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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
「ミモザの島に消えた母」
原題:Boomerang
監督:フランソワ・ファブラ
2015年 フランス映画 105分
キャスト:ローラン・ラフィット
メラニー・ロラン
オドレイ・ダナ
ウラディミール・ヨルダノフ
アントワーヌは30年前溺死した母クラリスの死について
疑念を抱く。しかし妹アガットだけでなく、父、祖母など
周りの人間すべてが、その話を語らない。彼は自力で真相を
探り始めるが...。
<お勧め星>☆☆☆☆ 美しい自然美とその中で
繰り広げられる謎めいた人間模様が上手く対比して
います。
誰もが苦しみを隠していた
干潮の間だけ渡ることができる「ゴア通路」。
フランス西部の島ノアールムーティエ島の本土への通路で、
1971年に有料道路ができたものの、800mほどの距離を
結ぶこの通路は今なお利用されているとのこと。島がミモザの
名所で知られていることから、このような邦題になったの
でしょう。美しい海岸、青々とした木々が風に揺らめき、
明るい太陽光が降り注ぐ、そんな景色を見ていると画面に
吸い込まれそうになります。
原作は「サラの鍵」のタチアナード・ロネ。原作は読んで
いませんが、映画はとてもよくできたものでした。
冒頭アントワーヌ、アガット兄妹が島からの帰り道の車内で
口げんかをし、そのまま交通事故を起こします。アントワーヌ役は
「エル ELLE」(2016)のローラン・ラフィット。
アガット役は「イングロアス・バスターズ」(2009)、
「オーケストラ」(2009)などで美しいだけでなく芯の
強い女性を演じたメラニー・ロラン。
アントワーヌは30年前、ノアールムーティエ島の沖で溺死した
母クラリスが、彼に「ゴア通路の驚くべき歴史」という本を
遺していたことで、彼女の死に急に関心を持ち始めるのです。
しかしきっかけはそれだけではなく、彼自身が離婚の傷から
立ち直れす、セラピーに通っていることも理由の一つかも。
彼は「自分がなぜ元妻に愛されなくなったのか」その理由が
理解できなかったのかもしれません。それをたどっていくと、
自分が母の死に何かを知っていて、その記憶が封印されて
しまったことに、30年たった今気づいたのでしょう。
妹アガットは母を「クラリス」と呼び決して「ママ」とは
言いません。さらに父、祖母、かつての使用人さえ、母に
ついて多くを語らないのです。「蒸し返すな」と。
映画の序盤から感じるのですが、この兄妹は決して父と面と
向かって話しません。父は絶対的権威として彼らを守って
きたのです。しかしアントワーヌは、その姿がまるで実の娘
マルゴに対する自分の態度と全く同じであることに気づく
わけです。
これはもしかしたら裕福な家系である自分の家の「しきたり」
のようになっていたのではないか。
事故後収容された病院で、アントワーヌは遺体安置所で働く
アンジェルと知り合います。先に自分の生い立ちを話したのは
アンジェルで、アントワーヌはやはり話せないのです。
その心の葛藤と、真実を知りたいという強い願望にかられた時、
彼はどう行動するか。
この映画の中には悪い人間は誰も登場しません。誰もが大切な
ものを守るために「真実」を隠し続けてきたのです。ひとり
ひとりの心理状態を丁寧に描き、最後は各々が再生していくで
あろう姿を映すことで未来につながる内容になっています。
最近見た中では最も心に残る映画です。