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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:韓国映画全般
出典:IMDb
「無垢なる証人」
原題:Innocent Witness
監督:イ・ハン
2019年 韓国映画 129分
キャスト:チョン・ウソン
キム・ヒャンギ
イ・ギュヒョン
チャン・ヨンナム
元人権派弁護士ジウは、借金返済のため大手弁護士事務所に
所属して働き始める。彼は自分の出世をかけた仕事として、
ある殺人事件の容疑者の国選弁護人となるが、その事件の
唯一の目撃者は自閉症を持つ15歳の少女だった。
<お勧め星>☆☆☆半 よくある設定だしラストも予想できる
ものでしたが、無知が他人への思いやりを忘れてしまう事を
実感します。
えらい執念深いこった
主役の弁護士ヤン・スノ役は
「私の頭の中の消しゴム」(2004)
「アシュラ」(2017)
などでイケメンぶりをしっかり見せてくれたチョン・ウソンです。
映画内では元庶民を守る熱血弁護士役で46歳独身。
え?これはありえないでしょう。いくら正義感溢れる弁護士かつ
少し手のかかる父親と二人暮らしで父親の借金(友人の保証人に
なったため)を返済している身とはいえ、こんなにかっこいいのに〜。
と思ったらどうもキム・スインという大学の同級生で今も
人権派弁護士として活躍している女性となんかいい感じ。ちなみに
彼女はバツイチで12歳の子持ちです。
さて事件はある晩、イム・ジウという少女が向かいの家で
おじいさんが殺害される現場を目撃したことから始まります。
出典:IMDb
事件の容疑者はこの家の家政婦オ・ミランで、スノは、大手
弁護士事務所に所属していて、その事務所のイメージアップの
ために「国選弁護人」を任せられるのです。
弁護士の世界は全然知らないけれど、いわゆる「人権派」弁護士は
だいたい清貧であることが多く、企業訴訟などで、企業側の弁護団
になる人たちは、お金の匂いがプンプンします。
アメリカでO・J・シンプソン事件が起きた時に、彼は殺人罪では
無罪になりました。その時の刑事裁判での弁護費用が5億円だった
ことは有名です。限りなく有罪に近いものを金の力と人種問題を
絡めて無罪にできるのは法律に携わる者の倫理観の欠如のような
気もします。とはいえ弁護士というのは本来容疑者の「弁護」を
行う任務があるのですから、その目的のために全力を尽くすことが
当たり前なのでしょう。
スノもかつては人権派として奮闘していましたが、現実を見ると、
自分が法学部を出るためにこさえた借金や父親が友人の連帯保証人に
なったことで作ってしまった借金を全然返せていないのです。
そのため結婚もできず、狭いアパートで貧しく暮らしている現状
から脱却しようと考えるのも無理はありません。
彼は大手弁護士事務所に所属し、かつての自分なら原告側であったで
あろう企業訴訟でも被告を有利にするアドバイスを与えるように
なるのです。そんな彼が事務所のイメージアップのために
「国選弁護人」として任せられたのが、例の事件です。
容疑者の家政婦オ・ミランは涙をこぼしながら
「わたしは一切手を下していません」
と彼に訴えます。そして検察側の切り札である「目撃者」がジウで
あり、彼女が自閉症であったことで、その証言能力の有無が問題に
なってくるのです。
出典:IMDb
イ・ヒジュン検事は、自らの弟が自閉症であり、この病への理解が
深く、ジウを証言台に立たせまいとビデオでの聴取状況を見せますが、
スノは、それ以外の盲点を突いてジウを証言者として法廷に出させる
ことを裁判官に認めさせるのです。この公判準備のやりとりは、どう
見てもスノのスキルが上であることを物語ります。そうかそういう
手法を使うのかと納得できるからすごい。
一方ジウに接近しようとするスノは、まず「自閉症」という病を
調べることから始めます。この病気の名前を多くの人が知っている
にも関わらず、それについての知識があまりに少なく、様々な状況の
人々がいることは少し調べるだけでわかります。
ジウは普通学校に通っていますが、もちろん自分の世界から出ることは
難しく、音にかなり敏感なのです。映画内でスノが「自閉症患者の世界」
という動画をネットで見るシーンがあり、そこで映し出される世界は、
普通なら大きな音にかき消されてしまう靴音、時計の針の音、遠くの
人の声、咳払いなどがすべて同じ大きさで聞こえ、これではパニック
になるのも当然だと気づきます。もちろんそれだけが症状ではありません。
出典:IMDb
このジウ役を演じるキム・ヒャンギが本当に素晴らしいです。そして
「ジウが普通の子だったら良かったですね」などとデリカシーの
かけらもない言葉を発したスノに対し、ジウの母は
「ジウに障がいがなければいいのに、とは思いません。そうで
なかったらジウでなくなるんです」
と強く言い切る姿は、彼女の娘に対する深い愛情を感じます。
障がい者などいなくなればいい、と言う極論を普通に語る人々は
この母の姿を見てほしい。この世に生まれた時点で、人々には
1つ1つ個性があり、それを他人が否定することなどできない
はずです。心の中で差別する意識があって、それをどうしても
消せない人はせめて口にするのだけはやめてほしい。それがどんなに
人間として愚劣であるかということを理解していてほしい。
裁判は一審は予想通り「無罪」となるのです。ジウの証言能力が
認められなかったのです。喜ぶ被告ミランや被害者の息子やスノの
弁護士事務所の人々にひきかえ、負担の大きい証言をさせられた
ジウや母親の嘆く姿は見ていて辛い。
裁判は検察側が控訴し二審が開かれることになります。そしてある
事実から、スノが大きな疑問を抱き始めるのです。ここからの展開は
早いです。
出典:IMDb
一審前にジウと交流できるようになっていたスノは、彼女の鋭い聴力と、
卓越した認知機能を知り、第二審へと臨みます。
いや、二審でも被告側の弁護士なのだから、被告の弁護をしないと
いけないのに...。ここは映画だからいいのかな。
ストーリーはよくあるタイプのものでしたが、これは何度でも
繰り返し映画にして、多くの人々の理解を深めていく必要がある
内容だと思いました。