ある女優の不在

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JUGEMテーマ:洋画

 

ある女優の不在

出典:IMDb

 

「ある女優の不在」

原題:Se rokh/3 FACES/Three Faces

監督:ジャファル・パナヒ

2018年 イラン映画 100分

キャスト:ベーナズ・ジャファリ

     ジャファル・パナヒ

     マルズィエ・レザイ

 

テヘラン在住の女優、ベナーズは、田舎の村に住む

少女が女優を目指し進学を希望するが反対され、自殺

しようとする動画を見て大きく動揺する。少女は

ベナーズ宛にメールや電話で連絡したと言うが、その

履歴はなく、また動画も友人のパナヒに送られているの

だった。ベナーズは彼女の生死を案じ、撮影を断って

パナヒとその村へ行くことを決断する。


<お勧め星>☆☆☆☆ 部族主義が今なお残り、そこから

抜け出そうともがく若い力を目にすると、この国の未来

への希望が広がります。


都会と田舎は全く違う


監督は「人生タクシー」(2015)のジャファル・パナヒ

です。彼は2度の逮捕と自宅軟禁に置かれたことがある

身の上で、さらに映画内でも語られるように、祖国イランを

出ることは許されていません。
実は映画の撮影自体も認められていないのに、ちゃんと

映画製作はしているのです。「人生タクシー」はタクシーの

車載カメラ映像を編集しただけ、という言い訳ができましたが、

これはどうやって撮影したんでしょう。もちろん国内での

公開はされていません。

 

ある女優の不在
出典:IMDb

 

オープニングはスマホの動画で、ある少女が「女優を目指し、

テヘラン大学で学ぶために親の勧める相手と婚約もしたのに、

それが叶わなかった。ベナーズさんには何度もメールや電話を

したが返信はなく、親や婚約者の裏切られた私はこうするしか

ない」とロープを首にかけるのです。これを何度も見返し、

ショックで涙を流すベナーズ・ジャファリ。

しかしこの動画はなぜか友人のパナヒの携帯に送信されており、
またこの少女が本当に自殺したのか確かめようがないのです。

もし自殺していたとしても田舎の村ではそれを「名誉」のために

隠すであろうということ。ベナーズは、撮影の日でありながら

とにかく現地に向かおうとパナヒに話すのです。

進んでいくとものすごく田舎に入って行き、一本道では

クラクションの応酬で、どちらが急いでいるか確認するという
なんとも時代錯誤のやり方で、交通が行われています。

 

ある女優の不在
出典:IMDb

 

そして到着したサラン村はクルド語を話す地域で、ペルシャ語

しか話せないベナーズはもっぱらパナヒに通訳を頼むのみです。

彼らが到着すると村人が総出で歓待しますが、それは、

インフラの整備に来たと勘違いしただけで、例の少女の名前

「マルズィエ」を出すと、誰も皆(男性たち)は怒り出します。

「あいつのせいで肩身が狭い」「大学へ行くことなど許していない」

「あいつと付き合うとバカになる」「芸人など仕事ではない」

あらまあ、女優を前にこんな言葉まで発するんですよ。そもそも

彼らはベナーズのことをほとんど知らないのですが。
そしてこの村にはシャールザードというイラン革命前に女優だった

女性が住んでおり、彼女は村人から村八分にされて、小さな家に

ひっそり暮らしているのです。
「芸人で成功したというならなぜシャールザードはあんな小さな家

にいるんだ?」
イラン革命は1978年アメリカ支援のパフラヴィー独裁王政を

亡命中のイスラムの指導者ホメイニ師を中心にして起こしたもので、

この成功によって新たなイスラーム指導体制が生まれたのです。

したがって革命前にもてはやされたシャールザードは迫害されるのは

当然であり、クルド語を話すこの村では、宗教上の迫害はないものの、

排他的な村社会からは隔絶されている状態だったのです。

 

ある女優の不在
出典:IMDb

 

一方今女優をしているベナーズはテヘランに暮し、ヒジャーブを

被っているものの、身なりは現代人そのもので、この村の女性

とは全く異なります。イラン革命は女性の地位向上、教育の機会、

社会進出を促したと言われています。しかしこのような小さな村

では、「女性の保護」=「女性の尊重」という部族主義が根強く

残り、男性と同じ役割を果たすことは許されるどころか、「罪」

とされてしまうのです。
映画内でマルズィエが語った「1本道の幅を広げようと鍬を持って

土を掘っていたら、鍬を取り上げられ、それは農民の仕事だ、と

言われた」という話は、「変化」を望まない人々の胸の内(特に男性)
を物語っているような気がします。話し合おうにも論理もルールも

ない。
そしてマルズィエは一体生きているのかどうかを確かめに行くと

彼女の家には癇癪持ちの弟がいて、大暴れしています。男は何でも

許されるのです。それはマルズィエの婚約者も同じで、働きもせず

たまに村に帰って来てはまたどこかにいってしまう。それでも許され

ているのです。この辺りはかなりイラつきますね。逆に何度も

家出を繰り返すマルズィエには弟が火をつけるかもしれない。

それは「名誉」のためだそうです。「名誉殺人」が行われている国の

中にトルコが含まれていますので、このクルド語を話す村ではその

悪習が根付いているのでしょう。

しかしこれは日本の田舎でも似たり寄ったりではないかと感じて

しまうのです。もちろん名誉殺人は存在しませんが。
今だにお風呂は男性から入るもの、とか、女は殴って言い聞かせる、

女は男の後から歩いてくればいい、などと、おいおい、あんた

明治の人間かい!という人がたくさん存在してたまげてしまいます。

 

 

 

<ここからネタバレ>

 


さてマルズィエは実は自殺をしておらず、ただ失踪していただけの

ことがわかると、ベナーズはめちゃめちゃ怒るんですよ、そりゃ

そうだ。テヘランから仕事もキャンセルして、心配でろくに眠れない

ままこの村まで来たのに、なんて身勝手な娘なんだろうと。
ただ救いがあったのはマルズィエの両親が娘のことを理解しており、

静かに話し合いができたことです。暴れん坊の弟の仕業でパナヒの

車のフロントガラスにはしっかしヒビが入りましたけどね。
ラストもやはり一本道で、クラクションの鳴らし合いです。

「歩いていくわ」と車から降りるベナーズとその後を走って

追いかける白いへジャーブの女性は...。そうなんですよ。

毎日変わるようなしきたりなら、改革できないしきたりなら、自分で

進んだ方がずっと早いのです。あーこのラストはとても気に入っています。

 

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