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- 2023.01.12 Thursday
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JUGEMテーマ:ドキュメンタリー映画
出典:IMDb
「誰がハマーショルドを殺したか」
原題:Cold Case Hammarskjold
監督:マッツ・ブリュガー
2019年 スウェーデン=デンマーク=ノルウェー
=ベルギー映画 123分
キャスト:マッツ・ブリュガー
ヨーラン・ビョークダール
1961年、9月18日、コンゴ動乱調停のため、
チャーター機で現地に向かった国連事務総長
ハマーショルドはローデシア(現ザンビア)で墜落事故に遭い、
彼と乗員全員が死亡する。原因不明の事故とされきたこの事実
についてジャーナリストのマッツ・ブリュガーと調査員
ヨーラン・ビョークダールは「暗殺説」のうわさを基に調査を
開始するが、そこには大きな闇が隠されていた。
<お勧め星>☆☆☆☆ 途中から単なるドキュメンタリーで
なくなりサスペンス映画のように感じられます。
アフリカの扱い
ダグ・ハマーショルドといっても全く記憶になく、この映画を
見て彼の功績を知った次第です。国際連合広報センターの
情報によると「事務総長在任中、ハマーショルド氏は戦争回避に
尽力し、国連憲章に定める目的を遂行する中で国連に与えられた
様々な責務を遂行しました。」とのこと。映画内でも彼が
事務総長時代に成し遂げた事柄が幾つか紹介されます。
その中で監督であるブリュガーが目を留めたのは
ハマーショルドが「アフリカの国を守ること」を強く主張し、
国連に加盟している旧植民地国を敵に回したことでした。搭乗機が
墜落した際に向かっていたのはコンゴであり、コンゴの動乱を解決
するためにコンゴから独立を主張するカタンガ州の
モイーズ・チョンベと和解の話し合いをするためでした。コンゴは
元ベルギー領であり、そのベルギーに後押しされていたのが
チョンべです。詳しく調べていくと結局米ソの代理戦争であり、
冷戦時代の象徴的な戦争の1つであったようです。そもそも
コンゴには鉄鉱石が豊富にあり、ベルギーがその巨大鉱山会社を
所有していて、コンゴとして独立した後もその豊富な資源による
資金で傭兵を持っていたのがチョンべだったのです。
出典:IMDb
映画はこのハマーショルドの事故を「暗殺」と仮定し、その証拠
集めに向かった場所での出来事をアフリカ系の女性2人がタイプ
していくというスタイルで進みます。したがって時系列はバラバラ
であり、2018年南アフリカ、コンゴの後で、ハマーショルドの
チャーター機の墜落の軌跡が絵で描かれ、そして2017年
ザンビア(旧ローデシア)のンドラへと変わります。ンドラは
チャーター機が墜落した場所であり、ブリュガーとヨーランは、
金属探知機とヘルメット、スコップでその残骸を探し出そうと計画
するのです。
出典:IMDb
なぜ「暗殺」という仮定をしたかは、ヨーランの父がこの地点で
飛行機の残骸らしき鉄板を発見していて、そこに小さな穴が
幾つも空いておりそれが銃撃の跡のように思われたことと、墜落の
様子を見ていた現地の人たちが、
「何かが接近して突然飛行機が火を噴き落ちて行った」
と証言したからです。当時黒人の証言など全く信用されず、逆に
証言することは自らの身を危険にさらすことになったのだ、と
ブリュガーは語ります。さらに当時に管制官マーティンは、墜落
現場のそばにいたのに、「何も見ていない」と言い、管制メモが
墜落前後のみ書き直されていることも極めて不可思議な事実です。
そしてアメリカ国家安全保障局(NSA)の元職員の証言
「ベルギーの傭兵がチャーター機を銃撃し、墜落させる声を聞いた」
という話が出てくると、にわかにこの「暗殺」説は真実味を帯びて
きます。
またハマーショルド以外の遺体は黒焦げでバラバラだったのに、
彼だけはほぼ無傷で首のあたりにトランプのスペードのカードが
挟まれていたという事実も謎を呼びます。実際2013年9月には
オランダで調査結果を発表し、ハマーショルドの遺体に関する
証拠の精査を求め始めるのです。ところがNSAは証言はあるが
国家機密の関わるため非公開と答えます。この辺りまでは
あくまでもドキュメンタリーとして感じられるのですが、これ以降の
内容は、はて、こんなことが本当に起きていたのだろうかと
思うことばかりで、まるで「世にも奇妙な物語」的に変わっていく
のです。
ブリュガーが最初から着用している真っ白な上下の服は「サイマー」
という南アフリカ海洋研究所の職員の制服で、その「サイマー」が
実はこの暗殺計画を立て実行したということです。そこまでは
まだ理解できますが、このサイマーの准将だったマクスウェルは
医師でもないのにアパルトヘイト下の南アフリカの黒人居住区で
無料診療所を幾つも持っていて、そこで黒人に何かを注射していた
という話になり、それがどうやら「エイズウィルス」で「黒人の根絶」
のためにエイズをアフリカ各地に拡散させていたとなってくると、
当初のハマーショルド暗殺の話とはかなりズレてくるのです。
とはいえ、「サイマー」という組織の存在は、重い口を開いた人たち
の証言や殺害された人、消息を絶った人などのその理由などを想像
すると、実際に存在していたかのようにも思えます。その財源は
外国からのもので、敵国を揺るがす行為を内密で行う実行機関と
いうわけです。現在ロシアが関わったとされる幾つもの暗殺事件、
暗殺未遂事件が報道されますが、世界にはこのような組織は絶対に
存在していて、その実態を知っている者はごくわずかなんだろうと
素人は考えてしまうのは当然です。
結局ハマーショルドの事故について新しい事実が分かったわけでも
なく、真相が判明したわけでもないのですが、世界における貧富の
格差の根本がなんであるか、またそれを正そうとする人々が
国際組織にいるのか、極めて疑問に思わせる映画でした。