スポンサーサイト
一定期間更新がないため広告を表示しています
- 2023.01.12 Thursday
- -
- -
- -
- -
- by スポンサードリンク
JUGEMテーマ:洋画
出典:IMDb
「ヘル・フロント 地獄の最前線」
原題:Journey's End
監督:ソウル・ディブ
2017年 イギリス映画 108分
キャスト:サム・クラフリン
エイサ・バターフィールド
トビー・ジョーンズ
トム・スターリッジ
スティーブン・グレアム
1918年春、フランス北部でドイツ軍と睨み合う
イギリス軍スタンホープ大尉率いる部隊へローリー少尉
が赴任する。ローリーは旧知のスタンホープとの再会を
喜ぶが、戦場はあまりに過酷なものだった。
<お勧め星>☆☆☆半 戦争の現場での悲惨な状況を若い
将校の視線で描いています。
攻撃計画と夕食の献立
第二次世界大戦前やその戦争中の状況を描いた映画は数多く
見てきましたが、第一世界大戦についての映画はほとんど
見たことがありません。1914年7月28日から
1918年11月11日にかけて連合国(フランス、イギリス、
ロシア、日本、イタリア、アメリカ、ベルギー等)と
中央同盟国(ドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマン等)
が交戦したもので2000万人近い犠牲者を出した戦争です。
1930年映画「西部戦線異常なし」ははるか昔テレビの
ロードショーで見た記憶があり、そこでのリアルな戦場の
描き方にただただ恐怖を覚えただけでした。
「大いなる幻影」(1937)
「武器よさらば」(1957)
「レッド・バロン」(2008)は題名のみ知っているだけで
未見です。
この映画は第一次世界大戦末期、1918年3月のドイツと
膠着状態にあるイギリス軍の姿を描いています。鍋の蓋のような
粗末なヘルメットをかぶり、ぬかるんだ塹壕に隠れている
イギリス兵はいつ侵攻してくるかわからないドイツ軍を
「ただ待っていた」のです。この「待つ」という行為がいかに
人間の心をむしばんでいくか、それはアルコールに溺れた
スタンホープ大尉に始まり、かすかな物音に体を震わす兵士にまで
現れています。夜昼の区別なく緊張を強いられ、帰還命令が
出されることはなく、怪我をして担架に乗った時にようやく
故郷に戻れるという絶望的な状況は、戦争の違う側面を映して
いるようにも思えるのです。
出典:IMDb
そしてそのスタンホープ大尉率いる部隊にラーリー少尉が
志願してやって来ます。ここはセリフでしか語られませんが、
ラーリーは大佐の甥であり、スタンホープは彼の家に仕える
身の上で、彼の姉マーガレットと恋仲だったようなのです。昔は
3人でよく遊んだと語るローリーの言葉を遮っていく
スタンホープは、今の身の上を知られたくないらしい。派手に
戦果をあげて昇進した過去とは違い、今は塹壕にこもり酒浸りで
指示を下すだけの日々を送っているからです。
出典:IMDb
それでも副官のオズボーン中尉が彼を何とか支えていたのですが、
上層部の指示でドイツ軍に急襲をかけ捕虜を連れ去り、侵攻する
情報を聞き出す任務が下されます。それに参加させられるのは
将校2名と兵士10名。急襲するために必要な準備期間より、
その結果の報告をする夕食会の日程が優先されるというあまりに
非情な命令です。
これが戦争なのです。戦地の前線で戦う兵士はコマの1つに過ぎず、
それを現場で指揮する者は、遠く離れた安全な場所で好物を
食べながら作戦を練る上層部の指示に従うしかないのです。
また急襲することは、明らかにドイツ軍の反撃を呼ぶことは間違い
ないのに、援軍、武器の補強はなく、撤退もないと言われる。
つまりここで死ぬことが決定したことにほかなりません。
スタンホープに会いたくて入隊したラーリーも少しずつ現場の
過酷さを実感していき、さらには急襲作戦のメンバーになった
ことで、初めて「戦争」「死」を体感することになります。
作戦は成功したと言えるのでしょう。しかし聞き出せた情報と
失った命が同じ重さであるとはどうしても思えないのです。
出典:IMDb
その後予想通り起こる戦闘風景は、ぬかるんだ塹壕に頭を隠して
いても、銃弾がヒュッヒュッと容赦なく兵士を襲い、爆発が起き、
仲間が次々と倒れていきます。そういえばこの塹壕も、フランス兵の
遺体をそのまま埋めて作り上げたと序盤に語っていたことを
思い出しました。
彼らは何のために戦うのか、領土のため、民族のため、信仰のため、
ひいては自国への愛国心のため。しかしそのどれをとっても
「戦争」を正当化する理由は1つもなく、いとも簡単に口にすべき
言葉ではないと心から思うのです。