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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」
原題:Eye in the Sky
監督:キャビン・フッド
2015年 アメリカ映画 103分
キャスト:ヘレン・ミレン
アーロン・ポール
アラン・リックマン
バーカッド・アブディ
ジェレミー・ノーサム
イギリス軍のパウエル大佐は、ケニア、ナイロビ
にいるテロリストの捕獲作戦を指揮していた。
しかし彼らのアジトで自爆テロの準備が行われて
いることを知り、無人機によるミサイル発射を
決行しようとするが...。
<お勧め星>☆☆☆半 よくできた映画だし、俳優陣
の演技も素晴らしいです。でも現実はもっと冷酷
だろうと思う。
戦争において正義などない
無人偵察機「空の目」で標的を追い、特定できたら
遠く離れた国から遠隔操作のドローンでのミサイル
発射ボタンを押す。目の前には破壊された光景が広がる。
そんな映画は、イーサン・ホーク主演の
「ドローン・オブ・ウォー」(2014)で描かれて
いました。あの映画では、その無人機のパイロット
(実際に乗っているわけではない)が心を病み、家族を
失っていく様を絶望的に映し、戦地で直接戦うこと
なくして人間の命を奪うことは、直接戦ったことと同じ
意味を持つと訴えていたように思います。
この映画では、いわゆる「キル・チェーン」つまり、
パウエル大佐指揮下のイギリス軍の対テロリストチーム、
国家緊急対策委員会、アメリカの空軍基地、アメリカ政府
などが共に標的排除に向かう姿を描いています。実際に
発射ボタンを押すのはネバダ州の空軍基地にいる若い軍人で
あり、男性は学生ローンの返済のために働いている。笑顔で
軽口を叩いていられたのは映画の序盤ののみです。
「捕獲作戦」だったはずが、ケニアでの「鳥の目」そして
「虫」により標的の家で自爆テロの準備が進められている
ことがわかると、パウエルはこの後必ず決行される惨劇を
防ぐと共にテロリストを排除する絶好のチャンスと捉える
のです。しかしたまたまその家の前で少女がパンを売り
始めてしまう。この少女を巡って、攻撃することに法的、
政治的に問題がないか各部門での判断が分かれてしまう。
一人の少女を救うか、テロによる犠牲者を防ぐか。命の
価値は同じとはいえ、そこに持ち出されるのは、その
攻撃が世界から非難されないか、民間人の死でテロリストに
「大義」を与えてしまはないかなどという全く異なるレベル
の話なのです。
これらが、テロリストのアジトの内部カメラ、「空の目」
から見た少女の姿、そして遠く離れた場所で決定権を話し
合う軍人や政治家を次々に映し、こちらの緊張は高まる
ばかりです。こういう戦争はもうとっくの昔から始められ
ていて、映画になってようやく知るというのも恐ろしいし、
実際はもっと冷酷で、目的のためには手段を選ばず、犠牲
への配慮などみじんもないに等しいのではないかと思って
しまいました。その辺りはナイロビで英米軍のスパイの
ような行為をさせられる現地人の扱い方からも伺えます。
「付随的損害の推測値」なんて、ただの計算上の数に
過ぎないことは誰だってわかるというもので、それは
いくらでも自国の有利な値に変えることもできるのです。
とてもよくできた映画ですが、やはり戦争映画は見終わって
気分が良くないです。そしてこの映画がベンソン中将役の
アラン・リックマンの遺作となってしまったことは本当に
残念です。