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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:洋画
出典:IMDb
「ROMA/ローマ」
原題:Roma
監督:アルフォンソ・キュアロン
2018年 アメリカ=メキシコ映画 135分
キャスト:ヤリッツァ・アパリシオ
マリーナ・デ・ダビラ
マルコ・グラフ
ダニエラ・デメサ
1970年代のメキシコシティのある中流家庭で、
クレオはアデラと家政婦として働いている。子供たちの
世話と家事に忙しい日々を送っていたが、アデラの恋人の
友人フェルミンと関係を持ち、妊娠してしまうのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆ モノクロ映像と人の声も含め様々な
音が交錯して、心に中にするりと入り込んできます。
喪失の共有
映画内でメキシコシティ五輪のポスターが映り、1971年
の新年を祝うシーンや街で大規模なデモが繰り広げられて
いるのを見て、当時の状況を調べてみました。
軍事独裁政権が数多く生まれていたラテンアメリカの中で
「メキシコの奇跡」と呼ばれた高度経済成長を遂げ、
1968年には近代国家の象徴ともされるメキシコシティ五輪が
開催されていたのです。しかし国内では経済格差が広がり、
アメリカの自由に比べて制約が多いことから、学生、知識人の
中から反政府運動機運が高まり、数々のデモが起きていました。
五輪については、1964年が東京、1972年がミュンヘンと
いう時代を考えると、かなり昔のように、いや本当に一昔前の
ことなのかと思ってしまいます。
出典:IMDb
クレオとアデラが家政婦として働く医師アントニオの家は
妻ソフィとその母、そして4人の子供が暮らしているのですが、
この子供たちがとても騒々しいし、家の中の散らかり具合は
半端ではありません。いつもどこかで喧嘩をし、泣き、大騒ぎを
しているみたい。
出典:IMDb
冒頭にクレオと一番下の息子が「死んだふり」をする姿があり、
この会話で一気に映画の中へ吸い込まれます。今度この手を
使ってみよう。
「できない。死んでるもん」
そしてこの家の玄関通路はとても狭く、ギャラクシーという
大型車はすりすり通れる幅なのです。そこを通る時、アントニオは、
何度も切り返し、コツっと当たるとバックして入れ直します。
一方のソフィはというと、ガー、バリバリ、ザザザーとダイナミック
にこすりつけながら侵入するのです。2人の性格の違いが表れて
いますね。
そのアントニオは仕事でケベックへ行ったきり戻らず、クレオは
フェルミンという男と関係を持ち、妊娠し、それを告げると、
男は姿を消すのです。この時、男性の無責任さを露骨に見せつけ、
それに「オヨヨ」
と耐えるだけではいられない女性の姿を映し出します。
子供にも会いに来ない、生活費も送らない男。
出典:IMDb
出典:IMDb
2度と会いに来るなと言い放つ男。
多くの困難に立ち向かい、それでも前に進んでいくのは、
メキシコという国がこの後起こる苦難の時代も乗り越えて
いったことを象徴しているのかもしれません。
1971年の「コーパスクリスティの虐殺」も映画内に映し
出され、無関係な市民が銃撃で命を落とす姿が見られます。
そこで明らかに息をしていない男性を抱えて助けを求める
女性の泣き声が虚しく長い時間聞こえるのです。
そして悲しい出来事がクレオに起き、ソフィもすべて受け入れた時、
その喪失感が二人の心を強く結びつけ、ひいては、本当の意味
での家族として、これから生きていくのだと実感します。
このシーンはやはり涙が出ました。彼女たちの気持ちが手に
取るようにわかるのです。
鳥の声、犬の鳴き声、水の流れる音、車のエンジン音、浜辺に
寄せては返す波の音、パレードの音楽、それらと共に幾度と
なく空を横切る飛行機が、これから切り開いていく人生の
大きさを物語っているようにも思えます。
監督は「ゼロ・グラヴィティ」(2013)の
アルフォンソ・キュアロン。
この映画のどこにコンピューターが使われているのかわかりません。
とにかくすごい映画でした。