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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:洋画
出典:IMDb
「ある少年の告白」
原題:Boy Erased
監督:ジョエル・エドガートン
2018年 アメリカ映画 115分
キャスト:ルーカス・ヘッジズ
ニコール・キッドマン
ラッセル・クロウ
ジョエル・エドガートン
アーカンソー州に住む牧師の父マーシャルと
母ナンシーの一人息子ジャレッドは大学入学後、
自分がゲイ出るあることに気づく。そして1本の
電話で息子の状況を知った両親は、彼を同性愛救済
プログラムに参加させるのだったが。
<お勧め星>☆☆☆半 両親の愛情が強く感じられる
ものの、1人の人間としての個性を否定することは
あってはならないと実感します。
自分自身が神
監督は「ザ・ギフト」(2015)で超気色悪く不気味な
男を演じ、監督も務めたジョエル・エドガートン。今作も
監督と矯正プログラムの指導者を演じています。
「ザ・ギフト」のギフト=贈り物
の本当の意味を理解した時の恐怖は今も忘れません。
そして今回最も驚いたのが、アメリカにはLGBTQである人々を
矯正する施設が存在しているということです。様々な活動の
起点となることが多いアメリカにおいて、2014年に
オバマ大統領が矯正治療をやめる声明を発表した後も、
34の州では法律が整備されておらず、プログラムは進められて
いるのです。
ジャレッドの幼い頃のVTRから始まる映画は、彼がいかに両親に
愛され、ごく普通の男の子の夢を抱いていたことが伺えます。
活発に動き、たくさん笑い、好きなスポーツはアメフトとバスケで
将来はバイク乗りになりたいと言う。
出典:IMDb
アーカンソー州の田舎町に育ったジャレッドは、牧師の父
(もう太っちゃって残念なラッセル・クロウ)マーシャルと
専業主婦ナンシー(ニコール・キッドマン)の一人息子で、
スポーツを愛し、一応GFらしき女子もいるのですが、なんか
おかしいのです。おかしいと言えば、この地区は白人しか
おらず、ナンシーは金髪で専業主婦という、かつての
「良きアメリカ」の象徴のように描かれていることです。
出典:IMDb
その話は関係ないので、おいといて、ジャレッドが大学に
入学してから、彼自身がゲイであるという自覚を持つのです。
それはあまりに衝撃的な出来事からだったのですが、その話が
両親の耳に入ると、牧師である父は彼を矯正するため、
サイクス氏が運営する救済プログラムに参加させるのです。
キリスト教福音派の牧師であるマーシャルにとって、自分の
息子が「罪」を冒しているのならば、それを改めなければ
なりません。
出典:IMDb
サイクス役はジョエル・エドガートンで、かなり高圧的で
ありながら、いかにも「正しいことをしている」かのように
話すので、見ている側は不快感が募るばかり。
両親はジャレッドのホルモン異常かと考え、医者に男性ホルモン
の量を図るように依頼もしています。しかしこの医者は
「あなたは健全な若者よ」と諭すのです。どこか病気で投薬で
治るのではないかという親の淡い期待は打ち砕かれます。
ジャレッドが自分に自信を持っていたならば、こんなプログラムに
参加することもなかったのでしょうが、ゲイ=悪と信じている
若者にとって、自分の嗜好が異常で、できれば普通
(何が普通だろう)の若者のように異性に興味を持ち、子供を
授かり、家庭を築くということを目標にしてしまうのは当たり前の
ことなのです。こんな1パターンしかない人生などあり得ないと
気づくのはいつだろうか。
出典:IMDb
プログラムでは多くの規則があり、さらに「男らしい姿」
「男らしいスポーツ」「心の清算」を行うのです。男らしい姿は、
腰に手を当てて足を開いて立つって大笑いなんだけど。
このような型にはまった価値観の押し付けは、幾人かのプログラム
体験者にとっては苦痛でしかないのです。おそらくは全員が
そうだけれど、「できるふりをする」という賢い選択をする若者も
います。あ、思い出しました。ジャレッドの友人の中に
グザヴィエ・ドランがいました。
出典:IMDb
プログラムはいつ終わるのか、どういった結果を待つのか参加者
には知らされず、スタッフに暴言を吐かれたり、罪を認めない者
は聖書で叩くという虐待も行われるのです。
終盤は逃亡を図るジャレッドと彼を救うために施設に急行する
母ナンシー、サイクスを含めスタッフとの攻防が描かれ、これは
どうなるのだろうとハラハラしてしまいます。ナンシーが
「何かが違う」と感じたことは、まさにその通りだったのです。
人間一人一人の個性を無視する行為は、やはり宗教的な戒律に
触れるとしても許されるべきことではないし、罪に問われるような
行為でなければ、個人の嗜好は尊重されるべきだと思います。
ジョエル・エドガートンが「スリー・ビルボード」(2017)
の時同様に繊細でありながら行動的な姿を見せてくれました。