1987.ある闘いの真実

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JUGEMテーマ:韓国映画全般

 

1987

出典:IMDb

 

「1987.ある闘いの真実」

原題:1987:When the Day Comes

監督:チャン・ジュナン

2017年 韓国映画 129分

キャスト:キム・ユンソク

     ユ・ヘジン

     キム・テリ

     ソル・ギョング

     カン・ドンウォン

 

軍事独裁政権化の1987年、韓国。ソウル大学の

学生が警察の取り調べ中に死亡する。チェ検事は上司の

指示に背き、慣例通り検死解剖を命じると、死因が拷問

によるものだったと判明するのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆半 どうしてこんな映画を自国で

作れるのだろうか。ラストは涙が止まりませんでした。


真実を求める声ははやがて沸点に達する


昨年見た「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2017)

が1980年の光州事件を一人のタクシー運転手の視点で

描いていたのに対し、「1987.ある闘いの真実」は、

その後続いた全斗煥大統領による軍事独裁政権への市民全体

の視点で描いています。それは学生であり、検事であり、

新聞記者であり、神父であり、看守であり、被害者家族でありと、

本当に多くの視点で映し出されていくのです。
翌年にソウル五輪を控えた1987年。漢江の奇跡と呼ばれる

ほどの経済成長を遂げていた韓国は、国内ではレーガン政権の

支持を得た全斗煥大統領が、北朝鮮の脅威を煽り、強圧的な

軍事独裁政権を行っていたのです。冒頭にあるように南営洞

では、多くの人々が「北のスパイ」容疑をかけられ、数々の

拷問を受けていました。鼻歌を歌いながら無実の人々を水攻め

にし、電気ショックを与え、椅子をけり倒す。この場所が

映画内で映るたびに、遠くから悲鳴やうめき声が聞こえてくる

のです。
そして一人の学生が「心臓発作」で死亡します。明らかに

「何かがあった」はずだけれど、そこは目をつぶって

「即火葬せよ」と言われれば指示に従うはず。ところが、

公安部長のチェ検事は「解剖してから火葬するのが慣例」と

突っぱねるんですね。

 

1987

出典:IMDb

 

いろいろな脅しやわいろにも目もくれず、「検死」を主張

すると、その検死自体にも邪魔が入るし、家族は直接遺体に

面会することすらできないという事実を知ります。そこで、

さあ、彼が...。

 

1987

出典:IMDb

 

この役は「お嬢さん」(2017)のハ・ジョンウなんですが、

そこそこ頑張った後にその情報を新聞記者に渡して、職場を

去ります。では新聞が当時正確なことを報道していたかというと、

実は「報道指針」という政府が出したものに従って報道しており、

政権に都合の悪いことは書くことは許されなかったのです。

映画の中盤にそれを破ったことで、警官が押し掛け、社内を破壊

していくシーンがあります。こんなことが許されていた時代が

ほんの30年前にあったのですね。

 

1987
出典:IMDb

 

さらに警察内でも治安部と対共部との対立があり、拷問が

バレると警官が警官を逮捕していき拷問するという、極めて

おかしな状況を目にします。「正義」は存在しないのかと

思ってしまう。いや「正義」の定義はどこで決めるかが問題

になってくるか。

 

1987
出典:IMDb

 

一方、おなじみのユ・ヘジン演じる看守ビョンヨンは、実は

手配中のキム・ジョンナムへ獄中の情報を提供する任務を

背負っています。「タクシー運転手」では広州のタクシー運転手

の一人で、あり得ないようなカーチェイスを繰り広げていた

けれど、今回は、人のよさそうな顔つきで、大変重要な役割を

果たしていきます。そしてヨニが思いがけずデモに巻き込まれた

時に、その身を救ってくれた延世大学生、イニョル役は

カン・ドンウォン。すっごくイケメンだからすぐにわかっちゃう。

そして彼がこの役を自ら演じることを望んで取り組んだことを

知ると、勇気ある行為にまた惚れ直してしまいます。映画製作当時

朴槿恵政権であり、表現に対する弾圧が強かったため、極秘裏に

撮影が進められたそうですが、その時期に決して潤沢と言えない

資金でこのような映画を作れたことは本当に価値のあることだと

思います。

またイニョルが主催する漫画サークルで「1980年の光州事件」

のビデオが流されます。あれは、「タクシー運転手」でドイツ人

記者が持ち出したあの映像なんですね。監督自身が高校3年生の

時にそのビデオを見て、事件について初めて知りとても驚いたそうです。
綺麗ごとだらけの歴史映画ではなく、国の闇の部分に光を当てて、

多くの人々に知らせることこそが映画や出版物の役割ではないかと

実感します。コミックが原作の映画やアイドル主演の映画で
興行収入を上げることだけを考えていたら、映画の質は下がる一方

だよなあ。
独裁打倒、護憲撤廃、と強く叫ぶデモの人波が、どんどん膨れ上がる

のは、それだけ多くの人々が怒り、嘆き、悲しみ、国を愛している

ことの表れであり、これをきっかけに、韓国に民主化宣言が発表
されたことは、大変意義のある行為だったと思います。
ラスト付近からエンドロールにかけては涙が止まらなかったです。

 

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コメント
私も、涙が止まらず、声が出そうになりました。
 監督の、今、描かなきゃならない!という毅然とした姿勢、自分の国のダークな歴史の一部をちゃんと未来の国民に伝えなきゃならない、という強い信念。
守るべき自由を、政治的真実を伝えることの大切さ、その為に命を賭して声を上げ闘った若い人たちがいたことを伝えなければ、という確固とした姿勢。
それに気づいて、驚き、こころ揺さぶられ、今度は、自分の無力感に泣きたくなってしまいました。
 自分が試されているなあ、と辛く、私に、それができるだろうか。とか。
権力者・為政者によって隠ぺいされた真実を求める運動や、自由や民主化や差別反対を求める運動、レジスタンスを描いた映画を観ると、急に何も言えなくなるのが、情けないです。
真実と尊い命のために闘う学生や市民に感動したとか、民主化の礎になって良かったとか、闘いに命をかけた人たちの家族の悲しみに心打たれたとか、理不尽な政府に対しての憤りとか、そんなのはあまりにも軽くって、言っただけでこの映画の言わんとするところが、それで終わってしまいそうで躊躇してしまいます。  
今の暮らしがもし心地よいとしたら、それは歴史の中で、真実や自由のために闘った人たちがいたこと。
それを、決して忘れてはいけないと思う。  
また、たとえ自らの立場や命を賭しても声を上げなければならない時が来たら、子どもたちや未来の普通の家族のために、彼らの姿を思い出さなければいけないのだなと思いました。

 去年のマイbestの5位なんですけど、
 『タクシー運転手〜』よりずっと人物の背景が深く抉られていたし、ストーリーの展開もスリリングで、何より映像の美しさと哀しさが、この残酷な事実に一層の重みを与えていたと思いました。
 拷問死した大学生の遺灰を凍った雪の川に流すシーンは壮絶な美しさでした。
 ラストのヨニの後ろ姿のロングも見事な力強さでしたね。
  それにつけても、一体、この国と、我が国のトップは・・・って、言っちゃ身も蓋もないかな(笑)

 
 
  • 中浜 恵子
  • 2019/02/19 12:16 AM
恵子さん、コメントありがとうございます。光州事件すら知らない世代が韓国に増えていて、それを積極的に知らせようとする映画関係者の存在は尊いと思います。
遺灰を凍った川に流すとき、その遺灰が氷の上に積もってしまい、父親が水の中に入っていってむせぶように声を絞り出すシーンも胸が痛かった。まるで虫けらのように殺されたのに、家族は何も抵抗ができない。
それは日本で特高によって拷問死した多くの人々を思い出さずにはいられません。
まずこのような映画を自国で作ることの重要さを感じないといけないと思います。今自分の国で作ることができていないじゃないかと思うと本当に悲しくなって、せっかく勝ち取った基本的人権すら捨てようとしているようにも思えるんです。
歴史の綺麗な部分だけ切り取って教えていたら、自国に「負」の歴史が存在しなかったと信じて育ってしまうんですよね。
それは本当に怖いことで、非国民、売国奴、在日などと誹謗中傷されようとも、事実を正確に伝えていくべきだと思います。その事実をどう解釈するかは個人の見解にまかせるとしても、事実を知らなかったら考えることすらできなくて、絶望的な状況に向かうだけだと思うんです。
とりとめもない返信になりました。わたしも「タクシー運転手」よりもこの映画の方が深い意味を持っていると感じました。エンドロールは涙なしには見られなかったです。
  • ミス・マープル
  • 2019/02/19 2:15 PM
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