしまいましたが、ダニエルは人間と

しての尊厳を守るために、あくまでも制度に従ってどんなに

理不尽なことも受け止めて行くのです。しかし彼の力では

どうしても対抗できない物事もあり、職員から「根が良くて

正直な人がホームレスになっていくのよ」と言われた時の

絶望感はいかほどかと思ってしまうのです。またケイティは

フードバンクで思わず缶詰を開けて食べてしまうほど飢えて

います。いつから国は国民に対しこんなに非情になったの

でしょうか。ケイティの泣く姿を見てダニエルも思わず涙

します。正直で媚びることなく隣人に優しくしている者が

救われる世の中ではなくなったのだということを知ると、

愕然とするほかありません。机上の空論はもう結構。すべての

人々が快適に暮らせる世の中が訪れるときが来るのでしょうか。

 

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アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男

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JUGEMテーマ:洋画

 

アイヒマンを追え!

 

「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」

原題:Der Staat gegen Fritz Bauer

監督:ラース・クラウメ

2015年 ドイツ映画 105分

キャスト:ブルクハルト・クラウスナー

     ロナルト・ツェアフェルト

     セバスチャン・ブロムベルグ

     イェルク・シュットアウフ

 

1950年代後半の西ドイツ、フランクフルト。

バウアー検事長はナチスの大物戦犯アイヒマンが

アルゼンチンに潜伏しているという情報を入手する。

しかし捜査機関や政権の中枢にナチスの戦犯が残って

おり、アイヒマン確保の計画はことごとく妨害される

のだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 本当の意味での正義を貫いた

気骨あふれる男の話です。


暴政に屈服してはいけない


第二次大戦後、海外に逃亡したナチスの戦犯アイヒマン

を巡る映画は「アイヒマンショー/歴史を映し出した男たち」

(2015)があり、アイヒマンがモサド(イスラエルの

諜報機関)に拉致されるシーンから始まりました。話は

それますが、モサドは最強のスパイ組織であり、

「007など幼稚園の遊びのようなもの」

とトップが語るほどの機関なのです。ちょっとググると

そのすごさがズラズラと出てきます。
そしてこの映画では拉致しイスラエルに移送したアイヒマンの

公開裁判の舞台裏を描いています。ガラス張りの席に

座らせられたアイヒマンは見世物であり、全ユダヤ人の憎悪の

対象であり、結論ありきの公開裁判で、この法廷にいた

ユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントが、裁判の正当性につ

いて問題を投げかけたことから、激しい議論の的になりました。

これも「ハンナ・アーレント」(2012)で描かれており、

アイヒマンが極悪人の怪物だったわけではなく、思考を停止

して小役人的に与えられた義務を淡々と全うしていたことが、

この行動の根本にあるということを語っています。
一方アイヒマンのように大物戦犯ではなく、ホロコーストに

関わった収容所の幹部をドイツ人自身で裁くために奔走した

姿を描いた「顔のないヒトラーたち」(2014)もあります。

ドイツ人が自らの手でホロコーストの責任を問う裁判を実施

することがいかに苦難の道であったかは、それが1963年に

ようやく実現できたことからも十分すぎるほど伺えるのです。
さて今映画はそのアイヒマンだけではなく、戦後世界各地に

逃亡し身を隠したナチスの戦犯の行方を突き止め、ドイツ国内

で裁判を受けさせることを画策するドイツ検事長バウアーが

主人公です。第二次世界大戦に敗戦してから10年余りがたち、

経済発展が進むと、戦争の記憶は風化し、特に政権内部や

司法関係者にナチスの残党がいたため、バウアーの計画は

あらゆる方法で妨害されるのです。もう戦後じゃないか。

ヒトラーは自殺し、敗戦したこの国は既に新しい門出に舵を

切っているではないか。いつまで負の歴史を背負うのだ。

そんな思惑が蠢いていたわけです。しかしバウアー自身ユダヤ人

であることで収容所に送られ、そこでナチスに忠誠を誓うことで

釈放された経緯もあり、ナチスの戦犯をできうる限りの力で

見つけ出して裁判にかけたい思いが強かったことも十分理解

できます。

 

アイヒマンを追え!

 

彼に賛同する検事はカール一人であり、彼らはアイヒマンが

アルゼンチンに潜伏しているという情報を得ると、なんとか彼

の身柄を拘束しようと考えるのです。そこで登場するのが

イスラエルのモサド。すごいんですよね。実際の作戦基地には

目隠しで連れていかれるんです。今でもこうなんだろうなあ。

 

アイヒマンを追え!
 

バウアーの考えは極めてまっとうなもので「立派な憲法以上に

民主主義が必要だ」。民主主義は多数決ではなく、少数派の

意見にも耳を傾けることなのです。ここは強調したい。
で、カールの志の高さはバウアーのそれに匹敵するものなのですが、

それとともに同じような性的嗜好の持ち主であるとわかると、

この時代隠しておきたかったことも理解できます。ちなみに

この人男性だとは言われるまで全然気づきませんでした。

 

アイヒマンを追え!
 

終盤この性癖をネタにカールはゲープハルトからバウアーを

裏切るように脅されるわけです。彼がどちらを選ぶのか。

 

アイヒマンを追え!

 

彼は裕福なドイツ人家庭に育った妻が妊娠したばかりです。

ここは予想ができなかったなあ。
ナチスドイツの蛮行は幾度となく、そして様々な角度から

映画化されており、どれを見ても、戦争で犯した罪は赦される

べきではなく二度と繰り返さないことが、最も正しい姿である

と理解できるはずです。犯した罪への謝罪は永遠にし続け

なければならないと強く思うのです。

 

 

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太陽のめざめ

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JUGEMテーマ:洋画

 

太陽のめざめ

 

「太陽のめざめ」

原題:La tete haute

監督:エマニュエル・ベルコ

2015年 フランス映画 119分 R15+

キャスト:カトリーヌ・ドヌーブ

     ロッド・パラド

     ブノワ・マジメル

     サラ・フォレスティエ

     ディアーヌ・ルーセル

 

マロニーは6歳の時からフローランス判事の保護下に

ある。彼は成長してもその攻撃行動は変わらず、遂に

田舎の更生施設に送られるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 少年の更生の可能性を描いた

秀逸な作品です。

 

「自信の回復」には何が必要なのだろう?

 

原題は「頭を上げて」「胸を張って」というような意味。

前に見た「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」(2015)で、

フランスでは教師と生徒、教師同士がとことん話し合って

問題に取り組む姿勢を知りました。移民も多く、様々な人種の、

宗教を持つ人々が混在する国だからこそ「自由 平等 博愛」と

いう標語が限りなく必要なのだと思います。そうでなくても

持つべき考えなのは明らかなことですが。

 

太陽のめざめ
 

この映画の主人公のマロニーは、6歳の時から裁判所の世話に

なっているわけです。それは彼の母親の幼稚さに起因する

家庭環境の悪さであり、カトリーヌ・ドヌーブ演じる

フローランス判事は、6歳の時に彼を一時保護してから、

ずっと彼を担当しています。
母フェランドも中盤登場する実父と不仲なのがわかり、

(アバズレと言い放つ)ろくでもない男にコロリと騙される

女性なのですが、マロニーとは強い絆で結ばれているのが

わかるのです。普通の(なにが普通か言えないけれど)母子の

絆ではなく、極めて歪であることは第三者からしてみると

一目瞭然。

 

太陽のめざめ

 

人間は生誕直後から「泣く赤ちゃん」「噛む赤ちゃん」と

して観察されるという話を読んだことがあります。マロニーは

それで言うとまさに「噛む赤ちゃん」。新生児からの生育過程で、

愛情、善悪、倫理などを少しずつ周りの支えで吸収していく

はずなのに、マロニーにはそれがなかった。
喧嘩、暴力、反社会的な行動を行い、その場でただ叱り、

同情をひこうとする母親や懲罰だけを求める検事の

アドバイスでは、回復困難なのです。

 

太陽のめざめ
 

彼は判事とヤンという教育係(彼もマロニーのような境遇だった

ことがわかる)そして彼を無条件に愛し、彼の子供を身ごもる

テスとの出会いで、自分への自信を獲得します。

 

太陽のめざめ

 

映画内で幾度となく映る裁判所内で、問題を持つ母子や

少年少女がいかに多いかを思い知ると、これはフローレンス判事の

「忍耐」の賜物であると実感せざるを得ません。最後に裁判所を

出るときの、マロニーの自信に満ちた表情が印象的でした。

 

 

 

 

 

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ひつじ村の兄弟

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JUGEMテーマ:洋画

 

ひつじ村の兄弟

 

「ひつじ村の兄弟」

原題:Hrutar

監督:グリームル・ハゥコーナルソン

2015年 アイスランド=デンマーク映画 

93分 R15+

キャスト:シグルヅル・グルヨンソ

     テオドル・ユーリウッツ

 

アイスランドの高原で牧羊に携わるキディーと

グミーは優良な羊を育ててきたが、40年間口を

きいていない。そして品評会で1位になったキディー

の羊がスクレイピーに感染している疑惑を持った

グミーは、そのことを仲間に打ち明けるのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ アイスランドの大自然の

美しさとその過酷さを感じつつ、兄弟の心の動きが

上手く描かれています。

 

ひつじ村の兄弟

 

アイスランドののどかすぎるほどの景色を堪能できます。

このアイスランドという国は北ヨーロッパに位置する

島国で首都はレイキャヴィク。

 

ひつじ村の兄弟

 

こんなおとぎ話の世界のような街並みらしいです。すぐに

思い浮かべたのは

「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」という

裕木奈江さんが出演していた2009年のスプラッター映画。

違うんです。この映画はカンヌでも「ある視点賞」を獲得した

ほどの映画なんです。さてどこが素晴らしいのか。

登場するのは、隣接する敷地に住みながら40年間口をきいて

いない不仲な兄弟、キディーとグミー。そして彼らと同様に

牧羊で生計をたてている住民、獣医、保健局の職員など。

 

ひつじ村の兄弟

 

○見どころ

冒頭に羊の死骸を見つけ、耳のタグから隣で鳴く子羊を無言で

隣家に連れて行く男とそれを無言で受け取るやや髪の毛の薄い

同じような風貌の男が映ります。この2人が兄弟であり、口も

利かない仲だということは映像を見ていれば自然と伝わってくる。

なぜ不仲なのか?そこは敢えて説明がなかったけれど、この敷地の

名義が全て父親の意志でグミーのものになっていたことから、

何となく分かるような気がするのです。そこは想像しよう。

 

ひつじ村の兄弟

 

そして品評会で1位になったキディーの羊が、スクレイピーに感染

している疑いをグミーが仲間に話すと瞬く間に検査が入ります。

このスクレイピーは羊や山羊類の神経系を冒し、致死性の高い伝染病

かつ突発的に発症するらしい。そうなればもちろん鳥インフルエンザ

同様に、近隣の羊は全て殺処分になるわけです。

後で調べると、ここで飼育されている羊はアイスランディックシープ

という「世界で最も古く純粋な品種」ということで、この血統に

こだわる村人、特に兄弟の姿は納得できるというもの。処分後2年間の

収入保障や新たな羊購入資金を得ることができたとしても、血統は

途絶えるわけです。キディーはグミーの嫌がらせと考え、さらに

憎しみを募らせるけれど、実はグミーにも秘密があり、それをキディーは

知ってしまう。村人と歩調を合わせていたはずのグミーと、処分に

反抗し、村八分状態で酒に溺れるキディーが、同じ思いを持っていた

ことを知る瞬間は、言葉ではなく彼らの行動で全て理解できます。

カンヌ国際映画祭などヨーロッパの有名な映画祭で賞を獲得する映画の

ラストは大体唐突ですが、これも然り。キディーの家に飾ってあった

父と兄弟の昔の写真の時同様に兄が弟の世話をした時代に戻るためには、

生まれた時の姿に戻る必要があった気がしてなりません。

ホワイトアウトした世界が明るくなった時、希望が見えたのでしょうか。

 

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裸足の季節

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JUGEMテーマ:洋画

 

裸足の季節

 

「裸足の季節」

原題:Mustang

監督:デニズ・ガムゼ・エルギュベン

2015年 フランス=トルコ=ドイツ映画 94分

キャスト:ギュネン・ツェンソイ

     ドア・ドゥウシル

     ドゥーバ・スングルオウル

     エリット・イシジャン

     イライダ・アクドアン

 

トルコの田舎町に叔父、祖母とくらす5人姉妹は

男子学生と海で遊んでいる姿を告げ口され、自宅に

閉じ込められてしまう。そして姉2人の結婚が決まり、

次に3女エジェが結婚することになるが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 5人姉妹の胸の内が短い映像の

中にしっかり描かれています。

 

〇見どころ

冒頭、大好きなディレッキ先生が学校を辞めることで涙を

流す5女ラーレもその涙が乾かないうちに海で男子学生と

大はしゃぎします。5人が全て天真爛漫であり、年齢相応の

表情を見せるのは序盤のみ。

 

裸足の季節

 

このつかの間の行動が「不埒な行為」つまり傷物になって

結婚できなくなるということで処女検査までさせられる始末。

そこから家に閉じ込められた5人の顔から笑顔が減っていくのです。

 

裸足の季節

 

ラーレ曰く、この「クソ」のような服に身を包んだ最悪の日々の

始まりらしい。そりゃそうだ。友人たちは学校へ行き、学び、遊び、

楽しんでいるのに、なぜに彼女たちだけが...と思ってしまう。唯一

本当に笑顔を見せるのは5人そろった時なのに、家の囲いはどんどん

高くなり、外に出ることが禁じられていくのです。

「籠の中の乙女」的な生活ですが、あの映画は父親の独裁的な支配が

ブラックに描かれていました。こちらは、まさにまともな叔父や

祖母の教育なのです。

長女ソナイは決められた相手ではなく、念願のBFと結婚、しかし

そのせいで次女セルマは、まったく魅力のない男と結婚することに

なります。結婚式での2人の表情が対照的に映され、ひたすら酒を飲み、

涙をこぼすセルマはその後もデリカシーに欠ける夫やその家族の行為に

苦しむわけです。こりゃいつの時代の話だろう?いや今でもきっと

田舎ではこうなのだろうな。

 

裸足の季節

 

結婚してから愛情が生まれるという言葉は、日本でもかつて言われ、

太平洋戦争時には出征前に急いで結婚し、夫が戦死したら、その弟と

再婚なんて話もざらにあったと聞きます。つまり「家」のために結婚

するわけです。

ところがこの話はさらに進み、三女エジェも結婚することになり、

その際どうも叔父が何某かの虐待を加えるのです。それは終わった後に

シーツを必死で拭くエジェの姿で知るのみ。

5人そろって楽しくトラックの荷台に乗った時間は二度と戻らず、1つの

破滅と2つの解放でもって映画は終了。ラストに映る上3人の姉妹の

笑顔と5人の記念写真が何とも胸を締め付けるものでした。

 

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愛しき人生のつくりかた

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愛しき人生のつくりかた

 

「愛しき人生のつくりかた」

原題:Les souvenirs

監督:ジャン=ポール・ルーブ

2014年 フランス映画 96分

キャスト:ミシェル・ブラン

     アニー・コルディ

     シャルタン・ロビー

     マチュー・スピノジ

     ジャン=ポール・ルーブ

 

夫を亡くしたマドレーヌを気遣い、息子ミシェルは

弟たちと相談して、彼女を老人ホームに入れる。しかし

自宅が勝手の売却されたことを知った彼女は姿を消し、

孫息子ロランが行方を捜すが...。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 粋なコメディ映画です。葬儀が

3回出てきますが、全てが明るい道のりの始まりになって

います。

 

〇見どころ

基本的にコメディ映画っぽく、実際は沈痛であるべき人の

死を、「喪失」ではなく「再生」のきっかけに使っている

ところがとても上手です。周りの人々の行動や発言がクスリと

笑えるもので、不謹慎ながらそれほど悲しく感じません。

 

愛しき人生のつくりかた

 

ゆうちょ銀行を定年退職したミシェルと妻ナタリーの心の行き違い。

 

愛しき人生のつくりかた

 

坊主3兄弟のような揃いもそろって頭髪が薄く、優柔不断な性格を

持つマドレーヌの息子たちが決めた、彼女の老人ホーム入所。

周りを見れば、とても会話できる相手などいないし、食事は老人食。

ああいやだ。

 

愛しき人生のつくりかた

 

そして孫息子ロマンのルームメイト、カリムも憎めないアホです。

なぜに冷めたラビオリと熱いコーラを飲むんだろう。ロマンと

同じく恋人募集中のカリムの姿は最後まで笑わせてくれます。

 

●惜しいところ

短い映画なので特にないです。

 

「現在がダメなら過去を思い出せ」

そうか、未来ばかり考えている年頃を過ぎた人々には、そんな

言葉がふさわしいのかもしれませんね。オープニングとラストで

墓地を間違えて走っている若者の姿が、誰かわかるととても幸せな

気分になります。

 

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シング・ストリート 未来へのうた

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シング・ストリート

 

「シング・ストリート 未来へのうた」

原題:Sing Street

監督:ジョン・カーニー

2015年 アイルランド=イギリス=アメリカ映画 

106分 PG12

キャスト:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ

     ルーシー・ボーイントン

     マリア・ドイル・ケネディ

     エイダン・ギレン

     ジャック・レイナー

 

1985年不況下のダブリンで、家計の悪化から公立高校に

転校させられたコナーは、学校ではいじめに遭い、喧嘩の

絶えない両親のもと、兄と有名バンドのPVを見て憂さを

晴らしている。彼は美しいラフィーナという少女に接近する

ため、彼女をPVに使うバンドの結成を思いつくのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ 洋楽に疎い私でもサントラが買い

たくなる曲ばかりです。

 

ストーリーもよかった。映画を見終わって思ったのは、

15,6歳の頃は夢があったし、怖いものなどほとんどなくて、

思った通り突き進む気力があったなあということです。知らない

ことややったことがないことが山ほどあったのに、それを考える

ことなく行動していました。あのほとばしるようなエネルギーを

急に思い出しました。

監督は「ONCE ダブリンの街角で」(2008)「はじまりのうた」

(2013)のジョン・カーニー。どちらの映画も大好きです。

そして今作は1985年大不況にあえぐアイルランド、ダブリンが

舞台で、主人公のコナーは経済的な問題で、スィング・ストリート高

へ転校させられるのです。厳格な校長には、茶色の靴をとがめられ、

暴力少年バナーには不条理にも殴られる。両親は喧嘩ばかりしている。

 

シング・ストリート

 

唯一の楽しみは、兄ブレンダン(経済的な理由で大学中退)と見る

ロンドンの有名バンドのPVです。それを見て父親が

「なぜ生で歌わないんだ」と全く理解を示しません。

 

〇見どころ

バンドを組む動機は、一目ぼれしたソフィーナに接近したいという

不純なものですが、大体音楽を始めるきっかけってモテたい、

という気持ちの人が結構いるのは確か。

 

シング・ストリート

 

それで仲間を募り、学校では浮いた存在の少年たちが生き生き

していく姿を見ていると、本当に希望が湧いてきます。

 

シング・ストリート

 

彼らは家庭的にも恵まれていないけれど、その暗さは一切

感じられません。コナーの両親が喧嘩中、大音量の音楽を流し、

それに合わせて、兄と姉と一緒に踊るシーンは胸にグンと

来ました。もちろん彼が歌う歌は素晴らしく、終盤の学期末

ディスコで歌った「茶色い靴」は魂込めて歌っていて、権力に

抵抗する若者のプチ版という感じがしました。

 

●惜しいところ

バンドのメンバーについて詳しくわからなかったのと、

メンバーがすぐに揃うところが少々気になりますが、それを

差し引いても素晴らしい映画です。

 

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マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル 2017

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JUGEMテーマ:洋画

 

「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル 2017」

 

「ぼくたちのジュネーヴ条約」

原題:La Convention de Geneve

監督:ブノワ・マルタン

2016年 フランス 15分

キャスト:アズディン・ブアバ

     ドゥマイ・ボクム

 

ぼくたちのジュネーヴ条約

 

高校生のハキムは、借金のせいで待ち伏せされて

いるフランシスを助けようと考えるが...。

 

様々な人種、国籍の生徒が通う高校での出来事で、

たった40ユーロを同級生フィラットに借金し、

踏み倒したとしてフランシスを待ち伏せする集団と、

彼に加勢しようとする集団がバス停付近に集います。

 

ぼくたちのジュネーヴ条約

 

とてもおかしいのは、40ユーロは女生徒に取られた金であり、

フランシスも、貸したフィラットもどちらも貧しく、

「暴力では解決しない」という女子の意見でカンパを募ると

いう展開になるところです。喧嘩をしに来た者と喧嘩見物に

来た者が、なぜか納得のいく結論を出せてしまうところは、

大人の世界でも是非とも真似してほしいです。

 

 

「ある沈黙」

原題:Un Grand Silence

監督:ジュリー・グルダン

2016年 フランス 29分

キャスト:ニナ・マソディエ

     ソニア・アモリ

     クラリス・ノルマン

 

ある沈黙

 

1968年、望まぬ妊娠をした裕福な家庭の

娘マリアンヌは、ある女子寮に入れられる...。

 

大きなお腹をしたまだ10代らしい女性ばかり

入所しているので、ここは周囲に内緒で出産する

場所であるとわかるのです。

 

ある沈黙

 

彼女たちの日々の生活が淡々と描かれ、その年頃の少女らしい

生活、隠れて喫煙したり、ダンスを踊ったりする姿と、大きく

なっていくお腹に複雑な表情を浮かべるマリアンヌが映ります。

彼女は先に出産し授乳する仲間の姿や、お腹の中で動く足、

そして出産を経て、大きく変わっていく様子が映像から伝わる

のです。この話が一番重いかな。

 

 

「ダーン・ディール」

原題:Une Formalite

監督:ピエール=マルク・ドルアン

   シモン・ラマール=レドゥー

2016年 カナダ 9分

キャスト:スティーヴ・ラブラント

     リシャーム・フレシェット

 

ダーン・ディール

 

マフィアの手先レミは、口が軽いフェルナンを

始末するように命じられる。すぐにすぐ仕事と

考えて、待ち合わせのカフェに向かうが...。

 

ダーン・ディール

 

これはものすごくおかしかった。何とか任務を終わらせたい

レミがフェルナンと軽口をたたいていると、とても許せない

発言をするわけです。

「スター・トレック」と「スター・ウォーズ」を間違える!

おまけにレミは「スター・ウォーズ」のDVDを全部揃えて

いるほどの大ファンなので、とにかくトンチンカンなことを話す

フェルナンにどんどんイラつきます。決定打は

「ロバート・レッドフォード」と「ハリソン・フォード」

すら区別できないこと。イライラMAXの結果はすごいよ〜。

 

どのフィルムも短いのですぐに見られます。

「青山シアター」のオンライン配信で無料で鑑賞しました。

 

 

 

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ベル&セバスチャン

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JUGEMテーマ:洋画

 

ベル&セバスチャン

 

「ベル&セバスチャン」

原題:Bele et Sebastien

監督:ニコラス・バニエ

2013年 フランス映画 99分

キャスト:フェリックス・ボシュエ

     チェッキー・カリョ

     マルゴ・シャトリエ

     ディミトリ・ストロージュ

 

ナチス占領下のフランスの山村で、セバスチャンは

おじいちゃんから「野獣」の脅威を教わっている。

しかしある日山の中で、その「野良犬」と出会うが、

セバスチャンはその犬を恐れず、次第に友人になって

いくのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ とにかく心が癒される内容です。

 

セシル・オーブリー原作の児童文学「アルプスの村の犬

と少年」を映画化したもので、監督自身も自然と犬に

人生を捧げる冒険家であるとのこと。また、フランス人

歌手ZAZが歌う主題歌「belle」はどこか懐かしい思いを

抱かせるステキな曲で、その歌声と共に心に残ること

間違いありません。

 

〇見どころ 

グレート・ピレニーズのベルが最初「野獣」と呼ばれる

ほど薄汚れていたのに、セバスチャンと共に川に入ると、

雪の様に真っ白でフワフワの毛並みに変わります。

 

ベル&セバスチャン

 

ベル&セバスチャン

 

こんな大きな犬とアルプスを駆け回ってみたいと、心の

底から思えるほど、自然とうまく調和しています。虐待され、

人間を信用しなくなっていたベルが、セバスチャンという

友人を持ったことで、心を開いていく姿は、見ていて感動

すること間違いなし。

 

ベル&セバスチャン

 

またナチスが進軍してきて、村民が、スイスへの密出国を

手助けしている疑いをかけますが、直接的な暴力シーンは

なく、逆にドイツ兵の中にも善人がいるのも描かれ、

ファンタジーの世界を感じます。

 

●惜しいところ 

この映画は子供と犬という最強のタッグで描かれ、そこに

美しいアルプスの景色が組み込まれていますから、特に文句

のない内容です。

 

ベル&セバスチャン

 

欲を言うとセバスチャンと暮らすおじいちゃんの素性や

アンジェリーナと恋人ギョームについて詳しい描写が

なかったので、やや人物相関図がかわりづらかったかな。

 

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