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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:韓国映画全般
出典:IMDb
「暗数殺人」
原題:Dark Figure of Crime
監督:キム・テギュン
2018年 韓国映画 110分
キャスト:キム・ユンシク
チェ・ジフン
チン・ソンギュ
ムン・ジョンヒ
ホ・ジン
麻薬捜査官のキム・ミヒョンは、死体が入った袋を
運んだと話すカン・テオと接触する。しかし彼は
恋人を殺害しており、その場で刑事課の刑事により
逮捕される。ところがテオはミヒョンに「証拠を
検事が捏造した。実際の証拠のありかを教える」と
告げられ、そこに被害者の衣服が見つかる。それに
よってテオは減刑され、さらにミヒョンに「俺は
それ以外にも6人殺している」と語り始めるのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆ 暗数殺人の意味を知ると、その
恐怖を感じるとともに緻密なストーリーに感心します。
最後まで信じて最後まで疑う
冒頭から疾走するような展開です。麻薬捜査官のヒョンミンが、
情報屋と共に市場で待っていると「死体が入った袋を運んだ」
と語るテオがやって来ます。その話がろくに終わらないうちに、
刑事課の刑事たちが彼を逮捕するのです。
「え?こいつ何したんだ?」
3か月後、テオから連絡を受け、面会に行ったヒョンミンは
「殺した恋人以外に6人殺害している。そもそも恋人殺しの
証拠は捏造だ」というテオの話を聞き、半信半疑で彼の供述
した場所を調べるとそこにはなんとテオの殺害した恋人の下着や
殺害に使ったロープが見つかるのです。つまり
「検察が証拠を捏造した」
という事実が露呈してしまいます。結局テオは懲役20年の求刑
から5年減刑された判決となります。これはつまり、ヒョンミンが
検察の威信を潰したことを意味し、彼の警察内での立場をかなり
悪くする結果を招くのです。韓国映画の定番、上司の顔を伺い、
検挙成績重視、自白強要当たり前の中で、真実を追求する
熱血異端刑事の登場かと思いきや、それは全く的外れだと気づきます。
ヒョンミンは妻を交通事故で亡くし、現在独身かつ実家はかなり
裕福なのです。彼がテオの自白を信用して一人で捜査を始めるのは、
純粋に「暗数殺人の被害者の無念を晴らしたい」に尽きます。
出典:IMDb
「暗数殺人」というのは、実際に発生した犯罪の中で統計によって
把握されていない犯罪数=“暗数”の中に含まれている殺人のことで、
家族からの捜索願が出ても「失踪」として捜査されなかったり、
そもそも捜索願すら出されない人々が被害者となっていることが多い
のです。
ヒョンミンは自ら出世コースと捨て、刑事課に移動し、テオとの
面会を繰り返すと、テオがかなり狡猾で、情報の見返りを要求し始め
ます。さらにスラスラっと書いた自供書の情報が極めて曖昧であり、
執念で真相に近づいたかと思うと、被害者が生きていたり、そういう
人物がいなかったりと最終的に空振りに終わることの連続です。
出典:IMDb
テオは姉と二人、飲んだくれの父親の暴力に悩まされ、母親は
農薬自殺を遂げ、たまたま再開発に当てはまる地域に住んでいた
ため、その再開発保証金が手に入ると、金を全て持って家を出たと
姉が語ります。この姉もとことん暗い表情の持ち主で、この姉弟は
精神的にちょっと危険なんじゃないかと思うほどです。
そして遂にテオの供述した場所から人骨が発見されるのですが、
それはテオの自供書の被害者とはDNAが異なっています。さらに
死体遺棄の時効は7年で、被害者とされる人物は10〜12年前に
失踪しています。ではテオにここを確認すると、正式な取り調べでは
自供を翻し「俺は死体を運んだだけだ」とさらりと言ってのけるの
です。小声で「自白だけでは証拠にならない」とヒョンミンに
ささやくテオを見ると、どこまで真実を語っているのか、そもそも
金や物欲しさに嘘を言い続けているのではないかと感じてしまいます。
出典:IMDb
このヒョンミンとテオの駆け引きのシーンはどれも目が離せません。
「チェイサー」(2008)「哀しき獣」(2010)などの
キム・ユンソク演じるヒョンミンと「工作 黒金星と呼ばれた男」
(2018)で極めて冷酷な役に徹したチェ・ジフンとの競演は
とにもかくにも見ごたえがあります。特にチェ・ジフンの
イカレ具合には見ている側が気分が悪くなるほどです。
出典:IMDb
テオが殺害を供述した7つの事件は存在したのかどうか。ここが
とても上手に作ってあるんですよ。そしてテオが最終的に何を目的に
してそういう行動を起こしたのか、終盤にわかってくると、彼の
ある意味ものすごく賢い面を知るわけです。だてに拘置所内で法律
関係の本を読み漁っているわけではないのです。
とはいえヒョンミンはテオを減刑させた張本人であり、さらにテオの
本質を見抜いています。つまりこのまま15年後に世の中に出たら、
必ず恐ろしいことを起こすということです。
畳みかけるようなラスト付近の展開も全く違和感がなく、そして字幕
クレジットでベースとなった実話の状況を知ると、こういう事件は
どこの国でも起こっているんじゃないかと感じて背筋が寒くなります。
それにしてもよくできた映画です。