皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇

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皆殺しのバラッド

「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」
原題:Narco Cultura
監督:シャウル・シュワルツ
2013年 アメリカ=メキシコ映画 103分

2006年から麻薬組織撲滅を開始したメキシコは
6年間で12万人もの死者を出している。一方その
麻薬カルテルを英雄視し、賛美するナルコ・コリード
を歌う歌手は、メキシコだけでなく、アメリカでも
大人気なのだった。

<お勧め星>☆☆☆半 ナルコ・コリードのメロディは
とても乗りやすいけれど、残虐な歌詞は許せないものです。


映画は大きく分けると2つの視点から描かれています。
1つはメキシコ、シウダー・ファレスの犯罪現場捜査官
リチ・ソト。彼の住む町は2006年の麻薬戦争勃発以来、
年間殺人件数が3000件まで上っているという世界有数
の危険な町なのです。そしてその事件で、ソトたちが遺体
を持ち帰り、検死所へ安置しても、97%は捜査されず、
起訴されても有罪になることはほとんどない、という無法
な状態なのです。


皆殺しのバラッド

こんな不毛な仕事でも、彼らは事件が起きれば現場へ向かい、
遺体を回収し、証拠品を採取して行きます。彼らの仲間も
数年間で4人も命を奪われている。それでもソトは
「ファレスが好きだし、昔のような大好きな町に戻ってほしい」
という理由でこの仕事を続けているのです。彼には恋人がいて
目と鼻の先にあるアメリカで暮らすことを夢見ていますが、
言葉、慣習、文化の違いは怖いと言うのです。時々国境を
超えてテキサス州エルパソへ向かい、ショッピングセンターなど
を訪れるソトの居心地の悪そうな顔が印象的です。対岸の町は
世界一危険で、ここは最も安全な町という皮肉にも当然気づいて
いるのです。

しかしメキシコがこれほどまでに混乱しているのは、民主主義
によって選挙で正当に選ばれた政治家たちが、麻薬組織と癒着
していた政治家や警察組織を告発し始めた途端、逆に癒着が
なくなった麻薬組織が自由に活動し始めたという複雑な背景が
あるのです。麻薬組織は、貧しい人々に学校や病院を与えて
くれるから、当然無能な政府より支持を集めてしまう。さらに
メキシコでの貿易額の原油に次いで大きな額を占めるのが「麻薬」
であり、300億ドルに上る麻薬大国であることも大きな要因
なのでしょう。最近見た「ボーダーライン」はアメリカとメキシコ
の持ちつ持たれつの関係を厳しく突いていました。麻薬の最大の
顧客はアメリカなのですから。

さらに麻薬戦争の犠牲になった人々の殺害方法が極めて残虐な
ことも有名です。ちょっとググっただけで見るのもおぞましい
写真が山ほど出てきます。彼らはこういう殺害をすることで自ら
の力を誇示するだけでなく、気分が高揚していくとのこと。
おそらくは当事者自身も麻薬漬けなのでしょう。
そんな麻薬組織とその幹部を賛美する「ナルコ・コリード」という
ジャンルの歌が人気を集めているそうで、メロディだけ聴くと
自然と体が動くような不思議な音楽です。ナルコは「麻薬」を
意味し、コリードは「物語歌」の意味だそうです。問題はその歌詞
なんです。

手にはAK-47
肩にはバズーカ
邪魔する奴は頭を吹っ飛ばす
俺たちは血に飢えてるんだ
殺しには目がないぜ

こんな歌を歌うエドガー・キンテロがもう1つの視点となります。
彼はバンドを組んでナルコ・コリードを歌っているものの、その
歌詞は、ネットでメキシコでの麻薬戦争の残虐シーンを見ては書く
というもので、彼自身はアメリカ生まれアメリカ育ち、ロス在住。
ついでに子供2人あり。


皆殺しのバラッド

もっといい歌を作るには、やはりメキシコに行かないと!とその
27歳に見えないたるんだお腹を突き出して、ギャングの友人のツテ
で入国するとまあ現地では大人気だし、ついでにシナロアカルテル
の幹部のパーティーに呼ばれるし、銃を撃つ練習までできちゃう。
「おお、メキシコ最高」
てな具合に再びナルコ・コリードを作り続けるのです。PVもどうか
と思う代物だけど、彼的にはいいのだろう。こういう歌手が敵対する
組織の反感を買って、幾人も殺されていることを知っているのだろう
か。

驚くことにメキシコの若い娘たちも「ギャング大好き。彼らと付き
あってみたい」などと言うし、ギャングの下っ端の青年たちは

「金が欲しい。次は権力、そして女だな」などと言います。
警察官は『薬莢拾い』とバカにされ、銃殺されても地味な墓に入る
のに、ギャングたちは英雄視され、その墓ときたら小さな教会のような
素晴らしいものばかり立ち並びます。ただその生存年数を見ると、
なんでこんな若くに死ぬのだろうと思うほどの短さなんですよ。
このナルコ・コリードは現在メキシコ国内では禁止されているそうですが、
アメリカでは人気を博しているとのこと。メキシコの平和や正義は
いつ戻るのでしょうか。


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コメント
ナルココリード、初めて聞きました。You Tubeで早速見ましたが、軽快な明るい曲調ですが、歌詞は結構残酷なことを歌っているんですね。まあ、事実を歌っているからしょうがないですが。
メキシコにおける犯罪も警察はお手上げ状態で、キリがないイタチごっこのようですね。当然警察内にも悪徳がはびこっていそうですし、まっとうな政治家も少ないでしょうね。ギャングやマフィアに憧れる若者や他国の人は、本当の怖さをまだ知らないから憧れてしまうのかも?と思いました。
  • あちゃ丸
  • 2016/01/14 8:37 PM
あちゃ丸さん。
そうなんですよ。ナルコ・コリードを聞くと妙に体が動いて楽しい気分になるんです。それは曲とリズムのせいで、それにあのような歌詞をつけるから、まるで殺人がゲームのような感覚になってしまうのかもしれません。大体麻薬の最大顧客はアメリカであり、そこでこんな歌が流行しているなんて、どこの国でも実際の恐怖を知らない人々の心は生ぬるいものですよね。
アメリカの若者が楽しんでいるドラッグのために、罪のないメキシコ人が1日幾人亡くなっているのかなど考えることなどないのでしょうね。
  • ミス・マープル
  • 2016/01/15 10:17 AM
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