みかんの丘

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JUGEMテーマ:洋画

 

みかんの丘

出典:IMDb

 

「みかんの丘」

原題:Mandariinid/Tangerines

監督:サザ・ウルシャゼ

2013年 ロシア=グルジア=エストニア映画 

87分

キャスト:レンピット・ウルフサック

     エルモ・ヌガネン

     ギオルギ・ナカシゼ

     ミヘイル・メスヒ

 

内戦下のジョージアに暮らすエストニア人のイヴォは

ミカン箱を作り、隣家のマルゴスはミカンを栽培して

いる。互いの家族は本国に帰り、どちらも一人暮らし

だったが、ある時チェチェン人とジョージア人の戦闘で

けがを負った二人の兵士の世話をすることになる。


<お勧め星>☆☆☆☆ 絵画のように美しい景色と素朴な

人たちの姿に最も似つかわしくない戦争というものが

同時に描かれています。


殺す権利を誰が与えた


1991年にソビエト連邦が崩壊し、ジョージア

(当時グルジア)は独立しますが、西部に住むアブハズ人が

1992年に独立宣言をしたため紛争が始まったのです。

この映画は1994年に停戦合意が成立するまでの混乱した

時期を描いており、登場する人物が少ないながらその背景が

複雑です。

 

みかんの丘

出典:IMDb


アブハジアに暮らすエストニアからの移民、イヴォとマルゴス。

アブハジアを支持するチェチェン人傭兵アハメド、アブハジアを

ジョージアとして教え込まれているジョージア人兵士ニカ、

その他に「兄弟」と呼びつつイヴォたちの様子をのぞきに来る

アブハジア人兵士、そしてチェチェンの背後にいるロシア兵と

いう構図です。
この紛争の大義は「領土を守る」ということであるものの、

そもそも戦争とは無縁だった元俳優のジョージア人や生活費の

ために傭兵になったチェチェン人の存在を考えると、自分と密接に

関係のあることで戦闘に加わったとはとても思えないのです。

 

みかんの丘
出典:IMDb

 

ミカンの木箱を作るため、木にカンナをかけているイヴォの

もとにやって来た礼儀知らずの兵士2人は、食糧をもらうと、

ちゃんとお礼を言って去っていきます。何もそこにある食べ物を

全部略奪するというわけではありません。イヴォの親切な行為に

感謝して去るほどなのです。

ところが突然外から銃撃と爆発音が聞こえ、先ほどの兵士たちと

ジョージア人兵士が衝突をします。イヴォの家の隣に住み
同じように家族をエストニアに帰したマルゴスは、たわわに

実ったミカンを摘む作業をする人手を求めているものの援護は

ありません。互いに静かに自分たちに家で自分たちの仕事をして

いるだけなのに周りだけが騒々しいのです。
そして例の戦闘でたまたまチェチェン人アハメドとジョージア人

ニカが生き残ります。意識のあるアハメドは鼻息が荒いんですよ。

「仲間の仇を必ず撃つ」
しかしイヴォはただ静かに、そして強く

「この家で殺しは許さない」

と言い切ります。そうは言っても敵味方が1軒の家にいるのですし、

さらにイヴォにとってもジョージア人を匿っていることは、

自らの身を危険にさらすことを意味します。それでも二人を

同じように介抱し、食事を与え、それぞれが回復していくと、

イヴォに対しては「感謝」の気持ちしかなくなるんですね。この

2人の胸の内が変わっていくのを短い時間に丁寧に描いています。

最初は互いの部屋に鍵をかけ、危険を回避していたイヴォが

「信頼」の意味を込めてその鍵を外します。それでも目を合わせる

ことはなく、目を背けたまま二人は罵り合うんです。

面白いことにイヴォはしょっちゅうお茶を勧めるんです。
まるでイギリス人の「あなた、お茶はいかが?」みたい。
そのお茶を飲むことで、数ミリずつ二人の距離が近づいていく

ような気がします。
「お前のような悪魔からアブハジアを守る」
「ちゃんと歴史を習わなかったのか?学校へ行かなかったのか?」
噛み合うはずもない口論を止めるのは、そこに住んでいるものの、

エストニアという別の国から来たイヴォです。そしていつしか

互いの仲間の死を悼むという極めて人間的な心を抱き始めます。

 

みかんの丘

出典:IMDb

 

人間の心はとても複雑で個人個人がそれぞれ異なった感情を持って

いるはずなのに、「敵」「味方」と2つに分けることによって

いとも簡単に操ることができる生き物に変わってしまうのです。

いやそうなってはいけない。
橙色に光り輝くミカンやその青々と茂った葉をたくわえた木々

などを印象派の絵画のように映しつつ、突然始まる銃撃や空爆は、

あまりに不釣り合いで「戦争が終われば...」のささやかな望みすらも
一瞬で打ち砕くむごいものだと実感します。
イヴォの美しい孫娘マリについて多く語らなかったのは、そこに

何かがあったのでは?と考えてしまうラストでもありました。

 

 

 

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