スポンサーサイト
一定期間更新がないため広告を表示しています
- 2023.01.12 Thursday
- -
- -
- -
- -
- by スポンサードリンク
JUGEMテーマ:サスペンス映画全般
出典:IMDb
「ダマスカス」
原題:Damascus Time
監督:エイブラハム・ハタミキア
2018年 イラン映画 113分
キャスト:ババク・ハミディアン
ハジ・ヘジャジファー
リース・モフティ
ピエール・ダハー
カレッド・アルサイド
2011年、ISISに包囲されたシリアのパルミラから
難民を避難させるため、イラン人パイロット、アリと
父親ユネスが現地へ向かう。無事に離陸も成功したものの、
難民の中に潜んでいたISIS戦闘員の脅迫によって、彼らの
飛行機はパルミラに引き返すことになるのだった。
<お勧め星>☆☆☆半 ジャケットのようなB級アクション
ではなくまじめに丁寧に作られた映画です。
殉教の意味
ISIS「イスラム国」がシリア内戦の混乱に乗じてシリア、
イラクを2011年に包囲し、世界制覇を目指すことを掲げ、
次々に支配地域を広げたいったことは、毎日のように報道
されるニュース等で何度も見たものです。黒ずくめの戦闘員が
武器を抱え行進していく映像は明らかにISISの宣伝映画に
すぎないと気づくのに結構時間がかかりました。それまでに
外国人にとどまらず、日本人ジャーナリトなどがISISに
拘束され、斬首されたことも記憶に新しいです。その映像が
ネットで全世界に広まり、それはISISへの恐怖心を植え付ける
のに大きな力を持ちました。しかし実際にはかなり演出されて
いて、戦闘員の中に映像関係に詳しい者が存在したことも後に
わかっています。その辺りもこの映画では少しだけ描かれて
いるのです。
まず、この映画はイラン製作であるため、ISISに包囲された
地域の人々に最も早く空から物資を投下したのイランだったと
最初に語られます。欧米視線での映画しか見たことがなかった
ので、この話は初めて耳にしました。その後もISISに対する
視点は当然ながらイランのそれであり、途中援護に来るのが
ロシア軍だったり、そもそもアリたちが飛び立ち戻ってくる
空港がダマスカス空港であること(シリア)にも驚くのです。
欧米視点の映画ならISIS+シリア軍、ロシア軍は敵になるはず
ですよね。ISISに対しては欧米と協調して戦うという話でしたが、
そのつながり方があまりに複雑で何度読んでも理解できません
でした。
ダマスカス空港からISISに包囲されたパルミラに向かい、そこに
いる難民を避難させるため飛行機を操縦するために、ユネスと
アリ父子が向かいます。このユネスは既にパイロットを引退して
いるのですが、あまりに危険な任務であるため、息子を解任し、
自分で行こうとするわけです。このユネスの身の上を聞くと、
イラン・イラク戦争、ボスニア紛争、イラク戦争、レバノン内戦
と常に戦争に参加しており、アリは家での父の存在をほとんど
見たことがなかったらしい。「戦争」が日常に存在する国に
生まれ、常に危険と隣り合わせでいることはどれほどの苦痛を
人間に与えるのでしょうか。それは当人だけでなく、家族へも
大きな影響を及ぼします。
パルミラから無事に難民を避難させ、飛行機が離陸したものの、
その中には囚人や戦闘員(どこかの部族の長らしい)がおり、
その戦闘員が突然襲ってきます。パルミラから離陸するだけ
でも派手な爆発や銃撃シーンがあったのに、それはあくまでも
プロローグにすぎません。
出典:IMDb
それでもこの戦闘員は、本当の意味でのISISではないようで、
コーランへの誓いを守ろうとしますが、パルミラで待っていた
本当のISISは非情です。「取引など裏切り」と言い放ちパッと
部族長の首を撥ねるのです。
出典:IMDb
コロコロ転がる頭は偽物とわかっていてもきっとこういう行為が
日常茶飯事だったんだろうと思ってしまう。その後は何度も見た
オレンジの囚人服に着替えさせられたヨネスやアリたちが映ります。
ここで少年兵を使い大きななたを持たせて宣伝用の映像を撮影
するのです。少年兵はどこから来たんだろうか。
これを見るとアフリカでの宗教や部族間の争いに利用される
少年兵や、南米で麻薬取引に利用される少年少女を思い浮かべて
しまいます。
「灼熱の魂」(2003)の1+1=1というあり得ない結果を
生み出すことも必ず起きるはずでしょう。
出典:IMDb
航空機が火を噴くシーンなどはかなり安っぽく感じますが、
ストーリーはしっかり作られていて、親子の愛情も感じ取れます。
そしてラストには必ずその選択しかないと気づくはずです。
美しかったパルミラ遺跡はいつかは元の姿を取り戻すのでしょうか。