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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
「獣は月夜に夢を見る」
原題:Nar dyrene drommer
監督:ヨナス・アレクサンダー・アーンビー
2014年 デンマーク=フランス映画 85分 R15+
キャスト:ソニア・ズー
ラース・ミケルセン
ソニア・リクター
ヤーコブ・オフテブロ
デンマークの海岸沿いの村に住むマリーは、父と病気の
母の3人暮らし。母の病気について一切語らず、村人は
何かにおびえている。そんなマリーの体にある変化が
起き始めるのだった。
<お勧め星>☆☆☆ 幻想的な景色の中と対照的な
人々の静かな恐怖、そして一途な愛を感じます。
獣は誰の心にもいる
どうしても比べてしまうのはスウェーデン映画
「僕のエリ 200歳の少女」(2008)です。原題は
「正しき者を招き入れよ」というものなのに、バッチリ
ネタバレ全開の邦題になっていて、もう〜バカバカバカと
言うしかない。2010年には「モールス」という題名の
クロエ・グレース=モレッツ主演映画としてハリウッドで
リメイクされています。これは明らかにオリジナルが格段
上をいくもので、「キャリー」もそうだけれど、クロエ
ちゃんに繊細で内気な子を演じさせるのはかなり無理があると
思う。「キック・アス」のイメージだもの。
ストーリーもやはりあの手の内容はヨーロッパが舞台でない
とピンときません。
さらに同じような内容ではもう一つ、シアーシャ・ローナン
主演の「ビザンチウム」(2010)があり、ストーリーは
全然異なりますが、孤独の中に「親子愛」「男女愛」を感じる
美しい映画でした。
今回主役マリーを演じるのは、今作がデビューとなるソニア・ズー。
透き通るような色白の肌と金髪が北欧の少女のイメージにピッタリ
です。そういえば他に若い女性は登場しなかったな。
舞台はデンマークの海岸沿いの小さな村。この景色が美しいと
見えるか、荒涼として見えるか、その時々によって表情を変える
ものの、静かな悲しみをたたえているように思えてしまうのは
映画の内容からだけでしょうか。マリーは父と病気の母との3人
暮らしなのです。父トール役はマッツ・ミケルセン
の兄ラース・ミケルセンで、どこか疲弊したような表情をいつも
浮かべています。しかしどこまでも優しい心を持っているのが
冒頭からわかるのです。この母が何の病気で介助なしには生活が
できないのか、父は語らず、村人もその話に触れたがらない。
なんとなく想像できるんですが、なぜ医者が来て注射をしていく
のか、それに気づくと、トールの深い愛情を感じてしまいます。
そしてマリーは自分の体に少しずつ変化が起きていることに気づく
のです。これが劇的なものではなく、ほんの少しずつ。
さらにダニエルと恋に落ち、ラブシーンでは、背中に、腕に、
そして瞳に変化が起きます。感情が高まると一気に変化してしまう
わけです。
でもダニエルは少しも気にしません。そう、この表情は
トールが母に向けるものとほとんど変わりがないと気づか
されます。とはいえ、曇り空が続き、大きな変化もない村では、
村人の心にたまっていくのは、小さな怒りや悲しみや憎しみの
1つ1つで、持って行き場のないその気持ちを、どこへ
向けるのか、おのずと知れたことなのです。
この北欧の暗い一面を芸術としてノルディック・ノワールという
ジャンルがあるそうで、ミステリー、ホラーでありながら、
しんしんと心に染み込む切なさを感じる映画でした。