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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:洋画
出典:IMDb
「ベロニカとの記憶」
原題:The Sense od An Ending
監督:リテーシュ・バトラ
2015年 イギリス映画 108分
キャスト:ジム・ブロードベント
シャーロット・ランプリング
ミシェル・ドッガー
ハリエット・ウォルター
中古カメラ店を営むトニーは、元妻マーガレットとの
間にもうけた一人娘スージーの出産を控えている。
そんな彼に学生時代の恋人ベロニカの母が亡くなり、
彼女がトニー宛に日記を遺したことを知る。しかし
遺品はベロニカの手元にあり、彼女はそれを渡そうと
しないのだった。
<お勧め星>☆☆☆ 記憶はいとも簡単に美しく書き
換えられてしまうのだと実感します。
事実は本人のみぞ知る
「めぐり逢わせのお弁当」(2013)の
リテーシュ・バトラ監督の2作目の映画です。あの映画では、
インドのお弁当箱の形状やそれを配達する人たちの存在
など初めて知ることに驚きつつ、誤配されたお弁当から
繋がる初々しい文通そして淡い恋が、カラフルなお弁当の
具材と楽しい音楽と共に描かれていました。
出典:IMDb
今作では、リタイアし、中古カメラ店を営むトニーが主人公です。
彼は弁護士である妻マーガレットと離婚し、悠々自適の生活を送り、
マーガレットや一人娘スージーとも良好な関係を築いている模様。
夫婦は離婚しているし、娘は37歳の出産で最初から
シングルマザーと決めて臨んでいます。日本ではまず離婚した
夫婦が普通の友人でいられることが難しいし、子供と自由に交流
することもなかなかままならない。
出典:IMDb
さらにシングルマザーで出産できる環境、PR会社勤務と言って
いたけれど、産休、育休が取れる環境がうらやましい限りです。
もちろんこのスージーのように恵まれた立場にいる人はそれほど
多くないかもしれません。
さてそんなトニーに弁護士事務所から、学生時代に付き合った
ことのあるベロニカの母セーラが亡くなり、彼女の遺言で
「ある日記」をトニーに渡す、という手紙が届くのです。しかし
その日記はベロニカが手元に持っていて渡さないと言われて
しまう。
出典:IMDb
ベロニカ..という名前を聞いて蘇る甘酸っぱい記憶は、懐かしい
学生時代のもので、小悪魔のようなベロニカに翻弄されつ
青春を謳歌したものだったのですが、結局は親友エイドリアンに
彼女を奪われ、それを祝福する手紙を送って終わったと彼の頭には
残っています。
ところが学生時代の友人と再会すると(みんな丸くなって毛が薄く
なっておじいさんになっちゃって!)彼の記憶が少しずつ違って
いることに気づくのです。エイドリアンがこっそりベロニカを
奪ったのではなく、トニーがみんなにベロニカを紹介してから、
二人が接近したと言う。あれ?
さらにエイドリアンは自殺したことも思い出すのです。
出典:IMDb
またようやくベロニカに会っても彼女はとても冷たく、
(シャーロット・ランプリングはこういう何か深い思いを隠して
いる役がよく似合う)日記は「エイドリアンの日記」で、それは
燃やしてしまったと言うのです。
トニーの手元に届いたかつてトニーがベロニカとエイドリアンに
送った手紙を見て、頭の隅に隠してあった「黒い記憶」が蘇って
きます。ああ、こういう記憶は忘れてしまうかもしれない。つまり
深く考えて行動したことは、頭に残っているけれど、一時の衝動で
やってしまった行為は、もしかしたら浅い記憶としてすぐに忘れて
しまうのかもしれないな。忘れる側と忘れない側の温度差が
大きすぎるのかもしれない。
さらに考えてみれば、昔の思い出は大体美しく演出されてしまい
「昔はよかったなあ」と言う人たちだって、当時に戻れば、
「早く時代が進んでほしい」「こんな苦しい時期は終わってほしい」
と思っていたかもしれない。
トニーのようにすっぽり抜け落ちている人は、そのことが多分人生に
それほど大きく関わって来なかったからだろうけれど、普通は、
時折「あの時ああしていれば」と後悔にかられる出来事が山ほど
あるはずなのです。トニーにしてみると結婚生活は確実だな。
映画内でトニーの腕時計が終始出て来ますが、それが完全に壊れて
しまって動かなくなった時、スージーが新調してくれます。ここから
トニーは新しい時を刻んでいくのだと実感するのです。