ある船頭の話

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JUGEMテーマ:邦画

 

ある船頭の話

出典:IMDb

 

「ある船頭の話」

監督、脚本:オダギリジョー

2019年 日本映画 137分

キャスト:柄本 明

     村上虹郎

     川島鈴遥

     伊原剛志

     浅野忠信

     細野晴臣

 

村と町を流れる川を渡る人々を乗せる船頭をしている

トイチは、彼を慕う源三を話し相手に毎日黙々と船を

漕いでいる。もうすぐ出来上がる橋を見ながら彼は

様々な客を乗せるが、ある時川を流れてきた一人の

少女を救う。トイチは彼女の世話をしながら、自分に

ついて人生について考え始めるのだった。


<お勧め星>☆☆☆☆ 静かにゆったり流れる川のような

時間の中で少しづつ変わっていく人々と変わらないままで

いる人の心を描いています。


新しいものを求めれば古いものは消える。


川に浮かぶあめんぼ、少しの風で揺れる川面、そして

その上をすべるように流れていく葉。この葉を見た時に、

ああ、幼少期、笹の葉で舟を作り、川に流して遊んだことを

思い出しました。その記憶はすっかり抜け落ちていたのです。

同じように映画の終盤付近で蛍が見えるシーンがあります。

それも夏になると違う川で夜に幾つも光る蛍を見つけていた

ことも思い出しました。その川が人工のものに変わった後、

蛍は一切見られなくなり、その記憶すらも消えていました。
ゆっくり動き、寡黙なトイチと対照的に、橋を作りに来て

いる作業員たちは、彼を急かし、蔑み、あざけるような言動を

繰り返します。それでもトイチは、村の人々に対するのと

同じように全く表情を変えないのです。

 

ある船頭の話
出典:youtube

 

そんなトイチを慕うのは源三という若者で、素朴で天真爛漫な性格。

彼が持ってきたジャガイモを川のほとりで焼いていると、その日は

とても暑い日で、陽炎がたっています。
「暑い日に暑いものを食うなんてな」
二人は笑いあうのです。川上の方から聞こえる橋を作る音に

対し、源三は「うるさくて仕方がない」と怒り、一方のトイチは

「そんなに聞こえない」と答えます。橋ができたら、村の人々が

町に行くのにとても便利になるけれど、それはトイチに仕事が

なくなることを意味します。そのことを知っているはずなのに、

彼は何も語りません。
早朝の川は水面から霞がかかり、幻想的な様相を見せます。

夕方には赤く染まった空を映して、同じように赤く光る水面を見る

ことができるのです。そこに人工の灯りの存在はありません。
トイチが乗せる客は本当に様々で、若い女性から年配の女性、

橋の作業員、町から往診に行く医師、牛を出荷する人々など本当に

あらゆる人々なのです。そして彼らがそれぞれ異なった内容の話を
していきます。それを淡々と聞きながら、櫓をこぐトイチは、

何を考えているのでしょう。
草笛光子演じる初老の客が、唯一トイチの身の上を尋ねます。

「語るほどのものはありやせん」

語ることはないけれど、彼に「孤独」を感じた彼女は、

「孤独って狐に似ているのよね」と語ります。
そして「年を取ると故郷が懐かしくなるのよね」とも語るのです。

故郷は遠きにありて思ふものーと室生犀星は詩に書きました。

戻れば親がいて、いつでもそこにいると思って日々を送って

いると、親は亡くなり、戻りたいと思う時には、かつての故郷の

姿はそこになく、ただ郷愁を感じるだけになっていることに

気づきます。
ある日、トイチは船にぶつかる何かを見つけ引き上げるのです。

 

ある船頭の話

出典:IMDb

 

その袋を開けてみると中から一人の少女が出てきます。少女は

傷だらけで、意識はなく、トイチは源三とともに彼女の看病を

続けていくのです。
ところが、例の作業員が乗船した時に、川上の村で起きた一家

殺人事件の話をしているのを耳にしてしまいます。全員惨殺

されたけれど、子供が一人姿を消していたというのです。まさか

その子供があの少女だろうか。
そう思っていると、少女はある時突然意識を取り戻し、赤い服を

まとって船をこいでいるトイチの方の歩いてきます。真っ青な

空には白い雲が流れていき、蝉の声が響き渡っています。彼ら

二人はその自然に見事に調和していて、まるで自然の一部で

あるかのように感じられるのです。

 

ある船頭の話
出典:youtube

 

しかし少女はある時突然姿を消します。映画の序盤に映った、

異様な姿の人物は何でしょうか。それはトイチの心を全て見

透かしているようにも思えます。
「役に立たないものは皆なくなっていく」

トイチの頭の中に浮かぶ恐ろしい光景は、実はそれを彼自身が

望んでいたということそのものなのです。毎日穏やかな表情で

船をこぎ、人々を運んでいながら、本心は、橋ができることを

憎んでいたし、それに関わる人たちも憎んでいたのです。
ところが再び少女が戻ってきます。「何を覚えているんだ」と

尋ねるトイチに彼女は「おふう」という名前だけ教えるます。

おふうを船に乗せた時、突然彼女は水の中に飛び込みます。

急いで彼女を救おうと飛び込んだトイチが見たものは、まるで

魚のように彼に泳ぐおふうの姿でした。思わず見とれてしまう

トイチは、自分と同じ匂いを感じたのかもしれません。いえ、

自分など足元にも及ばない純粋な少女の姿にただただ驚いた

のでしょう。
蛍が少なくなったのは、橋を作り始めてからだ。とトイチが

言うと、おふうは、「蛍の方が好き」と答えます。しかし

便利さを求めれば、失われていくものが必ず存在するのです。
そして土砂降りの晩、マタギの仁平が父の死を告げにトイチの

元を訪れます。彼は「森の生き物の命を奪ってきたおやじを、

その生き物に返したい」と語り、父の遺体を船で運ばせ、

森の中に置いてくるのです。
真っ暗な森に降り注ぐ大粒の雨の中で唯一光るのがおふうが

持っている橙色の灯りです。すべてが終わった時には月が上り、

その月明かりの中で無数の蛍が輝きを放っています。

そうそうこんな風に蛍は光っていました。蛍自身はただの黒い

小さな虫なのに、光っている時はとても美しいのです。
そして雪が積もるころ、橋は完成し、トイチは暇になり、

源三はなんだかハイカラな格好をして、トイチに何かを指示

しています。二人の立場が変わってしまったことが分かります。

いや変わったのは源三だけなんだろうな。
橋の上でトイチとすれ違った仁平は

「橋ができてから村の人も変わった。みんな急いでいる」と

語ります。便利を求めるのは、スピードを求めることと等しく、

それは物事の本来あるべき姿を変えていくことかもしれません。
ロケは新潟県阿賀町でほぼ行われたそうですが、このような

景色にどうしても懐かしさを感じてしまいます。

BGMの曲も静かで心を穏やかにさせるものでした。

 

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