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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:Horror
出典:IMDb
「ミッドサマー」
原題:Midsommar
監督:アリ・アスター
2019年 アメリカ映画 147分 R15+
キャスト:フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー
ウィル・ポールター
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
両親と妹を一挙に失ったダニーは、恋人のクリスチャン
たちが向かおうとしているスウェーデン旅行に同行する。
そこでは90年に一度の大祝祭が開催されることを聞かされ、
彼らはその村ホルガに向かうが、一見幸せそうな村人たちの
雰囲気に少しづつ違和感を覚えていくのだった..。
<お勧め星>☆☆☆ この世界観は全然好みじゃない
最後に笑うのは誰だ
アリ・アスター監督の映画は
「ヘレディタリー/継承」(2018)
を見て、確かにぞくりとする怖さがあったけれど、個人的には
肌に合わないと感じていました。どこが合わないのかというと、
精神疾患を持つ人々が登場人物に深く関わってくるのが不快に
思われたからです。その設定は不要にして違う作り方は
できなかったのかとも考えてしまいました。
さてその監督が手掛けた「ミッドサマー」はどうでしょうか。
やはり精神的に不安定な女性ダニーが登場します。彼女の
妹ラリーもどうやら心の病を抱えているようで、それを恋人の
クリスチャンにしつこいほど電話で訴えています。交際4年の
男女とはいえ、まだ学生の身の上だと、これはかなり「重い女」
になってしまいます。案の定、クリスチャンは友人たちには
「いい加減に別れろ」
と言われているのです。クリスチャンもはっきり別れを言い
出せばよかったのです。余計な思いやりを持つとろくでもない
ことに発展します。
そしてダニーの両親と妹は不慮の事故(妹のガス自殺に両親を
巻き込んだ?)で亡くなり、ダニーはさらに心を病んでいきます。
もうクリスチャンは別れるにも別れられないのです。
さらにクリスチャンが友人ジョシュ、マーク、ペレと計画して
いたスウェーデン旅行に一緒に行くと言い出す始末。
「彼女はいま酷く辛い体験をしたばかりなんだ」
いやいや気持ちが離れているならはっきり言ってあげないと、
ろくでもないことになりますよ。(2回目)
というわけで、スウェーデンまで全員で向かい、ホルガという
村での90年に1度の大祝祭に参加することになるのです。
途中休憩したヘルシングランドの草原で、ドラッグを吸うと、
なんとダニーは手から草が生えてくるし、トイレに行けば鏡の
自分の顔が歪になっています。なんとも異様な雰囲気が立ち込め
始めます。
出典:IMDb
到着したホルガは、明るい日差しがさんさんと降り注ぎ、そこに
暮らす人々は、みんな笑顔で幸せそうなんです。これはあちこちの
レビューで触れられている通り「ウィッカーマン」(1973)を
思い出させます。アメリカでリメイクされた2006年版ではなく、
オリジナルのイギリス版の方です。あれはスコットランドにある
サマーアラハ島という場所での奇祭を描いていました。確か
島民たちはニコラス・ケイジ演じる主人公を歓待し(やりすぎるくらい)
ニコニコしながら酒や食べ物を振舞っていました。その中で
次第に不穏な空気が流れ始めるのです。
出典:IMDb
一方この映画では、到着早々、「アッテストラバン」という
儀式に度肝を抜かれます。しかもかなりゆっくり始まり、
ゆっくり動き、突然それが起こるのです。「人生は四季」と
最初に村人が言い、72歳以降の話をしなかったのも頷けます。
またこの儀式で失敗すると「あ〜あ」と村人全員が言うのです。
つまり村人たちは喜怒哀楽をすべて共有し、それは感情だけで
なく他の部分でも繋がっているとわかってくるとすごく気味が
悪くなります。
この時点で「もう帰りたい」人物が登場します。既に婚約をして
いるサイモンとコニーで、彼らは翌朝、ここを出ようと言い始める
のです。だいたい、宿泊施設は、男女一緒に詰め込まれた場所で
狭いベッドにただ潜り込むだけじゃないですか。
出典:IMDb
なぜかひどく夜泣きする赤ちゃんがいて、よく眠れるもんだと
思ってしまう。
で、ジョシュは民俗学を研究していて、この村も含めて論文に
書こうと考えているのですが、ところがクリスチャンもこの村に
ついて書きたいというのです。「帰りたい」と言うダニーの言葉は
一切耳に入りません。またペレが実は両親を幼い頃に亡くし、
この共同体で育ったことが分かってくると、もしかしたらすべてが
仕組まれているのではないかと感じ始めます。
さらにいかにも北欧の少女っぽい色白で線の細そうなマヤが、
クリスチャンに熱ーい視線を送ります。それから最初からナンパ
目的という不純な心を持っていたマークは先祖の木に立小便を
してしまい、村人たちの怒りを誘います。少しずつ何かが進み
始めたのを感じる瞬間です。
この村にはルビ・ラターという先天的な障がいのある人物がおり、
その人物が描く絵は「曇りのない心」で見たものだと村人は言うの
です。そういえば村のあちこちに牧歌的な絵が飾られていますが、
よく見るとそれらは結構残酷な内容を描いているのを思い出します。
出典:IMDb
少しずつ姿を消す友人、そしてミートパイに入っていた縮れ毛
(それを口にしたのはクリスチャン)、競争のために飲まされる
変なお茶、村人全員がはやし立てる中、踊り続けるダニー達女性。
その間にクリスチャンに起きていることは彼の意志ではないけれど、
彼の意志などはそもそも尊重されるはずもないのです。
もうね、この辺りに来る前から気分が悪かったんですが、この
クリスチャンのシーンはげーっと思ってしまいます。古来から
守られてきた風習が、よその土地の人から見るとひどく驚くような
ものがありますが、それをすっかり超えている感じです。
ラストの微笑が意味することをずっと考えているんですが、
あの人にとってはこれが全てを忘れ去る唯一の方法だったんだろう
と思っています。そして二度と見たくない映画。