ラブレス

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JUGEMテーマ:サスペンス映画全般

 

ラブレス

 

「ラブレス」

原題:Nelyubov

監督:アンドレイ・ズビャギンツェク

2017年 ロシア=フランス=ドイツーベルギー映画 

127分 R15+

キャスト:マルヤーナ・スピバク

     アレクセイ・ロズィン

     マトベイ・ノビコフ

     マリーナ・バシリエバ

     アンドリス・ケイシス

 

離婚が決まっているボリスとジェーニャ夫妻の

息子アレクセイが突然姿を消す。彼を施設に

入れようとする妻を責めていた夫だったが、互いの

新生活のために、息子の行方を捜し始めるものの

警察は一向にあてにならない。そこでボランティアに

捜索を依頼するのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 見終わってやはり心が暗く

なる映画でしたが、圧倒的な自然の美しさはここ

でも描かれています。


「不安」より「尊敬」


アンドレイ・ズビャギンツェク監督製作の

「父、帰る」(2003)は突然姿を現した父親を

ソ連崩壊になぞらえたというレビューもあったものの、

個人的にはよく分からない内容だったというのが本音

です。
そして「裁かれるのは善人のみ」(2014)では、

ロシア北部の小さな町で起こる不条理な出来事を圧倒的な

映像美と音楽で描いていました。主人公は日曜礼拝にも

行かず、それほど信心深くないのに、「悪」の象徴とも

いうべき市長が信仰心が厚いという設定で、ストーリーも

最後の砦である「神」が不在になった時、人間は大自然に

支配されるのだ..てなことを思ったような記憶があります。
この映画も冒頭から水面に倒れた大木、そしてしんしんと

降る雪、流れていく川の水が映り、何のBGMもなくただ

それが映り続けた後に、突然3羽の鳥が現れるという

極めて象徴的なものになっています。

そして一人の少年が下校途中にその森の木の枝に赤白模様の

リボンをひっかけます。それを下から見上げると、風に

ひらひらとはためくのです。このシーンはラストにも

映りますが、時の流れかそれともほかの意味でかモノクロに

なっています。またそれがとても遠くから映るのです。
世界滅亡のニュースがテレビで流される中、離婚のため

マンションを売却しようとしている夫妻のうち妻ジェーニャは、

実の母親でありながら、息子アレクセイにとことん冷たく

接します。これ、ネグレクトじゃないの?虐待じゃないの?

と思うほど。これは実は彼女と実母との関係にも起因している

ようですが、父親である夫ボリスはというと、これまた無関心、

無責任極まりないのです。

 

ラブレス
 

2人の喧嘩をドアに隠れて聞きながら、声を殺して泣く

アレクセイの姿は胸が痛くなります。夫妻はそれぞれ新しい

恋人がいて、ボリスはすでに子どもが生まれようとしているの

です。ジェーニャもまたに別の相手とアツアツで楽しんでいる

のに、2人ともその間アレクセイはどうしているのかと

一切思うことはありません。

 

ラブレス
 

そして突然アレクセイがいなくなるのですが、それを知るのは

担任から2日ほど登校していないという電話が入ったからで、

そこまで気づかなかった自分たちを責めるのは互いに相手のみ

であり、自分を責めることはありません。どこまでも自分中心

なのです。

 

ラブレス
 

愛が消えた夫妻には出会った時まで遡って憎しみが生まれ、

その一方で恋人との新しい生活に夢を抱くというあまりに

身勝手な姿を見せられると、この夫妻のどちらにも感情移入が

できないのです。

「うっかり妊娠した。失敗した。幸せになりたいの。」
逆にボランティアでアレクセイを捜す人々は、何も要求せず、

ただ「アレクセイを見つける」という目的のためだけに動くの

です。この無償の行為があまりに夫妻と対照的に映ります。
他人を思いやる、尊敬する、行動する、それらがボランティアに

全て反映されており、すっぽり抜け落ちていたのがこの夫妻

なのかもしれません。
映画終盤にウクライナ内戦のニュース映像が流れます。しかし

それに対し全く無関心で、さっとバルコニーに出てランニング

マシンに乗るジェーニャや赤ん坊を無造作にベビーサークルに

放り込むボリスを見るにつけ、彼らの心の中に抜け落ちたものは

補充されることはなく、そのまま穴として存在し続けているのだ

と実感するのです。
アレクセイ探しのポスターの赤い縁取り、ライトに照らされて

青く浮かび上がる建物の柱、黄色の街灯、そしてやはりしんしん

と降り続く白い雪が、冷え切った心を象徴しているかのようでした。

 

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コメント
私も☆4、良かったです。
 特に、陰鬱な雪空、淀んだ沼に倒れる枯れ木、不気味な鳥の声。横一列の捜索隊の人たち、それすらも美しかったですね。
前作『裁かれるは善人のみ』の荒涼とした冬の海と寒村を思い出しましたが、前作の神の不在より分かりやすかったかなあ。愛の不在って感じかも。

 唯一無二の存在の親から自らの存在を全否定され、驚愕と絶望に声すら上げることができず、涙を流す少年をとらえた描写は圧倒的でショックだった!
 
 私は、前作と大きく違うなと思ったのは、女性の描き方かなぁ。
 夫に隷属する妻、家庭・家族を支え、耐え忍ぶ女性、物言わぬ女性はこの映画にはいなくて、饒舌に持論を述べまくり、男に自分を愛しているか尋ね、愛して欲しいと要求する、能動的な女性。
ジェーニャの、夫婦で築いた時間を口汚く侮辱し、そこには最初から愛がなかったと言い放つ不遜さ。嫌悪感しかないわ。
新しい配偶者との生活だって、同じように不毛なものになるんでしょうね。
 マーシャも、妊娠を武器に男を囲い込み家庭と家族を手に入れたけど、ボリスの虚ろな目と、マーシャの赤ちゃんに対する仕打ちで、その破綻の兆しが予見できるし。
ジェーニャ、マーシャ、そしてジェーニャの母。彼女たちの愛は自己愛でしかなく、相手を理解し共に築きあげ積み重ねる愛ではない。ラブレス…

ボリスだって同じで、厳格なキリスト教徒の社長の意向を損ねないように画策する狡さとか、性欲と自己愛だけとか。家庭を築き維持し、家族を守る、他者への愛じゃないわけで。
 Mayumiさんの仰るとおり、他人を思いやる、尊敬する、行動する、ボランティアを対極に置いてあると思うし、
ボランティアの無償の働き、冷静で組織だった行動との静かな対比で、さらにボリス達の利己的な行動を際立たせていたように思いました。

また、この家族の不毛さの背景に必ずあるのが、TVから流れるロシアの内戦の禍々しい状況と腐敗した政局のニュースですよね〜。
彼らは、流れる重大なニュースに一瞥もせずに過ごし、自分の欲望だけを追い求める。この狭い視野、無関心の怖さを、さりげなく入れる監督の力量ってやっぱり只者ではないな〜と感嘆!

 ウォーキングマシンで走るジェーニャのジャージに、ロシア、って書いてあって…エエッ?(笑)

 あと、ジェーニャが常にスマホを手から離さない姿もイイわ(笑)
彼女の相手との関係は、対面するリアルな相手じゃなくて、このツールを介してのバーチャルな相手で、そんな相手としか信頼を築けない。そんな社会が来てるんだよと、暗示してるような。深読み過ぎかな(笑)

で、ファーストシーンとラストシーン。これが、スゴイよね♡
アレクセイが投げた、赤と白の縞模様のリボンが、枯れ木に引っかかったまま、揺れている風景。アレクセイが子供らしくちゃんと生きて生活してた証し、みたいに。
Mayumiさんの気付いた、アレクセイ探しのポスターの赤い縁取り。言われて初めて気がつきました。スゴイ!
ホント、何とも、美しく、恐ろしく、堪能できた、とっても好きな映画でした。
  • 中浜 恵子
  • 2018/11/10 11:12 PM
慶子さん、コメントありがとうございます。
この夫妻が本当に共感のできない人たちで、また妻の母親も孤立した人物でしたね。その中でアレクサイの流す涙が心に沁みました。
ボランティアの無償の行動に引き換え、自分たちの将来のために息子を捜す夫妻の浅ましさも実感して嫌悪感ばかり起きました。ジェーニャが常にスマホを持っているのはそういう意味だったのかもしれませんね。
元夫婦の互いの心にはこれからも誰かを愛するということができないのではないかと思うと絶望にも包まれました。まさに「愛の不在」ですね。
この監督も映画は本当に心にずしんおもりを落とすかのようです。
  • ミス・マープル
  • 2018/11/12 5:53 PM
恵子さんの間違いです。ごめんなさい<(_ _)>
  • ミス・マープル
  • 2018/11/12 5:54 PM
ホント、「愛の不在」ですね!
アレクセイは、映画の中だけじゃないですよね。
新聞の中で、アレクセイと同じ涙を流してる子たちの事件を見つけるたびに、怒りと無力感に居たたまれないです。
ちょっと「万引き家族」の女の子を思いだしました…
  • 中浜 恵子
  • 2018/11/13 12:49 AM
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