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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:邦画
「怒り」
監督:李 相日
原作:吉田修一
音楽:坂本龍一
2016年 日本映画 144分 PG12
キャスト:渡辺 謙
森山未来
松山ケンイチ
綾野 剛
広瀬すず
八王子で夫婦惨殺事件が起き、現場に「怒」と
いう血文字が残されたいた。事件から1年後、
千葉では娘愛子が、よそ者の田代と恋仲になった
ことを心配する父洋平の姿があり、東京では死期の
近い母親を持つ優馬が直人と深い仲になる。
<お勧め星>☆☆☆☆ 原作が未読なので真相が
わからずかなり見ごたえのある映画でした。
信じることの難しさ
「愛とは決して後悔しないこと」は1970年映画
「ある愛の詩」の名ゼリフです。もうね、この映画は
涙なしに見られる内容じゃないって最初から分かって
いるんですよ。それでもやはり見てボロボロに泣いて
しまった覚えがあります。そんな純粋に人を愛することの
難しさがこの映画から伝わってきます。さらに「怒り」、
それは自分に対してか他人に対してかそれぞれ形を変えて
いるけれど、同時に描くことで人間として生きることの
難しさを実感するのです。
血生臭い殺害現場に入り込む警察官。ピエール瀧と三浦貴大
というコンビは犯人と警官のように思えますが、違うんですね。
一応同僚らしい。床一面べっとり血がついている映像と、
セミの鳴き声、額や頬、首筋から噴き出る汗が、そのまま
臭いとして漂ってきそうなシーンが続きます。そして壁に
血で書かれた「怒」という文字。これは何を意味すのでしょうか。
新宿の風俗店から連れ戻された愛子は、父だけでなく周りの
誰もが気づくように、少し幼稚っぽい。あの清純な
宮崎あおいさんが、風俗店勤務だなんて...と思ったら、
まあそこまでですよね。ロングの毛の先が色が剥げている
あたりが、彼女のすさんだ生活を物語るくらいです。そして
彼女が好きになるのが、田代という「素性のわからない流れ者」
で、小さな漁師町では、よそから来たものへの猜疑心が簡単に
消えるものではないと実感します。だから「東京で穢れた愛子」
とお似合いとなるのだろうか。まことに狭い世界観だ。ここに
暮らす者の地縁血縁の強さは、逆に言うと息苦しい閉塞感に
他ならないことに気づくことはないのでしょうね。
東京では母親がホスピスに入っている優馬が、ゲイの集う
場所で直人という見知らぬ男と親しくなります。
「俺お前のこと全然信用してないから」あくまでもスマートに
振舞う優馬と何かを隠している直人のガラス細工のように
今にも壊れてしまいそうな関係が描かれます。
そして沖縄。本土から移り住んだばかりの泉が辰哉に連れられて
離島に遊びに来ると、そこには田中という、これまた見知らぬ男
がいるわけで、見知らぬ、得体のしれない男が、それぞれに
何の関係のないまま同時期に3人登場するのです。
ではこの3人を結びつけるのは何かといえば、それは冒頭の
殺人事件の容疑者の顔写真であり、この山神一也が整形を
施した顔がテレビで流れると、「うわ!どれもくりそつじゃん」
と思うわけですよ。「未解決事件を追え!」的な番組で犯人が
見つかった事件をありました。あの犯人は幾度も整形し、
時効間際まで逃亡し続けたものの、この手の番組がきっかけで
逮捕されたのを覚えています。なので1000の情報の中に
1つでも有効なものがあればそれを執念で追っていくのが
警察なのですね。そう信じています!
ここで最も信用してあげるべき人間が疑ってしまうんですよね。
信じたいから本当のことを知りたい。しかしそれは相手を
追いつめることになると気づいていても、どうしても行動
してしまう、言ってしまう。そこが人間の性なのかもしれません。
原作が未読なので終盤が映画でどのように脚色されたのか
わかりまえせんが、山上の「怒り」は、どこにでも起きうる
ことのように思えて怖くなりました。
坂本龍一さんの音楽がとてもきれいです。