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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:洋画
出典:IMDb
「あなたの名前を呼べたなら」
原題:Sir
監督:ロヘナ・ゲラ
2018年 フランス=インド映画 99分
キャスト:ティロタマ・ショーム
ヴィヴェーク・ゴーンバル
ギータンジャリ・クルカルニー
ムンバイでメイドをしているラトナは、雇い主の
アシュヴィンの結婚が当日中止になったことで、
急遽里帰りから呼び戻される。仕立て屋を夢見る
ラトナと傷心のアシュヴィンは少しずつ心を通わせて
いくのだったが...。
<お勧め星>☆☆☆☆ もう胸がキュンとしてしまいます。
そして女性の強さも感じます。
キミはbraveだね。
インドの男尊女卑社会は、しばしばニュースで取り上げ
られるレイプ事件で象徴されています。しかし今回登場
するヒロイン、ラトナのように未亡人を巡る問題は初めて
知りました。かつてはサティーと呼ばれる寡婦殉死の習慣が
あり、夫の遺体とともに妻は生きたまま焼かれていたそうです。
それがほぼ消滅した今でも、再婚は禁止され、一切の快楽
と自由が禁じられつつ、夫の実家で邪魔者扱いされて一生を
終えるというのです。
(国際人権ひろば 2007年11月発行号より)
ラトナは19歳で親の決めた相手と結婚したものの、夫は
病気を隠しており、4か月目に亡くなってしまったのです。
それでも「未亡人」扱いは変わりなく、村を出てムンバイで
メイドをしながら、夫の実家に仕送りをしていると言うのです。
出典:IMDb
一方、彼女が働くムンバイのお金持ちのアシュヴィルは、
アメリカ帰りで、実父の経営する建築会社を手伝っています。
このアシュヴィルの家やオフィスが高層ビルで、洗練された
ものに対し、ラトナが暮していたで村は、薄暗く掘立小屋の
ような家であったことは、同じ国の中でこれほどまでに格差が
あるのかと目に見える物でも感じてしまいます。
そのアシュヴィルは、結婚式当日に、婚約者サヴィナの浮気が
原因で破談になってしまうのです。この事実もラトナの境遇とは
かけ離れたものであり、女性が浮気をして結婚を拒否するなど
想像もできないものでしょう。
それでもラトナは「全く違う世界」と考え、淡々とメイドの
仕事をこなしていきます。
映画内でアシュヴィルの母親が主催するパーティーがあるの
ですが、まさにメイドは空気のような存在で、物を運ぶラトナに
一切目もくれず、その物だけを受け取っていく人々が映ります。
これがインドにおけるメイドの地位なのです。
出典:IMDb
食事も当然別で、台所の隅に座って食べるという感じ。
とはいえ、ラトナには夢があって、1つは、メイドとして働き、
妹に学校を卒業させ、自由な人生を送ってほしいということ。
そして2つ目は仕立ての勉強をし、お金を貯めて仕立て屋を開く
ということなのです。ムンバイの街中で思わずショーウィンドー
に見とれて店に入ると、オーナーに警備員を呼ばれてしまいます。
それでも決してくじけないのです。
出典:IMDb
1つ目の夢はあろうことか妹が卒業まで4か月というところで、
結婚すると言い、打ち砕かれてしまいます。しかし自分自身の
夢はそんな簡単には捨てないのです。メイドの仕事の合間に
裁縫教室に通い、アシュヴィンにデザインの本をもらい、
アシュヴィンにミシンをもらう。アメリカ生活が長かった
アシュヴィンにとって、身分の差など大きなものとは感じなかった
ことでしょう。しかしラトナには決してそれが受け入れられない
ことであるとわかっていたのです。わかっていたからこそ声を
殺して泣くのです。
壁1枚隔てて、大画面テレビを前にくつろぐアシュヴィンと、
狭いメイド部屋に座るラトナは、その壁が途方もなく高く厚い
ものであると彼女だけが身をもって知っていたのです。
ラトナの夢を聞き、逆にアシュヴィンの夢を尋ねると、彼は
アメリカでライターをしていたことが分かります。それも兄が
病気になったせいで呼び戻されたのです。彼も今の生活に満足して
いたわけではないのです。
岡村孝子の「夢をあきらめないで」が流れてきそうなラスト
ですが、流れてくるのは明るいインド音楽です。そしてとても
いい気分にさせてくれる映像でした。