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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:洋画
出典:IMDb
「僕たちは希望という名の列車に乗った」
原題:Das Schweigende Klassenzimmer
監督:ラース・クラウメ
2018年 ドイツ映画 111分 PG12
キャスト:レオナルド・シャイヒャー
トム・クラメンツ
レナ・クレンク
ヨナス・ダスラー
イザイア・ミカルスキ
1956年、東ドイツの高校生テオとクルトは、
西ドイツの映画館でハンガリーの民衆蜂起のニュース
映像を目にする。彼らはそれをクラスメイトに話し、
その暴動で多くの死者が出たことを知って、授業中
2分間の黙とうを決行する。しかしそれは国家への
反逆行為とみなされ、大問題へと発展していくのだった。
<お勧め星>☆☆☆☆半 若者が息苦しさを感じ、そこ
から苦悩しながら抜け出す道を考え出す希望のある
ラストでした。
自分で決めろ
※ネタバレしているかもしれません
監督は「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」
(2015)のラース・クラウメ。1950年代後半の
西ドイツでナチスの戦犯アイヒマンを追うユダヤ人の
バウアー検事長の姿を描いた映画です。そこには捜査機関、
司法機関、そして政権の中枢にナチスの戦犯が存在し続け、
ヒトラーによって作り上げられた「負の歴史」から復興の
光がさしていることに水を差そうとする行為として、バウアーが
あらゆる面で邪魔をされ、裏切られ、私生活までも暴かれて
いく姿が映し出されています。
「ヒトラー」という悪魔とそれに利用されたお人よしの
ドイツ国民という構図は、結局は西ドイツの再ナチ化を
進ませていったと言われ、それをバウアーが阻止しようと
奔走するしかなかったのです。
(『ヒトラーを支持したドイツ国民』ロバート・ジェラテリーより)
この映画は東ドイツの同時期を描いており、東側から見る
西ドイツの姿を垣間見ることができます。もちろん情報はねつ造
されており、真実は一切報道されません。そこでテオとクルトが
映画館で見たニュース映像に大変驚くわけです。自分たちの町には
ソ連兵が駐留していて「ナチスめ!」と明らかに東ドイツの人々を
憎んでいる。この閉塞感はなんだろう。
ハンガリーでの民衆蜂起映像を見た二人はクラスメイトにそれを話し、
唯一西側のラジオが聞ける場所でその先のニュースを聞くと、
かなりの数の民衆が亡くなったことを知るのです。そこには有名な
サッカー選手もいる。そこでクルトが提案し授業開始後2分間
黙とうをすることに「多数決」で決めます。黙とうといってもただ
黙っていただけで、エリックの発した言葉が無かったら、それほど
問題にならなかったかもしれないし、また丸く収めようとした校長を
無視して「密告」する教員がいなければ、大問題になったはずも
ないのです。彼らにとって、本当に悲しんで黙とうしたというより、
少しだけ「反抗」したにすぎなかったはず。
出典:youtube
ところが国家教育局の役人が登場し、一人ずつ尋問されていきます。
この女性がまことに怖い。体も大きければ態度も声もでかいのです。
役人の知りたいのは「首謀者は誰か」で、一週間以内に首謀者を
知らせるように言って帰ります。
出典:IMDb
ハンガリーの民衆蜂起は東ドイツにとっては「反体制行為」で
あり絶対に見過ごせないことだということに生徒たちが気づいた
時どうするか。そこでも彼らは多数決で「自然にそうなった」と
口をそろえて言うことにします。しかしそんな甘いことで済ます
ような役人ではありません。なんせ東ドイツには秘密警察
シュタージが存在し、生徒たちの身辺の情報は全て把握していた
のです。もちろん生徒自身が知らないことまでもです。もう一方で
「卒業」を切り札に半ば脅迫のように真相を話すように迫ります。
出典:IMDb
典型的な労働者階級の家庭であるテオは、父親の過酷な労働状況を
知っているし、父が市の名士であるクルトは、母方の祖父がナチスの
戦犯だったことを知っています。さらにはエリックは、ドイツ共産党軍
として戦死した父を尊敬し、聖職者と再婚した母を避けています。
これらの事実の裏に隠された事柄を、まことにいやらしく役人が
暴いていくのです。それは絶対に知られたくなかった過去を誰もが
背負っていたことを示しているし、今や権力をふるっている役人たち
にも必ずやそれらの事柄が存在していたはずなのです。なのにだよ!
出典:IMDb
終盤には両隣の女性が涙をしきりにぬぐっていましたが、私は全く
泣けませんでした。むしろ若くてまっすぐに育ったテオたちに必死で
パワーを送り続けました。どうやったかって?
それはちょっと言われへん。
親世代は決して変化を受け入れないけれど、若い世代は、過去を
受け止め新しい道を進む力を持っていると思います。それを後押し
するのが愛情なのだと実感しました。
この後西側への人々の流出が激増し、ベルリンの壁ができ、そして
その壁が崩壊し、ドイツが統一されたのが1989年です。それから
30年経って今の状況はどうなのでしょうか。旧東ドイツの人々の間では
「オスタルギー」という懐古趣味が幅を利かせているとのこと。そこに
移民問題も絡み先行きに不安を感じざるをえません。