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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
「黒い雪」
原題:Nieve Negra
監督:マルティン・オダク
2017年 アルゼンチン映画 90分
キャスト:ライア・コスタ
リチャード・ダーリン
ドロレス・フォンシ
ミケル・イグレシアス
スペインに暮らすマルコスは、父の訃報を受け、
身重の妻ラウラとアルゼンチンに戻って来る。父の
遺言の実行と土地売却話を進めるため、彼らは長年
疎遠だった兄サルバドルの元に向かうが..。
<お勧め星>☆☆☆ 真っ白く美しいはずの雪景色が
少しも清らかに見えなくなる愛憎ドラマです。
雪に残る真っ赤な血の跡
サルバドル役のリカルド・ダリンは、私の大好きな
映画「瞳の奥の秘密」(2010)の主役を演じて
いました。ラテン系の顔立ちの大きな瞳が印象的で
とても色気のある俳優さんです。ところがこの映画では、
人里離れたパタゴニア地方の山奥にたった一人で暮らす
孤独な男を演じており、白いものが目立つ髭も髪の毛も
ボーボーで獣のように感じます。ただそのつぶらな瞳は
健在であり、一目で彼だとわかりました。
オープニングに映るホアンという少年が、マルコスの
弟であることは、映画内の会話からわかってきますが、
なぜかマルコスはその話を口にしたがらない。さらに
父の遺言を実行するためにどうしてもサルバドルに会
わなければならないのに、ものすごく腰が重いことから、
マルコスとサルバドルの間に大きな確執があることは
わかってくるのです。
また妹サブリナは精神疾患で病院に収容されている。現在
のマルコスやラウラの姿と20年以上前の一家の姿が交互に
映るものの、20年以上前の出来事が切れ切れで、さらに
時を前後して映り込むので、見ている側は、その「謎」に
ついてものすごく好奇心をかきたてられます。父、サルバドル、
マルコス、サブリナ、ホアンで雪山で狩猟をする姿。
そこでいったい何が起きたのか??なぜサルバドルは父から
折檻を受けていたのか。
この好奇心はマルコスの妻ラウラが代わりに満たしていくの
です。なんせものすごく詮索好きだし、のぞき見、盗み聞き、
盗み読みが大の得意らしい。隠されているとわかると見たく
なるし、調べたくなるのは誰でも同じなのね。姉の日記の
盗み読みは叱られることがわかっていても、ついこの手が
ふすまを開けてしまい、ついこの指が日記のページをめくって
しまったものです。特に大したことは書いてなかったのに、
その後ろめたさが逆にワクワク感を誘いました。
このラウラはとっても可愛い女性なんですが、マルコスの
父親が遺した土地が900万ドルで売れると聞かされた時、
はっと目を見開きます。この目は、次にサルバドルから、
900万ドルではなく1100万ドルなんだ、と聞かされた時
にも見られるのです。こんなどへき地でも鉱山としての価値が
あり、それほどの値段がつくと地元の有力者は語ります。
この有力者もかなり胡散臭い。ただカナダの企業が買おうと
している話は本当らしい。
「一人にして悪かった」と頭を下げるマルコスに殴りかかる
サルバドルの額に残る深い傷跡は父がつけたものであり、
そのきっかけは...。さらに盗み読み得意のラウラが知って
しまったおぞましいこの一家の秘密。ラウラは涙にくれる
ものの、やはりその目には強固な意志=金を手にすること、
が宿っていた気がします。
アルゼンチンという国の閉鎖的な面や兄弟間の口では語れない
ほど濁ったドス黒い憎悪の感情を見せつけられた気がしました。
雪に広がる真っ赤な血が、唯一美しいと思えるものだというのも
悲しすぎる事実です。それにしても車がボロい。
あんなボロい車が今でも使われているんだろうか。