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    さよなら、アドルフ

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    JUGEMテーマ:洋画

    さよなら、アドルフ

    「さよなら、アドルフ」
    原題:Lore
    監督:ケイト・ショートランド
    2012年 オーストリア=ドイツ=イギリス映画
    109分 PG-12
    キャスト:サスキア・ローゼンタール
         ネイ・トゥレープス
         ウルシーナ・ラルディ
         ハンス=ヨッヘン・バーグナー

    ナチス親衛隊を父に持つローレは、妹と双子の弟、
    そして赤ちゃんと共に裕福な暮らしをしていた。しかし
    1945年、ドイツが敗戦すると、彼らの生活は一変し、
    ローレは弟妹達を連れて、田舎に住む祖母の家をめざす
    のだったが...。

    <お勧め星>☆☆☆☆ ナチスドイツの家族の視点から
    戦後が描かれた珍しい作品であり、子供たちの苦悩が十分
    伝わります。


    原作はレイチェル・シーファーという方の「暗闇のなかで」
    です。主人公の14歳の長女ローレ役を演じたのは、当時
    19歳のサスキア・ローゼンタールで、彼女がとても美しい
    のに驚きます。


    さよなら、アドルフ

    さて、1945年、ドイツが第二次世界大戦に敗北した時から
    映画は始まります。ナチス親衛隊の父は、久しぶりに会った
    わが子たちをなぜか涙目で見つめ、母アスタは、不機嫌そうに
    タバコをくゆらせるのです。ナチスドイツの暴挙は決して許す
    ことはできませんが、彼らにも家族があり、子供たちは総統を
    崇拝する教育を受けていたのです。

    そして父は妻と子供たちを農家に預け、自らは出頭します。
    その意味が全く分からない幼い弟妹達と、状況の変化に気づき
    ながら、まだ総統への忠誠を誓うローレの姿が痛々しいです。
    食糧が不足し、貴金属と引き換えに農家に分けてもらいに行った
    母は、血を流し、疲れ切って戻って来ます。その姿だけで母に
    何があったのか伺えるのです。
    カメラワークもとても凝っており、遠景に焦点を合わせて、人物
    をぼかして映したり、逆さま、横向きなど、ローレもしくは
    途中で知り合うトーマスという男性の視点で映像がくり出されて
    いきます。

    「誇りを失わないで」
    と言い残し、出頭していった母。そして農家を追い出され、ローレ
    達は北ドイツの祖母の家をめざして900kmの旅に出るのです。
    そこで出会う人々は様々であり、ドイツ人と知って素通りする人、
    貴金属を与える見返りに、赤ちゃんに母乳を分けてくれる女性、
    未だに総統を称える老婆などが映ります。
    しかしローレは正義だと信じていた父がホロコーストに手を染めて
    いた写真を見てしまうのです。そこには信じられないような残虐な
    行為を受けたユダヤ人が映っているのです。


    さよなら、アドルフ

    それを見たところで、彼女に擦り込まれた価値観はそう簡単には
    変わるものではありません。彼女たちの旅を手助けしてくれる
    トーマスという男性が、ユダヤ人であると知ると、ローレは彼を
    見下し「寄生虫」とまで言い放つのです。それは許すことの出来ない
    発言だし、自分たちの民族が優れているという考えは、到底納得
    できるものではありません。
    それでも彼女たちを助け続けるトーマスに弟妹達は心を開いて
    行くのです。そしてローレ自身も、川を渡る舟を借りる時、相手
    の男の無謀な要求に答えようとし、その場を救ってくれたトーマスの
    行為によって、彼への信頼が芽生え始めるのです。いや信頼では
    ないな。罪悪感の共有だ。


    さよなら、アドルフ

    そしてトーマスが所持していた身分証明書に挟まれていた、ユダヤ人
    家族の幸せそうな写真を見て、彼女は自分の信じていたことが全て
    間違っていたことに気づくのです。「正義」と思っていたことが
    「正義」ではなかったと。

    祖母の家に着き、祖母が以前のような食事マナーを押し付けた時
    ローレのとった行動は、彼女が再生し始めた瞬間だったかもしれ
    ませんね。


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      コメント
      子供は親の言うことが、正しいと思うのが当たり前です。でも、広い世界には様々な人種がいる訳ですから、相手のことについて知らない事だらけです。受け入れ難い年ごろでしょうが、新たな事実を理解することで、彼女の自分らしい生き方が、見えてくる気がしました。
      • あちゃ丸
      • 2014/08/14 2:18 PM
      あちゃ丸さん。この映画は公開当時から見たかったものなんです。でも劇場が限られていたので見に行けませんでした。なのでレンタル開始を待ち焦がれていました。
      ヒロインの女優さんがとても毅然としていてきれいな方です。またストーリーもこれまでに見たことのない視点から描かれていました。
      • ミス・マープル
      • 2014/08/14 2:35 PM
      アイデンティティが根底から覆される中、幼い兄弟を守り生き抜かなければならないローレの戸惑いを思うと胸が痛みますね。
      そんな状況にあっても変わることのできない祖母。
      しかしローレが祖母に反抗したことは仰るようにローレの再生の一歩でしょう。
      変則ナチスドイツものにして、繊細な思春期ドラマとしても秀逸でした。
      • pu-ko
      • 2014/08/19 5:47 AM
      pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。
      この映画はずっと見たかったんですよ。
      ナチスドイツの迫害についてはたくさんの映画がありますが、逆の立ち場の映画はほとんど見られませんね。
      そして14歳という微妙な年齢でのこの敗戦は、ローレの心にどう映ったのか、とても興味深かったです。祖母はおそらくは総統信奉者のまま生きて行ったのでしょう。
      とても良くできた映画でした。
      • ミス・マープル
      • 2014/08/19 5:45 PM
      こちらにも
      ナチス高官家族側の視点のアイデンティティの崩壊といった作品ですが、
      実は、わからなかったシーンがあります

      河を渡る際、ユダヤ人青年にみられているとわかっていて敢えて無謀な行為(橋渡しの男の色気を利用して、ユダヤ人青年が彼を殺す)をさせるシーンです
      あれは彼を知っていて利用したという「少女」から「大人の女性」へと変わる多感な年頃が為せる業なのでしょうか
      男が体を嘗め回すように見ているのを感じながら、彼女はユダヤ人青年のことをみつめていましたよね
      彼が、ああするとわかっていたのでしょうか
      • maki
      • 2015/02/17 6:37 PM
      makiさん、コメント&TBありがとうございます。
      川を渡る際には、ローレはまだ、ユダヤ人への嫌悪感を持ち続けていたのだと思います。ユダヤ人の力を借りるぐらいなら、この男に体をさらしても構わない、と思っていたのだと理解しましたが。
      そこで実際に人が殺される現場を見て、初めて死ぬことの怖さを知ったのではないでしょうか。
      無言のまま川を渡る舟の上で、ローレは自分の価値観が間違っていたことに気づき始めたのだと理解しました。
      ローレが生きるために何をすれば一番早いのかを知った時かもしれませんね。
      14歳でありながら様々なことを知った彼女の心は苦しかったと思います。
      • ミス・マープル
      • 2015/02/17 7:34 PM
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      エバート氏two thumbs up塗りつぶしから、今日はオーストラリア作品『Lore』を。さよなら、アドルフ(2012)オーストラリア原題:Lore 監督/脚本:ケイト・ショートランド 出演:ザスキア ...
      • シネマ・クレシェンド
      • 2014/08/19 5:49 AM
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      • いやいやえん
      • 2015/02/17 6:28 PM

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