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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:洋画
「ラビング 愛という名前のふたり」
原題:Loving
監督:ジェフ・ニコルズ
2016年 イギリス=アメリカ映画 122分
キャスト:ジョエル・エドガートン
ルース・ネッガ
マートン・ソーカス
マイケル・シャノン
多くの州で異人種間の結婚が禁止されていた1958年、
黒人の恋人ミルドレッドの妊娠を知った白人のリチャードは、
ワシントンD.C.で結婚する。しかし故郷に戻ると保安官に
逮捕され、2人は25年間州外追放処分となってしまうの
だった。
<お勧め星>☆☆☆☆ 淡々としたストーリーでありながら、
ラストには静かな感動の波が押し寄せます。
彼が私を守った
予告編は実に動きのあるもので、州法で禁じられた異人種間
の結婚をしたカップルが、逮捕され、非情な判決を受け、
それに耐え、そして闘うかのように思われました。しかし、
本編では、逮捕され、裁判を受けるシーンも淡々と描かれ、
それを2人は不当と思いながらも受け入れています。法律で
決まっていることに立ち向かおうとする姿などはみじんも
感じられないのです。
そもそも内容の多くが、リチャードとミルドレッドの日常生活を
映すもので、故郷バージニアに思いを馳せながらも判決を受け入れ、
10年近くワシントンで暮らし、その後、秘密裏に州へ戻り、
周囲から身を隠すように暮らすこととを選びます。それがなぜ、
急に動き出すかというと、そこにはいわゆる「人権派の弁護士」
の姿があるわけで、この後沸き起こる公民権運動の先駆け裁判と
して、最高裁に上告を受理してもらうことが最終目的だったの
かもしれないし、世間に注目させる目的も含んでいたのかも
しれません。
主役リチャードを演じるのは「ザ・ギフト」(2015)の
ジョエル・エドガートン。いかにも武骨で、優しい心を持って
いるけれど、その感情をほとんど表に表さない男性を好演。
「ザ・ギフト」のウルトラ怖いおっさんとは大違いです。中盤、
雑誌ライフの記者役で
「ドリームホーム 99%を操る男たち」(2014)の
マイケル・シャノンが登場するので、何か魂胆があるのかと
思うけれど、それはないです。しかし彼が書いた記事は
「結婚という名の犯罪」というセンセーショナルな題名を
つけられており、表面的には何もなかったかのように
振舞っているリチャードの職場の誰かが、その記事をレンガに
張り付けて車に放り込んでします。表面的に「差別はしない」
と口にする人たちの心の奥底が見えたようでここは怖かった。
またかつては親しかったリチャードの故郷の黒人たちから
「お前は白人ではなくなったんだ」と言われる姿も辛かった。
その気持ちは理解できるけれど。ここでリチャードは初めて
大泣きするんですよ。ミルドレッドの腕の中で。自分は何一つ
変わっていないのに周囲はどんどん変わっていくのです。
英雄視されることを嫌ったミルドレッドの気持ちを生かす形で、
(リチャードは裁判の数年後に事故死)静かなストーリーを
展開し、ラストに大きな余韻を残す内容になっていました。
人種などという人間というくくりの中の些細な事柄で分類する
ことが、いかに愚かで悲しいことか。ほんの50年前の裁判で
勝ち取った権利がどれだけ重要なものであったのか。それらを
踏まえてみてほしい映画です。
「異人種間結婚の脅威」という考えを作り上げたのは、
誰だったのか、そもそも「脅威」など存在したのか。いろいろ
考えると怒りがこみ上げますが、人種問題を扱った映画は、
美談として演出されがちで、それはややもすると不快にも
感じ取れてしまう。それが一切なかったこの映画は極めて
秀逸だと思うのです。