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    判決、ふたつのの希望

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    JUGEMテーマ:洋画

     

    判決、ふたつの希望

    出典:IMDb

     

    「判決、ふたつの希望」

    原題:L'insulte

    監督:ジアド・ドゥエイリ

    2017年 レバノン=フランス映画 113分

    キャスト:アデル・カラム

         カメル・エル・バシャ

         リタ・ハーエク

         クリスティーン・シュウェイリー

     

     

    判決、ふたつの希望

    出典:IMDb

     

    レバノンの首都ベイルートで自動車修理工場を営む

    トニーは身重の妻シリーンと暮らしていたが、ある日

    パレスチナ人の工事現場監督ヤーセルといさかいを

    起こしてしまう。謝罪を求めるトニーと彼が発した一言が
    許しがたいヤーセルは、法廷で争うことになってしまう。


    <お勧め星>☆☆☆☆ 禍根はいつかは消えることがあるの

    でしょうか。


    言論の自由と責任


    映画の冒頭に主人公のトニーはレバノン軍団の集会で演説者

    に向けて熱烈な支持表明を行っています。このレバノン軍団

    はキリスト教マロン派の右派政党で、トニーは仕事場でも

    演説を流し続けているほどの熱狂的な支持者らしい。この理由

    は映画の終盤に法廷で明らかにされてしまうのですが、この

    ように自分の過去の経験という理由は、そこにある怒りを

    ある程度は他者に説明する要素を持つかもしれません。
    しかし漠然と「強さ」を求めたり「幻想」のようなものに

    かられているとしたら、あまりに愚かだとしか思えません。
    そしてトニーの家のバルコニーから流れた水が、下で工事を

    しているヤーセルにかかってしまうのです。これは明らかに

    嫌がらせっぽい。違法建築を修理中の現場監督ヤーセルは

    「といを修理した方がいい」
    とトニーに言いに行きますが、トニーはけんもほろろに

    追い払ってしまいます。するとヤーセルは無許可でといを設置し、

    それをトニーが目の前でぶち壊すという行動に出るのです。

    「クズ野郎」
    ヤーセルが発したこの言葉にトニーは激怒し、謝罪を求める

    けれど、ヤーセルもなかなか謝罪をしません。なんとか所長と

    共にトニーの工場に謝罪に行くと、例の演説が大音量で流れて

    いるわけです。その上

    「シャロンに抹殺されてればな!」

    とトニーに言われたヤーセルは、遂に彼を突き飛ばしけがを

    させてしまうのです。子供の喧嘩がおおごとになった感じです。

    (ここで出て来たシャロンはイスラエルの15代首相で最も

    パレスチナに強硬姿勢を貫いたタカ派の政治家でした。)
    結局この喧嘩が法廷に持ち込まれ、互いに代理人なしの裁判と

    なります。不思議なことに行動としての暴力とその暴力を呼ぶ

    ような暴言が同等に扱われていることです。裁判官は両者に

    「何を言ったか」を尋ねるのですが、どちらも口にしません。

    おそらく何を言ったか想像がつくのでしょう。さらにトニーが

    悪態をついたこともあってか、ヤーセルは無罪になるのです。

    ずいぶん前に新幹線の自由席を巡って喧嘩になり、裁判に持ち

    込まれた事件がありました。確かカバンで席を確保していたのに、

    それをどかして座った相手と殴り合いになったんじゃなかった

    かしら。結局先に手を出した方が有罪になったと記憶しています。

    確保しておいて席を取られるのはすごく頭に来るけれど、よくも

    まあカバンをどかしてまで座った人がいるもんだと思ったものです。
    映画内の裁判の判決後、トニーが仕事場で倒れ、それを起こそうと

    したシリーンが切迫早産してしまったことで、彼はさらに怒りを

    募らせるわけです。そこでキリスト教右派の大物弁護士ワジュディー

    に相談すると無料で裁判を引き受けると言います。この時点で

    子供の喧嘩レベルが政治的なものへと変わりつつあることに気づく

    のです。

     

    判決、ふたつの希望

    出典:IMDb

     

    一方のヤーセルには、弱者救済を目指しているナディーンという

    女性弁護士がつきます。彼女がヤーセルの住む小汚い地域に

    ハイヒールで何となく嫌そうに入っていく姿を見ると、目標は

    高尚であるけれど、根本的には差別している心があるのだと

    感じます。そしてこの弁護士同士が実の親娘というのはちょっと

    余分な設定かしら。
    ちょっとした口喧嘩が民族、宗教、過去の戦争などで対立する

    国民の争いへと広がっていくのは本当にあっという間で、例の

    「シャロンに抹殺されてればな!」

    も「言論の自由」と言い切られてしまうのです。
    あとで監督の言葉を読みましたが、監督自身もどんなヘイトな

    内容も発信する自由はあると思っているようで、そこに「責任」を

    持つことが大前提だと言っています。逆に言うと責任さえ持てば
    何を言ってもいいのでしょうか。これは何か言うとすぐに殺される

    ことすらあった国で育った監督自身の経験からの独自の考えだと

    思います。
    レバノンという国が何度も中東戦争に巻き込まれ、PLO

    (パレスチナ解放戦線)に自治政府並みの特権を与える寛容な国で

    あったため、レバノンの主流であるキリスト教マロン派と

    イスラム教スンニ派、シーア派の民兵が入り乱れての内戦へと発展

    していきました。多くの犠牲を払ったレバノン人にとってなぜ自国

    レバノンで「パレスチナの大義のために」自国民が我慢をしないと

    いけないのかと思うのもある部分では理解できます。

    一方のパレスチナ人もレバノンで虐殺された過去を持ち、現在も

    何の保障もなく不能就労扱いながら多くの仕事をしているのになぜ

    憎まれなければならないのか。これまで積み重ねてきたレバノンと

    パレスチナの負の歴史が、この1つの裁判に集約されているかのように

    思われます。

     

    判決、ふたつの希望
    出典:IMDb

     

    トニーとヤーセルの駐車した車の位置が真逆であるのは、彼ら

    2人の心をそのまま表していますが、おんぼろでエンジンが

    かからないヤーセルの車を見て、先に発車したトニーが戻ってきて、

    修理をしてくれます。そんな小さなことでもつれあった心の糸は

    ほどかれていくのです。
    またヤーセルだけでなくトニーにも負の歴史を経験していたことを

    知ると、敗北は負の歴史を背負うことだけれど、歴史を踏まえて進む

    ことが「新たな時代」を意味するのだと実感しました。
    ワジュディー弁護士は過去に遡って見つめなおそうと言い、

    ナディーン弁護士は未来を見ようと言いました。その両方が正しく、

    それがラストのかつてのどかだった時と変わらない静かで美しい町を
    取り戻しているトニーの故郷ダムールの景色につながっていた気が

    します。

     

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      単一民族の国にいて良かったよ。
      • 或る日の出来事
      • 2019/03/15 9:26 AM

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