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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
「ミーン・ドリームス」
原題:Mean Dreams
監督:ネイモン・モーランド
2016年 カナダ映画 104分
キャスト:ジョシュ・ウィギンス
ソフィー・ネリッセ
ジョー・コブデン
ビル・パクストン
田舎の農場の息子ジョナスは、隣家に引っ越し
てきた少女ケイシーに心を惹かれる。しかし
ケイシーの父で警察官のウェインの暴力的な態度を
受け、彼はケイシーを連れて逃避行することを計画
するが...。
<お勧め星>☆☆☆☆ 不条理さの中に純粋な心を
感じさせてくれる秀逸な映画です。
暴力と非暴力の愛
1971年映画「小さな恋のメロディ」は厳しすぎる
教師や煩わしい親の干渉への反抗から、「結婚したい」
と願う11歳の少年少女がトロッコを漕いでどこかへ
(未来へ)出発するものでした。一方1968年映画
「ロミオとジュリエット」はシェイクスピア原作で、
敵対する家に生まれた男女の悲恋を描いており、どちらも
純粋な「愛」を感じながら、それを多くの人間が邪魔を
するという皮肉な展開になっています。
この「ミーン・ドリームス」はそのどちらにも似通う
雰囲気がありつつ、大自然が時には美しく、時には厳しく、
そして殺伐した姿を見せながら、ストーリーが進みます。
高校すら行かず、家の農場でひたすら働くジョナス。
母親は心の病なのか、父親も彼も腫れ物に触るような態度で
接します。そんな家の隣に越してきたのが、「やさしい本泥棒」
(2013)のソフィー・ネリッセ演じるケイシー。
迷い込んできた犬を探しに来た彼女を見たジョナスの
心はズキュン!だって可愛いんだもの。
この後しばし大自然が広がる中、心を通わせる2人の姿が
映ります。でもケイシーはなぜか嘘をつくのです。
「でもあなたには真実を話すわ」
なぜ嘘をつくのか。彼女の父親は警察官であり、娘を溺愛
しているものの、その過剰な愛情は「束縛」「支配」「独占」
にほかならないことをジョナスはすぐに知ってしまう。とはいえ、
ジョナスの父親も、息子を愛しているものの(多分)どこか
他人事のように息子の話を聞くのです。極めて消極的な愛情と
いうのでしょうか。
ウェインからケイシーを救い出そうとしたジョナスは、
ウェインの恐ろしい姿を見てしまい、無計画な逃避行を
企てます。それはその後ケイシーに
「あなたには何の計画もないじゃない!」と言われ
「僕はあそこからキミを救い出したかったんだ」と答える。
「あなたの行動でわたしは救い出してもらうしかなくなった」と
言うケイシー。
そうなんです。救い出してほしいと思っていたのは、ジョナスも
同じじゃなかったんだろうか。
この2人が対照的な言葉を発するのは、逃避行の最中に銃を
購入した後のことで、とことん非暴力を貫き、弱い男と
感じられる父親のもとで育ったジョナスは、「自分より強い
奴からキミを守るために銃は必要だ」と言います。
逆に怒りがすぐに暴力につながり、それで支配する父親のもとで
育ったケイシーは「銃で物を奪うのはイヤ」と言うのです。
この対比が素晴らしかった。もちろん15歳くらいの少年少女の
カップルと老犬が移動していたら、すぐに見つかってしまい、
行く先々に父親や保安官がやって来ます。そのスリルは、
二人の行く末の不安を煽るばかりなのです。
ラストは「小さな恋のメロディ」っぽかったけれど、あの映画と
同じく、このままずっと行けるはずもないよな。きっと彼らは
元の町に戻るんだろうなと思ってしまうのは未来への希望が
少なすぎるからだろうか。
いつか太ったケイシーが5人くらい子供を持つ肝っ玉母さんに
なって、ジョナスと農場暮らしをしていたらいいなと思って
しまいました。「海」が見たいケイシーにジョナスが見せて
あげた色づく紅葉に囲まれた湖のシーンは本当に美しかったです。