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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:邦画
出典:IMDb
「恋人たち」
監督:橋口亮輔
2015年 日本映画 141分 PG12
キャスト:篠原 篤
成嶋瞳子
池田 良
安藤玉恵
光石 研
ハンマーで橋を叩いては不具合をチェックする仕事に
就いているアツシは、3年前愛妻を通り魔によって
奪われている。彼が犯人家族への訴訟を起こすことを
勧めていた弁護士四宮は、完璧主義者で同性のパートナー
と別れたばかり。一方弁当屋にパートに出ている瞳子は、
自分に無関心の夫と姑がおり、偶然出会った肉卸しの
男性と関係を持ってしまうのだった。
<お勧め星>☆☆☆ どこがどん底かわからないけれど、
自分への些細な共感で、少しだけ上を向けるような気が
します。
腹いっぱいになって笑うことはいい
この映画のどこに恋人たちが登場するんだろう。
朴訥とした語りから始まるこの映画が、どういう方向を
向いているのか見極めるのに時間がかかります。
出典:IMDb
ハンマーで橋を叩いてチェックをしていく男、弁当屋で弁当を
詰めるパートをしている時に、ひたすらヒステリーを起こして
いる女。橋を叩くという作業では「耳」が頼りで、大声を出す
ことなど一切ないのに、弁当屋の女のヒステリーはどこまでも
続きます。この対照的な映像から、突然アツシの過去が語られる
のです。彼は3年前通り魔事件によって、最愛の妻を亡くし、
犯人への憎悪と妻を失ったことへの喪失感から自暴自棄の生活を
送っています。部屋はいたるところに服が置きっぱなしだし、
食べ物はカップ麺、そして煙草を吸い、ビールを飲む。彼の
緩んだ身体が、その不健康な生活を物語るのです。
突然愛する者を何の理由もなく奪われたあげく、その犯人が
心神耗弱で措置入院という判決になったとしたら(そういう
例はいくつもあります)、さらに被害者なのに、事件のせいで
家族の日常が壊されていく一方だとしたら、どこに怒りを
ぶつければいいのでしょう。
出典:IMDb
そのアツシが加害者の家族を相手に訴訟を起こすことを提案した
5人目の弁護士四宮は、自信満々で、自分中心の生活を送って
います。こんな人間が被害者に寄り添えるはずもなく、
あくまでも自分の経歴に傷がつかない案件を扱おうと考えている
わけです。彼はゲイであり、パートナーと暮らしているものの、
ある日そのパートナーに去られてしまいます。これは当然
なんだけれど、四宮の胸にいつもあるのは、同級生の存在で、
彼がいるから自分というものを保つことができているという
ことに気づいていません。
出典:IMDb
さらに弁当屋にパートで働く瞳子は、頭髪の薄い夫と姑と
暮らし、二人とも瞳子には無関心なのです。こういう家庭は
今の日本にそれほどないかもしれませんが、確実に存在
し続けていますよね。
この家族の描き方がまことにリアルです。一人息子かな。息子を
溺愛し、嫁は女中程度にしか思わない姑は、姑に瞳子が冗談を
言ったことに腹を立て、彼女を平手打ちした息子を見て
「当たり前だ。父さんが生きていたらこれくらいじゃすまない」
と言ってのけるんです。こんな男は今の時代絶対に「結婚」と
いう対象から外れてほしい。その的のはるか彼方に行ってほしい。
そして瞳子は弁当屋に肉を下ろしていた男と、ひょんなことから
関係を持つのです。皇室に憧れ、夢見る乙女(見た目は全く違う)
である瞳子は、その男が自分を変えると思ってしまうんです。
このようにほとんど交わることのない(瞳子は男二人とは一切
関わることはない)3人の姿を映しながら、明日は違う日が
待っていると願う、望む、思う普通の人間が、実は翌日はもっと
悪い日を迎えてしまうという現実を目にしていきます。
この映画の中に本当に善人がいるとしたら、アツシの上司の黒田
でしょうか。黒田の1つ1つの言葉が、立ち上がる術を失って
いるアツシの上に細い細い糸のようなものをたらし続けます。
「殺したら話せないじゃん」
この言葉を受け入れるのに勇気がどれほど必要かわかりませんが、
受け入れることができたら、少しだけ息苦しさが消えるんだろうな。
生きていくのには辛いことが多い世の中で、何を拠り所にするか、
自分の頭でしっかり考え、行動することが必要だと思います。
怒りや一時の衝動に駆られることでは何の未来ももたらさないと
感じます。