独裁者と小さな孫

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JUGEMテーマ:洋画

 

独裁者と小さな孫

 

「独裁者と小さな孫」

原題:The President

監督:モフセン・マフマルバフ

2014年 ジョージア=フランス=イギリス=ドイツ映画

119分 PG12

キャスト:ミシャ・ゴミアシュビリ

     ダチ・オルウェラシュビリ

     ラ・スキタシュビリ

 

暴政で民衆を苦しめ、自身は豪勢な暮らしを送っていた

大統領は、ある晩起きた軍事クーデターで失脚。先に国外

脱出をした家族を追うこともできず、彼と小さな孫は国内を

逃げ回る身の上になってしまうのだった。

 

<お勧め星>☆☆☆☆ コミカルな映像とシリアスなシーン

がうまく組み合わさって作られており、ラストのメッセージ

は強く心に残ります。

 

どこかの国でイルミネーションに飾られ、光り輝く街並みを映し、

ある独裁大統領が孫に語るのです。「この明かりを一瞬で消す

ことができる。それが権力だ」将来の後継者である孫はそれを

確認するべく、電話で「明かりをつけろ」「明かりを消せ」と

繰り返し指示していると、いつの間にか明かりはつかなくなり、

街のあちこちで発砲音や閃光が見られ、民衆暴動が起きたことを

知るのです。1日で収まると大統領は考え、家族を国外に脱出

させるものの、その時も民衆の熱烈な出迎えに手を振っていた

から、友人マリアのもとに戻りたいと言う孫と大統領は、無事に

宮殿に戻れるものと思っていたわけです。しかしあの熱狂的だった

民衆は、容赦なく彼らの車を襲ってきます。非武装の彼らを銃で

射殺していく大統領側の兵士の非情さは、彼がこれまで行ってきた

治世の象徴でしょうね。

 

独裁者と小さな孫

 

首都は陥落し、側近は全て離れ、彼ら2人はここから必死の逃亡を

開始するわけです。市井に出て初めて見たのは、民衆がいかに

貧しかったかということで、栄華を極め、ダンスや豪華な料理に

興じた自分たちとは雲泥の差の生活を送っており、ノート1冊すら

買えない少年もいます。なんかこれは、ポンポン、ミサイルを発射

しては、国力を誇示する超クールな髪型の太っちょ独裁者にも

通じるものがありますね。

この映画の孫息子は、用を足してもお尻すら自分で拭いたことが

ないのです。テロリストは即処刑を行い、その中に未成年がいよう

とお構いなしの大統領も、自分の家族には限りなく甘く、孫の質問

に1つずつ丁寧に答えていきます。唯一声を荒げたのは、孫が彼を

「陛下」と呼ぶことを戒めるときで、「ダチと呼べ!」と言った

途端、孫は大泣きをします。彼にはこの変化が理解できるはずも

なかったのです。

 

独裁者と小さな孫

 

床屋から衣服を奪い、あるときは羊飼い、ある時は旅芸人に扮し、

2人は国内を転々としますが、大統領にかけられた賞金の額はどんどん

上がっていき、彼を追う民衆や元兵士たちの醜い姿も映ります。

難民となった国民から、食料や金品を強奪する反政府軍兵士。また、

結婚式に向かう一行を襲い、花嫁をレイプし射殺する。地獄のような

光景が国内のあらゆる場所で起こっているのです。独裁者によって

処刑されたり拷問された民衆の数も多ければ、この暴動の後に起きた

内戦での死者は1000人以上にも上るという。独裁者を倒しても、

そこに出現するのは国民同士の戦闘なのだという「アラブの春」を

そのまま映画に取り入れています。終盤、大統領は元政治犯と行動を

共にするのですが、彼らは皆数年投獄されており、酷い拷問の跡も

残っています。この政治犯は大統領のせいで投獄されたのだし、

また政治犯の口から、大統領の息子夫妻(つまり孫の両親は)は、

彼らのテロによって、殺された事実を聞かされると、実は互いに

憎き相手であると、見ている側は知るのです。つまり暴力による

支配は暴力しか生まないということの典型例でもあります。5年収監され、

熱烈な恋愛をして結婚した妻を考え、拷問に耐えたものの、やっとの

思いで家のドアをノックすると、そこには、赤ん坊を抱えた妻がいる。

その絶望感は計り知れません。

監督自身が語っているように、人は学び続けること、勇気を持つこと、

希望を持ち、決して絶望しないことの重要さが今こそ問われるべき時期

ではないでしょうか。

政治犯の1人がラストに発する「負の連鎖を止めるんだ」という言葉は

かなり重いです。

 

 

 

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コメント
独裁者と言っても可愛い孫の前では、優しいお爺ちゃんなんですね。でも、やはり国民を散々苦しめ続けてきたのだから、自分のまいた種の結果・・・という事でしょうね。逃亡生活していく過程で、自分のやった過ちに気がついても時すでに遅し。孫の未来が心配ですね。
  • あちゃ丸
  • 2016/06/24 8:50 PM
あちゃ丸さん。
独裁者も特に暴君で、彼の親も大統領だったようです。だから孫のお尻を拭くこともうまくできないんです。
独裁者と孫のコミカルな様子を描きつつ、自分のしていたことが民衆にどう映っていたか知っていく過程はなかなかシリアスでした。ラストも絶望な中に、これからどう進むべきかを訴えている気がしました。
  • ミス・マープル
  • 2016/06/25 4:50 PM
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あなたならどうする 公式サイト http://dokusaisha.jp12月12日公開 監督: モフセン・マフマルバフ  「カンダハール」 「アフガン・アルファベット」 独裁政権による支配が続いてい
  • 風に吹かれて
  • 2016/06/25 4:11 PM
ベネチア国際映画祭やシカゴ国際映画祭など、各国の映画祭で称賛された人間ドラマ。とある国の独裁者として君臨するもクーデターによって追われる身となった老いた男が、幼い孫を連れて逃亡した果てにたどる運命を描く。メガホンを取るのは、『キシュ島の物語』『カンダ
  • パピとママ映画のblog
  • 2016/06/30 3:55 PM

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